第105回 開腹手術中に全身麻酔から目覚めた話


ロボマインド・プロジェクト、第105弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

皆さん、全身麻酔の手術を受けたことありますか?
何人かいますよねぇ。
それじゃぁ、手術中に、麻酔が切れた人、いますか?
そんな人は、滅多にいないですよねぇ。

そんな滅多にないことが、僕に起こったんですよ。
正確に言うと、完全に麻酔が切れたわけじゃないんですけどね。
正確には、手術中に意識が戻ったんです。
でも、戻ったのは意識だけやったんです。
体は1ミリも動かなかったんですよ。
それから、もひとつ、戻ったもんがありました。
これが、一番厄介だったんですよ。
体は1ミリも動かせないのに、感覚は戻ったんですよ。
つまり、痛みは感じるんですよ。
いや、これは、マジ、きつかったですよ。

今回のテーマは、意識です。
意識のしくみを順番に説明していくので、僕がどうなったかは、最後にお話しますね。

まずは、一番シンプルな話からします。
錯視の話です。

まずは、これ見てください。

女の人が回ってますよね。
右回りですか、それとも、左回りですか?

じつは、これ、人によって違うんですよ。
どっちにも見れるんですよ。
でも、最初に、右回りと思ったら、右回りにしか見えません。
左周りと思っても、そうはなりません。

それじゃぁ、これ見てください。

   1                2               3

これを見ればはっきりわかりますよね。
左(1)は、右回りに回ってます。
右(3)は、左回りに回ってますよね。

(2が)右回りに回ってると見えてた人は、右(3)の左回りの人を見てから、(2)真ん中をみると、左回りに回ってるように見えます。
同じ動画を見ても、回転方向がかわりましたよね。

つぎは、静止画です。
これを見てください。

これは、ネッカーキューブといわれる有名な錯視です。
白い平面に黒い線で描かれた図ですけど、立方体にみえますよね。
この図、二つの正方形がありますけど、どっちが手前に来るかで立方体の見え方が2パターンあるんですよ。

これ、じっと見ていてください。
どっちのパターンに見えますか?

不思議なことに、交互に見えるんですよ。
どっちか一方だけに決めようと思っても無理なんです。
しばらくしたら、もう一つの見え方になるんですよ。
錯視って、不思議ですよね。

さて、本題は、こっからです。
見えてるそのものは、何も変わってないんです。
変わったのは、見てる側です。
もっと言えば、見てる人の脳の中が変わったんです。

意識が認識するのは、頭の中に創った仮想世界です。
これを、「意識の仮想世界仮説」っていいます。
詳しくは、第21回「意識の仮想世界仮説」を見てください。

白い紙に黒い線って感じてるときは、頭の中の世界は、2次元の世界です。
それが、立体に見えたとき、頭の中の世界が、2次元から3次元に変わったわけです。

頭の中の世界を創ってるのは無意識です。
無意識が、これは3次元だと判断すれば、頭の中に3次元空間を用意します。
ほんで、3次元空間に立方体を配置するわけです。
このとき、無意識さんは思ったわけです。
あれ、この立方体、二つの置き方があるなぁって。
こっちかなぁ、いや、こっちかなぁ。
って両方試してるから、意識は、二つの見方が交互にみえるんですよ。

それでは、回転する女の人は、どうでしょう。
これも、現実世界に存在するのは、女の人のシルエットが変形してる2次元画像です。
それが、回転するように見えたのも、無意識さんが、3次元世界に配置して回転させたからです。
だから、意識さんは、女の人が回転してるように感じたわけです。

ただ、ネッカーキューブとのちがいは、回転方向は変わらないことです。
一旦、右回りと思えば、右回りのままです。
左回転にも解釈できるのに、なぜ、回転方向が変わらないんでしょう。

おそらく、動きが加わったからです。
回転という動きの情報が加わって、よりリアルに感じれるため、変更しにくくなったんだと思います。

さて、ここで心の仕組みをまとめてみます。
まず、外の現実世界があるわけです。
目からの情報を基に、無意識が頭の中で仮想世界を創り上げて、意識はそれを認識するわけです。
この時、無意識は、2次元か、3次元かといったことや、立方体の向きはどっちかとか、右回転か左回転かといったとこまで作り上げます。

ここで注意して欲しいのは、立方体の向きとか、回転方向とか、二通りの解釈ができても、それを決めるのは無意識なんです。
意識じゃ、どっちか決めれないんです。
だから、ネッカーキューブのように無意識が迷ったら、意識は、交互に見えるわけです。
無意識が、右回転と決めたら、意識が、いくら左回転と思っても、右回転にしか見えないんです。

前回、第104回「リアル・マトリックス」で、僕の話をしました。
部屋に、見たことのない木の板があると思って、よく見たら、ゴミ箱だったって話です。
これも、目から入ってきた情報は、茶色い四角で、それだけで判断すると、木の板に見えたわけです。
それが、ちょっと見る角度を変えると、筒状のゴミ箱ってわかったわけです。
一旦、ゴミ箱ってわかると、木の板と思おうとしても、もう、ゴミ箱にしか見えません。

これは、見る角度を変えて情報量が増えたため、無意識が迷わなくなったわけです。
ゴミ箱とわかると、そういえば、何日か前に東急ハンズで買ってきたんやったって、記憶とも結びつきます。
そうやって、いろんな情報が矛盾なく結びつくと、どんどん、現実味が増してきます。

あれ、ちょっと、変ですねぇ。
今、現実味が増してきたっていいましたよね。
でも、現実って何でしょう。
もう一回、考えてみますよ。

現実って、頭の外の世界ですよね。
2次元平面に描いた黒い線だったり、女の人のシルエットだったり。
それが本当の現実ですよね。

それを、立方体とか回転する女の人だって無意識が解釈したわけです。
そう解釈して、その世界を創って、それを意識に見せてるわけです。
頭の中で解釈して、いろんな情報と結びついてくると現実味が増してくるわけです。

ということは、僕らが現実と感じてるのは、頭の外に本当に存在する世界じゃなくて、頭の中に自分が作り上げた世界の方なんです。
意識が、現実と感じてるのは、本当は、無意識が作り上げた仮想世界なんです。

現実感って、意識がないと、存在しないんですよ。
僕らにとって、重要なのは、意識が感じてる世界です。
頭の外の世界がどうなってるかって、本質的な問題じゃないんですよ。

全身麻酔の手術中に、意識が戻った話の続きです。
最初、なんか、声が聞こえてきたんですよ。
このぐらいお腹切って、周りで先生と看護師さんが、なんか話してるんですよ。
目を開けようと思っても、体は1ミリも動かないんですよ。
でも、感覚だけは戻って、痛みは感じるんですよ。
キッツいしょ。

全身麻酔してると、つばも飲み込めないんですよ。
そうなると、何が起るかって言うと、喉に唾が溜まって息ができなくなるんですよ。
これ、めちゃ苦しいんですよ。

わぁ、死ぬって思ったとき、喉に何か、硬いパイプみたいなの突っ込まれたんですよ。
痰を吸い出す器械ですわ。
それで、やっと息ができるようになったんですけどね、まぁ、その手荒いこと。
向こうは、まさか、こっちが意識があると思ってないから、容赦なく、ズボズボって喉の奥にパイプを突っ込んでくるんですよ。

そうこうしてたら、「そろそろ終わるで」って、声が聞こえてきたんです。
やっと終わるわって思ったら、なんか、ガチャガチャ音がするんですよ。

みなさん、知ってます?
手術って、最後、糸で縫うんじゃないんですよ。
なんか、デカいホチキスみたいなんで留めるんですよ。
ガチャ、ガチャ、ガチャって、人のお腹をホチキスで留めよるんですわ。
そりゃ、しゃれならんくらい痛いでっせ。
それでも、一言も、声出せないんですよ。

ほんで、ようやく手術が終わって、手術室から出たとこで、先生に、頬っぺたをパンパンって叩かれるんですよ。
「田方さん、終わりましたよ」って声かけられるんです。
そしたら、不思議なことに、一瞬で体が動くようになったんです。

えーと、意識の話です。
今の話聞いて、どう思います。
生きてるってことは、意識がどう感じてるかってことです。
頭の外の世界がどうなっていようと、意識がなかったら、そんなん、関係ないんです。
たとえ、お腹を切られても、意識がなかったら、そんな現実は存在しないのと同じなんです。

自分にとって現実って、意識が感じてることです。
その意識が感じる世界を、今までの科学は、全く無視してたんですよ。
頭の外の世界しか、科学は扱ってこなかったんです。
そろそろ、頭の中の世界を、扱うべきじゃないかってことです。

さて、その後、僕の人生がどうなったかです。

僕の病気は、大腸がんでした。
手術をしたのは27歳の時でした。
退院するとき、先生から、5年生存率は30%って言われました。

そう言われて、はじめて、真剣に、自分の人生について考えたんです。
ほんで、30歳のとき、コンピュータで心を創ろうって思いつきました。
その後、サラリーマンを辞めて、今に至る話は、第79回「好きなことだけして生きて行く」で語ってますので、興味がある人は見てください。

今回は、現実世界はどうやって作られるかって話をします。
現在の現実世界は、頭の外に存在しますよね。
じゃぁ、未来の現実は、どうやって作られるかって話です。

女の人が回転する錯視を思い出してください。
一旦、右に回転してると解釈すると、それ以外の意味は読み取れなくなります。
でも、実際は、女の人のシルエットが変形してるだけの2次元の動画です。
現実世界には、右回転も左回転もないです。
だから、ちょっとしたきっかけがあれば、左回転に見えました。
頭の外の世界に意味を持たせてるのは自分です。

人は、世界の意味を解釈して、行動を決めます。
でも、その意味って、本当に正しいんでしょうか?
本当は、右回転も左回転もしてないんですよ。

僕の場合、30歳のとき、コンピュータで心を創ろうって思ったわけです。
そんなこと、出来るわけないって、
これが普通の解釈です。
やり方も、さっぱりわからなかったですしね。

ただ、あのとき、なぜか、こうも思ったんです。
「たぶん、できるんちゃうかな」
「これ、出来るとしたら、俺しかおらへんわ」って。

これも一つの解釈です。
どの世界が現実になるかは、どの解釈を選ぶかで決まります。
どの世界を選ぶかで、その後の現実世界が変わるわけです。

あの時、僕は、サラリーマンを続けるって世界を選ばなかったんです。
コンピュータで心を創るって世界を選んだわけです。
選んだら、「意識の仮想世界仮説」ってアイデアも生まれました。
応援してくれる仲間も集まりました。

全ては、どの世界を選ぶかから始まります。
選ぶと行動が決まります。
自分が行動すると、自分の外の現実世界が、少しずつ変わります。
こうやって、頭の中の世界が、今度は現実世界に反映されるんです。

この話が、どれだけの人に理解されるかわかりません。
でも、もし、迷ってる人がいるとしたら。
何か、やりたいことがあるのに、行動できない人がいるとしたら。
そんな人に知って欲しいんです。

未来の現実を作るのは、自分しかいないって。
何か、思いついたってことには、意味があるんです。
あなたしかできる人がいないから、思いついたんです。
そうじゃなきゃ、思いつくわけないでしょ。
たとえ、それが、コンピュータで心を創るって、突拍子もないアイデアでもです。

20年かかりましたけど、ようやく、少しずつ、形になってきました。
ここまで来れたのは、自分ならできるって、その世界を信じたからです。
信じて行動したから、それが現実となったんです。

何かのヒントになればと思っています。
それでは、次回も、お楽しみに!