第1回 谷村ノートに決着! 物理学 vs 哲学 〜物理学で「心」は解明できるのか


こんにちは、ロボマインドの田方です。

僕が、取り組んでいるプロジェクトは、
コンピュータに意識を発生させる
「ロボマインド・プロジェクト」です。

今後、YouTubeで、この、「ロボマインド・プロジェクト」について語って行こうと思いますが、最初に取り上げるテーマは、これです。

「物理学 vs 哲学
物理学で「意識」は解明できるのか」
です。

なぜ、このテーマを取り上げるかと言いますと、
つい最近、物理学者と哲学者が、ガチで論争して、話題になったからなんです。

きっかけは、この「現在という謎」という本です。
「現在」という時間をテーマにして、哲学者と物理学者が議論してる本なんですけども、
出版した後、どうも物理学者の方が納得できなかったようで、PDFで反論してネットで公開したんですよ。

それがこの「一物理学者が観た哲学」
谷村省吾
です。

総ページ数、なんと、110ページにもなります。

これだけ見ても、かなり、怒ってるってのがわかりますよね。

ちょっと、読んでみます。

「哲学者たちは、 ・・・現代物理学の根幹を否定するような論説を平気で披露してくれる」
とか言うんですよね。

で、この「現代物理学の根幹」って、何かと言うと、

「分子・原子・電子の物理・科学的状態が完全に同一であれば意識状態も同一であるという心身一元論」

ってことらしいんですよ。

ここででてきた「心身一元論」
っていうのは、「心」と「体」は一つだって考えです。

わかりやすくいうと、「心」や「魂」みたいなものは存在しないって考えです。

この世にあるもの、自然界に存在するものは、全て、物理学で証明できるってことです。

宇宙の動きから、原子や電子の動きまで、すべて物理法則に従って動いています。

だから、頭の中で考えてることも、脳細胞の活動が全てわかれば、解明できるってわけです。
脳細胞の活動を、原子、電子レベルまで再現できれば、心や意識も再現できるって考えです。

これが「心身一元論」です。

物理学者にそう言われれば、反論の余地もないですよね。
でも、何かしっくりいかないなぁ、と感じる人もいるんじゃないでしょうか。

哲学者の中にも、そう思っている人がいまして、
それが、今回、物理学者を怒らせたわけです。

「心身一元論」の反対は「心身二元論」です。
「心」と「体」は別々って考えです。

物理的な脳と、その頭の中で考えてることとは、別物だという考えです。

頭の中で感じてることって、どういうものでしょう?

それは、たとえば、皆さんが、今、見て、聞いて、感じている、
このリアルな世界、その物です。

今日、何を食べようかなぁとか悩んだり、
映画を見て、涙を流したり。
それが意識が感じる世界です。

もし、原子や電子で意識が作れるなら、どうやって作るか教えてほしいけど、意識ができたって話、聞いたことないよなぁ。

これに対して、物理学者は、まだ、脳の中身が完全に解明できてないだけだと反論します。
完全に解明できて、脳と全く同じものを作れば、自然と意識も生まれてくると思っているようです。

たとえば、前野工学博士は、これらの本で、意識は、幻想だ、錯覚だと明言しています。

それじゃぁ、その幻想は、どうやって作れるのか教えてほしいのですが、それには、答えてくれません。

僕たちが知りたいのは、幻想でも錯覚でもいいから、心や意識は、どうやったら生まれるのか、どうやったら作れるのかを知りたいのです。

どうも、物理や工学の学者先生たちは、心や意識に正面から取り組もうと思っていないようです。

それでは、「心身二元論」を最初に提案した哲学者から始めましょう。

それは、デカルトです。

「我思う、ゆえに、我あり」
って、聞いたことありますよね。

これを言ったのがデカルトです。
17世紀の哲学者です。

デカルトは、心と身体は別物で、身体は、心の命令によって動く機械と考えたんです。

分かりやすい考えですよね。

そして、心と身体は、どこで繋がっているかというと、「松果体」と考えたんです。

「松果体」というのは、脳の真ん中にあります。

この、ちっちゃな豆みたいなのが松果体です。

大事な物って、たいてい、真ん中にありますよね。

ほら、スターウォーズとか見てても、デススターの真ん中を破壊したら、バーンて全部、爆発したじゃないですか。

脳の真ん中にあるんだから、一番重要なものに違いない。

きっと、これが、心と身体をつないでいるんだろう

そう、考えたんでしょうね。
分かりやすいですよね。

さて、20世紀の終わりごろになると、意識科学という新しい科学が生まれてきたんです。
そこで提示されたのが「ハードプロブレム」という考えです。

20世紀の終わりごろ、脳科学は、大きく進歩しました。
そして、脳の動きが全部わかれば、意識の謎も解明されるとだろうと思われてきました。

これに異議を唱えたのがデビット・チャーマーズです。
彼は、意識の問題には簡単な問題、イージープロブレムと、
難しい問題、ハードプロブレムの2種類があると主張したんです。

イージープロブレムっていうのは、脳を観察して、脳の物理的、電気的反応から解明できる問題です。

でも、意識が感じてる世界、主観、
そういったものは、脳をいくら観察しても見えてこないだろう、
そう、チャーマーズは提案しました。

これが、意識のハード・プロブレムです。

これって、「心身二元論」、そのものですよね。

この意識の謎に、多くの学者が挑みました。
たとえば、ロジャー・ペンローズ。
ホーキング博士といっしょに、ブラックホールの特異点定理を証明をした理論物理学者です。

ペンローズは、この「皇帝の新しい心」

この本の中で、量子脳理論というものを提唱しました。

脳内の情報処理には、量子力学が深くかかわっているという説です。
つまり、意識の謎は、量子効果で証明できるって考えです。

言いたいことは、何となく、わかります。
量子って、不思議なんですよ。
存在するのか、しないのか、確率でしかわからないんですよ。

意識も、あるのかないのか、よう、わかりません。

ようわからんもんは、たぶん、ようわからなんもんで説明できる。

たぶん、そういうことだと思います。
いや、もっと、深い意味があると思いますけどね。

ただ、発表から30年近く経ちますけど、
今のところ、まだ、意識が量子で解明されたって話は聞いたことがないです。

さて、いよいよ、ロボマインドの意識仮説の話に入ります。

目指すとこは同じです。

意識と物理科学の両立です。

物理科学に矛盾しない形で、どうやったら意識や心を生み出すことができるのかってことです。

僕たちが感じてる、このリアルな世界、
喜んだり、悲しんだりする心の世界、

幻想でもいいから、これらをどうやったら作り出すことができるのか、
です。

ここで、簡単な思考実験をしてみます。
脳の代わりに、脳に似た別の物で、考えてみます。
それは、コンピュータです。

たとえば、宇宙人がいたとして、コンピュータを分解して調べるとします。
調べてみると、どうやら電気信号で情報をやり取りしてるってわかってきました。

そして、信号は、あるチップを中心にやり取りしてるとわかりました。
それが、CPUです。

つぎは、CPUを分解していきます。
そして、CPU内を行き来する電気信号を、100%解明できたとします。
さて、それで、そのコンピュータで何のプログラムを実行しているかわかるでしょうか?

たとえば、ゲームを実行してたとしましょ。
ゲームは、スーパーマリオブラザーズとしましょ。

ピピピッピピップ

宇宙人は、CPU内の電気信号のやり取りを観察しただけで、マリオが走り回ってる様子を見ることができるでしょうか?

そんなの、見えないですよね。

これって、脳と意識の関係に、似てると思いませんか?

僕たちが、意識で、今、こう感じているリアルな世界。
飛んだり跳ねたりできます。
悩んだり、涙したり、豊かな感情があります。

現実を見るだけでなく、ありもしない世界を想像したり、何でもできます。
全て幻想かもしれませんが、これが、意識がリアルに感じる世界です。

つぎに、コンピュータを考えてみましょう。
コンピュータで実行されるのがプログラムです。
スーパーマリオです。

マリオは飛んだり、跳ねたりします。
コインを取って喜んだり、キノコにぶつかって無敵になったり、
もう、何でもありです。

これって、僕たちの、頭の中と同じですよね。
まさに、これが意識が感じてる世界なんです。

意識が見る世界は、プログラムで実現できそうです。

コンピュータも、プログラムも、どちらも現実に存在します。
プログラムは、幻想や錯覚じゃ、ありません。

そして、コンピュータを電子レベルまで解明しても、プログラムは見えてきません。
つまり、コンピュータとプログラムの関係は、「心身二元論」なんです。

「心身二元論」が正解だったのです。

松果体なんか使わなくても、心と体をつなぐことができるんです。
それが、コンピュータとプログラムの関係です。

量子力学も必要ありませんでした。

もう少し、進めましょう。

コンピュータを作ったら、勝手にプログラムが生まれるわけじゃありません。

つまり、脳を原子、電子レベルまで解明して、脳と全く同じものを作っても、意識が生まれるわけじゃないんです。

重要なのは、脳の構造でなく、脳というコンピュータで動いているプログラムです。

プログラムは、勝手に生まれるのでなく、設計して、作り上げるものです。

ということは、意識を解明するには、意識と同じ動きをするプログラムを作る、

これしかないんです。

脳を切り刻んで分解するという物理学のアプローチでなく、
プログラムで意識を作り上げるというアプローチ、

これが、正しい方法なんです。

次に問うべき質問は、意識は、どんなメカニズムで動いているのか、
心の設計図は、どうなっているのか、

そういったことです。

「ロボマインド・プロジェクト」では、ほぼ、これらが明らかになっています。

次回から、心のプログラムの中身について説明していきましょう。