第108回 なぜ、人は、効かないとわかっているのに猫除けのペットボトルを置き続けるのか?


ロボマインド・プロジェクト、第108弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

いっつも不思議に思ってることがあるんですよ。
あの、道端に水の入ったペットボトル。
よく、見かけますよね。
理由は知ってますよ。
ネコ除けですよね。

でも、見たことあります?
猫が、あのペットボトルを怖がったりしてるとことか。
ウニャー、ニャニャニャニャニャ!って、
そんなの、見たことないっしょ。

僕が言いたいのは、ペットボトルのネコ除けが、科学的に根拠がないってことじゃないですよ。
ペットボトルが効果ないって話なんか、検索すれば、なんぼでも出てきます。
僕が知りたいのは、そういうことじゃなくて、なんで、人は、ペットボトルがネコ除けになるって信じるかってとこです。
だって、日本全国、どこに行ってもあるでしょ。
科学的根拠もないし、効果も全くないのに、これだけの人を動かす力があるって、すごないですか?
こっちの方が、よっぽど不思議ですよねぇ。

僕らが作ろうとしてるのは、何でした?
人間と同じ心でしたよね。
人間と同じ行動をする心を創ろうとしてるんですよ。
理論的に正しい行動を取るAIじゃなくて、人間っぽい行動です。

今回は、人は、なぜ、水入りのペットボトルを町に置き続けるのか?
この謎を解明していこうと思います。

まずは、簡単な例から考えていこうと思います。
当たり前の話です。
たとえば、空のコップがあるとします。
そのコップに少し水を入れます。
すると、少し重くなりますよね。
さらに水を入れるとどうなると思いますか?
もっと重くなりますよね。
当たり前の話です。

水を入れれば入れるほど、重くなるって予測したわけです。
おそらく、経験から、そうなると判断してるんやと思います。
一種の法則を作り出したわけです。
これを、一般化して言えば、どうなるでしょう。

「Aが大きくなればなるほど、Aの属性も大きくなる」

こんな風に言えそうです。
コップの水が増えれば増えるほど、コップの属性、つまり、コップの重さも増えるってことです。

たとえば、勉強すればするほど、頭が良くなるとか、
走る練習すればするほど、足が速くなるとか。
いくらでも、思いつきますよね。

だから、「勉強すればするほど、足が速くなった」って言われたら、
「えっ、なんでそうなるの?」
って思うわけです。

この法則を、「属性比例の法則」と名前を付けることにします。
この属性比例の法則、厳密な科学的根拠に基づくとかじゃないですよね。
経験上、そうなっているやろなぁってことを、人が勝手に思ってるだけです。
これを、「心の経験則」と呼ぶことにします。
僕は、この、心の経験則は、心理パターンの一種だと考えています。
心理パターンというのは、感情とか、倫理観とか、人の行動の原動力となるものを指していて、僕が、そう呼んでいるものです。

もう少し、考えてみますよ。
こんな鉄の玉があります。
手を離すと、下に落ちます。
それじゃぁ、この鉄の玉が、このぐらい大きく重くなったら、落ちる速さはどうなるでしょう。
正解は、学校の理科で習いましたよね。
重さに関係なく、同じ速さで落ちます。
でも、何となく、重い玉の方が、速く落ちそうな気がしますよね。
これです。
これが、心の経験則です。

人間の思考は、科学とか論理とかじゃなくて、こういう心の経験則で決められるんですよ。
科学的に正しいかどうかは、そんなに重要じゃないんです。
よく考えたら、そんなことないのに、何となく納得してしまいます。
そんなの、他にもいっぱいありますよね。

たとえば、
「あいつは、親が医者やから、医者になれたんや」
こんなこと、言う人、いますよね。

この場合の心の経験則は、どんなんでしょう。
たぶん、親がある属性を持っていれば、子供も、その属性をもってるとかってなると思います。
もっと一般化すれば、
Aが属性Bを持っていれば、Aに近いA’も、同じ属性Bを持っている
とでもなるでしょうか。
これを関係属性の法則と名付けることにします。

でも、よく考えると、親が医者でなくても医者になってる人なんかいっぱいいますし、親が医者でも、医者になってない人もいっぱいいます。
むしろ、そんな人の方が多いです。
でも、親が医者だから、子供も医者になれたって話、何となく納得してしまいます。
これが、心の経験則です。
「あいつは、親が医者やから、郵便局で働いてる」って言われたら、「なんで?」ってなりますやん。
そんな法則、無いわけです。

それから、この心の経験則、もう一つ、重要な点があります。
それは、なぜ、その法則を使うかってことです。

「あいつは、医者の息子だから、医者になれたんだよ」ってセリフ。
どう見ても、褒め言葉じゃないですよね。
このセリフがでてくるシチュエーションを考えてみましょ。
たとえば、自分も医者を目指してたけど、医学部に落ちたとか。
なんか、卑屈な感じになってるわけです。
そんな、自分の気持ちを正当化したり、なだめようと考えたわけです。
あいつは、俺より実力があるわけじゃない。
俺の親が医者やったら、俺でも、医者になれたわとか。
そんな風に、自分を納得させるための、理屈とか言い訳として使ってるわけです。

あず、自分の気持ちとして、こうあって欲しいって思いがあるわけです。
自分も他人も納得できるものが欲しいわけです。
客観的で、科学っぽい法則です。
それが、心の経験則です。

それでは、ペットボトルが、ネコ除けと思う心の経験則を考えてみましょう。
まず、こうあって欲しいという思いとして、ネコに来てほしくないわけです。
なにか、ネコが来なくなる方法を探してるわけです。
そんなとき、水の入ったペットボトルが効くって聞きました。
太陽の光が反射して、きらきらする仕組みです。
なんか、いかにも、科学って感じがしますよねぇ。

それから、ペットボトルと水。
手軽に手に入る物に、ちょっとしたアイデアで問題が解決するわけです。
こういうのっ、何て言います?
何か、ハンガーと輪ゴムを組み合わせて、洗濯のあの問題が一挙に解決したとか。
そう、発明ですよね。
これを、発明心って名付けました。
これも、心の経験則の一種です。

猫が来なくなるようにしたいって、あなたの悩み。
それを、ペットボトルを使ったちょっとした発明で解決しました!
「あぁ、そんなアイデアがあったのか!」って思いますよね。
これなんですよ。
心の経験則がピタッと嵌って、納得したわけです。

何となくわかってきましたか?
これが、人間の心なんですよ。

こんなの、いっぱい見かけます。
この前、久しぶりに親の家に行った時、健康雑誌が置いてあったんですよ。
みんな、健康、大好きですからねぇ。
その雑誌をみていたら、まぁ、発明心のオンパレードでした。
たとえば、10円玉を腰に貼るだけで腰痛がスッキリ治ったとかって記事。

ホンマかどうかは分からないですけど、まぁ、もしかしたら効くかもしれないって気持ちはわかりますよね。
10円玉って、銅で出来てるじゃないですか。
銅って、殺菌作用があるとか言うでしょ。
科学っぽいですよねぇ。
たとえば、腰の神経細胞を攻撃する痛み菌みたいなのがいるんですよ。
虫歯菌みたいなやつで、槍みたいなので、腰の神経をチクチクつつくんです。
それが、10円玉を貼ることで、「うわ~、やられたぁ~」って、消えていくんですよ。
CMになりそうでしょ。

ほんで、一番重要なのは、みんな、楽して治したいんですよ。
マッサージとか行くと、お金も時間もかかるじゃないですか。
楽して治したい。
10円玉を貼るって、ちょっとしたアイデアで、簡単に解決するんです。
発明心がぴったり当てはまったんです。
だから、へぇ、そうなのかって思うんです。
心が動くんです。
心を動かす仕組み、それが、心の経験則です。

なんか、今、思い出しました。
サラリーマン時代、ぎっくり腰になったんですよ。
パートのおばちゃんが教えてくれたんですけど、ベルトの巻く向きを変えると腰痛が治るらしいんですよ。
なんでも、ベルトは左回りに巻くけど、これが良くないらしいんです。
右回りに巻くと、波動の向きが変わって、これがいいらしいんです。
波動とかって、なんか、効きそうですよねぇ。
巻く方向で波動の向きが変わるって、なんか、コイルと電磁波の関係みたいで、いかにも科学っぽいじゃないですか。
へぇって思いましたわ。
実際、それで、ぎっくり腰も治ってきましたけど、まぁ、今考えたら、ベルトの巻き方で治ったかどうかはわからないですけどね。

重要なのは、科学的に正しいかどうかじゃないんです。
重要なのは、みんな、そんな、心の経験則をもってるってことです。
誰もが持ってるから、こんな会話が成り立つんです。
だから、人間っぽい心を作るには、こんなとこを作る必要があるんです。

喜怒哀楽の感情とか、善悪とかって倫理観だけじゃ足りないんです。
発明心みたいな、下らない心の経験則も、作りこまないといけないんです。
たぶん、こんな下らないことを真剣に作ろうとしてるのは、世界中でロボマインドだけです。
よかったら、チャンネル登録、高評価してくれると嬉しいです。
それでは、次回も、お楽しみに!