第190回 何、この、変な感情? 人類が最後に手に入れた究極の感情とは


ロボマインド・プロジェクト、第190弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

僕がずっと探してるのは、人間しか持ってないものです。
人間そっくりのAIロボットができたとするでしょ。
見かけも人間そっくりで、普通に会話もできるロボットです。
そんなロボットが僕らの生活に入って来て一緒に暮らしたとします。

そしたら、「あぁ、やっぱりAIやなぁ」って思うことがあると思うんですよ。
そこにこそ、本当の人間らしさがあると思うんです。
それこそが、人間の本質やと思うんですよ。
じゃぁ、それは何?ってなりますよね。

たぶん、多くの人が思い浮かべるのは、「愛」とかじゃないでしょうか?
でもね、よく考えると、愛って感情は、動物でも持ってるんですよ。
母性本能とか、子供をかわいいと思うのは人間だけじゃありません。
このことは、第113回「ミッキーとかわいいの進化論」でも語っています。
じゃぁ、動物は持ってなくて、人間しか持ってない感情って何でしょう。

今回、そのヒントを見つけたんですよ。
ヒントとなったのは、僕の友達のYouTube動画です。
チャンネルは「ふくねの楽しい支援教育Labo」っていいます。
福ちゃんって呼んでるんですけど、福ちゃんは、特別支援学校の先生です。
特別支援学校っていうのは、知的障害のある子の学校です。

僕のチャンネルを見てたら分かると思いますけど、僕は、専門書みたいに、体系的にまとめた本とかは、あまり参考にしないんですよ。
それより、自分の体験とか、ヘレン・ケラーの自伝とか、自閉症の話とか、できるだけ実体験に近いものを参考にするんです。
だから、現場で子供たちに直接接してる福ちゃんの話は、めちゃ参考になるんですよ。

よく、僕は当たり前のことほど、難しいっていうでしょ。
それは、僕らが当たり前にやってることって、当たり前すぎて、それができるってことに気づかないからなんです。
僕は、そういう当たり前のことを見過ごさないように、常に目を光らせてるんですよ。

ところが、そんな僕ですら、気づかなかったことがあったんです。
その事に気づかされたのが、この動画です。
「子供達が楽しめないのはどうして?」

テーマは、「楽しい」って感情です。
「楽しい」って、誰でももってますよね。
ところが、そうじゃないそうなんですよ。

えっ、どういうこと?ってなりますよね。
「楽しい」って、育てるもんやそうです。

どうもね、「楽しい」って、これこそ、人間が最後に獲得した感情じゃないかって思うんですよ。
「楽しい」
これが、今回のテーマです。
それでは、始めましょう!

まずは、進化の話から始めます。
生物学の用語で、「ネオテニー」って言葉があります。
次の代に進化する時って、前の代に、既に、次の進化の形が現れることがあるんです。
それもね、前の代の子どもに現れるんですよ。

たとえば、背骨のある動物を脊椎動物っていいますけど、脊椎動物は、背骨のない無脊椎動物から進化しました。
無脊椎動物にホヤってあります。

ホヤは、子供時代はオタマジャクシみたいなんですけど、このオタマジャクシには、背骨の原形があるんです。
それが、大人のホヤになると背骨は無くなります。
そして、ホヤから進化した魚類は背骨がある脊椎動物です。
これがネオテニーです。

ちなみに、これはホヤの赤ちゃんです。

ポニョそっくりで、めっちゃかわいいでしょ。

さて、人間の場合です。
人間はサルから進化しましたよね。
人間は、チンパンジーの大人より、子供の方に形が近いんです。

これを、人類ネオテニー説って呼ぶそうです。

こっからは、僕の考えです。
僕の興味は脳の進化です。
脳が進化によって獲得した機能と、その活動を考えてみたんです。
チンパンジーの子どもがして、大人になるとしなくなる活動。
そして、人間なら子供でも大人でもする活動です。
それは、「遊び」です。

チンパンジーだけじゃなくて哺乳類全般に言えることだと思いますけど、子供ってよく遊ぶんですよ。
でも、大人になると遊ばないんです。

でも、人間は違いますよね。
人間は、大人になっても、遊びますよね。
大人も、休みの日には、本やマンガを読んだり、映画を見たり、ディズニーランドに行ったりします。
でも、動物の大人は、特にやることがない時は、何もしないでぼーっとしてます。

人は、遊ぶって行動をするわけです。
行動の原動力は感情です。
じゃぁ、遊ぶって行動の原動力は何でしょう?
それは、「楽しい」です。
人は、楽しいから遊ぶわけです。

この「楽しい」って感情、たぶん、サルから人間に進化するとき、手に入れたんです。
たぶん、進化的に、最も新しい感情だと思うんですよ。
つまり、これこそが、人間と他の動物を分ける、最も重要な感情やと思うんです。

たとえば、恐怖とか不安は、ほかの動物でも持ってます。
この感情がないと、生き延びることはできません。
敵から逃げるって行動をするには、恐怖の感情が不可欠です。

じゃぁ、楽しいって感情は、何のためにあるんでしょう?
チンパンジーの子どもは、楽しいって感情で行動します。
お母さんから離れて、ちょっと冒険したり、ほかの子と追っかけっこしたり。
そうやって、世界に慣れていきます。
世界で起こる出来事を、遊びのなかで体験します。
逃げたり、戦ったりといった経験を、遊びの中で学んでいきます。

でも、そうやって、世界に慣れてきたら、それ以上、学ぶ必要はありません。
だから、大人のチンパンジーは遊ぶことはありません。
楽しいって感情も、感じなくなったんやと思います。

ここから、楽しいって感情の、最も重要な意味が分かります。
何か分かりますか?

感情の目的は、何でした?
行動の原動力でしたよね。

それじゃぁ、楽しいって感情は、どんな行動の原動力になりましたか?
世界を体験したいって、原動力ですよね。
もっと言えば、新しいことを知りたい、もっと学びたいってことです。

「楽しい」と、「恐怖」の構造的な違い、わかりましたか?
それは、収束するか拡散するかです。

恐怖の感情は、安全な場所に落ち着いたら、それで終わりなんです。
そこで、行動が収束するんです。
でも、楽しいって感情は、果てしないんです。
あれも知りたい、これも経験したいって思いに終わりはないんです。
行動が、次の行動を呼び起こすんです。
これが楽しいって感情の最大の特徴なんです。

分かってきましたか。
人間だけ、他の動物と全然違う暮らしをしてる理由が。
楽しいって感情を手に入れることで、人類は、無限に発展する原動力を手に入れたんです。
その原動力は、尽きることがないんですよ。
ここまで達成したら終わりってことはないんですよ。

楽しいって感情、これこそが、人間しか持ち得ない感情です。
進化的に最も新しい感情です。
たぶんね、恐怖とか不安って感情は、最も古い感情なんですよ。
爬虫類とか両生類とか、進化的に古い生物でも持ってる感情です。
そんな感情は、絶対、消えることは無いんです。

たとえば、仕事で疲れ果てて、元気がないとしましょ。
でも、帰り道で、「わぁー」言うて、包丁持った男が襲ってきたら、絶対逃げますよね。
絶対消えない、強い感情です。

逆に、「楽しい」って感情は、弱い感情と言えます。
たとえば、元気がないときって、何やっても楽しくないですよね。
ちょっとしたことで、消えてしまう感情ってことです。
なくても生きることはできます。
でも、これを持っていれば、より豊かに生きれます。
それが「楽しい」って感情です。

さて、ようやく最初の話に戻ります。
楽しいが分からない子の話です。

最初、楽しいが分からないって、どういうこと?って思いました。
でも、こうして整理してみると、「楽しい」って感情は弱いから、表に出にくいって、言えそうですよね。

「楽しい」って、誰もが、最初っから持ってる、当たり前の感情じゃないみたいなんです。
こっから、福ちゃんの話です。

鬼ごっことか、追っかけっことか、あんまり興味示さない子って、鬼ごっこが嫌いってわけじゃないんです。
ここ、勘違いしてる人が多いんです。
そうじゃなくて、「楽しい」って、感情が、まだ、育ってないって考えるんですよ。
へぇー、そういうことかって思いますよね。

ほんで、そういう子には、「楽しさの種」を育てましょうって言うんですよ。
まず最初にすることは、芽を出させることです。
何をするかって言うと、くすぐり遊びって言うんですよ。
こちょこちょこちょっとかって、くすぐるんですよね。

ここで、「くすぐる」について、考えてみます。
よく、人間の体って完璧だって言ったりしますよね。
無駄なものなど何一つないってことです。

僕はね、それ、ホンマかなぁって思ってました。
わきの下とか、足の裏とか、触られるとくすぐったいですよね。
これ、何か役に立ちます?

痛みとか、熱さとか、この感覚が無くなったら困るんはすぐに分かります。
でも、くすぐったいって感覚、なくても困らないですよね。

こっからは、僕の仮説ですよ。
人類は楽しいって、新しい感情を手に入れました。
たぶん、脳の中のどっかに、「楽しい」に対応する機能が生まれたんやと思うんですよ。
感情って、脳の中だけのデータだけじゃなくて、最終的には、体にも表れます。
たとえば、悲しみが極まると、泣き出します。
恐怖が極まると、鳥肌が立ちます。
ほんで、楽しいが極まると、笑うわけです。

体中には、神経が張り巡らされてますよね。
僕は、くすぐりって、進化の過程で起こった、バグやと思うんですよ。
どういうバグかっていうと、体中に張り巡らされてる神経が、間違って繋がったんです。
どことどこが繋がったかと言うと、脳の中の楽しさの中枢と、わきの下や足の裏です。
だから、わきの下とか、足の裏とか刺激されたら、脳の中の楽しさの中枢を直接刺激することになるんです。
楽しさ中枢を直接刺激したら、そら、笑ってしまいますよね。

コンピュータプログラムでは、問題を引き起こすバグは、すぐに修正されます。
これって、生物でも同じなんです。
進化の過程で、自然淘汰されるってことです。
でも、特に害のないバグって、見つかりにくいし、みつかっても放置されるんですよ。
それが、「くすぐったい」です。
「くすぐったいバグ説」です。

まぁ、僕の仮説はともかく、楽しさの種の話です。
楽しさって、レベルがあると思うんです。
たとえば、芸術とか数学とかの楽しさって、たぶん、かなり高レベルな楽しさやと思います。
楽しさの種が、かなり成長した人にしか分かりにくい楽しさです。

楽しさのレベルが、まだ種の段階の子には、一番低い楽しさから始めないとダメなんですよ。
それが、直接刺激です。
つまり、くすぐり遊びです。
体を直接刺激して、楽しさの中枢を直接刺激するわけです。
そしたら、もう、無理やりでも笑ってしまいますよね。
それを感じさせるんです。
なに、この感覚。
このむずむずした感覚。
これが、楽しいです。
種から芽を出したわけです。
まず最初は、こっからはじめないといけないんです。

今回は、いろんな事をしゃべったので、芽が出るとこで時間となってしまいました。
次回は、ここから、鬼ごっこができるようになるまでを追っていきたいと思います。

この動画がおもしろければ、チャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、今回紹介した福ちゃんの動画は、説明欄にもリンクを張ってあるので、よかったら見てください。
それでは、次回も、お楽しみに!