第111回 発見、時間細胞 最新研究発見! 〜時間を作り出す脳細胞


ロボマインド・プロジェクト、第111弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

今見てる世界は、自分がつくり出してるってのが、ロボマインド・プロジェクトの基本原理です。
詳しくは、第21回「意識の仮想世界仮説」を見てください。
さて、自分がつくってるのは、今、目で見える、この3次元世界だけじゃないんですよ。
時間も自分がつくり出してるんですよ。

これが分かりにくいみたいなんです。
時間をつくるって、どういうこと?
って、よく言われるんですよ。

3次元世界なら、なんとなくわかるみたいです。
でも、頭の中に時間をつくるって、それが、実感として分からないみたいなんです。

そこで、なんとか、分かりやすく説明できひんかなぁってずっと考えてましてね、
ようやく見つかりました。
これなら、時間って、自分がつくり出してるって、納得できると思います。

これはねぇ、僕が、昔、サラリーマン時代に経験した話なんですけど、同じようなことは、みんな経験あると思います。
朝、ウトウトしてたときなんですよ。
夢を見てたんです。

その時見てた夢は、こんなんでした。
会社から帰ってきてね、ドアの鍵を開けようとしてたんですよ。
そしたら、家の中で電話が鳴り始めたんですよ。
当時は、まだ、携帯電話もないころです。
あっ、はよ、家に入って、電話に出なあかんって思ったんです。
でも、焦ったせいか、なかなか、鍵が鍵穴に入らないんですよ。
ガチャガチャしてる間も、ずっと、電話が鳴ってるんです。
早よせなあかんって、焦れば焦るほど、上手くいかないんですよ。
あれ、あれ、あれって?!

とっ、その時、目が覚めたんですよ。
電話やと思ってたのは、電話じゃなくて、目覚まし時計やったんですよ。
なんや、って思って、目覚まし時計を止めて起きました。
何の変哲もない、よくある話です。

おそらく、目覚まし時計が鳴って、それが夢の中では、電話になってたんですよね。
皆さん、知ってます?
頭の中にはね、夢を作る夢職人っておっさんが住んでるんですよ。
こんな小っちゃいおじさんですけどね。

夢職人さんが夢作るとき、材料にするんは、昼間起こった出来事とか、さっきまで見てたテレビとかなんですよ。
それから、外から聞こえる音とかです。
今の場合やったら、目覚まし時計ですわ。

おっこれ使える。
電話にしたろって思ったわけですわ。
そうやって、電話が鳴ってる夢を作って、見させたんですよ。

話は、こっからです。
ややこしいんで、ちょっと書いときます。(ホワイトボード)

こっちが現実世界です。
こっちが夢の世界です。

現実世界の目覚まし時計が鳴って、それをきっかけに夢が始まったわけです。
ここ、よく考えるとおかしいんです。

夢職人さんは、順番に夢を作るでしょ。
最初、鍵を開けようとするシーンです。
その時、ちょうど目覚まし時計が鳴るわけです。
そのとき、そうやって、それを電話の音に変換したわけです。

でも、目覚まし時計がちょうど鳴るタイミングを予想して、夢を作り始めるなんかできないですよね。
目覚まし時計が鳴って、それをきっかけに、家の中で電話が鳴ってる夢を作ったって考える方が自然ですよね。
それじゃぁ、最初の電話が鳴ってないシーンはどうしたかというと、目覚まし時計が鳴る前の時間に、勝手に記憶を挿入したわけです。
時間を遡ったわけです。
つまり、頭の中の時間って、勝手に作り出してるってことなんです。
どうです?
分かってきましたか?

この話、もう少し続きます。
最近、面白い研究発表があったんですよ。

テキサス大学の脳神経外科医、ブラッドリー・レガ博士によると、人間の脳に時間細胞と言うのが見つかったそうなんです。
時間細胞というのは、脳の中の海馬にあって、出来事が起こった順番を管理する細胞だそうです。

第86回「人類、最大の発明『時間』」でエピソード記憶のことを説明しましたけど、簡単に説明しておきます。
エピソード記憶っていうのは、長期記憶の一つで、遠足の思い出といったエピソードに関する記憶です。
このエピソードが記憶されるのが脳の中の海馬です。

第86回では、てんかんによって、この海馬が破壊されたHM氏の話をしました。
HM氏は、数十分程度の短期記憶しか持てなくて、毎朝会う看護師さんに、「初めまして」とあいさつしていたそうです。

さて、発見された時間細胞。
どんな実験をして確かめたかというと、脳内のいろんな場所に電極を埋め込んだそうです。
それから、モニターに、10数個の単語を順番に表示して、それを覚えてもらったそうなんです。

そのあと、ちょっと休憩をはさんで、さっきの単語を、もう一回、モニターに表示して見てもらいます。
ただし、今度は順番をランダムに表示します。
すると、覚えた順に単語が表示されたときだけ反応する脳細胞があったそうなんです。
つまり、Aっていう単語の次に、Bって単語を覚えたとします。
AのあとにCが表示されても反応しないけど、AのあとにBが来た時だけ反応するわけです。
どうやら、この脳細胞が、起こった出来事の順番を管理してるみたいなんです。
これが時間細胞です。
この時間細胞が見つかった場所が、エピソードを記憶する海馬でした。

記憶の仕組みが何となくわかってきましたよね。
それでは、遊園地に行った思い出を思い出す場合で考えてみます。
最初にジェットコースターに乗って、その後、レストランでお昼ご飯食べて、その後、お化け屋敷に行ったとするでしょ。
ちょっと書いてみます。

ジェットコースターに乗った出来事、レストランでお昼を食べた出来事、お化け屋敷での出来事、それぞれを別々に記憶する場所があるわけです。
ほんで、時間細胞は、遊園地のエピソードの最初として、ジェットコースターに乗った出来事のスタート位置を持っているわけです。
意識は、思い出すとき、まず、時間細胞のスタート位置を見るんですよ。

ほんで、ジェットコースターの思い出を再生すると、また時間細胞に戻ってくるわけです。
時間細胞は、次の出来事を開始位置を持ってるので、次は、レストランのお昼を再生するわけです。
こうやって、遊園地の思い出を順番に思い出すことができるんです。

この記憶のシステム、プログラムの勉強してる人が見れば、コンピュータとそっくりやなぁって思いますよね。
配列とか、リストとか、プログラムでデータを管理する仕組みとそっくりなんですよ。
こんなのを見れば、ほんと、心ってプログラムで作れそうやなぁって、ますま思えてきますよね。

ほんで、この実験、また、続きがあるんです。
海馬が損傷してる人を、大学の構内を案内したそうです。
自転車置き場があって、噴水があってって、順番に案内したそうです。
帰ってきて、どこを見ましたかって聞くと、どこに行ったかは覚えてるそうですけど、どの順番に回ったかが分からなかったそうなんですよ。
おそらく、その人は、海馬の時間細胞が損傷してたんだと思います。

脳の中には、現実世界が仮想世界として創られます。
エピソード記憶は、脳で作られた現実世界を記憶する仕組みです。
そして、出来事が起こった順番を管理するのが時間細胞です。
つまり、時間細胞というのは、現実世界に流れる時間を、頭の中で再現するための仮想的な時間と言えます。

意識は、現実世界を直接、感じるんじゃなくて、頭の中の仮想世界を感じます。
それと同じで、意識が感じることができる時間は、頭の中に流れる仮想的な時間なんです。
頭の中は、空間も時間も、バーチャルなんです。
空間も時間も、無意識が創り出したバーチャルな世界なんです。
意識が感じることができるのは、無意識が創り出したバーチャルな世界だけなんです。

さて、最初の夢の話に戻ります。
目覚まし時計が鳴った時、夢職人さんは、ドアのカギを開ける夢を作り出したわけです。
その後、この流れやったら、オープニングのシーンをいるやろって思って、電話がなってないオープニングシーンも作ったわけです。
ほんで、時間細胞に手を加えて、夢のスタート位置を、オープニングシーンにしたわけです。
その後に、家の中で電話が鳴るシーンに繋げたわけです。
意識は、時間細胞を介して、現在や過去を感じることができます。
だから、鍵を開けようとして、家の中で電話が鳴ってるシーンから夢は始まります。
でも、それと同時に、その直前に、電話が鳴ってなくて、鍵を開けようとしてるシーンがあったことを過去の記憶としても感じてるわけです。
過去の記憶を挿入するとは、こういう事です。
意識が時間を感じるって、どういうことかわかってきましたか?

ある出来事の前に起こった出来事が過去の出来事なわけです。
ある出来事の次に起こるのが未来の出来事なんです。
その順番が時間なんです。
その順番を管理してるのが時間細胞なんです。

これが時間です。
意識が感じてる時間は、頭の中にしか存在しないんです。
時間細胞が損傷すれば、今まで感じてた時間の流れを感じれなくなるわけです。
エピソード記憶を持てなくなったHM氏は、過去から現在、未来へと流れる時間のなかには生きていません。
短期記憶しか持たないHM氏は、数十分の現在しか、感じれません。
永遠の現在に生きているんです。

これで分かりましたよね。
時間っていうのは、頭の外の現実世界にあるんじゃないんです。
時間が流れてるのは、頭の中なんです。
時間細胞があって初めて感じることができる幻想なんです。

今日は、ここまでです。
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それでは、次回も、お楽しみに!