ロボマインド・プロジェクト、第150弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
今回取り上げるのは、カズオ・イシグロの新作小説。
「クララとお日さま」です。
ノーベル文学賞、受賞後、初の長編小説です。
なんで、この本を取り上げるかって言うと、主人公のクララはAIロボットなんですよ。
ジョジーって病弱の14歳の少女の友達ロボットです。
本の中ではAF、人工フレンドって呼ばれてます。
こういうのって、登場人物がわかると、だいたいストーリーが見えてくるんですよ。
あぁ、少女とロボットのパターンね。
はいはい。
最初、AIロボット、クララが、病弱のジョジーを献身的に世話をするシーンですわ。
ほんで、後半、事件が起こるんですよ。
学校でジョジーがいじめられるとか。
そしたら、おとなしかったロボット、クララが、突然、怒りの化身となるんですよ。
目からビームをビーって出して、校舎を焼き尽くしたり。
ウィーン、ガシャ。
ボインミサイル、発射、
ボィーン!
ボィーン!
そしたらジョジーが叫ぶんです。
クララ!、もう止めて!
まっ、ありがちな話ですわ。
でも、読んでみたら、全然違いましたわ。
たぶんね、ボインミサイルって書いた時点で、ノーベル賞はく奪ですわ。
それじゃぁ、中身に入って行きますけど、何回かに分けて解説します。
今回は、ストーリーです。
完全ネタバレで全部話ますよ。
次回以降、中身の解説します。
それでは、始めましょう。
場所は、アメリカのとある街です。
大通りに面した店で、雑貨と一緒にAFは売られています。
クララはショーウィンドウに立つのが一番幸せです。
それは、外の世界を見ることができるからです。
それと、もう一つ、太陽光を浴びることができるからです。
さっそく出てきました。
この作品の重要な要素、お日さまです。
AFは、太陽光を原動力として動いているので、クララはお日さまには特別な力があると信じています。
ある時、目の前で道路工事があって、舗装する機械みたいなのが、真っ黒な煙をもくもく出してました。
そのせいで、昼間から暗かったんですけど、うっすらと日の光の模様を床に見つけて、クララはお日さまに感謝するんです。
私たちのために、出来る限りのことをしてくれてるんだって。
クララのお日さまに対する思いは、それだけじゃないです。
あるとき、向かいの通りに浮浪者の老人と犬がいたんですけど、それが、横たわったまま、動かなくなったのを目撃したんです。
クララは死んでしまったと思いました。
その翌日、お店のシャッターが開いて、太陽の素晴らしい光が入ってきました。
クララは、昨日の浮浪者はどうしたかと見てみると、なんと、起き上がっていたんです。
犬も元気に動いていました。
あぁ、きっと、お日さまの栄養で、生き返ったに違いないって思うんです。
お日さまのことを、ほとんど、神のように崇めてるんです。
この話は、物語後半のキーにもなります。
さて、そんなある日、ジョジーに出会います。
ジョジーは一目見て、クララを気に入りました。
でも、お母さんはすぐには気に入りません。
クララは最新型のAFでもありません。
店長さんは、クララの特徴について説明します。
「クララは、他のAFと違ってものごとをよく観察する能力があります」
そこで、お母さんは、クララをテストします。
「それじゃぁ、ジョジーの歩き方を真似てみせて」
じつは、ジョジーはね、病気のせいで、歩き方がちょっと不自然なんです。
クララは、その歩き方を忠実に真似て歩いてみました。
「そっくりね。よく観察してるわね。それじゃぁ、この子にしましょ」
ジョジーは大喜びです。
そうやって、クララはジョジーの家に引き取られることになりました。
ここから場面はガラッと変わります。
ジョジーの家は、郊外にあるお屋敷です。
家には、お母さんと、クララと、家政婦の3人がいます。
お父さんは、離婚して、今は一緒に住んでいません。
見るからに大金持ちです。
ここで、この時代の社会を整理しておきます。
今の延長の近未来のアメリカ社会です。
それは、超格差社会でもあります。
格差は、何で決まるかと言うと、「向上処置」を受けた人と、受けてない人です。
向上処置って、遺伝子編集の手術のようなものみたいです。
その処置をすれば、知的能力とかが向上するみたいなんです。
たぶん、とんでもない費用が掛かかって、裕福な家庭しか受けれないと思います。
しかも、かなり危険な手術のようです。
ジョジーには、じつはお姉さんがいたんです。
でも、向上処置が原因で亡くなったようなんです。
そして、クララの病気の原因も、どうやら向上処置のようなんです。
それほど危険なのに、なぜ、みんな受けるかって言うと、向上処置を受けないと大学にも入れないんです。
そして、社会は、向上処置を受けた上層の社会と、受けてない下層の社会に分断されて、その二つは、日常、交わることもありません。
上層の人は、大学に行くまで、家でiPadみたいな端末で勉強するので、学校にも行きません。
そこで、寂しくないように、友達の役割としてAFが与えられるんです。
それがクララです。
下層の人は、AFなど持てません。
さて、ジョジーの隣に一軒だけ、家が建ってます。
そこには、ジョジーの幼なじみのボーイフレンドのリックが住んでいます。
じつは、リックは、この向上処置を受けてないんです。
さて、ある週末、モーガンの滝っていうところに、みんなでお出かけすることになりました。
ジョジーはものすごく楽しみにしてたんです。
でも当日、ジョジーは体調が悪くなりました。
どうしても行きたいと言ったんですけど、絶対ダメってお母さんに無理やり車から降ろされました。
それで終わりかと思ったんですけど、お母さんが、妙なことを言います。
ジョジーは行けないけど、クララがいけないのはかわいそうだから、クララと二人でモーガンの滝に行くって言うんです。
なんか不自然ですよねぇ。
ほんで、滝を背景に、テーブルに座ってクララとお母さんが会話するんですけど、また、お母さんがおかしなことを言うんです。
「あなた、ジョジーをどれだけ観察してる見せてちょうだい」
「今から、ジョジーになりきって話してみて」って言うんです。
妙なことを言いますけど、クララはお母さんの言いう通り、ジョジーになりきって会話します。
お母さんは、かなり満足したみたいですけど、最後にこう言います。
「ここであったことは、ジョジーにはないしょにしときましょう」
このお母さんの奇妙な行動の理由が、次第に明らかになってくるんですよ。
ある日、みんなで街に出かけることになりました。
じつは、お母さんはジョジーの肖像画を依頼してて、そのために、時々、ジョジーを連れて街にでかけるんです。
街に行くといっても、一泊の小旅行です。
今回は、クララと、お隣のリックとリックのお母さんも一緒に街に出かけることになりました。
街では、久しぶりにジョジーは、お父さんとも会うことになっています。
この旅は、見かけの楽しい雰囲気とは違って、それぞれの、いろんな思惑が詰まった、トンデモない旅になるんですよ。
この旅で、物語が一気に進みます。
まずはお母さんです。
肖像画を描くと言っても、ジョジーの体の負担を考えて、写真を撮るだけなんです。
その写真を元に、肖像画を描くわけです。
今回は、街に出たので、久しぶりにジョジーのお父さんにも会いました。
そこで、ジョジーに内緒で、描きかけの肖像画を見ることになりました。
すると、なんと、それは、肖像画じゃなくて、精巧に作られたジョジーそっくりの人形だったんですよ。
こっから、思わぬ方向に話が進みます。
お母さんは、ジョジーのお姉さんを亡くして、ものすごく悲しい思いをしました。
さらに、ジョジーを亡くすなんて、とても耐えきれないって思ったんです。
そこで、その日のために、周到に準備をしていたんです。
それが、ジョジーそっくりの人形とクララです。
ようやく繋がりました。
お母さんが、クララにジョジーを真似るようにって言ってたことが。
それは、ジョジーが亡くなった後、クララの外見を、ジョジーの人形に変えるためだったんです。
そうして、いつまでも、ジョジーと暮らそうと考えたんです。
母親の愛情が強すぎて、とんでもないことを思いついたんですねぇ。
次は、リックとリックのお母さんです。
何で、リックのお母さんが、リックを街に連れて来たかと言うと、リックのお母さんの元恋人に、リックを合わせるためでした。
なぜ、そんなことをするかと言うと、その人は、今は、大学の偉いさんなんです。
その大学というのが、向上処置を受けてない人でも受け入れる唯一の大学なんです。
ただし、ものすごい難関です。
そこで、昔のコネをつかって、なんとかリックを大学に入れて欲しいと頼もうとしたわけです。
最後はクララです。
クララはクララなりに、ジョジーの病気が治ることを真剣に考えていました。
そして、お日さまなら、ジョジーを治せると思ったんです。
だって、一度死んだ老人を、お日さまの光で生き返ったのを見てますから。
そこで、どうやったらお日さまが喜ぶだろうと考えて、思いつきました。
道路工事で真っ黒な煙を出してた、あの機械を壊せば、きっとお日さまは喜ぶだろう。
そうしたら、お礼にジョジーの病気も直してくれるだろうって。
ジョジーのお父さんは、優秀な技術者なんです。
そこで、ジョジーのためだと言って、お父さんにも協力してもらって、あの機械を破壊することにしたんです。
ただ、この作戦は、結果的に成功しませんでした。
街から戻ると、ジョジーの体調はますます悪くなりました。
ずっと、寝込むようになりました。
そこで、クララはお日さまに真剣にお願いしました。
そうしたら、奇跡が起こったんです。
ある日、ジョジーが寝てる部屋に不思議な夕陽が差し込みました。
見たこともない光の模様でジョジーを包み込んだんです。
その日以来、ジョジーの体調がよくなりました。
すっかり元気になって、大学に行くことも決まりました。
ジョジーとクララは一生、仲の良い友達として過ごしました。
めでたし、めでたし
で終わるかと思ったんですけど、まだ、もうちょっと続きがありました。
大学に行くことが決まると、新しい付き合い生まれて、ときどき、友達がジョジーの家に泊まりに来るようになりました。
そうなると、クララは居場所がなくなって、屋根裏に自分の居場所を見つけました。
ジョジーの付き合いが増えてくると、リックとも会わなくなりました。
リックはリックで、大学には行かないことにしたようです。
向上処置を受けた連中と、ずっと競いながら生きて行く生き方は止めたようです。
リックは、ドローンを作ったりとか、技術者として、ものすごい才能を持っていました。
大学とは別の道で、その才能を活かそうとしてるようです。
そして、ジョジーが大学に旅立つ日となりました。
ジョジーがクララに抱き着いて最後の別れを言います。
「今度戻る時は、もう、いないかもしれないのよね。
あなたは素晴らしい友人だったわ」
「ありがとうございます。
選んでくれたこと、感謝します」ってクララも答えます。
えっ?
って思いますよね。
えっ、なんで、今度戻ってくるとき、いないの?って。
どうも、AFとはそういう役割なようです。
子供が大学に行くまでだけの友達のようです。
その役割が終わったわけです。
それじゃぁ、役割が終わったAFはどうなるんでしょう?
そして、最後の場面です。
どうやら、スクラップ置き場のようです。
あちこちに、いろんなスクラップが置かれてます。
そこに、クララがいます。
手足を取り外されたのか、自由に動けないようです。
そこで、お日さまの光を浴びながら、時々、過去の記憶を思い出して過ごしています。
これが本当の最後です。
さて、どうでしたか。
もう、いっぱい言いたいことがあります。
AIのこともそうですし、AI以外のこともです。
どうしても、政治の話もしないわけにはいかないです。
カズオイシグロが感じてる危機感が、あちこちにあふれ出てます。
詳しくは、次回、お話しますね。
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それから、本も出してるので、そちらも読んでください。
それでは、次回も、お楽しみに!
第150回 【クララとお日さま】ノーベル賞作家、カズオ・イシグロが描くAI 全ストーリ紹介《完全ネタバレ》
