第169回 レゴブロックで、心の世界を作ろう!


ロボマインド・プロジェクト、第169弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

さて、僕がずっと言い続けてるのは、科学を拡張しよう、新しい科学を作ろうってことです。
どこに拡張するかっていうと、「心」です。
主観で感じる部分も、科学的に扱おうってことです。

いきなり、新しい科学っていっても、どうしていいか分からないので、ちょっと、今までの科学を振り返ってみます。
いろんな分野を参考に考えてみます。
たとえば、遺伝子です。
ワトソンとクリックによって、DNAの2重らせん構造が明らかとなりました。
遺伝の世界の、最も基本的な構造が解明されたわけです。
遺伝世界の最小単位がDNAと言うわけです。

目に見える物質の世界は、原子や分子が最小単位です。
物質の性質を説明するのに必要な最小単位ってことです。
原子より小さい量子ってのもありますけど、物質世界にはあまり影響しません。

量子は量子の世界があるわけです。
量子は、原子の世界を説明するときに使われます。
電子とかクォークとかって、原子の世界の材料ってことです。

何が言いたいかと言うと、ある世界を科学的に扱うには、まずやるべきことは、その世界をつくり上げてる、最も基本的な材料、構成要素を探すことです。
物質世界なら分子や原子。
遺伝世界ならDNAです。
その次の段階が、その基本構成要素の機能とか、他の要素とのつながりとかです。

レゴってあるでしょ。
ブロックを積み上げて、家とか街を作るやつ
レゴの世界は、レゴブロックで出来てるわけです。
どんな世界も、それを構成する物と、その関係で出来上がってるわけです。

僕らが解明しようとしてる心の世界、主観の世界も、おんなじです。
それじゃぁ、心の世界をつくり上げてる構成要素って何でしょう。
第165回、166回「存在する世界を見るのか? 見るから、世界は存在するのか?①②」で五感の話をしました。
目や耳で感じる色や音が、心の世界の構成要素です。

心が感じる、目の前のこの世界。
その材料は、五感で感じる色とか音です。
それらを使って心の世界を組み立てていくんです。

それじゃぁ、どうやって心の世界を組み立てるんでしょう。
レゴをくみたてるのとは、ちょっと違うんです。
そこで、今回は、どうやって心の世界を組み立てるかについて考えて行きます。
それでは、始めましょう!

さて、心の世界の材料は、色とか音でしたよね。
色とか音は、レゴブロックとは違うので、組み立てるって表現だと、ちょっと分かりにくいです。
だから、レゴブロックより、コンピュータプログラムをイメージして欲しいんですよ。
プログラムって、変数を使います。
二つの変数A、Bを合計するプログラムだと、
A+Bを計算して、その結果を返します。
この場合、変数A,Bには数字が入りますよね。
変数は、どんな種類のデータが入るかを、最初に決めておきます。
主観世界のプログラムは、この変数に色とか音が入るって感じです。

たとえば、音階のプログラムを考えてみましょう。
特定の周波数の音の組み合わせが音階です。
それを感じる脳内のプログラムがあるわけです。
だから、ドレミファソラシドって、なんか、おかしいって感じるわけです。
僕は、おかしいとは感じないんですけどね。
まっ、それは置いといて、こんな風にして、音って変数をつかってプログラムが作られるわけです。

心の世界の材料は、五感以外にも、感情ってのもあります。
感情も、心のプログラムの変数です。
だから、ほかの変数と結びつくことができます。
たとえば音階です。
長調って楽しい感じがしますよね。
反対に、単調って悲しい感じがしますよね。
つまり、長調って音階は楽しいに、単調って音階は悲しいって感情に結びついてるんです。
これが、心のプログラムってわけです。

この、心や主観で感じるものを科学の世界ではクオリアっていいます。
クオリアって、現代の科学で唯一、主観に関する用語なんです。
クオリアに関しては、第30回~第34回の「クオリアってなんだ」シリーズでも詳しく語ってます。

色とか音はクオリアです。
感情もクオリアです。
つぎは、これを整理していきます。
クオリアは、色とか音みたいに五感で感じるものと、嬉しいとか悲しいって感情の2種類があるって言えそうです。
これを、知覚系クオリアと、感情系クオリアと呼ぶことにします。
知覚系クオリアは、体で感じるものです。
感情系クオリアは脳で生まれます。
クオリアは、身体系と脳系の2種類があるとも言えそうです。
それから、クオリアは、心のプログラムの変数にもなり得ます。
心の世界が、だいぶ、整理されてきましたよね。

クオリアって用語が生まれて100年近く経ちます。
それなのに、未だに、クオリアとは何かって議論から、ほとんど進んでいないんです。
これが、心や主観を扱う科学の現状なんですよ。

それが、こうして整理することで、クオリアはどうやって関連しあってるとか、次の段階の議論ができるようになってきました。

それでは、どうやって主観の世界が出来上がっていくのか、赤ちゃんから考えてみます。
赤ちゃんは、生まれる前は、子宮の中で浮いていました。
子宮にいる間は、世界なんか感じてないです。
少なくとも、自分と世界とは区別してません。
自分と世界が一体となってるわけです。
十月十日(とつきとうか)かけて、手足や感覚器、脳が作られるわけです。
そうやって、世界を認識する準備が整ってから生まれるわけです。

生まれた瞬間、赤ちゃんは不快感を感じます。
だから泣くんです。
この時、初めて、世界を感じたんです。
世界を感じるってことは、自分と世界が分離したってことです。
自分と世界が一体じゃなくなったってことです。

それじゃぁ、世界はどうやって感じるでしょう。
それは、五感です。

赤ちゃんは、何でも触りたがります。
触ったものを口に入れたがります。
これは、どんな硬さ、どんな味って世界を知ろうとしてるわけです。
そうやって、頭の中に、少しずつ世界が作られるわけです。
タオルとか、ベッドとかって、頭の中で作られていくわけです。
この辺りの話は、第68回~73回の「赤ちゃんが獲得したもの」シリーズでも語ってるので、よかったら参考にしてください。

赤ちゃん時代に作られる世界は、五感で直接感じられる世界です。
机とか椅子とかです。
パパとかママとかです。
これらに名前があることが分かると、言葉を理解できるようになります。
言葉を理解できるようになると、次は、絵本や物語を理解できるようになります。
次の段階の理解です。
物語世界の理解です。

子どもって、何度も同じ話を聞きたがりますよね。
同じ絵本を何度も「読んで」ってせがみますよね。
何度も同じ話を聴くのって、大人は苦痛でしかありません。
だって、オチは知ってるわけだし。

じゃぁ、子供は、同じ話聞いて、なんで、退屈しないんでしょうか?
それは、毎回、違う体験をしてるからです。
同じ話、同じオチだってことは、子供だって知ってます。
子どもが味わいたいのは、オチじゃないんです。
そうじゃなくて、何て言うか、自分の中に物語を作ろうとしてるんです。
まだ、はっきりと形をなしてない物語です。
それが、しっかりと脳の中で固まるまで、何度も聞きたがるんです。

悪いことをしたらバチがあたるとか。
動物をいじめたらダメだとか。
そんな物語のパターンです。

目に見える世界の奥で動いてる原理です。
五感で感じる世界が完成して、初めて、その世界を動かしてる原理が理解できるんです。
同じ物語を何度も聞くことで、世界を動かしてる原理を理解するんです。
理解するって、プログラムをつくるといってもいいです。

プログラムをつくったことのある人なら分かると思いますけど、プログラムのテストってものすごく重要なんです。
いろんなデータを入れて、ちゃんと動くかってテストです。

絵本の役割はそれなんです。
鬼のように悪いことをすると、最後に、退治されるってこと。
動物を助けたら、あとで恩返しがあるってこと。
そんなデータを入れて、プログラムをテストするわけです。
プログラムの結果と、物語の結果が同じになることを確認したら安心するんです。
自分のプログラムがちゃんと動いてるって安心するんです。
そうやって、世界を背後で動かしてるプログラムが固まっていくんです。

分かってきましたか。
これが、僕らがやるべきことなんです。
心を作るには、このプログラムをつくらないといけないんです。

機械学習やディープラーニングじゃ心は生まれないって、僕は、よく批判してきました。
でも、それは正確じゃありません。
僕が批判してるのは、ただやみくもに学習させることです。
大量の文書から、単語の出現率とか学習させても意味がないって言ってるんです。
心を作りたいなら、心のプログラムを学習できる仕組みを作らないといけないんです。
同じ物語を何度も聞いたり、いろんな昔話を読んで、普遍的なルールを抽出できる仕組みです。
悪いことしたらバチが当たるとか、いいことをすれば、後で、きっといいことが起るとか。
そんなルールを自動で学習できる機械学習です。
たぶん、それは不可能じゃないと思っていますし、いずれ、そうなると思います。
ただ、それは最終段階で、まずやるべきは、学習でなく、ルールを手作業で作ることです。
そのルールをプログラムで作ろうとしてるのがロボマインド・プロジェクトってわけです。

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それでは、次回も、お楽しみに!