第5回 AIが、言葉を理解できるとは、どういうことか 〜汎用人工知能の本当の意味


AIに仕事が奪われるといわれて、かなり経ちますけど、
そんな人、聞いたことないですよねぇ。
なぜ、そうならないんでしょう?
AIが絶対に超えられない壁、それは言葉なんです。


ロボマインド・プロジェクト、第5弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。

さて、前回は、チューリングテストの話でしたよね。
AIが人間と同じ知性を持っているのか判定するのがチューリング・テストでした。
特徴は、人と会話ができるかどうかで判定するものでした。

では、なぜ、チューリングは、チューリング・テストに言葉を使ったのでしょう?
それは、言葉こそが、人間を特徴づけるものだからです。
人間以外で、言葉を話す動物はいません。

だから、言葉を使って自然とコミュニケーションが取れるAIができれば、
まさに、それは人間と同じ知性、心をもったAIといえるでしょう。

逆に言えば、言葉以外で人間と対等にコミュニケーションが取れたとしても、それは、人間と同等の知性や心を持っているとは言えません。
たとえば、囲碁や将棋などのゲームは、人と対等にコミュニケーションが取れていると言えます。

いや、対等どころか、人間のチャンピオンにAIが勝てるようになりました。
でも、そんなAIにできるのは、囲碁、将棋だけです。

このように、何かにしたAIを特化型AIといいます。
逆に、人間のように何でもできるAIを汎用人工知能と言います。

現在、存在しているAIは、全て特化型AIです。
そして、汎用人工知能ができれば、世の中が変わるといわれています。

AIに仕事を奪われるって、話、聞いたことありますよね。
でも、実際に、AIに仕事を奪われたって話、聞いたことあります?
身近に、そんな人、います?
いませんよね。

まぁ、産業用ロボットで、工場の人員を減らしたって話なら、聞いたことありますけど、その手の話は、今に始まったことじゃないですよねぇ。

同じような話は、産業革命の時代から起こっていました。

300年前からある話です。
工場の中では、大昔から、人の仕事が機械に奪われていました。

AIが奪うと言っている仕事は、それとは違います。
医者や弁護士が、AIに置き換わるといわれています。

AIに仕事が奪われるといわれて、かなり経ちますが、なぜ、そうならないんでしょう?

レストランで注文を取ったり、旅行代理店で、旅行の相談に乗ったり、その程度のこと、AIにできそうなのに、なぜ、できないのでしょう?

その原因は、言葉です。
AIは、人が話すように、普通に言葉を話すことができないのです。
これさえできれば、あっという間に世の中は変わります。

膨大なデータの中から、最適な旅行プランを計画することなんて、AIが一番得意なことです。
相手の要望さえ、正確に聞き出すことができれば、すぐに実現できます。
でも、一番の壁は、相手の要望を聞き出すところです。

人の話って、すぐに、全然違う方向にながれていきますよね。
特に女子。

「ねぇ、また、ハワイに行きましょうよ!」
「行きたーい。ねぇ、あの時の水着、どこで買ったと思う?」
とか。

そんな会話を上手く話をまとめていくなんて、今のAIには絶対無理です。
まぁ、僕でも無理ですけどね。

何が出てくるかわからない日常会話や雑談、これがAIにはできないんです。
でも、会話ができないと、仕事にならないんです。

だいたい、世の中の仕事で、会話しなくて済む仕事なんかありますか?
まず、ないですよね。

「先月の売り上げ、集計しといて」って言われたとします。
売り上げ集計なんて、AIなんか使わなくても、コンピュータが一番得意な仕事です。
エクセルのマクロで十分です。
問題は、それを言葉で伝えれないことです。
人間のやりたいことを、エクセルのマクロまで落とし込むのが大変なんです。
そこに、人の仕事が残されてるんです。
AIが絶対に超えられない、最大の壁は、会話なんです。

さて、もし、AIが本当に、自然に会話できるようになったらどうでしょう。
それこそ、ほとんどの仕事が、AIでできるようになります。
世の中が、一気に変わります。

これが、シンギュラリティです。

人間のように、何でもできる汎用人工知能っていうのは、人間と同じように会話ができる人工知能のことなんです。

これって、まさに、チューリング・テスト、そのものですよね。
コンピュータの理論を考えたチューリング。
そのチューリングは、最初から、人間とAIの境界がどこにあるかまで、見越していたんですよねぇ。

チューリング、ホントにスゴイ人ですよねぇ。

あっ、でも、これは僕の考えですよ。
世間一般の汎用人工知能とは、ちょっと違うので、そこは注意しておいてください。

汎用人工知能って、まだ、ちゃんと定義されてるわけじゃないんです。
人によって、言ってることが違うんですよ。

ある人は、自分で自分のプログラムを書き換えて、自ら進化していくようなAIを汎用人工知能って定義する人もいます。

また別の人は、今の機械学習との違いから汎用人工知能を定義しています。
今のAIは、大量のデータ、ビッグデータを使って学習しています。
でも、人間は、少ないデータからでも、こうなるだろうと予測できます。
そんな、少ないデータから予測できる能力を汎用人工知能と定義してる人もいます。

数年前、チェコのGoodAIという会社が、汎用人工知能のコンテストを開いたことがあるんです。

賞金総額が、日本円にして、なんと5億円というコンテストです。
その最初の課題は、たしか、数個の数列が提示されて、それを基に、次に出現する数字を予測するAIを作れというものでした。

少ないデータから、次を予測できるAI。
それが、このコンテストの目的だったようです。
たしか、そのときのコンテストで合格したAIはなかったと思います。

でも、僕は思うんですよ。
2~3個の数列から、次の数字を予測できるAIができたとして、なんの役にたつんでしょうねぇ。
それで、できるのは、数字パズルを解くぐらいじゃないですかねぇ?

それより、根本的に世界が変わるAIって、やっぱり、自然な会話ができるAIじゃないですかねぇ。

それを目指してるのが、ロボマインド・プロジェクトなわけです。

まぁ、僕の考えは、世間の考えとは、かなり違うので、その点だけは、注意しておいてくださいね。

さて、次回は、もう少し現在のAIについて、切り込んで行こうと思います。
世間で語られてるAIとは違う視点で、AIについて知りたいという人は、ぜひ、次回もご覧ください。
では、次回も、楽しみにしていてください。