第106回 多重人格者の意識は一つか?


ロボマインド・プロジェクト、第106弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

前回、前々回と実際に見てる世界は、じつは、頭の中の仮想世界だって話を、いろんな例を挙げて説明しました。
仮想世界を創ってるのは無意識だって話です。
それから、現実世界にあるものが、いったい何なのか、無意識が悩んでしまうこともあります。

たとえば、このネッカーキューブ

下向きの立方体と、上向きの立方体の二通りの見え方ができます。
でも、無意識には、どっちか判断できません。
だから、この図をじっと見てると、二つの見え方が交互に見えてくるんです。
他にも、同じものを見てるのに、違う見え方がするって話をいくつかしました。

誤解があるかもしれないんですけど、世界って、3次元世界だけじゃないんですよ。
例に挙げたのが、形があって、目に見える物ばかりでしたけど、そうでない世界もあります。
たとえば、政治世界を考えてみましょう。

たとえば、「政治家の○○です」って、紹介されたとします。
まず、考えるのは、この人はどの党の人だろうって思いますよね。
自民党か、それとも野党なのかとか。
それとか、右寄りの人なのか、左寄りの人なのかとか。

これって、頭の中に政治世界を思い描いてるわけです。
政治世界は、右と左があるわけです。
その世界のどのあたりにいるのかを決めたいわけです。

これって、さっきのネッカーキューブと同じですよね。
3次元世界に配置したとき、二通りの見え方ができるけど、どっちかに決めたくなるのと同じってわけです。

さて、今回は、じゃぁ、なぜ、どっちか一つに決めたいかって話です。
これ、意外と本質的な話なんですよ。

決めたいと思ってるのは意識です。
頭の中の世界を創ってるのは無意識です。

無意識も意識も、脳で実行されますよね。
脳には、様々な機能があります。
心臓を動かしたり、肺を動かしたりします。
これは無意識が実行しています。

ほんで、これらは同時に実行してますよね。
心臓動かしてるとき、肺を動かせなかったら困りますよね。
コンピュータで言えば、これはマルチタスクです。
パソコンは、Wordで文章書きながら、ブラウザで検索したりできますよね。
同時に二つのアプリを実行できるのがマルチタスクです。
同時に一つのことしかできないのがシングルタスクです。

脳はマルチタスクが基本です。
ところがですよ。
脳の機能のなかで、意識はシングルタスクなんですよ。
同時に一つのことにしか注意を向けれないんですよ。
このことを、志向性ともいいます。

たとえば、人と話ながら、本を読むなんてできないですよね。
テレビ見ながら話をすることはあるかもしれないです。
でも、その時も、話してるときは、テレビの内容は頭に入ってきてないです。
一瞬、一瞬をとらえると、意識はどれか一つのタスクしか処理できてないんですよ。
シングルタスクなんです。

だから、ネッカーキューブは、上向きと下向きの立方体が交互に見えるんです。
意識は、一度に一つしか感じられないんです。
両方、同時に感じられてもいいと思うんですけどね。

意識って、脳の機能の中でも一番高機能のはずです。
最高級の機能の意識が、シングルタスクって、なんか、おかしくないですか?
なんで、人類は、マルチタスクの意識に進化しなかったんでしょう?

そこで、マルチタスクの意識の例はないかと探したんですよ。
そこで、思い出したのは、聖徳太子です。
聖徳太子は、一度に10人の話を同時に聞いたって伝説がありましたよね。
で、調べてみると、実際は、10人の質問を順番に聞いて、順に答えたってのが真相らしいです。
聖徳太子もシングルタスクでしたね。

次に思いついたのが、多重人格です。
昔から、映画や小説の題材にありましたよね。

多重人格について調べてたら、13人の人格をもったharuさんって人の話が出てきました。
haruさんによると、13人は、それぞれ趣味も性格もちがっているそうです。
それを、脳内に感じられるそうです。
それぞれ、普段は自分の部屋にいるそうです。

カプセルホテルみたいな部屋が奥に並んでるそうです。
ほんで、中央にテーブルがあって、現在、表に出てる人格は、そのテーブルにいるそうです。

それぞれの人格は、それぞれの本棚を持っていて、記憶はそれぞれで管理してるらしいんです。
メインの人格がharuさんで、haruさんは、他の人格の記憶の本棚を見れないそうなんです。
だから、自分じゃない人格が表に出てるとき、何が起こったか、何を話したかとかを知らないそうなんです。
どの人格が表に出るかは、haruさんには決めれなくて、突然、交代するそうなんです。

友達とレストランでご飯を食べてるとするでしょ。
途中でトイレにいって、トイレで人格が変わると、席に戻れなくなるそうですよ。
そんなときは、今まで表に出てた人格が、後ろから、あの席よ、こんな会話してたよって教えてくれるそうなんです。

かなり複雑なシステムですよね。
でもこのシステムをみても、一番表にでる人格は一つなんですよ。
つまり、意識は常に一つなんですよ。

このharuさんが本を出したんです。
そのタイトルが『ぼくが13人の人生を生きるには身体がたりない。』なんです。

この本のタイトルを見て、わかったんです。
なんで、意識だけは、シングルタスクかって。

それは、体が一つだからです。
意識の一番の目的は、行動の決定です。
Haruさんが言ってましたけど、一番困るのは、洋服を決めるときだそうです。
それぞれ、趣味が違ってて、なかには女の子の人格もいて、なかなか洋服が決まらないそう
なんですよ。

これは、多重人格でなくても同じです。
お昼ご飯をラーメンにするか、カレーにするか悩むことはあります。
もし、マルチタスクにして、ラーメンとカレーの両方を食べることに決まったら、困りますしね。
体は一つなんで、一つに決めてもらわないと困るんです。

現実世界を生きているのは、実際の体です。
その体を制御するのが意識です。
頭の中の世界は仮想世界です。
仮想世界は制約がないので、自由に想像できます。

でも、最終的に行動するのは、現実世界の制約を受ける自分の体なので、意識は、常に一つのことしか考えれないわけです。

と、ここまで考えたところで、なんか、違うなって思ったんですよ。
だってね、カレーを食べることも、ラーメンを食べることも、想像できるじゃないですか。

でも、カレー食べるときを想像するのと、ラーメンを食べるのを想像するのは、同時じゃないですよね。
必ず、想像するとき、順番に想像しますよね。

つまり、何が言いたいかと言うと、意識が想像するとき、すでにシングルタスクなんですよ。
想像の時点は、体の制約をうけないじゃないですか。
同時に想像する仕組みを、どうして脳は作らなかったんでしょう。

これも、よく考えると、原因がわかりました。
説明しますよ。
まず、想像するって、どういうことかわかりますか?

脳は、てっぺんに左右に延びる中心溝っていう溝があるんですよ。
ほんで、そこに、自分の体がマッピングされているんですよ。

こんな感じです。
それで、体を動かしたり、動かすとこを想像したりすると、脳の対応する部分が活性化するんですよ。

現実世界に直接、接してるのは体ですよね。
体が、この世界への出入り口です。
ほんで、それに対応するのが脳の中心溝なわけです。

つまり、脳の中にも、体があるわけです。
ラーメンやカレーを食べることを想像するとき、脳の中の対応する口とか舌が活性化するわけです。
ほんで、美味いなぁとか、あったまるなぁとか、想像するわけです。
美味いなぁとか、あったまるなぁとか感じるのは、脳内にある心です。

体は一つです。
それに対応する脳内の体も一つです。
当然、その体で感じる脳内の心も一つなわけです。
だから、ラーメンとカレーを同時に食べることを想像できないんです。

あっ、いや、カレーラーメンって手はありますよ。
でも、そうなったら、もう、メニューが変わってきてるじゃないですか。
ちょっと、別の話になるので、今は、カレーラーメンは無視してください。

カレーラーメンはないとましょ。
それで、ラーメンとカレーを食べるとこを想像するとしたら、ラーメンとカレーを交互に想像するしかないわけです。

理由がわかりましたか?
その理由は、美味いなぁとか感じる心が、脳の中には一つしかないからです。
なぜ、脳の中に心が一つしかないかと言うと、脳の中に体が一つしかないからです。
なぜ、脳の中に体が一つしかないかと言うと、実際の体が一つだからです。

ようやく、つながりましたね。
感じる心は一つだけなんですよ。

構造的に、心が一つだから、意識は、同時に一つのことしか感じれないわけです。
これは脳の構造の話です。
データの処理の話です。

でも、もう一つ疑問がありました。
それは、じゃぁ、なぜ、意識は一つに決めたがるのかです。
処理した結果が二つだと、なぜ、気持ちが悪いんでしょう。
なぜ、どっちか一つにきめたいんでしょう。

その理由は、行動です。
意識の目的は、行動を決めることでしたよね。

目の前の政治家が、右寄りの人か、左寄りの人か、それがわからないと話題に困るからです。
気軽に、「早く、憲法改正したいですね」なんかか言うと、怒り出す人かもしれませんしね。

だから、意識はどっちかに決めたいんです。
正しい現実世界を認識できないと、行動できないからです。

意識の仕組み、大分、わかってきましたよね。
次回も、意識の仕組みを、もう少し探っていきますよ。
それでは、次回もお楽しみに!