ロボマインド・プロジェクト、第118弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
冬になってきましたねぇ。
みなさん、スキーはしますか?
最近の人は、スノボーですかねぇ。
僕は、「私をスキーに連れてって」世代なんで、学生時代、よく、スキーに行ってました。
スキーで最初に習うのは、ボーゲンです。
スキーの板を、こう、ハの字にして滑るやつです。
曲がる時は、曲がる外側の板に体重をかけるんですよ。
左に曲がるとしたら、右足に体重をかけるんですよ。
そう言われても、初心者は、なかなかうまく滑れないんですよ。
体重をかけるって言われても、どうすればいいのかわからないし。
先生は、膝を曲げるんやとか、腰を落とすんやとか言うんですけどね。
言われた通りにしても、なぜかまっすぐ進むんですよ。
でも、何度も練習してるうちに、だんだん、滑れれるようになってきます。
気が付いたら、自由に曲がれるようになってます。
その時には、意識しなくても膝落として、体重移動がスムーズにできるようになってるんです。
今回は、この、自然とできるようになるメカニズムを、意識の仮想世界仮説を使って説明しようと思います。
意識の仮想世界仮説っていうのは、頭の中に仮想世界をつくって、意識はそれを認識するって意識モデルです。
頭の中に3次元空間をつくって、そこに、現実世界に存在する机とか椅子とかの3Dオブジェクトを配置して、意識はそれを認識します。
仮想世界に配置されるのは、自分の外にある物だけじゃなくて、自分自身も含まれます。
自分の体も、3Dオブジェクトで生成して、仮想世界に配置されるわけです。
仮想世界の中で、自分の手足の3Dオブジェクトを動かせば、現実世界の手足も動くわけです。
さて、こっからです。
意識は、手足に命令を出して動かすわけです。
スキーで、左に曲がるには、右ひざを曲げてって言われれば、右ひざを曲げるわけです。
でも、そうやって、膝を曲げるとか意識してるうちは、上手く行かないもんです。
でも、ある時、分かる瞬間があるんです。
スキー板が、雪を削るような感覚を足の裏に感じたりするんです。
スーッとすべるんじゃなくて、ズズズズズって、スキー板が雪に抵抗する感覚です。
あぁ、体重をかけるって、こういう事かってわかった瞬間です。
それが分かると、足の裏でその感覚を感じるように体重を移動するんです。
それが腰を落とすってことです。
あ~、なるほど、こういう事か~ってなります。
さて、ここで、意識の仮想世界仮説を、別の見方をしてみます。
それは、二重構造としての世界です。
頭の外の現実世界に机があるとします。
それと同じものが頭の中の仮想世界に創られますよね。
外側の現実世界と、内側の仮想世界。
二重になってるわけです。
そして、内側の世界に意識があります。
意識が、内側の世界の右足に向かって曲がれって指示するわけです。
内側の世界の右足を曲げると、外側の現実世界の右足も曲がるわけです。
でも、スキーの場合、膝を曲げるって意識しても、上手く滑れなかったですよね。
上手く行ったときは、どんな時でした?
足裏でズズズって雪を削る感覚がわかったときでしたよね。
これって、どういうことでしょう。
意識して膝を曲げてるんじゃなくて、現実世界からの感覚に応答して、右足に体重をかけたわけです。
結果として、膝が曲がってたわけです。
意識の二重構造で考えると、外側の世界からの刺激に応答して、外側の世界の足が反応してるわけです。
上手く行く場合って、外側で完結してるんですよ。
逆に、上手く行かない場合って、内側世界の意識から出発して、外側世界の足を動かしてたんですよ。
ということは、上手く行く場合って、意識を使ってないんですよ。
外側だけなんですよ。
えっ、じゃぁ、意識って、ない方がええの?
意識の意味を、もう少し考えてみましょう。
まず、内側の世界です。
意識が内側世界の足に対して、「曲がれ」って指令を出すわけです。
そしたら外の世界の実際に足が曲がるんです。
ここで、大事なものが出てきました。
何かわかりますか。
それは、「曲がれ」っていう指令です。
じゃぁ、外側だけで完結する場合はどうでした?
足裏の感覚に反応して体重を移動するとかでしたよね。
ここにあるのは、感覚に反応する運動です。
内側の世界と外側の世界の違いはなんでしょう?
それは、指令があるかないかです。
意識は、いろんな指令を出せます。
右足を曲げろだけじゃなくて、右腕を上げろでもいいわけです。
つまり、自由に変更できるんです。
意識は、足でも手でも、自由に指令を出して動かせるんです。
このこと、何て言いました?
そう、自由意志です。
外の世界は、感覚に反応して自動で動いてるだけです。
刺激に対して、同じ動作しかできません。
つまり、自由意志がないんです。
もう少し考えますよ。
意識は、自由に指令を出せます。
「右ひざ曲がれ」とか、「右腕上がれ」とか。
指令は、自分だけでなく、他人に対しても出すことができます。
このとき使うものはなんでしょう?
そう、言葉です。
言語です。
意識、自由意志、言語。
これらが繋がりましたよね。
これが、内側の世界です。
それでは、外側の世界はどうでしょう?
外界への反応は一つに限られます。
一つといっても、単純な動作ってわけじゃないですよ。
右ひざを曲げながら体重を移動させたところで、右ひざを延ばして勢いよく蹴るとか、複雑な動作とかでもいいんです。
でも、ある刺激に対しては、特定の反応をするだけです。
自由に変更することはできません。
自由意志が入り込む余地がないんです。
これじゃぁ、言葉も生まれません。
外側の世界、意識のない世界は自由意志もなく、言葉も生まれないんです。
分かってきましたか?
内側の世界と外側の世界の違い。
外側の世界は、意識が介在しません。
つまり、頭で考えない世界です。
刺激に反応するだけなので、素早く動けます。
スポーツの世界がこれです。
頭で考えてたらぎこちないですけど、考えずに、自然に体が動けるようになったとき、上手くできるわけです。
ブルース・リーの有名な言葉がありますたよね。
Don’t think Feel.
考えるな、感じろ
これが外の世界です。
この、意識が介在しない世界って、運動だけじゃないんですよ。
第96回「なぜ、誰も不思議に思わない? 世界はなぜ存在するのか?」で、カレンダー・サヴァンの話をしました。
サヴァンというのは、自閉症で特殊な才能を持ってる人のことです。
その中で、カレンダーの日付を言うだけで、曜日を当てれる人をカレンダー・サヴァンっていいます。
何十年先や何十年過去の日付でも当てれるそうです。
このカレンダー・サヴァン、自閉症でない人が訓練してできるようになったって話をしました。
当然、めちゃくちゃ難しい計算を頭の中でするわけです。
まぁ、並大抵の努力でできるようになることじゃないですけど。
それを、その人は、スポーツの練習するみたいに訓練したらできるようになったそうです。
じゃぁ、どうやって計算してるかって意識すると、できなくなるそうなんです。
スポーツでも、意識してやろうとすると、ぎこちない動きになるのと同じです。
どうも、外側の世界は、意識が介在しない一つのまとまりで管理されるようです。
歩くとかでも一緒です。
右足を前に上げるときは、左手を出すとか、意識して歩かないですよね。
「歩く」ってのも分解すれば、複雑な動作になりますけど、意識からすれば、一連の動作のまとまりが歩くです。
つまり、意識は、処理のまとまり単位で指令を出すわけです。
歩くとか、スキーをするとか、カレンダーの曜日を計算とか。
この処理のまとまり、コンピュータプログラムだと、関数っていいます。
脳の機能は、外側世界と内側世界の二重構造になってるんです。
意識があるのは、内側世界です。
意識は、外部からの刺激や感覚も感じます。
意識が痛いと感じるということは、痛みは内側の世界ということです。
感覚器で感知すると、それを、内側の世界で扱えるように変換されるわけです。
外の世界から内側の世界の変換のことを符号化といいます。
符号化に関しては、第114回「意識の仮想世界仮説 とことん解説 意識のハードプロブレム編」で詳しく説明していますので、そちらも参考に見てください。
符号化されて内側世界にできたものは、クオリアとも言います。
クオリアに関しては、「クオリアってなんだ」シリーズ①~⑤で説明してるので、そちらも参考に見てください。
そして、痛みもクオリアです。
痛みのクオリアです。
手をつねられると、その感覚が痛みのクオリアとして内側の世界に生成されて、意識はそれを感じると、手を引っ込めろって指令をだして手を引っ込めるわけです。
お腹がすいたって感じると、意識は、内側世界でいろいろ考えるわけです。
冷蔵庫に何か残ってたかとか、コンビニに何か買いに行こかとか。
ほんで、おにぎり買いに行こって決めて、指示をだすわけです。
歩く関数を呼び出して、目的地をコンビニと設定するわけです。
これが脳が行ってる処理です。
外の世界からの感覚を、クオリアに変換して、内側の世界で考えて、その結果を、外の世界で行動するわけです。
外側の世界と内側の世界を行き来するのが人間です。
意識を持ってない動物、カエルとか魚は、外側の世界だけで生きてます。
外界に反応してるだけです。
人間の脳は、内側世界と外側世界の二重構造になってます。
そして重要なのは、二重構造にすることで、内側世界と外側世界の縁を切ったことです。
どういうことかと言うと、内側世界で考えたことは、外側世界に影響を与えなくできるんです。
つまり、内側世界で自由に考えても、それを行動に移すかどうかも、自由に決めれるんです。
これが自由意志です。
というか、縁が切れた2重構造ができたから、自由意志が生まれたと言ってもいいです。
自由に考えることができる構造ができたから、同じ環境にいても、別の行動を取れるんです。
同じ学校、同じクラスで学んでも、全然違う人生を送るんです。
カエルは違います。
同じ池に棲むカエルは、どれも同じような生活をしています。
裕福なカエルと貧乏なカエルに分かれるわけじゃありません。
自由意志を持つとは、こういう事なんです。
そして、自由に考えたことは表現することもできます。
人に伝えることもできます。
それが言葉です。
内側世界と外側世界の二重構造。
縁が切れた二重構造
外側世界を符号化して仮想世界をつくり上げた内側世界。
この構造がないと、人間と同じ心は作れないのです。
意識を持って、人とコミュニケーションできるAIはできないのです。
このことに気づいてる人は、まだ、誰もいません。
このことに気づいて、実際に、意識を持ったAIを開発しようとしてるのは、世界でただ一つ、ロボマインド・プロジェクトだけです。
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それでは、次回も、お楽しみに!