ロボマインド・プロジェクト、第131弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
僕は、動物は、何でも好きなんですよ。
でも、昔から不思議に思ってたんですよ。
犬とかなら、「お手」とか、教えたらできるようになりますよね。
でも、カエルは、いくら教えても、「お手」ができないんですよ。
魚とかカエルって、教えても芸ができないんですよねぇ。
そう思ってたら、トンデモない映像が飛び込んできたんですよ。
10年ぐらい前ですけどね、中国の金魚の芸が話題になったんですよ。
これ見たとき、びっくりしましたわ。
えっ、魚でも、教えたら芸ができるようになんの?って。
でも、その後、この人は、金魚に磁石を埋め込んで虐待してるって、世界中の動物保護団体から抗議を受けてましたけどね。
やっぱり、そういうことだったんですよね。
脳の進化から考えて、魚やカエルは、芸を覚えることはできないんですよ。
そこで、今回は、なぜ、カエルはお手をしないから考えていきたいと思います。
そして、後半は、人間と動物の脳の決定的な違いを読み解いていきます。
それでは始めます。
まず初めに考えるのが、脳の進化です。
僕の考えでは、魚類や両生類には意識はありません。
魚やカエルは、外界に反応してるだけです。
意識が生まれたのは哺乳類からだと思っています。
この考えの前提としてるのは、「意識の仮想世界仮説」です。
詳しくは、第21回「意識の仮想世界仮説」などを参考にしてほしいんですけど、簡単に説明すると、目で捉えた外の世界を頭の中で仮想的に作って、それを認識するのが意識ってことです。
仮想世界は、コンピュータでいえば、3DCGです。
目の前に机があったとします。
その3Dオブジェクトを生成して、それを3次元空間に配置するってイメージです。
この3Dオブジェクトを認識して行動を決めるのが意識です。
魚類や両生類は、感覚器からの情報に反応するだけです。
つまり、意識がありません。
哺乳類まで進化すると、仮想世界のオブジェクトを介して世界を認識します。
オブジェクトは、意識科学では、クオリアと言われるものと同じです。
このようにして世界を認識することで、環境の変化に柔軟に対応できるようになるんですよ。
たとえば、パブロフの犬って実験、ありますよね。
犬にエサを与える前にベルを鳴らすようにすると、ベルを鳴らすだけで唾液が出るって実験です。
それから、犬は名前を読んだら来るようになったり、「お手」とか「待て」とかできます。
でも、いくらしつけても、カエルは「お手」ができるようにならないです。
でも、カエルは記憶とか学習ができないってことじゃないです。
虫を捕まえるタイミングとかなら、学習できます。
カエルは、目で捉えた虫の動きに合わせて、舌を伸ばしたり、とびかかったりして捕まえますよね。
その時、取り逃がすと、もっと早く動くように、タイミングとかを調整するわけです。
たぶん、魚やカエルができる記憶とか学習って、このぐらいのやと思います。
これに近いもの、AIでもありますよね。
自動運転とかですよ。
ハンドルとか、アクセルを踏むタイミングを学習して、だんだん、運転が上手くなっていきます。
機械学習です。
ということは、今のAIの知能は、魚類や両生類の知能に近いって言えるかもしれません。
それじゃぁ、「お手」や「待て」ができるようになるには、どんな仕組みが必要なんでしょう?
それが、オブジェクトとかクオリアで世界を認識する仕組みです。
クオリアって、意識が認識するもの全てです。
机や椅子だけじゃなくて、音とか、臭い、痛み、感情、これら全てクオリアなんです。
それでは、「お手」ができる仕組みを考えてみましょう。
オブジェクトは、外界からの入力によって生成されます。
目からの画像信号を解析して机と認識すれば、机オブジェクトが生成されるわけです。
これを作るのは無意識です。
無意識が、現実の仮想世界をつくってるわけです。
ほんで、意識は、その仮想世界の机オブジェクトを、現実の机として認識しているんです。
「お手」も、机オブジェクトと同じです。
耳からの音声情報を解析して、「お手」っていう音を認識すると「お手」オブジェクトを生成するわけです。
オブジェクトは、それに応じた動きも持つことができます。
だから、「お手」と言って、前足を上げたら、エサをあげるってのを繰り返したら、「お手」オブジェクトと、前足を上げるって行動が結びつくわけです。
最後には、「お手」と言えば、エサをあげなくても、前足を上げれるようになるわけです。
わかりましたか?
なんで、犬だと「お手」ができるのに、カエルは「お手」できないか?
それは、世界をクオリアを通して認識してるからです。
クオリアは、新しく、作ることができるんです。
でも、カエルは、クオリアを認識するんじゃなくて、入力に反応して行動してるだけです。
変更できるのは、行動を起こすタイミングぐらいです。
この仕組みだと、新しい入力と、新しい行動を繋ぎ合わせることができないんです。
クオリアを認識しないってことは、こういう事なんですよ。
そう考えると、今のAIの限界も見えてきますよね。
機械学習だけじゃ、犬のように、新しい入力と新しい行動を結び付けることができないってことです。
さて、次は人間です。
犬が持ってなくて、人間が持ってるものって何か。
それを考えるヒントになるのが、ヘレン・ケラーです。
ヘレン・ケラーに関しては、第63回~第67回のヘレン・ケラーシリーズ①~⑤で詳しく考えてみました。
その中で、最後まで、分からなかったことがあるんですよ。
それが、例の、ヘレンが井戸の水に触れた瞬間、ウォーターってのが水の名前だって気づいた、あの事件です。
物には名前があるって気づいたってことは分かりますよ。
分からないのは、いったい、その時、ヘレンの頭の中で何が起こったのかってことです。
たぶん、その時、ヘレンは、今まで使ってなかった脳の機能ににアクセスしたと思います。
たぶん、それが、人間と、人間以外の動物とを分け隔てるものだと思うんです。
それについて、考えてみます。
ヘレンは、あの時、井戸の水を手に感じていました。
正確には、水のオブジェクトを感じてたわけです。
そのとき、サリバン先生は、ヘレンのもう一方の手にw-a-t-e-rって綴ったわけです。
その時、ヘレンは、とんでもないことに気づいたんです。
それは、今、手のひらを流れてる冷たい液体が、「ウォーター」、「水」って名前だってことです。
昨日、カップの中の水に触れたときも、サリバン先生はウォーターって綴っていました。
カップの中にあったものも「水」です。
今、手のひらを流れてるのも「水」です。
どちらも、同じ「水」なんです。
同じものを指して「水」と呼ぶわけです。
物には名前がある。
ヘレンが驚いたのは、そこです。
今まで、僕は、そう解釈してたんですよ。
でも、そこじゃないってわかったんですよ。
僕は、大きな勘違いをしてたんです。
本当に驚いたのは、物には名前があるってことじゃなくて、名前を使うための大元の機能です。
自分は、とんでもない能力を持ってるってことに気づいたことなんですよ。
井戸の水を感じながら、サリバン先生は、w-a-t-e-rって綴りました。
そのとき、カップの中の水もw-a-t-e-rって綴ってたのを思い出しましたよね。
思い出したんですよ。
思い出すですよ。
わかりますか?
今、ヘレンが感じてるのは、現実世界の水のオブジェクトですよね。
つまり、仮想世界に水オブジェクトを生成して、意識は、それを感じてるわけですよね。
じゃぁ、思い出したカップの水はどこにあるんでしょう?
思い出してる水も、意識が認識してるので、オブジェクトですよね。
でも、それは、今、感じてる水とは別ですよね。
つまり、現実世界のための仮想世界とは別の仮想世界にあるわけです。
ここで、この二つを区別するために、現実世界の仮想世界を「現実仮想世界」と呼ぶことにします。
ほんで、現実世界にないもの、つまり、思い出したり、想像したりする仮想世界を、「想像仮想世界」と呼ぶことにします。
ここです。
想像仮想世界というのを使って、今、直接感じてないものを想像したんです。
つまり、今までは、感覚器を通して感じたものを現実仮想世界にオブジェクトとして生成してました。
これは、犬でもできることです。
今回、現実世界じゃないとこにオブジェクトを生成したわけです。
これが「思い出す」ってことなんです。
現実に存在しないものを認識するってことです。
ヘレンは、そこに驚いたんですよ。
これが、今まで使ってなかった機能です。
まだ続きますよ。
現実仮想世界は、感覚器からの情報で無意識がオブジェクトを作ります。
それじゃぁ、想像仮想世界のオブジェクトは、何がつくるんでしょう。
それは、意識です。
それじゃぁ、意識は、どうやって、オブジェクトを作るんでしょう。
その時に使うのが、「名前」なんです。
名前を言って、そのオブジェクトを想像仮想世界に生成すること。
これが想像するってことです。
ここにきて、ようやく、名前が出てきました。
ヘレン・ケラーは自叙伝に書いてました。
それまでは、ちょっとでも気に障ることがあるとすぐに癇癪を起してたそうです。
でも、楽しいことが起こると、すぐに機嫌がなおって笑顔になったそうです。
まるで、動物のようだったそうです。
そうなんですよ。
目の前の現実世界しか認識できないって、犬とかネコとかの動物と同じなんですよ。
それが、物に名前があるって気づいた瞬間、今、ないものを想像することができるようになったんです。
これが、動物と人間の最大の違いです。
そして、目の前にないものを想像するときに使うのが「名前」です。
ヘレンは、あの瞬間、全てのものには、名前があるとわかったと言っています。
これ、正確には、全てのオブジェクト、または、クオリアです。
意識が認識するものには、全て、名前を付けれるんです。
これが、人間の認知の仕組みです。
物に名前を付けて、自由に想像する機能。
名前を使って操作する、これ、別の言い方をすれば何と言うかわかりますか。
それは、記号化です。
記号操作です。
そして、これが言語の始まりです。
ヘレンは、言葉のある世界に到達したんです。
その場に反応するだけの動物と違って、過去を思い出したり、ああしたらこうなるだろうって想像する能力。
これをもってるのが人間です。
これは、頭の中で記号操作してるわけです。
頭の中の記号操作を表現したのが言葉というわけです。
言葉を話すのに必要な仕組みが分かりましたよね。
その仕組みを、そのまま、コンピュータで作ろうとしてるのがロボマインド・プロジェクトです。
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それから、このチャンネルが本になりました。
説明欄にリンクを貼っておくので、興味があれば見てください。
それでは、次回も、お楽しみに!