第179回 時間細胞 新種発見


ロボマインド・プロジェクト、第179弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

この世界、物理世界は3次元でできていますよね。
それと、もう一つ、重要な次元があります。
それは、時間です。
世界は、三次元空間と時間でできてます。

さて、ここで一つ疑問があります。
三次元は、目で見て分かりますよね。
手で触って、どんな形か感じれますよね。
感覚器で感じれます。
じゃぁ、時間はどうでしょう?
時間って、感覚器で直接感じれるものじゃないんですよ。
じゃぁ、どうやって、時間を感じてるんでしょう?
これを追及していくと、意識に関して、重要なことが見えてくるんです。

じつは、人間が感じる世界は、意識が感じる世界と無意識が感じる世界の二つがあるんです。
その話は、この本に詳しく書いてあります。
説明欄にリンクを張ってますので、良かったら読んでください。
簡単に説明すると、意識が感じる世界は、今、見て感じてる、この世界のことです。

じゃぁ、無意識が感じてる世界って、どんなものでしょう?
無意識がすることって、たとえば自転車の運転とかです。
自転車に初めて乗った時のこと覚えてますか?
ハンドルをどう切るかとか、頭で考えて、フラフラしながら操縦しましたよね。
でも、慣れてくると、何も考えなくてもスイスイ乗れるようになります。
これが、無意識がしてることです。
自転車をスイスイ運転してるときって、頭では、運転のことを考えてなくて、別のことを考えたり、おしゃべりしながら運転できます。
考えたり、しゃべったりするのが意識です。
ペダルをこぎながら自然とバランスを取ってるのが無意識です。

意識と無意識の違い、分かりましたか?
どっちも、感覚器からの情報を得て行動してます。
違うのは、無意識は自動で動いてるってことです。
環境に自動で反応してるといってもいいです。

人間は、意識がありますよね。
たぶん、サルとか哺乳類も意識があると思います。
でも、魚とかハ虫類は人間のような意識は持ってないと思います。
つまり、環境に自動で反応して生きてるだけです。

時間の話に戻ります。
無意識は、環境に反応してるだけですよね。
無意識が感じてる時間は、外の物理世界に流れてる時間そのものです。
今、一瞬の出来事に反応してるだけです。
自転車で倒れそうになったらバランスを取るとかです。
これが、物理世界の時間を感じてるってことです。
無意識は、世界を認識してるわけじゃないんです。
ただ、世界に反応してるだけです。

でも、意識は世界を認識してます。
目の前に、壁や天井が見えてるって感じますよね。
これは、世界を作って、意識はそれを見てるからです。
意識が認識してる世界のことを、僕は仮想世界と呼んでいます。

この仮想世界の元になるのが、目や耳からのデータです。
感覚器からの情報です。
でも、目や耳などの感覚器では、時間は感じれないです。
はい、最初の問題に戻りました。
感覚器で時間を感じれなくても、意識は、時間の流れを感じますよね。
この動画を見てから、何分ぐらい経ったかなぁ、とかって分かりますよね。
じゃぁ、この時間の流れ、どうやって感じてるんでしょう。

じつは、時間は、自分で生み出してるんですよ。
脳で作り出してるんですよ。
時間をつくり出してる脳細胞のことを、時間細胞って言います。
はい、今回のテーマは、この時間細胞です。
それでは、始めましょう!

時間細胞については、第111回「発見! 時間をつくり出す脳細胞」でも語りましたけど、脳科学の実験で発見されました。
その実験というのは、まず、モニターに単語を順番に表示して、それを見て覚えてもらいます。
その後、同じようにモニターに単語を表示します。
このとき、活動する、ある脳細胞が見つかったそうです。
その脳細胞は、順番を記憶する脳細胞だそうです。
その脳細胞が見つかった場所は、海馬です。
海馬といえば、エピソード記憶を記憶するところです。
エピソード記憶っていうのは、遠足の思い出とか、あの時、ああして、こうしたよなぁって覚えるタイプの記憶です。

今回、フランス国立科学研究センターの神経科学者グループによって、時間細胞の新たな機能が明らかになったんです。
いや、明らかになったのは、脳細胞の機能じゃなくて、時間は存在しないってことです。

これじゃぁ、よく分からないですよね。
それじゃぁ、まずは、その実験内容から説明します。
脳に電極を埋め込んだ被験者の脳の活動をモニタリングするんです。
そして、順番に表示される写真を繰り返し眺めてもらいます。
たとえば、花→鳥→オバマ大統領とかって画像が、カチ、カチ、カチって順に表示されるわけです。
次に、同じことをもう一度します。
ただ、どの写真から始まるか分かりません。
それから、写真が表示されたら、次に表示される写真を、頭の中で予想するように指示を出します。
すると、この実験の間中、特定のタイミングで発火してる細胞が確認されたそうです。
カチ、カチ、カチと時間を刻んでる細胞です。
これが、時間細胞です。

問題は、その次の実験です。
今度もさっきと同じようにして、次の写真を予想させます。
ただし、一つだけ違いがあります。
さっきは、写真を見せたら、同じタイミングで次の写真を表示してました。
今度は、写真を見せたら、10秒ぐらい何も見せない時間を空けます。
すると、この場合でも、さっきの時間細胞はずっと活動し続けたそうです。
何も表示されなくても、カチ、カチ、カチって発火してたそうなんです。

これ、何を意味するかわかりますか?
何も表示されてないのに、時間細胞が発火してたんですよ。
脳細胞って、普通、何らかの外部刺激を受けて反応しますよね。
目で見たり、耳で聞いたりとか。
でも、時間細胞は、外部刺激がなくても反応したわけです。
ということは、どういう事でしょう。
時間細胞は、外の世界に反応してるんじゃなくて、自発的に動いてるわけです。
時間細胞は、外の世界と独立して、カチ、カチ、カチって時を刻んでるんですよ。
つまり、人間は、外の世界と独立した時間を感じてるってことです。
この実験は、そういう事を示唆してるんです。
この論文は、ここで終わりです。

さて、こっから先は、僕の考えです。
面白くなるのは、こっからです。

さっき、無意識の話をしましたよね。
無意識は、外部からの刺激に応答するだけって話です。
自転車が倒れそうになったら、重心を動かすとかって反応です。
つまり、こうなれば、こうするって反射行動です。
じゃぁ、この一連の行動で、時間はどこにあるでしょう?
無意識は、特定の外部入力があれば、それに素早く反応するって形で時間を扱ってます。
だから、しいて言えば、入力を検知してから反応するまでの筋肉が時間を持ってると言えます。
または、時間は、外部世界と身体に依存してるとも言えます。
つまり、無意識は、外部世界と一体となって動いてるわけです。
無意識は、外部の物理世界の時間を感じて生きてると言ってもいいです。

さて、次は、意識が感じる世界です。
僕らが、今、こうして感じてる世界のことです。
意識が感じる世界は、何で作られていましたか?
目や耳とかの感覚器からの情報でしたよね。
感覚器からの情報で、意識が感じる仮想世界は作られてますよね。
でも、時間は感覚器では感じれません。
じゃぁ、意識は時間をどうやって感じたらいいんでしょう?
それは、自分で作るんです。
そこで登場するのが時間細胞です。

さっきの研究でも言ってましたよね。
時間細胞は、外の世界とは関係なく、カチ、カチ、カチって時を刻んでるって。
これが時間細胞の意味なんです。

それじゃぁ、今、この瞬間の時間の流れを、感じて見てください。
感じましたか?
これって、外の物理世界の時間を感じてるんじゃないんですよ。
この時間の流れ、これは、時間細胞が生み出してるんですよ。
時間って、自分が生み出してるんです。

だから、エピソード記憶を持てるんです。
遠足に行ったことを思い出せますよね。
思い出の中にも時間が流れてますよね。
思い出の中に時間が流れるのは、自分で時間をつくり出すことができるからです。
何かの思い出を思い出すことができるのは、時間細胞があるからなんです。

僕は、よく、赤ちゃんや子供が世界をどうやって認識できるようになるのかって考えます。
赤ちゃんが、目につくもの、何でも触ったり、口に入れたりするのは、そうやって世界を確認してるんだって。
そうやって、頭の中に、世界をつくってるんだって。

子供って、ときどき、意味もなく「ブー」とか、「ウー」とかって言いますよね。
あれの意味がようやく分かったんですよ。
あれって、何をしてるか分かります?
あれって、時間を感じてるんですよ。
「ブー」とか「ウー」とか言って、それを自分の耳で聞いてるわけです。
「ブー」とか「ウー」って音が、継続して聞こえるのを感じてるんです。
その時、意識が感じてるのは、音だけじゃないんですよ。
「ブー」とか「ウー」って音を聞きながら、同時に、時間細胞が、カチ、カチ、カチって刻んでるのを感じてるんですよ。

「ブー」とか「ウー」とかって言ってる間、なにか感じるぞ。
いったい、これは何だろう?
そうやって、時間って感覚を感じて、頭の中に刻みつけてるんですよ。

その後、時計を習うんです。
これが秒針ですよ。
この針がカチって一回動くのが1秒ですよって。
この針が、カチ、カチって10回動くのが10秒ですよって。

そう言われて、1秒とか10秒が理解できるには、「ブー」とか「ウー」って言ってる間、世界には時間が流れてるって経験をしてるからなんですよ。
「ブー」とか「ウー」って言ってる間、背景に何か流れてるって経験があって、初めて、時間を理解できるんです。

分かってきましたか?
時間を理解するってのは、時間細胞が刻む、カチ、カチ、カチを感じるってことなんです。
決して、物理世界に流れる時間を感じてるわけじゃないんです。

第24回の動画では、「時間は存在しない」って断言しました。
今回は、時間が存在しない理由を、脳細胞レベルで解き明かしたわけです。
時間は、外部世界にあるんじゃないんです。
時間は、時間細胞がつくり出してたんです。

それがわかると、時間について、もっといろんなことがわかってきます。
その話は、次回、したいと思います。

はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それでは、次回も、お楽しみに!