第136回 時間 解明!時計を見た時、なぜ、秒針が止まって見えるのか?


ロボマインド・プロジェクト、第136弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

アナログ時計ってあるでしょ。
針時計のことです。
パッと見た瞬間、「あれ、秒針、止まってない?」
って感じること、ないですか?
でも、しばらく見てると、カチカチって動き始めます。
なぜか、最初に見たときだけ、秒針が動くまでの時間が長く感じられます。
これが、主観的な時間です。
今回のテーマは、この、主観的な時間です。
それでは、始めましょう!

前回の第135回「マインド・エンジン ソースコード 解禁」で、マインド・エンジンのソースコードの解説したでしょ。
そのときも、説明しましたけど、会話したり、考えたりするとき、そのバックグラウンドでいろんな処理が走ってるんですよ。
前回のデモで説明したのは、「鉛筆を筆箱に入れる」って文です。
何にも難しくありませんよね。
書いてある、そのままのことです。

ここなんですよ。
意味理解の一番難しいのは。
普通に読んで、特に何も感じなかったら、何も処理してないと思ってしまうんですよ。
でも、そうじゃないんですよ。
こういうことって、プログラムのソースコードまで見ないと分からないんですよ。

意識は、心っていう巨大なシステムの、ほんの一部のプログラムなんです。
心ってシステムは、何百、何千ってプログラムのパーツで成り立ってるんですよ。
僕たちが、感じ取てるのは、そのうちのたった一つの意識プログラムです。

プログラムって、何か入力があると、処理をして結果を返します。
山道を歩いていて、カサカサって音がして、パッと見るとヘビがいたとします。
わっ、怖いって思って逃げますよね。
これは、ヘビって認識して、知識や過去の経験から危険と判断して、「危ない、逃げろ」って意識に知らせてるわけです。
そう言うプログラムがあるわけです。
これが、カサカサって音がして、何もなくて、風で葉っぱが揺れただけだとかだと、何も警告は出さないわけです。
でも、そのプログラムが動いたのは同じなんです。

たぶん、山道を歩いていたら、このプログラムは何百回も発動すると思います。
そのうち、警告を出すのは、一回あるかないかですよね。
でもね、警告出さなかったからと言って、このプログラムが動いてないわけじゃないんですよ。
このプログラムがないわけじゃないんですよ。

僕らは、何にも感じなかったら、何にも処理してないって、つい、思ってしまいますけど、そうじゃないんですよ。
起きてる間、意識が感じないとこで、無意識で膨大な処理をしてるんですよ。

「鉛筆を筆箱に入れる」の意味を理解するとき、何をやってるかを、ソースコードから丁寧に解説したわけです。
そこでは、バックグラウンドで、鉛筆は筆箱に入る大きさかとか、筆箱には、物をいれる空間があるのかとか、大きさをチェックするわけです。
さらに、筆箱に入っていておかしくないかとかもチェックするわけです。
だから、筆箱にミニトマトを入れるって聞くと、なんで、ミニトマトいれるの?って思うわけです。

こんな風に、起きて意識が働いてるとき、不自然なことはないか、危険なことはないかって、無意識で常に判断してるんです。
何百、何千ってプログラムが裏で動いてるんです。

さて、本題です。
時計を見たとき、なぜ、秒針が止まって見えるかです。
このときも、時計を見たとき、時計に不自然なとこがないかチェックするプログラムが動くわけです。
針時計なら、秒針がきちんと動いてるか検出するプログラムです。
1秒間隔でカチカチって動いてるかチェックするプログラムです。

このプログラム、前回、秒針が動いたときを基準に、次に動くかチェックしますよね。
でも、初めて、その時計をみたとき、前回のタイミングがわからないんですよ。
だから、最初に動くタイミングを探さないといけません。
まだか、まだか、って、動き始めるのを確認するわけです。

ところで、CPUの性能で周波数ってありますよね。
3GHzとかです。
このHzってのはクロック信号の周波数のことです。
クロック信号ってのは、CPUの処理を行うきっかけを与える信号です。
これが早ければ、処理速度が早いってわけです。
1秒間に10回なら10Hzです。
1GHzは、1秒間に10億回です。

人間も、クロック信号がみたいなのがあると考えてみましょ。
いろんな処理が、クロック信号で駆動されるわけです。
基準のクロック信号というのがあって、それに同期して、バックグラウンドで様々な処理を実行してるわけです。
危険なものはないかとか、おかしな格好はしてないかとか、確認してるわけです。
ほんで、これが「今」です。

もう一回いいますよ。
今、外の世界はどうなってるかとかって、1秒間に何回も確認するわけです。
そうやって、確認することが、「今」って時間なんです。
主観的に感じる「今」ってことです。

じゃぁ、逆に、主観的な「今」じゃない場合って、どんなのがあるでしょう?
テレビドラマやマンガを夢中に読んでたりするとき、周りのことが気にならないですよね。
外の世界はどうなってるかとか、自分は、外からどう見られてるとかって気にしてないですよね。
その時、心は、今のこの世界にないわけです。
ドラマやマンガの世界に行ってるわけです。
外の世界との関わりを感じた時が「今」なんです。

時計の秒針の話に戻ります。
秒針が最初に動くのを見つける処理も、このクロック信号のタイミングで動きます。
それじゃぁ、最初に動くタイミングを、出来るだけ早く見つけるにはどうすればいいでしょう?

それは、秒針が動くタイミングを見つける処理を、もっと早くすることです。
通常は、10Hzで処理してるとこを、20Hzで処理したりするわけです。
小刻みにチェックして、見つかったら、元に戻すわけです。

さて、こっからです。
心のシステムが基準クロック信号で動いているとします。
意識プログラムも、基準クロック信号で動きます。
普段は、10Hzで動いてるとすると、10回処理をしたら1秒ってなりますよね。
逆に言えば、主観的な1秒って、10クロックってなるわけです。

それが、10Hzから20Hzに変わったらどう感じるでしょう?
今まで、10回処理したら1秒と感じてたんですから、20回処理したら2秒って感じますよね。
つまり、今までの1秒が2秒に伸びたるわけです。
同じ1秒でも今までより長く感じるわけです。
で、秒針が動くタイミングがみつかったら、元の10Hzに戻すわけです。
そうしたら、通常の1秒の世界にもどります。
そうなったら、最初の1秒だけ、やけに長く感じるわけです。
これが、秒針を最初に見た時、長く感じる原因なんです。

つまり、1秒間に処理する回数が増えると、後から考えると、その時の時間が長く感じられるわけです。
他の例も考えてみましょう。

たとえば、こんな話聞いたことないです?
交通事故にあった時、スローモーションに感じられたとかって。
トンネルの壁にぶつかったとき、壁にぶつかるまでの時間がものすごく長く感じられたとか。

これも同じだと思うんです。
よく、火事場の糞力とかいうでしょ。
火事とか、危険に直面したとき、潜在能力が最大限、引き出されるみたいです。
その潜在能力の一つが1秒間の処理能力やと思うんですよ。
普通は、1秒間に10回で処理してたのが、「危ない!ぶつかる」ってなった時、1秒間に20回とか処理できるようになるわけです。
壁までの距離を測るプログラムがあって、それが、普段の倍の速度で処理するようになるんですよ。
その結果を受け取るのは意識です。
「これ以上近づいたら危ない」って結果を、いつもの倍、受け取るわけです。
強烈な出来事って、エピソード記憶として、その時の光景を、そのまま記憶します。
ほんで、再生するとき、通常のクロック信号でその光景を再生するんです。
だから、後から思い返したとき、あのとき、壁がゆっくり、スローモーションで近づいてくるのを感じたってなるんですよ。

どうでしょう。
なんか、上手く説明できますよね。
主観的時間の伸び縮みって、こんな、特殊な例ばかりじゃないですよ。
日常でも感じることはよくあります。

例えば、知らない場所に初めて訪問するとき。
電車やバスを乗り継いで行ったとします。
帰りは同じ道を逆に帰ります。
このとき、行よりも、帰りの方が早いって感じることってありますよね。

これも同じやと思うんですよ。
初めて行く場所って、この先、何が見えてくるかとか、全くわからないわけですよね。
バスに乗ってても、「この橋をわたると、急に田舎になるんやな」とか、「なんやあれ?見たことないコンビニがあるぞ」とか。
次に何が出てくるか、予測がつかないわけです。

意識は、バックグラウンドで、次に起こり得ることを、予測しながら生きています。
初めての土地は、次に何がでてくるかわからないので、起こり得ることを予測の量が膨大になるわけです。
つまり、処理量がものすごく多くなるわけです。
でも、帰りはどうでしょう。
ここ曲がったら、見たことないコンビニがあるって、既に知ってるわけです。
予測量、つまりバックグラウンドでの処理量が格段に少なくなります。

主観的な時間って、バックグラウンドでどれだけの処理をしたかで決まるとします。
そう考えたら、同じ道の行き来でも、帰りより行きの方が長く感じるってなりますよね。

今回の話、すべてに共通することは、意識が認識するバックグラウンドでは、いろんな処理が走ってるってことです。
これって、システム開発だと当たり前の考えなんですけど、脳科学や心を考えるとき、あまり、こういう見方をしてないんですよね。
脳を直接観察して分かることしか、研究の対象にしないので、入出力されるデータしか扱えないんですよ。
なぜ、そんな出力が出たのかって、処理の内容は、一切、関知しないんです。

でも、それって、コンピュータのハードウェアしか研究しないのと同じです。
コンピュータは、ハードウェアとソフトウェアの両方がそろって成り立つものです。
ソフトウェアを無視してシステムを開発するなんて、あり得ないですよね。

この、脳で動くソフトウェアの中身を考えてるのが、ロボマインド・プロジェクトです。
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それから、このチャンネルが本になりました。
「ドラえもんの心のつくり方」です。
説明欄にリンクを貼っているので、興味がある方は、ぜひ、ご覧になってください。

それでは、次回も、お楽しみに!