ロボマインド・プロジェクト、第132弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
まずは、この木の板を見てください。
どう見ても、犬がいますよね。
今にも、ワンワン言いそうですよね。
でも、これは木の木目なんですよ。
ええ感じに、鼻の下が割れて、口もありますよねぇ。
じゃぁ、このワンちゃん、どこにいますか?
木の中ですか?
木の中にはいませんよね。
じゃぁ、どこですか?
それは、あなたの頭の中です。
あなたの頭が、犬を生み出したんですよ。
「見る」というより、作り出してるんです。
実際には、ここに、犬なんかいません。
そんなこと、理屈ではわかってます。
でも、どう見ても、犬を感じてしまうじゃないですか。
じゃぁ、何が、犬を感じてるんでしょう?
それは主観です。
心が感じてる世界には、犬がいるんです。
犬がいない、ただの木の板の世界が物理世界です。
客観の世界です。
世界って一つって思っていますよね。
でも、ちがうんです。
客観と、主観の二つの世界があるんです。
そして、それらは、必ずしも一致しないんです。
物理世界に存在しない犬を、主観が感じることがあるわけです。
じゃぁ、客観の世界と主観の世界で、一致するのは何でしょう?
それは、木の板ですよね。
客観的に木の板を分析するとしたらどうなるでしょう。
長さや重さを測ったりします。
硬さ測定器で硬さを測ったりします。
主観で見て感じたこの板も、大きさや重さ、硬さとか、手触りとか、だいたい、わかりますよね。
持ったらこのぐらいの重さで、たぶん、爪で押したら跡がつくぐらいの硬さやろうって。
でも、なんで、見ただけで、そんなことわかるんでしょう?
それは、今まで木を見たり、触ったりした経験があるからです。
その経験があるから、木の手触りとか、重さとかまで分かるんです。
つまり、犬だけじゃなくて、木も頭の中で作り出してるわけです。
「見る」って行為は、頭の中で作り出してるわけです。
客観的な事実と合うことが多いですけど、頭の中で作り出してるのは同じです。
今回、たまたま、客観的な事実と、主観で見えたことが違ったから、犬は頭の中でつくり出してるって分かりましたけど、木の板も頭の中でつくり出してるんです。
木の板だけじゃないです。
今、見えてる世界は、全部、頭の中でつくり出してるんです。
これが、「見る」ってことです。
主観の世界です。
でも、今までの科学は主観の世界を無視してきました。
客観の世界だけを扱ってきました。
見えるけど、実際にいない犬はいない物として扱ってきました。
幽霊や神は科学的には存在しないわけです。
お金の価値も、科学じゃ扱えません。
でも、人間は、お金や神や幽霊をみて、行動が変わりますよね。
ニュートリノとか、物理的に存在するらしいですけど、人間が感じることはないですし、人の行動に影響を与えることは、まず、ないです。
人間にとって重要なのは、心で感じる方ですよね。
心で感じて、行動を決定するわけです。
だから、人間社会にとって、重要なのは心で感じる方なんです。
主観です。
でも、科学は、主観は一切、扱いません。
なんでかって言うと、実験とかで、客観的に検証できないからです。
脳内の信号の流れとかみただけじゃ、頭の中で何を考えてるのかわからないんですよ。
だから、主観は科学じゃ扱えないんです。
でも、扱えないのと、存在しないのとは違いますよね。
かといって、科学が扱いようのないものを研究しても、ちゃんとした学会は取り合ってくれないので、だれも研究しないわけです。
その点、僕は、そういうちゃんとしたとこに属してないので、自分の好きなやり方で研究できます。
今までの、科学の手法を拡張したやり方で心を解明しようとしています。
やってることは、シンプルです。
心のモデルの仮説を立てて、それをコンピュータプログラムで実装します。
それで、人間と同じように考えたることができれば、その心のモデルが正しいと言えるわけです。
観察や実験で直接解明できなくても、コンピュータシミュレーションを使うことで、間接的に脳の中で行われてる処理を解明しようとしてるわけです。
直接の証明にはなりませんけど、今まで、全く手も付けれてなかった、心を解明する一つの手法にはなると思っています。
それじゃぁ、心のモデルの仮説って、どうやって作ればいいでしょう。
今回は、僕が、普段、どんな風に心のモデルを作ってるかについてお話しします。
それでは、始めます。
さっき、「見る」ってどういう事かって話をしましたよね。
「見る」っていうのは、頭の中に作りだしてるんだって話です。
頭の中に作りだしたものを、意識が認識してるってのが、僕が提唱する「意識の仮想世界仮説」です。
詳しくは、第21回「意識の仮想世界仮説」や書籍「ドラえもんの心のつくり方」を参考にしてください。
説明欄にリンクを貼ってますので、良かったら見てください。
意識の仮想世界仮説では、頭の中に仮想世界をつくって、そこに目で見た物をオブジェクトとして生成します。
木の木目が犬に見えるのは、木目の形に、犬を当てはめたわけですよね。
犬を当てはめるっていうのは、木目に合うような犬オブジェクトを生成したってことです。
こうやって、頭の中の仮想世界に犬オブジェクトが作られたことを指して、犬が見えたって言うんです。
これが、認識するってことです。
じゃぁ、人以外も、こんな風に認識してるんでしょうか?
同じような世界を生きてるんでしょうか?
たとえば、犬はどういう風に、世界を認識してるんでしょう?
犬を見てたら、何でって、思うことが、たまにあります。
たとえば、犬の好きな食べ物を、数メートル先に、二つおいて、どっちから先に食べるかって実験をしたとします。
縦に二つ置いたら、近い方を先に食べます。
横に置いたら、どっちを先に食べるか、決まってないみたいです。
たまたま、先に目についた方を食べるみたいなんです。
次は、横に置いて、一方のエサの大きさを大きくしてみたんです。
たぶん、大きい方のエサから食べると思いますよね。
ところが、この場合も、どっちか決まってないみたいなんです。
このときも、たまたま目についた方を先に食べるみたいなんです。
でも、人間やったら、ぜったい、大きい方を先に確保しますよね。
エサじゃなくて、1万円札と千円札が、離れて落ちてたとしましょ。
ぜったい、1万円札から拾うでしょ。
犬はそう、考えないんでしょうかねぇ。
小さい方のエサを食べてるとき、大きい方のエサを、誰かにとられたら困るから、先に大きい方のエサを確保しようとか思わないんでしょうか?
そうしないってことは、犬の行動のロジックは、先に目に付いた方から食べるってことなんやと思います。
だから、たまたま、先に目についたのが小さい方のエサやったら、そっちから食べただけやと思います。
じゃぁ、人間みたいに考えるには、何が必要なんでしょう?
それは、小さい方を食べてるとき、大きい方を誰かに取られるってことを想像する力です。
逆に、大きい方を食べてるとき、小さい方を誰かに取られることも想像します。
ほんで、どっちもあり得るとしたら、大きい方を食べて、小さい方を取られた方がマシだって思うわけです。
だから、大きい方から食べるんです。
こう考えると、結構、複雑な知能が必要ですよね。
まず必要なのは、起こってないけど、起こる可能性があることを想像する能力です。
さらに、それらを比較して、どちらが自分にとって得かって判断する能力です。
でも、犬でも、しつけたら、「マテ」とか「お手」ができますよね。
訓練したら、もっと複雑な芸もできます。
たとえば、これ、見てください。
どっちの手にエサが入ってるか当てるゲームをするワンちゃんです。
偉いのは、間違った場合、目の前にあるエサは食べないんです。
正解したときだけ、食べるんです。
自分で正解、不正解を判断して食べたり食べなかったりするんですよ。
賢いですよね。
それじゃぁ、これができる心のモデルを考えてみましょう。
まず、右手と左手のどちらかを選びます。
その後、両方の手を開きます。
選んだ方にエサが入ってなかったら、反対の手にエサがあっても食べれません。
食べようと思えば食べれるのに、食べないわけです。
つまり、食べれる条件を理解してるわけです。
マテと言われたら、エサを食べれなくて、ヨシと言われたらエサを食べるのと、おんなじですよね。
条件に一致したとき、取るべき行動がわかれば、このゲームはできるんです。
ということは、特定の条件を判断する機能と、その条件が満たされたとき、取れる行動を覚える機能が必要って言えますよね。
これが、犬の心のモデルです。
じゃぁ、人間が考えるのに必要な機能は何でしたか?
それは、シミュレーション機能と、その結果を比較する機能でしたよね。
そして、それをプログラムで実現したのが、第100回「待たせたな。これが心のプログラムだ」です。
これは、マインド・エンジンのデモの第二弾で、シミュレーションする機能と、シミュレーション結果を比較する機能を持たせています。
これで、考えて最適な行動を決定するということをコンピュータで再現しています。
こうやって、心のモデルを考えるわけです。
これが、僕がやってることです。
でも、こんな風に心のモデルを作り上げることって、本当に、どこもやっていないんです。
世界中でやってることと言えば、脳に電極を埋め込んだり、CTやMRIで脳を観察するぐらいです。
でも、客観的な観察じゃぁ、心の中で、どんな風に考えてるかまでは、見えてきませんよね。
コンピュータプログラムに落とせるまで具体的に心のモデルを解明してるのは、ロボマインド・プロジェクトだけなんです。
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それから、このチャンネルが本になりました。
「ドラえもんの心のつくり方」です。
説明欄にリンクを貼っておくので、良かったら見てください。
それでは、次回も、お楽しみに!