第112回 プログラムで心をつくったら、すぐに泣きだして困りした。


ロボマインド・プロジェクト、第112弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

僕がつくろうとしてるのは、ドラえもんみたいに友達になってくれるロボットです。
相手の気持ちを理解できないとダメなんですよ。

運動会のかけっこで負けて帰ってきたとしましょ。
「あの特訓、すべて無駄でしたよねぇ。ご主人様」
とか、いっちゃだめなんですよ。

でも、何でダメなんでダメなんですか?
言ってることは正しいんですよ。
じゃぁ、何て言えばいいんでしょう?
人間の心って、ほんと、複雑なんですよ。

これを、ちゃんとプログラムに落とし込めないと、友達になれるロボットは作れないんです。
そこで、今回は、複雑な人間の心について考えていこうと思います。

もっと簡単な例から考えてみます。
イソップ童話のすっぱいブドウって知ってます?
こんな話です。

お腹を空かせたキツネがいました。
そこに、たわわに実ったブドウを見つけました。
食べようとして、一生懸命ジャンプするんですけど、ブドウに届きません。
何度ジャンプしても届きませんでした。
とうとうキツネはあきらめるて立ち去りました。
そのとき、こう言ったそうです。
「どうせ、こんなブドウ、酸っぱくて食べれないにちがいない。誰が食べてやるか」

これがあらすじです。
なんて事ない、物語ですよね。
こんな簡単な物語、何を分析することあるのって思いますよね。
まぁ、ここから人生の教訓とかは見出せそうですけど。
でも、そっちに行っちゃだめなんですよ。

僕らがやろうとしてるのは、人間と同じ心をつくることです。
人が、当たり前に理解してることを、プログラムで同じように理解させることです。
今のAIがやってることと、人の心がやってることの差があまりにも大きすぎるので、そのギャップを埋めようとしてるんです。

じゃぁ、今のAIが、この物語を解析するとしたら、どうすると思います?
それは、キツネって単語が何回出現したかとか、キツネとブドウの単語の間に何文字あるかとか、そんなことを数えるんですよ。
そんな、アホなって思いますよね。
いや、でも、マジでこんなことやってるんですよ。
そんなことして、物語の意味なんか分かるわけないでしょ。

それでは、さっそく、キツネの気持ちを理解していきましょう。
目的は、プログラムで心をつくることです。
だから、丁寧に分析していきますよ。

まず、行動の原動力は感情などの心理パターンです。
キツネは、最初、お腹を空かせていましたよね。
空腹が行動の原動力となるわけです。
目標とする行動は、食べ物を食べることです。

そこで、ブドウを見つけました。
ブドウを取ろうとして、ジャンプするわけです。
まずは、ここまでを、丁寧に分析していきますよ。

最初の目標は食べ物を食べることです。
その目標を達成するためにする行動が、食べ物を見つけることです。

そして、ブドウを見つけたわけです。
食べ物を見つけるという目標が達成されたわけです。

次の目標は、ブドウを取ることです。
そのための行動として、ジャンプするわけです。

分かりましたか?
目標達成のために、目標が変化していくんですよ。
ほんで、目標が変化すると、それに対する行動も変化するんですよ。
最初の目標から、次々に目標が変化して、それに応じて行動が変化する仕組み。
こういった行動変化のアルゴリズムを作る必要があるってことです。
心をつくるって、こういうことなんです。
僕らが、普段、当たり前にしてることを、一つ一つ、丁寧に分解していくわけです。

続けますよ。
キツネは、ジャンプしてブドウを取ろうとするけど、ブドウに届きません。
目標が達成できないわけです。

目標が達成できない状態は、不快、不満です。
マイナス感情です。
マイナス感情は、プログラムでは、マイナスの値として数値で管理します。
マイナス感情が発生すると、それを解消しようとします。
ブドウを取れないという不満を解消するには、ブドウを手に入れる必要があります。
だから、何度もジャンプして、ブドウを取ろうとするわけです。

それでもブドウが取れないと、ますます、不満が溜まります。
この部分のプログラムも作る必要がありますよね。
つまり、なかなか目標が達成できないと、不満が募るってとこです。

なかなか目標が達成できないをプログラムに落とし込むとすれば、経過した時間とか、労力とか、費用とか。
そういったものをコストとして数値にして、数値が増えていくプログラムを作る必要がありますね。
意識は、この数値が増えていくのを、ストレスが増えていくと感じるわけです。
だんだん、心っぽくなってきましたよね。

ほんで、人間の心には限界があるわけです。
その限界を超えると、どう行動していいか分からなくなって、パニックになるんです。
人間の場合、泣きだすんです。
うわぁ~ん、うわぁ~んって。

子どもって、すぐに泣きますよね。
泣くって行動は、ストレスの限界を超えたわけです。
悲しすぎたり、悔しすぎたり。
たぶん、この限界の大きさによって、我慢強いとか、すぐに泣くとかって性格が決まるわけです。

大人になると、あまり泣かなくなります。
それは、人間社会では、大人は泣くべきでないとされているからです。
じゃぁ、泣かないようにするには、どうすればいいでしょうか?
ここで、整理します。

目標があるわけです。
目標と、目標が達成できてない現状との差があるわけです。
さらに、目標達成のためにかけたコストを掛け合わせた値がストレスになるでしょう。
式にして書いてみます。

目標と現状のギャップ × コスト = ストレス

となりますよね。
じゃぁ、ストレスを下げるにはどうすればいいでしょう?

目標と現状のギャップか、コストを下げる必要がありますよね。
コストは、何度もジャンプしたことです。
過去に行ったことなので、これを下げることは難しいです。

それでは、目標とのギャップを下げてみましょう。
目標って、何でした?
ブドウを取ることでしたよね。
じゃぁ、何のためにブドウを取るんでした?
お腹がすいてるから、食べ物をさがしてたんですよね。
これが、本来の目的でしたよね。

ということは、今、手に入れようとしてる食べ物自体が、本来の目的でなかったとしたら、どうでしょう?
もし、そうなら、目標とのギャップが0になりますよね。
そうなったら、ストレスが0になります。

じゃあ、どうなれば、手に入れようとしてる物が、食べ物でなくなるでしょう。
そう、食べれない物だったらいいんです。
ブドウが、酸っぱくて、食べれないなら、無理して、手に入れる必要がなくなるんです。

一気に解決しましたよね。
「あんなブドウ、どうせ、酸っぱくて、食べれないよ」
これなんですよ。

これ、一言で言えば、負け惜しみです。
でも、これって、すごいんですよ。
何がすごいかって言うと、現実は、何も変わってないんですよ。
欲しかった、ブドウは手に入ってないんです。
お腹もすいたままですよ。

でも、あれほど大きかったストレスが、一気に0になったんですよ。
スゴイでしょ。
すごいトリックです。

じゃぁ、このトリックで、何が得られたでしょう。
それは、泣かなくて済んだんです。
悔しい思いをしても、人前で涙を流さなくても済む方法なんです。

一生懸命練習して、あと一歩で甲子園に行けるって最後の試合で負けたとしましょ。
「甲子園に行けたからって、いい会社に就職できるわけじゃないしよぉ」って。
そう思って、悔し涙を耐えることができるんです。

現実を変えることはできません。
でも、現実を、そのまま受け入れたら、心が耐え切れません。
泣きそうになります。
そんなときに使えるのが、この、負け惜しみです。
こんな、姑息なテクニックを覚えて、人は、大人になっていくんですよね。

なんか、今日は、ちょっと切なくなってきましたね。
ロボットの心をつくるって、切ない仕事ですよね。

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それでは、次回も、お楽しみに!