ロボマインド・プロジェクト、第180弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。
前回、第179回「時間細胞、新種発見」で、時間細胞の話をしました。
脳に電極を埋め込んで、脳の活動を調べてたら、時間を生み出す時間細胞が見つかったって話です。
脳科学って、こうやって、脳細胞の機能を一つ一つ探っていくんですよね。
そうして、脳全体で、どんな処理をしてるのかって探ろうとしてるんです。
でも、この方法で、たとえ、脳の機能が全部わかったとしても、それで脳が分かったと言えるんでしょうか?
何か、大事なことを見逃してるんじゃないでしょうか。
大事なことってのは、それは、意識とか主観です。
脳の機能が全部解明されても、意識や主観は、見えてこないんじゃないかってことです。
だからと言って、脳の研究は意味がないって言ってるんじゃないですよ。
そうじゃなくて、脳の機能を解明するってアプローチじゃ、意識の謎は解けないって言いたいんです。
じゃぁ、どうすればいいんでしょう?
それは、意識の側から考えるんです。
意識が見てる世界があるとして、それをつくり出してるのが脳の機能だって視点です。
僕がやってるのが、まさに、それです。
先に、意識が感じる世界のモデルを想定するんです。
僕の場合、それが意識の仮想世界仮説です。
詳しくは、この本に書いてあります。
説明欄にリンクを張ってますので、興味がある方は読んでください。
僕の説だと、意識が感じてる世界は、頭の中に構築した仮想世界です。
目や耳で感知した現実世界を基に、仮想世界を作るわけです。
意識は、その仮想世界を見てるわけです。
脳の機能をこのモデルに当てはめてみるんです。
脳の中に、時間を生み出す時間細胞がみつかったわけです。
ということは、仮想世界のなかには時間の流れがあるってことです。
現実の物理世界とは別に、頭の中の仮想世界を流れる時間があるわけです。
このこと、時間を考えるうえで、物凄く重要なんです。
ここ、もう少し丁寧に説明しますね。
頭の中に時間細胞があるってことは、時間は自分が生み出してるってことです。
自分で時間を生み出せるってことは、時間を自由に操れるっていってもいいですよね。
ここで言ってるのは、タイムトラベルができるとかって話じゃないですよ。
そうじゃなくて、たとえば、エピソード記憶とかのことです。
エピソード記憶ってのは、遠足の思い出みたいな、思い出とか出来事の記憶のことです。
今、この現在を感じながら、遠足に行ったことを思い出すことができるのは、過去の記憶のなかで、今とは別の時間が流れてるってことです。
過去の記憶を呼び出して、自由に再生できるのは、時間を操ってるって言えますよね。
人は、時間を自由にコントロールできる機能を持ってるって言えるんです。
この機能を持ってるから、過去や将来を自由に想像できるとも言えます。
人が感じる世界とは何かって視点から、時間細胞を見れば、こう言ったことが見えてくるんです。
じゃあ、今度は、時間を自由に操れなかったらどうなるでしょう。
別の言い方をすれば、時間細胞が上手く機能しないと、世界はどんな風に感じられるのでしょう。
これが今回のテーマです。
それでは、始めましょう!
今回、考えるのは、自閉症とか、アスペルガー症候群の症例です。
自閉症の症例で、よくあるのが時間を理解できないってことです。
たとえば、「待てない」とかです。
何かやりたいことを見つけたら、1秒も待てないとかです。
ディズニーランドに行ったら、アトラクションを待つことができなかったりします。
すぐに乗れないとパニックになったりします。
意識は、時間細胞からデータを受け取って、それを感じることで時間の流れを感じるわけです。
意識は、時間だけじゃなくて、世界そのものも感じます。
つまり、時間の流れで変化する世界を感じるわけです。
言い換えると、5秒後、10秒後、どうなるかってことを想像できるってことです。
これが、時間を理解してるってことです。
第160回「意味理解 最後の壁」でマインド・エンジン第10弾のデモをしました。
ここで行ったデモは、「遅刻」と「間に合う」の意味理解です。
指定時刻が9時だとして、8時に家を出たら到着時刻が9時10分になって、間に合わなかったとします。
これを、7時50分に家を出た場合をシミュレーションしたら、9時に間に合うって理解できます。
または、8時に家を出た場合でも、走るとか、自転車に乗るとか、速く移動するってシミュレーションしても、間に合うって分かります。
でも、こんなこと、わざわざ、シミュレーションするほどのことでもないですよね。
そんなことしなくても、どうやったら遅刻しないかなんて、速度と距離の関係から計算式で分かりますしね。
でも、違うんですよ。
ここで重要なのは、シミュレーションするってことなんですよ。
シミュレーションって、何をしてるかわかりますか?
シミュレーションって、ある出来事を、条件を変えて、何度も再現してるんです。
つまり、時間を遡って、同じ出来事を繰り返してるわけです。
つまり、シミュレーションができるってことは、時間を自由に操れるってことなんです。
ここ、もっと深く考えて行きますよ。
たとえば、大学を目指して受験勉強していたとします。
有名大学に行って、一流企業に就職するって、人生を思い描いていたとします。
そのために、遊んだり、ゲームをするのを我慢して、1年間勉強しました。
でも、残念ながら、受験に失敗してしまいました。
その後の輝かしい人生が、全て消えてしまったんです。
もう、どうしようもなくなって、わぁーって、叫びたくなります。
これ、絶望です。
そこで、色々考えてみました。
よく考えたら、本当に、自分は大学に行きたかなぁとか。
世界には、自分の知らない世界が、もっとあるんじゃないかって。
バックパッカーになって、世界中を旅したら、もしかしたら、本当に自分がやりたいことがみつかるんじゃないかなって。
そんなことを考えてたら、ちょっとワクワクしてきました。
これ、希望ですよね。
さて、彼は、最初、なんで絶望したんでしょう。
それは、自分の思い通りにならなかったからですよね。
思い通りにならない現実を、まざまざと突き付けられたからです。
次に、かれは希望を見出しましたよね。
なぜ、希望を感じたんでしょう。
それは、新しい生き方が見えてきたからですよね。
じゃぁ、どうやって、それが見えてきたんでしょう。
それは、まだ起こってない未来のことを想像したからです。
つまり、シミュレーションしたんです。
シミュレーション機能があるから、絶望から立ち直れたんです。
そして、シミュレーションするには、時間を操る必要がありましたよね。
それでは、時間を自由に操れなかったらどうなるでしょう。
「待てない」に戻ります。
ディズニーランドで、アトラクションに乗るのに、「後、30分待ってね」と言われて、それが待てなくてパニックになるって、どういう事でしょう?
たぶん、これ、30分待ったらアトラクションに乗れるってシミュレーションができないんだと思うんですよ。
ちょっと我慢したら、自分のやりたことが実現するって未来を思い描けないんだと思います。
受験に失敗して、絶望するのと同じです。
目の前の現実、自分の思い通りにならない現実しか感じれないわけです。
そりゃ、わぁーって叫びたくなりますよね。
たぶん、待てないって子は、時間細胞を上手くコントロールできなくて、自由に将来をシミュレーションができないってことなんだと思います。
それから、自閉症の中には、時間に厳密過ぎるって症例もあります。
時間通りに厳密に行動しないとおれないってことです。
街に買い物に行くとして、10時に待ち合わせして、10時半にデパート行って、12時にお昼を食べてって予定してたとします。
それが、少しでも予定が遅れるとイライラして、これじゃ、12時にお昼を食べれないじゃないかって怒ったりするとかです。
お昼ご飯なんか、30分ぐらい遅れてもどうってことないって思いますよね。
でも、そういったことが、どうしても我慢できないみたいなんです。
自閉症のなかで、特殊な能力を持つ人をサヴァン症候群って言います。
サヴァン症候群に関しては、第61回、62回でも語ってますので、そちらも参考にしてください。
サヴァン症候群の中には、たとえば、一瞬見ただけで、写真を撮ったみたいに正確に記憶する能力の人がいます。
たとえば、この絵、見てください。
これ、写真を見て描いたんじゃないんですよ。
後から思い出して、記憶だけで描いたそうです。
スゴイですよねぇ。
本来、目からの情報は、おそらく、写真なみの情報量があるんだと思います。
ただ、普通の人は、その中から必要な情報だけ記憶して、重要でない情報は記憶しないとかってことを無意識で処理してるんだと思います。
一種の抽象化といってもいいと思います。
スケジュールに関しても、僕らは、重要度に合わせて、多少の誤差を許容できます。
お昼ご飯は、30分ぐらい遅れても、まぁ、いいかとかって。
これも、一種の抽象化だと思います。
おそらく、時間にこだわる人は、これがうまくできないんだと思います。
頭の中の世界が、秒単位で正確に動いているんです。
現実が、全て、その通りに動いてないと、イライラするんやと思います。
時間細胞が上手く機能しないってことは、こういう事なんだと思います。
主観で感じてる世界って、人によって、全然違うんですよね。
同じ物理世界の中で生きていても、人ぞれぞれ、違う世界を感じてるんです。
みんながみんな、自分と同じ世界を見てるわけじゃないんですよね。
それがわかってくると、ちょっと、生きやすくなると思います。
はい、今回の動画が面白いと思った方は、チャンネル登録、高評価お願いしますね。
それでは、次回も、お楽しみに!