ロボマインド・プロジェクト、第133弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
今回のテーマは戦争です。
人は、なぜ、戦争をするのか?
今まで、いろんな人が語ってきたと思いますけど、今回は、全然違う切口で切り込んで行きますよ。
まず、戦うってことを考えてみます。
動物でも喧嘩しますよね。
縄張り争いだったり、メスを巡って争ったりとか。
でも、相手が死ぬまで続けるわけじゃありません。
相手が降参すれば終わりです。
これは人間も同じですよね。
戦いにはルールがあります。
ウチの近所ではね、よく野良猫が喧嘩してるんですよ。
ンニャーとか叫びながら、互いにネコパンチを繰り出して、結構激しく喧嘩します。
ネコ喧嘩の場合、うずくまって反撃しなくなったり、逃げた方が負けです。
これで勝敗が決まります。
勝った方は、それ以上攻撃することはないです。
勝ち負けの決め方は、動物によってもいろいろです。
たとえば、カバの喧嘩は、どちらが大きな口を開けられるかで決めるそうです。
勝ち負けのルールは種によっていろいろあるようですけど、相手が降参したら、それ以上攻撃しないというルールは共通のようです。
これ、面白い研究があるんですよ。
理化学研究所の脳科学研究センターの実験で、降参を制御する回路と戦いを続ける回路が脳に見つかったそうなんです。
ゼブラフィッシュっていう魚の実験で、降参回路を抑制すると、魚は負けにくくなって、戦い続ける回路を抑制すると負けやすくなったそうです。
喧嘩するとき、この二つの回路が競い合っていて、降参回路が優位になると、降参して負けるわけです。
相手が降参すると、勝った方の戦いの回路が抑制されて、それ以上攻撃することがなくなるようです。
そして、一度勝敗が決まると、同じ相手でまた喧嘩することはほとんどありません。
おそらく、どっちが強いかが記憶されるんでしょう。
だから、次に出会ったときは、負けた方が逃げたり、服従のポーズをとったりするわけです。
そして、この回路、魚からヒトまで共通に存在しているそうです。
それでは、人間の場合で考えてみましょう?
人間は、繰り返し戦争したりしますうよね。
戦争に限らず、スポーツでも同じです。
何度も、同じ相手に戦いを挑んだりします。
負けたことを悔しがったりします。
でも、動物は、負けて悔しがったりしません。
自分は相手より弱いと決まっただけです。
動物と同じ回路をもってるのに、人間だけ、他の動物と違う行動を取るのは、なぜでしょう?
さて、こっからです。
降参回路ですけど、脳の神経回路で実現されてるってことはハードウェアですよね。
そこから筋肉に出力されて降参するポーズを取ったり逃げたりするわけです。
ということは、この回路に入る前の処理で、戦いを継続するか、降参するかを計算して、その結果が降参回路に出力されてるわけです。
その計算は、ソフトウェアで行われていそうです。
そのソフトウェアの中身が、人間と他の動物とで違うと思うんですよ。
第130回「もし、イーロン・マスクがドラえもんを作ったら」で犬ができることと人間ができることの違いを検討しました。
犬ができることは、特定の条件を満たしたかどうかって判断でした。
「お手」と言われたら前足を上げるとかってことです。
この判断をしてるのが意識です。
喧嘩して、これ以上戦っても勝てそうにないって意識が判断したら、降参回路に出力するわけです。
それでは、人間と、その他の動物で、一番の違いは何だったか覚えていますか?
それは、過去の出来事を思い出したり、起こってない出来事を想像したりすることです。
つまり、人間の場合、過去に負けた出来事を思い出すことができるのです。
過去の戦いをシミュレーションして、何度でも、負けたことを感じることができるんです。
過去の思い出なので、実際に逃げたりとか、行動することはありません。
ただ、負けたということを味わうだけです。
過去に、負けた出来事を味わうわけです。
これが、後悔って感情です。
これができるのは過去を思い出せる人間だけです。
つまり、動物は、後悔って感情を持てないんです。
それでは、今度は、思い出すってことを実現するシステムを考えてみましょう。
人は、今見てる世界を頭の中に仮想世界として構築して、それを認識しています。
これが、僕が提唱する「意識の仮想世界仮説」です。
詳しくは、第21回「意識の仮想世界仮説」または書籍「ドラえもんの心のつくり方」を見てください。
説明欄にリンクを貼ってるので、そちらからご覧ください。
今、見て感じてる、この現在の世界は、無意識が仮想世界として構築します。
それを現実仮想世界と呼びます。
そして、過去とか未来とか、想像するときに使うのものを、想像仮想世界と言います。
では、想像仮想世界は、何がつくるでしょう?
それは、意識です。
それじゃぁ、意識は、どうやって過去の思い出を再現するんでしょう?
それは、過去の出来事を覚えておいて、想像仮想世界で再現するわけですよね。
じゃぁ、どうやって、過去の出来事を覚えておくんでしょう?
ここです。
今回、一番重要なのは。
出来事と言うのは、仮想世界で展開されます。
仮想世界には、オブジェクトが配置されます。
オブジェクトっていうのは、現実世界にある物を表現したプログラムのまとまりで、属性を表すプロパティと動きを表すメソッドを持っています。
人オブジェクトなら、歩いたり走ったりするメソッドを持っているわけです。
運動会のかけっこで負けたという思い出は、まず、運動会という場面を想像仮想世界につくります。
ほんで、そこに自分とライバルを登場させて、かけっこの場面を再現するわけです。
そこに登場するのは、自分やライバルの人オブジェクトです。
人オブジェクトの走るメソッドを使ってかけっこの場面を再現するわけです。
それじゃぁ、これを再現するには何が必要でしょう?
それは、どんな場面に、どんなオブジェクトとを配置するかといったことや、オブジェクトのどのメソッドを使って出来事が展開されるかってことを書いたシナリオです。
そして、シナリオ通りに想像仮想世界で出来事を展開する仕組みです。
意識は、シナリオを読みだし、想像仮想世界で過去の出来事を展開するわけです。
これが、思い出すっていうことです。
そして重要なのは、その出来事を認識する意識です。
意識は、過去の出来事を認識することで、その時に生じた感情を、また、味わうんです。
意識は、運動会で負けた悔しさを、また、感じるんです。
感情の役割は何だっかか覚えていますか?
感情とは、行動の原動力です。
悔しいって感情は、マイナス感情です。
マイナス感情は、それをプラスに持って行きたいって行動を促します。
どうすれば、プラスになるでしょう?
それは、もう一度戦って、勝つことですよね。
つまり、もう一度戦うって、行動を促すんですよ。
もう一度、挑戦しようと思うんです。
人間と動物の行動の違いは、こうやって生まれるんです。
負けても、何度も挑戦するのは人間だけなんです。
2010年のバンクーバー冬季オリンピックで、浅田真央は銀メダルを取って涙を流しました。
嬉し涙でなくて、悔し涙です。
金を取れなかった悔し涙です。
銀って、世界2位ですよ。
世界2位になって、悔し涙を流すって、スゴイ選手ですよね。
その日から、浅田真央は枕元に銀メダルを置いて眠ったそうです。
なぜか。
それは、あの時の悔しさを忘れないためです。
その銀メダルを見るたびに、
「くっそー、なんで、負けたんだ・・・」って
その悔しさを、毎日、思い出していたそうです。
枕元に銀メダルを置いて、4年間、練習し続けたそうです。
これが人間ってわけです。
動物には、絶対できないことです。
感情って、本来、今、現在起こった出来事に反応して、自動的に生じるものです。
そして、感情に対する行動も決まっています。
だから、現在の出来事で行動を決定するだけの動物は、みな、同じような行動を取るわけです。
でも、人間は違います。
過去の出来事を思い出したり、未来を想像したりできます。
過去や未来を思うとき、感情が発生します。
どの過去を思い出すか、どんな未来を思い描くか、それはその人の自由です。
過去の失敗をバネにして、明るい未来に向けて努力し続けることもできます。
過去の失敗に縛られて、どうせ、自分は何もできないと嘆くこともできます。
同じ経験をしても、人によって、正反対の行動を取ることがあります。
これが人間なんです。
想像仮想世界で展開される出来事を認識することで、意識は感情を感じます。
想像仮想世界では、シナリオ通りに出来事が展開されます。
これは、物語と言ってもいいです。
その物語は、個人の物語のだけじゃありません。
家族や民族といった社会が共有する物語もあり得ます。
家族を守るため、国を守るためといった物語もあり得ます。
そうやって、時には戦争が起こるのです。
これが、人類の歴史です。
人間の行動は、単に、起った出来事だけじゃ説明できません。
人間の行動を決めるのは、その人の頭の中にある物語です。
それは、シナリオ通りに、出来事を仮想世界で展開することで実現できます。
それが、人間と同じように物語を理解して、人間と同じ行動ができるAIです。
そして、それを実現しようとしているのがロボマインド・プロジェクトです。
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それでは、次回も、お楽しみに!