第188回 アルゴリズムじゃない! 意識が生まれる次元とは


ロボマインド・プロジェクト、第188弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

最近は、意識の話ばっかりしてますけど、いよいよ、核心に迫ってきました。
ようやく、意識プログラムと、他のプログラムの本質的な違いの話ができます。

僕が作ろうとしてるのは人間の持つ意識です。
その前段階の意識として、犬の意識について、第185回「意識がないと、〇〇がなくなる?!」で説明しました。
そこで語ったのは、川の向こう岸に肉があって、川の手前にいる犬が、その肉に向かってワンワン吠えてるって話です。
犬は、肉が食べたいけど、川があって食べれないからワンワン吠えてるわけです。
でも、よく見ると、ちょっと離れたとこに橋が架かってます。
橋を渡れば、向こう岸に行って、肉を手に入れることができるわけです。
賢い犬は、それが出来ます。
でも、あまり賢くない犬は、それができません。
じゃぁ、この違いはなんななんでしょう?
ここに意識の本質が隠れてるんです。

その前に、アルゴリズムの話をしておきます。
コンピュータで、問題を解く解法の事をアルゴリズムって言います。
たとえば、いろんな数字がごちゃ混ぜにあるとします。
これを小さい順に並び変える方法のことをソートアルゴリズムとかって言います。
その方法は、二つの数字を取り出して、小さい方を左にするって作業を、全部に繰り返すと、最終的に、小さい順に並び変わるってわけです。
こういう解法のことをアルゴリズムって言います。
アルゴリズムは、コンピュータプログラムで実現できます。

それから、最近流行りのディープラーニングも一種のアルゴリズムです。

入力された写真の画素を一つずつ比較して、小さいグループにまとめることで特徴を抽出して、特徴から何が写ってるか判断するってアルゴリズムです。

犬は、食べ物を見つけると、近づいて行って食べるってアルゴリズムを持っているわけです。
ただ、川があって、それ以上近づけないから、ワンワン吠えてたんです。

前回、第187回「どこ見てんのよ!他人の視線を感じるAI」で、「我に返る」の話をしました。
何か夢中になっていて、ふと、我に返るとかです。
夢中になるってのは、たぶん、アルゴリズムに従って動いてたんだと思います。

我に返るってのは、そのアルゴリズムから外れたわけです。
ワンワン吠えてた犬が、ふと、橋に気づいたわけです。
そうか、あの橋を渡ったら、あの肉が食べれるやんって。
これって、いったい、何が起こったんでしょう?

たぶん、今までのコンピュータの考え方とは、根本的に違う、何かなんだと思います。
それは、アルゴリズムの違いとかって、事じゃないと思うんですよ。
人は、それを獲得したことで、他の生き物とは全く違った道を歩むことになったんだと思います。
それが人間の意識です。
じゃぁ、そのアルゴリズムとは違う何かって、何なんでしょう?
それは、コンピュータで再現できるんでしょう?
これが、今回のテーマです。
それでは、始めましょう!

第186回「人類史が変わる!AIに自我が生まれる瞬間」で、意識の役割は、行動プログラムの決定って話をしました。
意識は、「よし、ゲームをしよう」って行動を決定すると、体の制御を行動プログラムに渡して、後ろに引っ込みます。
夢中になってゲームをしてても、お母さんに、「ご飯よ」とか、呼びかけられると、意識に制御が戻って、「今、行くから」とかって答えるわけです。

この仕組み、僕は、OSと同じだと思うんですよ。
OSで動くアプリが、行動プログラムってわけです。
行動プログラムの中身の処理がアルゴリズムです。

OSは、システム全体を制御してて、アプリの切り替えとかします。
たとえば、Wordとクロームを立ち上げて文書を書いてたとします。
分からないことがあったのでクロームで調べるとします。
このとき、クロームをクリックすると、アクティブなアプリがWordからクロームに移ります。
このアプリの切り替え制御をしてるのがOSです。

最近のOSはよくできてますけど、昔のOSだと、何か重い計算とかすると、OSが固まることがよくありました。
クリックとかしてもぜんぜん、反応しないんです。
これって、あまりにもゲームに夢中になってて、呼びかけても反応しないのと同じですよね。

どうも、意識ってのは、OSみたいなものなんかじゃないかって思うんですよ。
我に返るってのは、制御がOSに戻ってきたって感じです。

前回、人間の意識の最大の特徴は、自分を客観的に認識できることだって話をしました。
そのための仕組みが仮想世界です。
人は、目で見た世界を頭の中で仮想世界としてつくり上げます。
意識が認識するのは、この仮想世界です。
つまり、意識は、仮想世界を介して、現実世界を認識するんです。
これを意識の仮想世界仮説って言います。
詳しくは、この本に書いてあります。
説明欄にリンクを張ってますので、良かったら読んでください。

現実世界を、そのまま仮想世界としてつくり上げるので、仮想世界には自分も含まれるわけです。
仮想世界を使って世界を認識するということは、自分を客観的に認識できるともいえるんです。

デスクトップには、いろんなアプリが立ち上がってるわけです。
その中で、アクティブなアプリに、今、メインの制御があるわけです。
そのとき、デスクトップをクリックすると、制御がOSに戻るわけです。
制御がOSに戻るってのは、今まで動かしてたアプリを外から認識できるって言ってもいいわけです。
これって、客観的に認識してるって言ってもいいと思うんですよ。

わかってきましたか?
客観に関して、もう少し深掘りしていきます。
客観的に世界を認識できる機能を自分も相手も持っていたとします。
同じ世界をお互いに客観的に認識できるわけです。
これって、世界を共有してるって言えますよね。
世界を共有してるってことは、コミュニケーションが成立するってことです。

オンラインゲームみたいなものです。
お城や怪獣がいる世界に、プレイヤー、みんながいるわけです。
だから、一緒に旅したり、協力して怪獣を倒したりできるわけです。
つまり、世界を共有することで、互いにコミュニケーションできるってことなんです。

人間は、現実世界を共有してるから、互いにコミュニケーションできるってことです。
ここで注意して欲しいのは、現実世界って、物理世界そのものじゃないってことです。
たとえば、時間です。
時間って、時計を持ってればいいってもんじゃないんです。
「昨日、何してた?」とかって会話をするには、何をしたって記憶を持ってないといけないですよね。

OSで言えば、たとえば、ログを取る機能です。
いつ、どのアプリを起動して、その後、どのアプリを起動したかってログです。
そんなログを取っているから、「昨日、何をした?」って質問に答えれるんです。
逆に言えば、ログ機能を、お互いに持っているから、「昨日、何をした?」って会話ができるんです。

わかってきましたか?
意識やOSが何をしてるかって。

それじゃぁ、最初の課題に戻ります。
向こう岸の肉に向かってワンワン吠えてた犬が、橋を渡ったらいいって思いつきました。
このとき、何がおこったんでしょう?

その犬は、食べ物を見つけたら、近づいて食べるってアルゴリズムで動いていました。
でも、川があるので、近づきたいけど近づけないってジレンマに陥ってワンワン吠えてたわけです。

ここで、ふと、我に返ったわけです。
我に返るってのは、OSに制御が戻るってことです。
おそらく、心のプログラムには、OSに制御を戻す仕組みがあるんだと思います。
誰かに声を掛けられるとか、肩を叩かれるとかって外部から刺激を受けた時とか。
それ以外に、プログラムが無限ループに入るとか、同じ行動を繰り返すのを検出したときとかあるんやと思います。
今回がそれです。
ジレンマに陥って、それ以上動けなくなったことを検知して、OSに制御が戻されたんやと思います。

OSに制御が戻ると、自分を客観的に認識できます。
今、自分は何をやってるやって。

あの肉が欲しいから、近づいて食べるって行動プログラムを実行してたんだなって。
意識の目的の一つは、行動プログラムの決定です。
ある方法だと上手く行かないとわかったら、別の方法はないかって考えます。
そして、遠回りして近づくって方法があったって思い出すわけです。

そう思って、周りを見渡すと、橋がありました。
「そうだ、橋を渡れば向こう岸に行けるぞ」ってなるわけです。
これが、賢い犬に起ったことです。

分かりましたか?
肉に近づくってアルゴリズムで動いてる時、いくら橋をみても、橋を渡ろうって思いつかないんですよ。
それを思いつくには、遠回りしても近づくってアルゴリズムに切り替えないとダメなんですよ。
アルゴリズムを切り替えるには、一旦、制御をOSに戻さないといけないんですよ。
この、OSが持つ機能が意識です。

たぶん、哺乳類以前の動物の進化は、アルゴリズムの進化だと思います。
複雑な行動ができるようになるとか。
それを切り替えるOSは、比較的単純だったんだと思います。
食べ物を食べようとしてるとき、天敵の気配を感じたら、逃げるって行動に切り替えるとか。

哺乳類は、このOSの部分を進化させたんだと思います。
単なるアプリの自動切り替え器から進化させたんです。
そうやって、だんだん、OSの比重が重くなってきたんです。

そして、人間になると、OSで世界を客観的に認識できるようになったんです。
今まで、アプリは世界に直接反応して行動してました。
それが、仮想世界を作って、世界や自分を客観的に認識できるようになったんです。
作ったのは世界だけじゃありません。
時間も認識できる仕組みを作ったんです。

客観的に世界を認識できるようになったOSを持った人間は、同じ世界を共有して、コミュニケーションが取れるようになったんです。

わかりましたか?
人間と他の動物の本質的な違いが何か?

他の動物は、アルゴリズムを進化させたわけです。
人間の場合は、OSの方を進化させたんです。
だから、アルゴリズムをいくら工夫しても、人間の心は生まれないんですよ。

AIの歴史は、記号主義とコネクショニズム派のアルゴリズムの派閥争いの歴史でもありました。
コネクショニズムってのは、ニューラルネットワークのことで、今の第三次AIブームの主役、ディープラーニングはコネクショニズム派です。
記号主義は、第二次AIブームの主役です。
どっちのアルゴリズムが優秀かってことを競ってたのがAIの歴史です。

でも、重要なのは、そっちじゃないんです。
どっちのアルゴリズムが正しいかってことより、その前に、システム全体はどうなってるのかって見るべきなんです。
これは、僕がいつも言ってることです。
全体を小さく見積もると、本質が見えてこないんです。

心のシステム全体はどうなってるのかって、そういう視点を持つべきなんです。
そうしたら、アルゴリズムは、全体の一部でしかないって見えてきます。
そして、それを制御するOSが見えてくるんです。
意識の本質は、OSの側だって見えてくるんですよ。

まだ、行きますよ。
全体を、さらに広げてみるんですよ。
心のシステムから、もっと広げるんです。
それは、心のシステムが繋がった社会です。
人と人が繋がった社会です。

何が見えてきましたか?
人と人がコミュニケーションしてますよね。
どうやってコミュニケーションしてますか?
会話ですよね。
言葉です。
つまり、人間の社会ってのは、言葉を使ったコミュニケーションで成り立ってるんです。
僕が、何が言いたいか分かりますか?

いいですか。
言いますよ。
これって、まさに、チューリングテストなんですよ。
同じOSを持った者同士で会話して、繋がるって社会システムです。
会話が破綻することなく続くってことは、どちらも同じOSを持ってるってことなんです。
人とAIの会話が続くってことは、そのAIは、人と同じOSをもってるって言えるんです。
AIが心を持ったって言えるんです。
これがチューリングテストの本質です。
チューリングが見てたのは、ここなんですよ。

そう考えたら、やるべきことは、OSに必要な機能を洗い出すってことになりますよね。
そして、それをやってるのが、ロボマインド・プロジェクトです。

はい、今回の動画が面白ければ、チャンネル登録、そらから高評価お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、お楽しみに!