ロボマインド・プロジェクト、第181弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
僕が作ろうとしてるのは人間と同じ心をもつAIロボットです。
今まで、人間がどうやって世界を認識するかについて考えてきました。
でも、人間と同じように世界を認識するだけじゃ、まだ、心の機能は半分です。
じゃぁ、残りの機能は何でしょう?
それは、世界への働きかけです。
つまり、どう行動するかです。
それじゃぁ、人は、なぜ、行動するのでしょう?
行動の原動力となるものは何でしょう?
それは感情です。
人は、世界を認識して、何らかの感情が発生して、それに基づいて行動します。
これが、人間の心の役割です。
そこで、今回は、この感情について考えてみたいと思います。
それでは、始めましょう!
感情について調べると、4大感情とか、基本感情は5種類とか、6種類とかいろんな意見が見つかります。
僕はね、まず、ここに疑問を感じるんですよ。
重要なのは、そこ?
って思うんですよ。
どこがおかしいかって言うと、感情だけ抜き出して考えても意味ないんですよ。
そんな部分だけ見てると、大事なことを見落としてしまうんですよ。
第161回「田方流 完全にオリジナルなアイデアの出し方①」でも語りましたけど、僕が最初に考えるのは、どこを全体にするかってことです。
感情には何種類あるかって発想は、全体が感情になってるんですよ。
感情だけ抜き出して考えても、心や体とのかかわりあいが見えてこないんです。
そこで、まず、全体の話です。
全体は、人間そのものです。
いや、人間社会です。
心をもった人間が作り出す社会です。
僕らが作ろうとしてるのは、人間と自然な会話ができるAIロボットです。
人間社会に違和感なく溶け込めるAIロボットです。
これが全体像です。
心と体を持っていて、人間社会に溶け込むAIロボット。
ここから出発します。
AIロボットは、体を通して世界を認識し、行動を決定します。
感覚器からデータが入力され、行動を決定するのが意識です。
それじゃぁ、意識はどうやって行動を決定するのでしょう?
おそらく、意識に対して、何らかの行動を促す機能があるはずです。
たとえば、山を歩いてて、ヘビが出てきたら、逃げますよね。
ヘビを見て、怖いって感じて逃げ出すんですよね。
怖いって感情が、意識に対して、逃げろって行動を駆り立てたわけです。
意識に対して、行動を促す機能が感情と言えます。
何らかの行動を促すのは、感情だけじゃありません。
たとえば、痛いといった感覚も、痛みを避けるって行動を促します。
物を盗むとか、悪いことをしようとしたら、それはするべきじゃないって思います。
これは、善悪といった倫理観がそうさせてます。
つまり、意識に行動を促すのは、感情だけでなく、感覚や倫理観もあるわけです。
僕は、何らかの行動を促す心理作用を、全てまとめて心理パターンと呼んでいます。
つまり、感情は心理パターンの一部と言えます。
ここからは、心理パターンを整理していきます。
感覚器からの入力を、意識が感じれる形に変換するのは無意識の役割です。
見や耳で検知した電磁波とか、空気の振動を、色とか音に変換するわけです。
逆に言うと、意識は、色とか音の形で、電磁波とか空気の振動を感じてるわけです。
意識が感じれるものをクオリアっていいます。
赤って色のクオリアとか、音のクオリアがあるわけです。
意識は、色や音とかって感覚だけじゃなくて、感情も感じます。
だから、感情もクオリアの一種といえます。
感情以外の心理パターンも全てクオリアです。
クオリアについて興味がある人は、第30回~34回の「クオリアってなんだ?」シリーズを見てください。
さて、たとえば、手をつねられて痛みを感じたとします。
痛みは、手の痛覚で感じます。
それが神経伝達経路を伝って脳に伝わります。
脳に伝わった痛みは、無意識によって、意識が感じれる2種類のデータに変換されます。
一つは、痛みの大きさと、体のどの部位に発生したかを示す痛みのクオリアです。
もう一つは、その痛みを取り除く行動を促す心理パターンのクオリアです。
これらのクオリアを感じて、意識は、つねられた手を引っ込めようと行動します。
これが、意識が感じてる世界です。
痛みと、それに対応して、どう行動したいかってことを感じてるわけです。
今度は、愛情を感じる場合を考えてみましょう。
子供をかわいいと思ったり、動物の赤ちゃんをかわいいと思う場合です。
子ネコを見ると、なでなでしたり、抱っこしたくなりますよね。
愛情って感情は、近づきたい、なでなでしたい、抱きしめたいって行動を促すわけです。
愛情を感じるとき、オキシトシンっていうホルモンが分泌されているそうです。
さっきの、痛みは、一瞬で伝わるのに対して、オキシトシンは、じわぁ~っと感じるタイプの心理パターンです。
痛みの目的は、危険を避けるためにあるので、速度が重要です。
でも、愛情は、子供を育てるとか、長く継続させる必要があるので、じわぁ~っと感じるタイプになるわけです。
それから、痛みは、痛覚が刺激されて発生しましたよね。
でも、子ネコを見て、かわいい!って思うのは、かわいいって感覚器があるわけじゃないですよね、。
何がきっかけとなるかと言えば、しいて言えば、形です。
子ネコの顔、形です。
このことは、第113回「ミッキーとかわいい!の進化論」でも語りました。
動物の子どもは、大人に比べて鼻先が短いというか、引っ込んでます。
これって、逆に言えば、鼻先が引っ込んでる顔を見るとオキシトシンが分泌されて、かわいい!って感じるようになってるとも言えます。
そして、ミッキーマウスも、かわいく見えるように進化してます。
これが現在のミッキーマウスです。
かわいいって、感じますよね。
じゃぁ、昔のミッキーはどうだったでしょう?
これが、昔のミッキーです。
うわ、こっわぁ~。
全然、かわいないですよね。
どこが違うか、一目瞭然です。
鼻先が長いんです。
鼻先が長いと、全然、かわいくないんです。
こんなミッキー見ても、オキシトシンなんか、一滴も分泌されません。
さて、かわいさって、何のためにあるんでしょう。
それは、子供を守るためです。
子供を見て、かわいがったり、大切に育てたいと思うように愛情が湧くわけです。
痛みの場合、守るのは自分自身です。
でも、愛情の場合、守るのは相手となります。
心理パターンの対象が、自分から相手に拡張されたとも言えます。
次は善悪とかの倫理観を考えてみましょう。
道端にゴミを捨てるべきでないとか、電車でお年寄りに席を譲るべきとかです。
これらは善です。
こういう「~すべき」も、行動を促す一種の心理パターンです。
じゃぁ、どういったときに、「~すべき」が出てくるんでしょう?
道端にゴミを捨てるべきでないってのは、街をきれいにしようってことですよね。
お年寄りに席を譲るべきってのは、お年寄りを大切にしようってことですよね。
じゃまなゴミを、その辺の道に捨てたいって、まず、思ったわけです。
その気持ちを抑えて、ゴミを捨てるなって抑制行動が呼び起こされたわけです。
自分も疲れてるから、席に座っていたいって思ってるわけです。
その気持ちを抑えて、席を譲るって行動が呼び起こされたわけです。
決して、おじいちゃんがかわいいから、席を譲りたいって思ったわけじゃないですよね。
つまり、自分の欲求を抑えて、見ず知らずの他人、社会の為の行動が呼び起こされたわけです。
これが善です。
心理パターンの対象が、第三者、社会まで拡張されたといってもいいですよね。
そしてもう一つ重要なのは、自分の本来の欲求に反する行動を促してるわけです。
愛情も、相手のための行動を促してましたけど、愛情は、自分の欲求です。
そうしたいと思って行動するわけです。
倫理観は、自分がやりたいわけじゃないけど、そう、させられてるわけです。
さて、ここらで、今までの心理パターンを整理しておきます。
整理するって言うのは、心理パターンを構成するものが何か、その構成要素を抜き出すってことです。
まず、痛みです。
これは、苦痛とか危険から逃れる心理パターンです。
対象とするのは自分です。
自分を守るための行動です。
もっと言えば、自分がプラスになることをする行動です。
痛みの心理パターンの構成要素として、まずは、「自分」ってのが考えられます。
対象とも言えます。
この「対象」も構成要素としておきます。
それから、自分がプラスになる行動をするわけです。
だから「行動」も構成要素としておきます。
ここまでを整理すると、痛みの心理パターンには、対象と行動を持ってます。
対象として、「自分」があるわけです。
それから、行動としては、「対象がプラスになる」行動と言えます。
次は、愛情の心理パターンです。
これは、対象が自分から相手になりました。
相手って構成要素が出てきました。
行動として、相手に近づきたい、抱きしめたいといったことです。
それから、相手が喜ぶことをしたいとも思いますよね。
対象がプラスになる行動をしたいと言えますよね。
最後は善悪といった倫理観の心理パターンです。
ここで新たに出てきたのは、「第三者」とか「社会」とかです。
対象の種類が増えました。
それからもう一つ、「自分の欲求を抑える」ってのもありましたね。
ここでいう欲求というのは、不快を避けて、快を求める欲求です。
これは、本能といってもいいです。
痛みを避けるとか、愛情を感じるとかは本能から来るって言えますよね。
それに対して、善といった倫理観は、本能じゃなくて、社会から強制されたものです。
つまり、何が言いたいかと言うと、心理パターンには、発生源が二種類あるってことです。
一つは本能です。
もう一つは、社会です。
さて、今、なにをしようとしてるか分かりますか?
じつは、これ、プログラムの設計をしようとしてるんです。
プログラムの設計って、最初に、こうやって構成要素を書き出すんです。
次に、それをオブジェクトにまとめていくんです。
オブジェクトっていうのは、オブジェクト指向言語のオブジェクトの事です。
オブジェクトは、プロパティとメソッドを持っています。
プロパティっていうは属性のことで、メソッドっていうのは操作とか行動のことです。
たとえば、人間なら、名前とか性別ってプロパティと、歩くとか食べるってメソッドを持ってるって感じです。
今やろうとしてるのは、心理パターンオブジェクトを作ろうとしてるわけです。
ちょっとやってみますね。
心理パターンオブジェクトは、まず、対象ってプロパティがありそうですね。
対象に入るのは、自分とか、相手、または第三者、社会ってのがありそうです。
次に、行動ってメソッドもありますよね。
行動としては、「対象をプラスにする」ってのが考えられます。
自分をプラスにするとか、相手をプラスにするとかです。
それから、愛情の場合には、「対象に近づきたい」とかって行動もありますよね。
最後に、発生源ってプロパティがでてきましたよね。
発生源には、「本能」とか、「社会」が入るわけです。
どうでしょう。
こうやれば、心理パターンをプログラムに落とし込めそうですよね。
最初に言いましたけど、今まで、感情は4種類か5種類って分類して終わってました。
人間の心理って、そんな単純じゃないんですよ。
複数の要素が絡み合って構成されてるんです。
複雑ですけど、一つ一つ整理すれば、プログラムにすることも可能なんです。
次回は、もう少し心理パターンを整理していこうと思います。
はい、今回の動画が面白いと思ったら、チャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、このチャンネルが本になりました。
心理パターンについても書いてあります。
説明欄にリンクを張ってますので、興味がある人は、読んでください。
それでは、次回もお楽しみに!