第6回 「AIvs教科書が読めない子供たち」と新井紀子教授と日本のAI限界


ロボマインド・プロジェクト、第6弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。

さて、今回は、2018年にベストセラーとなったこの本を取り上げます。

「AIvs.教科書が読めない子供たち」
著者は、新井紀子教授です。
専門は数学です。

この本は、「東ロボくん」という、AIを東大に合格させるというプロジェクトについて書いた本です。

AIに、大学受験させて、東大に合格させるというプロジェクトです。
残念ながら、東大合格は無理でしたが、MARCHレベルには合格するようです。
MARCHというのは、明治、青学、立教、中央、法政大学のことです。

MARCHレベルに合格するなら、十分ですよね。
そこそこ、仕事ができるじゃないかと思いますよね。
でも、AIロボットが就職して仕事してるって話、聞いたことないです。

ここ、勘違いしてる人がいますので、少し説明しときます。
これは、あくまでも、大学入試問題で正解するかどうかだけの話です。
これで分かるのは、AIは、どんなタイプの問題が解けて、どんなタイプの問題が苦手かってことです。

想像がつくと思いますけども、AIが得意な問題は、計算とか暗記問題です。
数学とか、歴史の年代を答える問題なんかは、かなり高い正答率で答えれます。

苦手なのは国語とか英語です。
とくに、意味を理解しないと解けない問題はお手上げです。

では、「東ロボ君」は、どうやって解いてるのでしょう?

センター試験の国語には、「傍線部の指す内容を、次の1~5の中から選べ」といった問題が必ずあります。

この場合、選択肢の文字と、本文の文字を比べて、最も一致度が高い選択肢を選んでたそうです。

つまり、「あ」という文字が何回出てきたか、「山」という文字が何回でてきたかを、本文と選択肢で1文字ずつ数えるんです。
それで、一番重複してた選択肢を選んでたそうです。

「えっ、それだけ?!」って思いますよね。

それ、頭の悪い受験生がよくやるやり方です。
受験で、絶対、やっちゃいけないテクニックです。

それでも、この方法で正答率は50%に達したそうですけども、それ以上は、どんなに工夫しても、正答率は上がらなかったそうです。

そりゃ、そうですよね。
それで合格できるほど、大学入試は甘くないです

では、なぜ、「東ロボくん」は、こんなバカみたいな解き方をしたのでしょう?
ちゃんと問題文を読んで、もっとマジメに解けよ、って思いますよね。

でも、これは、仕方ないことなんです。
今のAIには、このぐらいのことしか、できないんですよ。

この本の中で、何度も言われてますけど、コンピュータは、ただの計算機です。
出来ることは、足し算や掛け算だけですって。

新井先生は、数学者なので、もう少し厳密な言い方をしています。

コンピュータが扱えるのは、論理、確率、統計の3つだけだと。

論理っていうのは、「A=BかつA=Cであれば、B=Cである」といったことです。
確率っていうのは、サイコロを振ると、1の目がでるのは1/6であるっていうのです。
統計は、大量のデータの中から規則性を見つけるものです。
確率と似ていますが、アプローチが逆です。

コンピュータには、この3つのことしかできないんです。
そう考えると、なぜ、東ロボくんが、なんで、あんな方法で問題を解いたか、理解できますよね。

コンピュータで国語の問題を解くには、文字の数を数えて、統計的的に正解を導きだすしか、方法がないんです。

新井教授はいいます。
コンピュータで絶対に出来ないこと、それは言葉の意味を理解すること。

じゃぁ、なぜ、「東ロボくん」のプロジェクトなんか始めたんでしょう?

コンピュータで言葉の意味を理解するのは難しいなんてこと、AIについてちょっと調べれば誰でもわかることです。
僕も、そのことはよくわかってたので、「東ロボくん」の話を始めて聞いたとき、てっきり、言葉の意味を理解する方法が解明できたから、それを示すために、東大合格なんて目標を掲げたんだと思ったんですよ。

でも、それは僕の勘違いでした。
その事に関しては、この本の冒頭に書いていました。

「『東ロボくん』の目的は、東大合格ではありません」と
堂々と、こう書いてあるんです。

えっ?!
じゃぁ、何のための研究?

そう思いましたが、その答えは、こうです。

「AIで何ができないかを解明する」
そういうことだそうです。

そして、研究成果として、
「今のAIは、言葉の意味が理解できないという限界がある」
ということが、改めて確認できたそうです。

ん~、なんか、スッキリしないですよねぇ。
そんなこと、改めて研究しなくても、何十年も前からわかってたことですしねぇ。

でも、これには、日本の学術研究が抱える深い問題があるようなんです。
どういうことかというと、研究するからには、研究費っていう国家予算を獲得しないといけないんです。

そして、研究費をもらって研究するには、何らかの成果を出す必要があるんです。
失敗するような研究に、だれも、お金をだしませんからね。

そこで、研究者は、無難な研究をするようになるんです。
他で成果が出た研究を、ちょっと変えただけの研究とか。
お金を出す方も、それなら、成果が出そうだと、お金を出しやすいですしね。

だれも成功したことがない、チャレンジングな研究なんて、成功する可能性は低いですし、誰もお金なんか、出しません。

そういう観点から見てみると、「東ロボくん」は、失敗しようがない研究なんですよ。
今まで誰も成功したことがない研究を、同じやり方でやって、AIには限界がありましたって報告すれば、その研究自体は成功したってことになるんですから。

うまいこと考えましたよねぇ。
これで、確実に、予算を獲得できます。

でも、これが、日本の学術研究の構造的な問題なのかもしれません。

これじゃぁ、画期的な研究なんて、日本から絶対に生まれませんよね。
後追いの研究しか、出てこない構造になってるんですから。

僕が、ロボマインド・プロジェクトを始めたのは、言葉の意味理解の画期的なアイデアを思いついたからです。
今まで、だれもやったことがない方法です。

でも、そんな誰もやったことのない研究なんて、誰もお金なんか、出さないですよね。

その事は、僕が一番よくわかってたので、それで、僕は、ビジネスを始めて、そっちで生まれた収益を研究費に回しているんです。

これだと、無理に成果を出さなくても、誰からも文句を言われませんから。
これができたから、ロボマインド・プロジェクトは、20年以上、続けることができたんです。

そうして、ようやく、成果が見えてきたので、こうしてYouTubeチャンネルを開設して、公開してるってことなんです。

次回は、もう少し、AIの現状について説明していきたいと思います。

それでは、次回も、お楽しみに。