AIが勝手に会話し始めたから、怖くなって強制終了!
ロボマインド・プロジェクト、第15弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。
さて、自然な会話ができるAIに必要なのが心理パターンでした。
心理パターンって、感情みたいなものでしたよね。
でも、感情って、人間だけじゃなくて、動物にもありますよね。
そこで、今回は、人間と動物の違いを心理パターンを使って説明したいと思います。
簡単に、今回の概要を説明しときますと、
【表】
1.最も単純な心理パターン
2. 人間特有の心理パターン
3.独自言語で会話しはじめたAIの意味
最初に、生物なら全て備える最も単純な心理パターンについて説明します。
コンピュータで実装可能な程度に落とし込めるように説明します。
次に、動物と人間の違いを、心理パターンを使って説明します。
最後に、少し前に話題となったAIのニュースを取り上げます。
Facebookが開発したAIが、独自に言語を進化させて、人間に理解できない言葉で会話し始めたので、強制的に終了させたってニュースです。
このニュースの意味を、心理パターンから説明したいと思います。
それでは、最初の最も単純な心理パターンから説明しましょう。
それは、動物にもあります。
いや、動物だけじゃなくて、あらゆる生物、バクテリアから持ってるものです。
それは、本能です。
コンピュータで実現できる程度に言うと、
「不快を避け、快を求める」と言えます。
分かりやすく説明すると、お腹がすいたら食べ物を食べるとか、
天敵に捕まりそうになると逃げるとかです。
これが、「不快を避けて、快を求める」ということです。
食欲とか、睡眠欲とか、性欲とかの本能のことです。
生物の行動は、これら本能の快・不快で説明できます。
心理パターンとして、本能以外にも、お金をもらって嬉しいとか、財布を落として悲しいとか、こういった快・不快まで含めます。
これを、最も基本的な心理パターンとして、僕は、「プラスマイナス感情」と定義しています。
食べ物を食べるとか、お金をもらうとか、その人にとってプラスとなるものをプラス感情。
お腹がすくとか、お金が無くなるとか、その人にとってマイナスとなるものをマイナス感情。
そして、マイナス感情を避けて、プラス感情となるように行動する。
これが、生物の行動の原動力となるわけです。
これはコンピュータに実装することも可能です。
電池が少なくなってきたら、充電装置を探して、自分で充電するロボットとかです。
電池が少なくなるというのが、生物がお腹がすくのと同じといえるわけです。
人間や動物と同じ心理パターンが実現できてるわけです。
次は、人間社会に必要な心理パターンについて説明します。
社会が成立するには、自分以外の相手が必要となりますよね。
さっき説明した本能って、自分一人だけで発生するものです。
相手の存在が絶対必要な心理パターンってなんでしょう。
その一つは、「感謝」です。
「感謝」っていうのは、プレゼントをもらったり、親切にしてもらったときに発生します。
プレゼントをもらうと、まず、嬉しいというプラス感情が発生します。
そして、そのプラス感情をもたらした原因をさがします。
すると、プレゼントをくれた相手が見つかります。
その相手に対して感じる感情が感謝です。
これが、「ありがとう」という、相手に対して言うことばです。
これは、人間特有の感情と言えます。
たとえば、犬は、ご飯が欲しいと、ワンワン吠えます。
ご飯を食べて、もっと欲しいと、また、ワンワン吠えます。
もし、犬に感謝の感情があれば、ご飯あげると感謝の吠えをするはずです。
ワワワオンとか。
それ以上、食べ物を上げても、食べないでワワワオンとか言います。
でも、そんな犬、見たことないです。
これは、「感謝」の心理パターンがないからです。
頭の中に、「感謝」の心理パターンがあれば、それに見合った言葉や行動を取るはずです。
これが言葉を生み出した理由にもなります。
「感謝」には、相手が必要だと言いましたが、もう一つ、重要なことがあります。
それは、相手も「感謝」の心理パターンを持っているということです。
つまり、相手が、ありがとうの意味を理解してるから、「ありがとう」っていうんです。
道で100円拾って、ラッキーって思います。
これはプラス感情です。
プラス感情が発生して、その原因が道だとしても、「道さん、ありがとう」って道に声をかけないですよね。
ここ、ものすごく重要なんですよ。
相手と自分が、同じ心理パターンを持っている者同士でないとコミュニケーションが取れないんです。
つまり、人間と自然なコミュニケーションを取るには、共通の心理パターンを持つことが、絶対必要なんです。
「感謝」の反対を考えてみましょう。
たとえば「怒り」です。
自分の財布を盗まれたとしたら、犯人に怒りを感じますよね。
財布がなくなるということは、マイナス感情です。
その原因が誰か人だと思うから、その人に対して、怒りを感じるわけです。
盗まれたんじゃなくて、さっき、椅子から立ち上がる時、財布がポケットから落ちてなくなってたとします。
そんな場合、財布が落ちた原因は、椅子だったり、重力だったりします。
そんな場合、「椅子、気をつけろよ」とか、「重力、勝手に俺の財布、おとすんじゃねぇ」とか怒らないですよね。
これが社会的な心理パターンの特徴です。
相手も、「感謝」や「怒り」の意味を理解しているから、その相手に対して発生するわけです。
お互いに共通の心理パターンを持っている者同士がコミュニケーションを取れるわけです。
社会に受け入れられるには、共通の心理パターンが必要というわけです。
ロボマインド・プロジェクト第4弾の動画で、チューリング・テストの話をしました。
アラン・チューリングが考えた、AIに人間と同じ知能があるかどうかを判定するテストです。
会話できるAIチャットボットを作ったとき、それと人間が会話して、人間かAIか見極めがつかなくなれば合格ってテストでした。
このテストって、すごく巧妙にできてるんです。
何が巧妙かっていうと、テストの中に、人間が組み込まれてるってとこです。
人間とAIがコミュニケーションできるということは、人間と同じ心理パターンを、そのAIが持っているって証明になるわけです。
チューリングテストって、よくできてますよね。
人と自然なコミュニケーションが取れるAI、これこそが重要なんです。
なんで、ここを強調するかというと、全然わかってない人が多いからなんです。
たとえば、以前話題になった、このニュース、知ってます?
終わりの始まり…? 独自言語で話しはじめた人工知能、Facebookが強制終了させる
これは、Facebookが開発したAIを、互いに会話させたら、人間に理解できない言語を作って会話し始めたから、怖くなって強制終了させたって話です。
たしかに、人間の理解できない言葉を勝手に進化させるAIに恐怖を感じるのは分かりますけど、よく考えると、よくあることなんです。
人間以外の生物が、独自の言語でコミュニケーションしてたのがわかったとか。
たとえば、カニは、ハサミを振り上げることで、自分は健康だと、交尾相手に誇示します。
カニがそんな風に会話してると知ったからと言って、何も怖くありません。
僕らが欲しいのは、人と会話ができるAIです。
人と会話ができるって、言い換えれば、人と同じ心理パターンを共有するってことです。
たとえば、動物は食べ物をもらうと喜びます。これは、人も同じです。
共通の心理パターンを持っているから、動物が食べ物をもらって喜ぶ気持ちが理解できるのです。
動物が持ってる心理パターンはこの程度の単純なものです。
人は、他人に対して感謝したり、怒りを感じたりします。
さらに、もっと複雑な心理パターンも共有しています。
嫉妬や後悔、または善悪といった倫理観や、恥や仕返しといった心理パターンなどです。
こういった心理パターンを持っているからこそ、深い愛情で仲間と結びついたり、激しい憎悪の感情が生まれたりするのです。
ハサミを振り上げるだけのカニとは、深い感情で繋がるといったことはありません。
人工知能同士が、勝手に会話したところで、何の役にも立たないのです。
そうじゃなくて、どれだけ、人間と同じ心理パターンを持てるか、それがこれからのAIが目指すべき道なのです。
それでは、次回は、人間社会に絶対必要な心理パターンについて、詳しく解説します。
それでは、次回も、お楽しみに!