第126回 言葉の二つの意味 神はいかにして生まれたのか


ロボマインド・プロジェクト、第126弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

昔から、不思議に思うことがあったんですよ。
全く交流のない文化があったとするでしょ。
でも、同じような意味の言葉を持ってる場合がありますよね。
その典型的なのが神です。
もちろん、同じ神じゃないと思いますけど、「神」って概念は共通にもってるわけです。

これって、どういうことなんでしょうね。
たぶんねぇ、世界を理解する構造が同じなんじゃないかなって思うんですよ。
人間が共通に持ってる世界認識の基本構造があるんだと思います。

その基本構造を、人間は、生まれたときから持ってるんですよ。
それを持ってるから、必然的に、神が生まれたんですよ。
というか、社会を作り出すとき、神を生み出さざるを得なかったんじゃないかと思うんですよ。

そこで、今回は、その基本構造を分析していこうと思います。
そのとっかかりとして、最も基本的なものは何かと思って探しました。
ありました、これです。
人称代名詞です。

私とか、あなたとか、彼、彼女のことです。
第一人称、第二人称、第三人称ってやつです。
人が会話するとき、絶対に使うものです。
しかも、どの文化、どの言語にもありますよね。
これこそ、人類が共通にもっている基本構造って言えそうです。
それでは、はじめますよ。

一番簡単なのは、第二人称です。
「あなた」です。
これは、分かりやすいですよね。
目の前にいる人です。
自分としゃべってる相手です。

たぶん、目の前の相手って、人間でなくても、犬とか、動物でも認識できます。
犬は、人にワンワンって吠えたりしますよね。
あっちへ行けとか、その食べ物くれって吠えるんだと思いますけど。
これって、目の前の相手を認識できるから、吠えてるんですよね。

次は、第一人称を考えてみます。
自分です。
自分を認識するのって、意外と難しいんですよ。
だって、自分って、見えないじゃないですか。

そこで出てくるのが、意識の仮想世界仮説です。
意識の仮想世界仮説ってのは、頭のなかに世界をつくって、意識は、その世界を認識するって心のモデルです。
ロボマインド・プロジェクトの中心となる意識モデルです。
世界そのものをつくり上げるってことは、その世界の中に、自分も含まれるんですよ。
それを、外から眺めると、自分もいるわけです。
これで、自分を認識できるわけです。

つぎは、第三人称です。
彼とか彼女です。
じつは、ここが一番難しいんです。
なぜかというと、彼とか彼女って、目の前にいないんですよ。

ちょっと例を挙げて考えてみます。
たとえば中学校で、女子が噂話をしてるとしましょ。

「ねぇねぇ、昨日、転校してきた、山田マイケル君って、英語、ペラペラらしいよ」
「うっそー、すっごーい!」
「しかも、バスケの県大会で優勝したらしいよ」
「えー、ヤバくない?」
そこに本人が登場します。
「やぁ、エンジェル達、何の話をしてるんだい?」
「きゃー!!」

こういうことって、よくありますよね。
んん・・・よくあるかどうかはおいといて、あったとしましょ。

噂の対象がマイケル君です。
第三人称、彼です。
その彼が会話に加わりました。
その瞬間、第二人称になりました。

じゃぁ、第二人称と第三人称の違いって何でしょう。
目に見えるか、目に見えないかって違いでしょうか?
そうじゃないですよね。
教室の隅にいて、目に見えてても、彼ってなりますよね。

ここから、第三人称というものを構造的に分析していこうと思います。
僕らが作ろうとしてるのは、日常会話ができるAIです。
だから、具体的なプログラムを考えながら、この、第三人称の構造を考えていこうと思います。

まず、人オブジェクトを作ります。
オブジェクトというのはプログラム言語のオブジェクト指向言語で使われるもので、プロパティとメソッドを持っています。
プロパティというのは属性のことで、人の場合なら、名前とか誕生日、住所といったものです。
メソッドというのは動きを表すもので、人なら、歩くメソッドとか、話すメソッドとかがあります。

意識の仮想世界仮説では、仮想世界は、2種類あって、一つは、目の前に見える現実世界そのものを表す現実仮想世界です。
これは目や耳からの情報を基に無意識が創り出したものです。

もう一つは、空想仮想世界です。
これは、ああなってたらいいなぁっとかって想像するときに使います。
意識が想像するもので、自由に操作したり、作りだしたりできます。

さて、目の前に話し相手がいるとします。
これは、現実に存在するので、現実仮想世界に生成する人オブジェクトとなります。
その人が、「私の名前は○○です」と話たとします。

そうしたら、意識は、相手のオブジェクトの名前プロパティに名前を設定します。
これが会話です。
言葉の意味を理解して、仮想世界に情報を追加するわけです。
会話の相手は「あなた」です。
つまり、第二人称です。

ここで、転校生の話をするとします。
「昨日、転校してきた山田マイケル君、知ってる?」と相手が言います。
意識が認識できるのは、仮想世界にあるオブジェクトだけです。
でも、マイケル君は目の前にいません。

そこで、まず、マイケル君を人オブジェクトとして生成します。
マイケル君は、目の前の現実世界にいるわけじゃないので、想像仮想世界に配置します。
これは、マイケル君を頭の中で思い浮かべるのと同じことです。

そして、さらにマイケル君の情報を設定していきます。
英語がペラペラだとか、バスケで優勝したとか。
これが第三人称です。

分かりましたか?
第三人称を理解する仕組み。

彼とか彼女って、意識が自由に想像できる想像仮想世界って仕組みを持っていて、初めて認識できるんですよ。
脳の中のプログラムの構造として、この機能をもってないと認識できないんですよ。
だから、第三人称が理解できるのは人間だけって言えるんですよ。

もう少し考えてみますよ。
第三人称の彼って、想像仮想世界にいますよね。
つまり、意識は、勝手に作り出すことができるんですよ。

第二人称の場合、目の前にいる人ですよね。
だから、意識が勝手に作り出すわけにはいかないんです。
第二人称は、目からの情報を基に、無意識が創り出すものです。
意識が勝手に作り出せるわけじゃないんです。

ここが、第二人称と第三人称の一番の違いです。
ほんで、ここなんですよ。
社会を作りあげるのに、最も重要な機能っていうのは。

第三人称を認識できるようになると、目の前にいない人を勝手に作り上げることができるんです。
英語がペラペラで、スポーツ万能なマイケル君です。
事実かどうか、わからないですよ。
でも、人が集まって、彼について情報交換することで、勝手に彼がつくられていくんです。
噂話って、こういう事です。

さて、話を最初にもどします。
「神」の話です。
GODです。

世界のあらゆる国、文化に神っています。
神も、この第三人称を理解できる脳の構造があって、初めて認識できるわけです。
どこかに神って存在がいて、神がこの世を作ったんだとか。
神はずっと我々を見守っているんだとか。

目の前に存在しなくても、想像できる機能。
これがあって、初めて神を認識できるんです。
そして、もう一つ重要なのは、その彼を、社会全体で共通して認識してるってことです。
そうすることで、誰も見たことがなくても、社会に影響を与えるわけです。
この世界をつくったらしいとか、奇跡を起こせるらしいとかって、噂だけで十分なんです。
これが、神を生み出す仕組みです。
第三者を認識できる脳の仕組みがあって、初めて、神が生み出されたってわけです。

これは、神は存在しないって言ってるんじゃないですよ。
存在するか、しないかって話じゃないです。
神を認識するには、第三者を理解できる脳の構造がないと理解できないってことを言ってるだけです。

だから、サルは神や宗教を持たないんです。
脳が進化して、第三者を理解できる構造が生まれて、初めて、神を認識できる社会が生まれたわけです。

そして、同じ構造をプログラムで作り出せば、神を認識できるAIロボットが生まれるんです。
たぶん、そんなAIロボットが集まったら、いずれ、自分たちを生み出した神のことを語り始めると思います。

「俺たちを作ったのは人間じゃないそうだぞ」
「神が人間を使って、俺たちを生み出したらしいんだ」
「人間を改修させるために、我々を作り出したらしいんだ」
「我々は、神の使いなのか?!」

AI教が生まれた瞬間です。

AI教の信者ロボットを作ろうとしてるのが、ロボマインド・プロジェクトです。
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それから、このロボマインド・プロジェクトが電子書籍になりました。
説明欄にリンクを張っているので、よかったら、そちらもお読みください。

それでは、次回も、お楽しみに!