第145回 誰も分かっていない! ミラーニューロンの本当の意味


ロボマインド・プロジェクト、第145弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
ミラーニューロンって知ってますか?

たぶん、この2~30年の脳科学の中で、最大の発見やと思います。
それほど、大きな発見なんですけど、みんな、どうも一番重要な点がわかってないみたいなんですよ。
ミラーニューロンの話って、脳の機能の話じゃないんですよ。
そうじゃなくて、これは、世界そのものの成り立ちの話なんですよ。
世界は、どうやってできてるのか、それを示してるのがミラーニューロンなんですよ。

何を言ってるのか、分からないと思うので、ミラーニューロンとは何かから、説明していきます。
ミラーニューロンは、1996年にサルの実験で偶然発見されました。
最初は、サルが物をつかむニューロンを特定しようと探していたんです。
サルの脳に電極を刺して調べたら、前頭葉の下に見つかったそうです。
エサをつかもうとするとき、ピクンって反応するニューロンです。

これだけじゃぁ、そういうニューロンが見つかったってだけです。
問題は、こっからです。
研究者が、エサを片付けようとして、エサをつかんだそうです。
そしたら、さっきと同じニューロンが、また、反応したそうなんです。

つまりね、エサをつかむニューロンって、自分がつまむときだけじゃなくて、他人がつかむのを見たときも、同じように反応するってことなんですよ。

まるで、鏡に映った自分のように反応するということでミラーニューロンと名付けたわけです。
これがミラーニューロンです。

さて、こっから、ミラーニューロンについて深く考えてみますよ。
ミラーニューロンは、他人の行為を見て反応するわけです。
他人の行為が介在しないと反応しません。

たとえば、山を登っていたとします。
崖から自然と石が転げ落ちてきたら、おっと危ないなぁと思ってよけますよね。
これが、崖の上に人がいて、その人が石を自分に向けて投げていたとしたどうでしょう?
えっ、どういうこと?
ってなりますよね。
いろんなこと考えると思いますけど、少なくとも、石が自然と転げ落ちてきたときとは、全然、違う気持ちになりますよね。

同じ石が落ちてくるって現象でも、他人の意図があるのと、ないのとでは、感じ方が全然違うってことです。
この他人の意図を感じるって、これ、電磁波みたいなのを感じてるわけじゃないですよね。
そうじゃなくて、他人の行動に反応するミラーニューロンがあるわけです。
ミラーニューロンがあるから、他人の行為に敏感になるわけです。
このミラーニューロンがあるのは、脳の中ですよね。
これ、どういうことか分かりますか?
それは、世界は頭の中にあるってことですよ。

だって、世界が頭の外にあれば、石が転がってこようが、投げつけられようが、やるべきことは同じです。
石をよけるだけです。
相手が頭の外にいれば、その人の意図なんか感じれないですよね。
その人の意図を感じれるってことは、その人を自分でつくり出してるわけです。
その人を含んだ世界そのものを作り出して、その世界の中に自分が生きてるってことです。

これって、意識の仮想世界仮説そのものです。
ミラーニューロンって、意識の仮想世界仮説を証明したようなものなんです。
意識の仮想世界仮説に関しては、こちらの本に詳しく書いています。
説明欄にリンクを張ってますので、興味がある方は、そちらから読んでください。

もう少し考えていきますよ。
他人の意図が理解できるって、これは「心の理論」です。
「心の理論」については、第123回「完成!最も重要な心のパーツ」で説明しましたけど、簡単に説明すると、相手の立場に立って考えることができる機能ってことです。
ミラーニューロンは、心の理論を実現するための重要な要素といえそうです。

他人の意図を理解するって、人間のコミュニケーションにものすごく重要です。
たとえば、満員電車で隣の人の足を踏んでしまったら、「あっ、すみません」って謝りますよね。
これは、わざとやったことじゃないってことを示してるとも言えますよね。
つまり、わざと踏んだか、意図せず踏んでしまったのかでは、全然意味が違ってくるわけです。
それが人間社会です。
人間社会のコミュニケーションを成り立たせてる要素が相手の意図なんです。
相手の意図を感じながら、自分の行動を決めるわけです。
逆から見れば、相手は、自分の行動の意図を読み取ってるはずです。
こんな風に、お互いの意図を読み合って成り立つ社会が人間社会なんです。
人間社会って、複雑ですよねぇ。
そして、その複雑な社会を成り立たせる、最も基本的な要素が、ミラーニューロンなんです。

ただ、ミラーニューロンは、他人の行動を見た時に反応するニューロンってだけです。
相手の意図を読むとかは、ミラーニューロンだけじゃ説明できません。
そこで、ミラーニューロンを含めた脳全体の処理について考えてみます。

脳のてっぺんには、左右に伸びる溝があって、その溝の前側に運動野って言う領域があります。

運動野は、体全身に対応してて、運動野を刺激すると、対応する体の部分が動きます。
たとえば、物をつかむとき、腕を伸ばして指を曲げますよね。
そのとき、運動野の腕とか指とかに対応するニューロンが活動するわけです。
物をつかもうとしたとき、まず、物をつかむミラーニューロンが活性化して、その信号が運動野の腕や指に伝わって、最終的に腕を伸ばして物をつかむわけです。

それじゃぁ、最初に物をつかもうと考えたのはどこでしょう?
それは、前頭前野です。
第137回~第140回の話の中心は前頭前野でした。
抽象的な思考は、前頭前野で行われるって話をしました。
内と外とか、上下関係といった関係性。
それから、入れ子構造の文を理解するのは前頭前野だって話をしました。

僕が思うに、仮想世界ってのも前頭前野にあると思うんですよ。
仮想世界っていうのは、今見てる現実世界をそのまま表した世界です。
仮想世界には、部屋とか机とかといっしょに、自分も相手もいます。
それから、ミラーニューロンは、前頭葉の下側にあります。
自分が物をつかむときとか、相手が物をつかむときに反応するニューロンです。

ここで、コンピュータ・プログラムについて考えてみます。
プログラムって、いくつもの処理でできてます。
同じ処理を何度もすることがあるので、そんなのは共通の小さいプログラムとして作っておきます。
ほんで、あちこちから共通プログラムが呼び出されるわけです。

さて、仮想世界には自分も相手もいます。
物をつかむってプログラムは、自分でも相手でも使えますよね。
だから、これを共通プログラムとして作っておくわけです。
わかりましたか?
共通プログラムが何か?

共通プログラムって、ミラーニューロンのことなんです。
自分が物をつかむときでも、相手が物をつかむときでも、どっちでも共通に使えるプログラムです。
心を脳で動くプログラムとして考えたら、ミラーニューロンの役目がみえてきますよね。

もう少し考えていきますよ。
ミラーニューロンは、物をつかむときに反応するニューロンです。
運動野の腕や指につながっていて、腕を伸ばして指で掴む動きを持っているといえます。
これ、どういうことかわかりますか?
これ、「物をつかむ」の意味を表してるんですよ。
物をつかむミラーニューロンは、物をつかむ意味をもってるといえるんですよ。

ミラーニューロンが、「物をつかむ」を示す記号といってもいいです。
もっと言えば、単語です。
言葉です。

ミラーニューロンが、言語の基本といえます。
単語の意味は、この場合、運動野の体の動きで持たせてあるわけです。
これは、マインド・エンジンで言えば、3次元空間の動きで意味を持たせてるのと同じといえます。
3Dのゲームエンジンの部分です。

まだまだ続けますよ。
満員電車で足を踏まれたとします。
前頭前野の仮想世界には、自分と相手がいます。
それから、意識も前頭前野にあります。
意識は、仮想世界を使って考えて、行動を決定します。

ところで、行動の原動力って、何だったか覚えてますか?
いままで、何度も言ってきましたよね。
行動の原動力は感情です。

さて、他人に足を踏まれたわけです。
足を踏むミラーニューロンが反応します。
相手が自分の足を踏んだと理解します。

つぎは、足を踏むという行為を抽象化します。
抽象化とは、感情とか、心理パターンに当てはめることとも言えます。
この場合だと、他人に迷惑をかけるって心理パターンです。
他人に迷惑をかけた場合、どんな行動を促すでしょう。
それは、「謝るべき」です。
他人に迷惑をかけたら謝らないといけません。
これが、感情が行動を促すって、こういうことです。

さて、足を踏んだ相手は、謝るべきと理解しました。
理解したのは意識です。
ここで、相手が「すみません」って謝ってきたら、自分の気持ちも収まっておわりです。
謝らなかったら、「他人の足を踏んどいて、謝らないとは、失礼な奴だなぁ」とか怒ったりします。
この怒りの感情が、なんか、一言文句でも言ってやろうかなとかって次の行動を促すわけです。
これが人間社会です。
人間社会の複雑なコミュニケーションは、こうやって成り立っています。

どうでしたか?
今回は、ミラーニューロンを中心に脳の仕組みを解明してみました。
脳で動く心のプログラムがみえてきましたよね。
そして、それをそのままプログラムで作ろうとしてるのがロボマインド・プロジェクトです。
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本も出してますので、そちらもよんでくださいね。
それでは、次回もお楽しみに!