ロボマインド・プロジェクト、第187弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。
あっ・・・
あっ、失礼しました。
いや、さっき、麦茶飲んだんですけどね。
あれ、冷蔵庫、ちゃんと閉めたかなぁっ
いや、それどころやない。
今、撮影中やって、我に返ったんですよ。
この我に返る。
これができるのは人間だけです。
ここまでは、前回、第186回「人類史が変わる!AIに自我が生まれる瞬間」で説明しました。
我に返るって、たぶん、何かが繋がったんですよ。
ラジオで、チューニングが合った瞬間、突然、アナウンサーの声が聞こえるみたいな感じです。
この時、何が繋がったんでしょう?
いや、まず、その前に、どこと繋がったんでしょう?
今、我に返った時、僕が意識したのは、YouTubeの視聴者です。
目の前にはカメラしかないですけど、その奥に、自分を見てる人を感じたわけです。
つまり、誰かの視線です。
それを感じれる機能を持ってるわけです。
その機能があるから、目の前に人がいるときと、いないときで態度が変わるわけです。
いかにも、人間らしいですよね。
他人の視線を感じる機能があるから、人とコミュニケーションを取ったり、社会的生活ができるわけです。
これこそが、人間の意識にとって、最も重要な機能なんです。
じゃぁ、その、他人の視線を感じるって、どういうこと?
これが、今回のテーマです。
それでは、始めましょう!
僕は、よく、子供の発達と、脳の関係を考えます。
子どもの行動の変化は、脳が新たな機能を獲得したって考えるわけです。
たとえば、子供は人見知りをします。
知らない人に話しかけられると、恥ずかしがって、お母さんの後ろに隠れたりします。
これは、どういう言ことでしょう?
まず、親しい人と、知らない人を区別できてるわけです。
知らない人の前だと、どう振る舞っていいのか分からないわけです。
ということは、正しい振る舞い方があることを知ってるわけですよね。
あいさつしたり、自己紹介したりとかです。
それじゃぁ、これができるには、脳にどんな機能があればいいんでしょう。
まずは、人がどうやって世界を認識してるかから、おさらいします。
人は、現実世界を目で見て、その情報を基に、頭の中に、仮想世界を作ります。
意識が認識するのは、この仮想世界です。
つまり、仮想世界を介して現実世界を認識するわけです。
これを意識の仮想世界仮説と呼んでいます。
詳しくは、この本に書いてあります。
説明欄にリンクを張ってますので、良かったら読んでください。
さて、人は、今、目の前の現実世界以外にも、頭の中で自由に想像したりできます。
その時にも仮想世界を使います。
この時使う仮想世界を、想像仮想世界と呼ぶことにします。
さて、人見知りする子は、正しい振る舞い方が分からなかったんですよね。
正しい振る舞い方ってのは、目の前の現実じゃないですよね。
想像する方です。
つまり、想像仮想世界です。
挨拶したり、自己紹介したりとか、正しい振る舞い方を上手く想像できないわけです。
どう振る舞っていいかわからず、もじもじするわけです。
その現実から逃げたくて、たまらず、お母さんの後ろに隠れるんでしょう。
これ、一言で言えば恥ずかしいです。
「恥」に関しては、第17回「AIに必要なのは羞恥心だ!」で語りました。
えぇ~、サムネのことは、ちょっと置いといて、この、恥ってのが、ものすごく重要なんです。
正しい振る舞いってのは、その社会が求めている基準です。
自分は、それができないわけです。
つまり、自分は社会が要求する基準に満たないってことなんです。
それを認識したわけです。
たぶん、その先も想像したんでしょう。
社会が求める基準に満たないと、相手はどう感じるか。
「あいつは、こんなこともできない」って思うだろうなぁって。
これが他人の視線です。
これが想像できるってどういうことでしょう。
想像するから、想像仮想世界を使います。
そこに、自分と相手がいるわけです。
相手は自分を評価するわけです。
自分は基準を満たしていないって。
その様子を意識は認識するわけです。
つまり、自分を客観的に認識するわけです。
これが、恥ずかしいって感情です。
恥ずかしいって感情を感じるには、これだけの仕組みが必要なわけです。
つまり、自由に世界を想像できる想像仮想世界。
それから、そこに自分を配置して、自分を認識する仕組み。
つまり、客観的に自分を見るってことです。
それから、人の価値を評価する仕組みです。
この恥ずかしいって感情を理解できるから、社会的な行動ができるんです。
というか、みんながこの感情を持つことで、社会がまとまるんです。
もう少し、この仕組みについて考えて行きましょう。
自分が基準を満たしてないって思えるのは、人を評価する機能があるからでしたよね。
たぶん、社会をまとめる一番重要な機能は、この、人を評価する機能だと思うんです。
何らかの基準に沿って、人を評価するわけです。
頭の良さだったり、運動能力だったり、見た目だったりです。
そして、自分の評価が低いと恥ずかしく感じます。
恥ずかしいは感情です。
感情って、何らかの行動を掻き立てます。
行動のベクトルを持ってるといってもいいです。
この場合だと、評価を上げようってベクトルです。
だから、恥ずかしくないように、勉強したり、走る練習したり、おしゃれしたりするわけです。
ベクトルは向きと大きさを持ってます。
向きは、評価を上げる方向です。
大きさは、その力です。
もっと早く走りたいって思いの大きさがベクトルの大きさです。
ベクトルの大きさの分だけ、もっと練習に励むわけです。
さて、自分の評価が低いと思ったら恥ずかしいって感じます。
逆に、相手の評価が低いって思うことを、なんていうでしょう?
「見下す」ですよね。
じゃぁ、見下すって感情は、どんな行動ベクトルを生むでしょう。
見下すっていうから、矢印は下を向いてますよね。
つまり、行動ベクトルは、相手の評価をさらに下げる方向に向かうわけです。
たとえば、公園で、見かけない、弱そうな子をみつけたら、
「おまえ、変な、帽子かぶってるなぁ」とかって言ったりするわけです。
さらに相手の評価を低くするとしたらどうするでしょう。
たとえば、数の力を使います。
「おい、みんな、変な帽子をかぶってるやつがいるぞ」とか。
多数対少数です。
大勢で、評価の低い一人を見下すわけです。
つまり、いじめですね。
社会をまとめる力は、必然的に、いじめも生みだすわけです。
一つの行動ベクトルがあるなら、その反対方向のベクトルもあるはずです。
そこに、一人の女の子が登場しました。
「あなた達、やめなさいよ」
「あら、素敵な帽子じゃない」とかって。
ヒロインの登場です。
ヒロインが持ってたのは、優しさです。
優しさとは、弱いものを助ける方向のベクトルです。
これが人間社会です。
これが、社会を生み出す心の仕組みです。
まとめます。
社会を生み出すのに必要なのは、想像仮想世界を使って、自分を客観的に認識する仕組みです。
客観的に認識するとは、相手の立場で自分を評価することです。
そのために必要なのが、人を評価する機能です。
さて、これらの機能の共通点って分かりますか?
それは、どれも目に見えないってことです。
想像仮想世界とか、人の価値とか、目に見えないですよね。
何が言いたいかと言うと、目に見えたり、物理的に存在するなら、物理シミュレーションを使って学習ができるんですよ。
機械学習とか強化学習とか、今のAIの手法を使えるんですよ。
たとえば、こんな風に、二足歩行の強化学習とかができるんです。
(二足歩行動画 0:43~0:54,2:35~2:40,2:56~3:16ぐらい、音無しで。)
ロボットの足の関節の動かし方をちょっとずつ変えて、歩かせるんです。
このとき、速く歩けた方が評価が高いとかって学習させるわけです。
何万回、何十万回と学習することで、ちょっとずつ、上手く歩けるようになってますよね。
これができるのは、関節の数とか、動く方向とか、全部分かってるからです。
それから、重力とか、明確な目的とかがあるわけです。
目的は、ゴールまで出来るだけ早く到達することです。
これらが決まってるから、何十万回って学習すれば、人間らしい歩き方になるわけです。
足を曲げる角度とか、タイミングとかを最適に学習できるんです。
ところが、人の会話はそうじゃないです。
表に見えるものは言葉だけです。
たとえば、大量の言葉を学習させて、自動で高精度の文章を生成する話題のシステム、GPT-3があります。
でも、GPT-3は、それほどうまく文章を生成できません。
詳しくは、第174回「GPT-3、検証した、あご外れた」を見てくれればよくわかると思います。
なぜ、GPT-3だと上手く行かないかは、今回の話から、よく分かりますよね。
つまり、人間社会というものを分かってないと、自然な会話はできません。
人間社会を生み出すのは心です。
心の仕組みは、想像仮想世界とか、人を評価する機能でできてます。
ここが一番重要なんです。
二足歩行でいえば、足の関節とか重力です。
でも、言葉は、心の状態を、表面に表したものです。
二足歩行で言えば、歩いてる写真とかです。
人には関節があるとあ、重力があるとか、そんなこと無視して、ただ歩いてる写真だけを学習しても意味ないですよね。
そんなことしても、たぶん、ムチャクチャな結果になりそうです。
おかしな角度に足が曲がったり、重力に逆らって動いたり。
その辺りを解説したのが、第183回「ディープラーニングにいつまでダマされるのか。GPT-3編」です。
データを集めて学習させるより、その前にやるべきことがあるんです。
それは、心の仕組みの解明です。
そして、それをやってるのがロボマインド・プロジェクトってわけです。
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それじゃぁ、次回も、お楽しみに!