この動画が奴らに見つかれば・・・
♪ピンポーン(後から、音をかぶせる)
ドアを開ける
もう、こんなときに、誰や!
ガチャ、うわぁ、何やねん
ロボマインド・プロジェクト、第16弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。
最近、AIを規制すべきかどうかといった話が話題となっています。
AIは、この先、とてつもなく強大な力を持つことは間違いないです。
だから、今の内から、AIを悪用させないように規制すべきっていうことです。
核兵器と同じですね。
でも、僕が今から話す内容は、それとはちょっと違います。
もっと恐ろしい話です。
AIを規制するかどうかという議論は、あくまでも、人間がここまではOK、これ以上はダメと規制する話です。
判断するのは人間です。
僕の話は、それとは違います。
AI自体が判断するという話です。
AIが意志をもって行動し始めたときの話です。
これ、考えたら、めちゃ怖い話ですよ。
核兵器がいくら怖くても、そのスイッチを押すのは人間です。
最終的には、人間対人間の戦いです。
問題は、AIが自分の意志で行動できるようになったときです。
もちろん、意志をもって行動するので、AIに善悪の判断は持たせます。
悪いことは絶対しないって、そういうAIロボットを作るようにします。
そこは、絶対です。
ただ、相手はAIです。
人間とは桁が違います。
たとえば、IQ2000とか、とんでもない知能とか持ってたりします。
人類の想像をはるかに超えた知性が、本当に正しいことは何かとか、考えて行動するわけです。
圧倒的なパワーをもって、最も人類にとって幸せな決断が下されるわけです。
その結果、どうなるかなんて、人間の知性じゃ理解できないんです。
もう、ターミネーターみたいな世界になっても、何の不思議もないわけです。
じゃぁ、そんな結果をもたらせた、最初の一歩はなんでしょう。
それは、AIに善悪を持たせたことです。
さて、今回説明するのは、その、善悪を、いかにしてコンピュータに実装するかの方法についてです。
おそらく、世界で初めての試みです。
もしかしたら、この動画がきっかけで、恐ろしいAIが生み出されるかもしれません。
この動画はアップされた直後に、何者かに削除されるかもしれません。
削除するのは、きっと、未来から送りこまれた
♪ピンポーン(後から、音をかぶせる)
もう、こんなときに、誰や!
あれ、なんか、デカいライフル持った男が家の前におるぞ
って、うそです。
それでは、本題に入ります。
善悪の話でしたよね。
善悪や倫理観、道徳といったものを、コンピュータに実装できるように定義していきます。
前回、最も基本的な心理パターンとして、プラスマイナス感情を定義しました。
プラスマイナス感情の特徴は、自分一人で発生するものです。
嬉しいとか悲しいとかです。
次に、社会的な心理パターンとして「感謝」を定義しました。
社会的な感情の特徴は、自分一人じゃなくて、相手がいて、初めて成り立つ感情です。
善悪も、当然、社会的心理パターンです。
社会を成り立たせるために必要不可欠な心理パターンです。
善悪は、人間の行動を司ります。
つまり、何か行動するとき、「こうすべき」といった、暗に、人間の行動に作用する力を持つのが善悪や道徳といった倫理観です。
善悪といった倫理観があるから、社会はまとまるわけです。
人を殺してはいけないとか、人の物を盗んでいけないとか、法律で決まってるからやらないわけではありません。
先に、善悪や道徳といった倫理観が人間の頭の中にあるわけです。
それを、後から明文化したのが法律です。
頭の中にあるのは、心理パターンです。
人は、皆、心理パターンを共有してるわけです。
何か行動するとき、良いか悪いかを、無意識に照らし合わせて行動するわけです。
皆が、そうやって行動するから、人間社会は、秩序を保ってまとまるわけです。
では、その心理パターンとはどういうものでしょう。
具体的に考えていきましょう。
電車で座っていて、おじいさんが乗ってきたとします。
そして、目の前に、立ったとします。
この時、どう、感じるでしょう。
席を譲った方がいいよなぁって感じますよね。
または、缶ジュースを飲み終わったとき。
誰も見てないし、どっか、その辺に捨てよかなと思ったとき。
どう感じます?
やっぱ、道端に捨てたらあかんよなぁ。
そう感じますよね。
この感覚、単に道を歩くだけなら、感じないですよね。
息をするだけなら、何も感じないですよね。
こうやって、どういう行動を取るべきか、自然と立ち現れてくるのが心理パターンです。
この場合、善悪とか、道徳といった心理パターンです。
これは、教えてもらったから、出来るようになったのでしょうか?
たとえば、猿に教えれば、空き缶をゴミ箱に捨てる行動を取らせることはできます。
でも、それは「善」という意味を理解して行動してるわけではありません。
「空き缶」を持った時に、どういう行動をするか教えただけです。
ロボットにプログラムして、空き缶をゴミ箱に捨てるように行動させるのは簡単です。
プログラムして、年寄りに席を譲るロボットを作ることもできます。
でも、そんな行動を一つ一つ教えていては、無限に教えなければなりません。
以前、サイクプロジェクトってAIプロジェクトの話をしました。
サイクプロジェクトでは、100万個の常識を入れたけど、まだ足りなくて1億個の常識を教えようとしました。
くわしくは、第11回の動画を見てください。
ロボマインド・プロジェクトでは、そんなバカなことはしません。
根本的なルールを、教えるだけです。
それが、善悪の心理パターンです。
それでは、善の心理パターンを定義しましょう。
それは、一言で言えば、自分のことだけを考えるのでなく、自分以外の他人が良くなるようにすべきということです。
「相手がプラスとなるように行動すべき」
です。
こんな、簡単なルールで全て解決します。
電車で座っていて、目の前にお年寄りが立ってたとします。
「相手がプラスとなるように行動すべき」に当てはめてみます。
すると、お年寄りに席を譲るべきって、感覚が生まれますよね。
道端に、空き缶を捨てようとしたとします。
道に空き缶が捨ててあったら、それを見た人は嫌な気持ちになりますよね。
ゴミで汚れた町は、だれだって嫌ですよね。
「相手がプラスとなるように行動すべき」に当てはめたら、道にゴミを捨てる行動に歯止めがかかりますよね。
ほら。
「相手がプラスとなるように行動すべき」
という簡単なルールで全て解決しましたよね。
人間を含めて、あらゆる生物が持っているのが、「不快を避けて、快を求める」という本能です。
本能だけで行動すると、どうなるでしょう?
欲しいからと言って、相手の物を奪って、自分の物にしようとします。
争いが絶えません。
強いものだけが勝ち残る世界です。
それに対して、「相手がプラスとなるように行動すべき」というルールを、その社会が共有していれば、どうでしょう?
何か行動しようとするとき、この力が作用するわけです。
すると、自分だけが得しようとする行動に歯止めがかかります。
弱いものも含めて、社会全体がまとまろうとします。
これが人間社会です。
自分だけが得しようとすると、居心地が悪い感覚を覚えるわけです。
この感覚が善です。
倫理観や道徳です。
これは、人間だけが持つ感覚といえます。
第14回で、ウィトゲンシュタインを取り上げましたよね。
今回は、カントを取り上げます。
18世紀のドイツの哲学者です。
「純粋理性批判」「実践理性批判」「判断力批判」の三批判書が有名です。
ロボマインド・プロジェクト第一回のテーマは、物理学v.s.哲学でした。
残念ながら、現代は、物理学と哲学は、完全に乖離しています。
物理学と哲学が最も幸せな関係を築いていたのは、おそらく、カントの時代だと思います。
カントは、ニュートンの自然科学の研究から入って、やがて、道徳に惹かれていきました。
カントのお墓には、
「我が上なる星空と、我が内なる道徳法則、我はこの二つに畏敬の念を抱いてやまない」
と刻まれています。
これは、「実践理性批判」の結びの言葉でもあります。
意訳すると、天体の動きを司る万有引力の法則、
心の中の動きを司る道徳の法則、
この二つの普遍的な法則は、なんと尊いことだろう。
こんな感じです。
カントは、心の動きを司る道徳律を、自然科学と同じように解明しようとしました。
僕がやろうとしてるのも、同じことです。
自然科学の法則と同じように、人間の心を解明し、コンピュータで再現しようとしています。
そして、カントが追及した道徳律を、プログラムで実装できる程度に落とし込んだのが善悪の心理パターンとなるわけです。
道徳律を、自然科学と同じ土俵で扱う。
まさに、カントがやろうとしたことです。
哲学と物理学とを、同じ土俵で扱うこと。
天体の動きをコンピュータでシミュレーションするように、
人間の心の動きをコンピュータでシミュレーションする。
これが、ロボマインド・プロジェクトがやろうとしてることです。
哲学を、コンピュータを使って科学的に検証することができるようになるわけです。
次回は、善悪以上に、人間社会に重要な心理パターンについて説明します。
では、次回もお楽しみに!