第193回 ニューラルネットワークから、遊びが生まれる瞬間


ロボマインド・プロジェクト、第193弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

たしか、3歳か、4歳の頃やと思います。
ちょっと高いとこから飛び降りるとき、必ず「とぉー」って言ってジャンプしてたんですよ。
これは仮面ライダーのマネです。
マネというか、「とぉー」って言わないと、ジャンプする勇気が出なかったんです。
「とぉー」ってゆうたら、仮面ライダーになった気になって、思い切って飛べたんです。

ある時、兄に、「とぉーって言わんとジャンプできひんやろ」って指摘されましてね。
つい、「言わんでも、ジャンプできるわ!」って言ったんですけど、
いざ、ジャンプしようとしたら足がすくんむんですよ。
そこを思い切って、ジャンプしたらできたんですよ。
あれ、「とぉー」って言わなくても、ジャンプできたって、自分でも驚いたんを覚えてます。

何の話をしようとしてるかと言うと、行動の分離の話です。
前回の第192回「感情システム」、前々回の第191回「AIが楽しさを理解した」では、楽しいって感情について考えてみました。

楽しいって感情は、人間しか持ち得ない感情だって話です。
楽しいって感情を持つから、絵を上手に描けるようになったり、道具を発明したりしたわけです。
つまり、「楽しい」って感情を持つことで、人類は、進歩できたんです。

じゃぁ、人類は、どうやって、楽しいって感情を手に入れたのかってことです。
たぶん、元々は全部つながってたんやと思います。
僕が、「とぉー」っていわないとジャンプできなかったみたいに。
これを、僕は、「とぉー」と、ジャンプを分離したわけです。
これと同じように、いろんな感情の中から、「楽しい」だけを分離したんやと思います。

もうちょっと説明しますよ。
カエルは、目の前に虫がいたら、反射的に食べます。
本物の虫でなくても、スマホのアプリの虫でも、食べようとします。

ちょろちょろ動く虫を認識したら、捕まえて食べるって行動を止めれないんです。
たとえ、それが本物の虫でないってわかっても、その後の行動を止めれないんです。
これが、行動を分離できないってことです。
認識と行動が一体となっていて、それ以上分離できないわけです。

感情も同じやと思うんです。
たぶん、人間は、進化の過程で楽しいって感情を分離したんやと思うんです。
この分離するって機能こそ、人間を人間たらしめるもんやと思います。
これが今回のテーマです。
人は、どうやって感情を分離したのか。
それでは、始めましょう!

さて、感情を分離するって、どういうことでしょう。
僕が思うに、分離と言うより、要素に分解していったんやと思います。
たとえば、三大欲求と呼ばれるものがあります。
食欲、睡眠欲、性欲のことです。
どれも、こうしたいって行動を駆り立てます。

おそらくね、この欲求を要素に分解して、共通項を抽出した結果、取り出されたのが「楽しい」って感情だと思うんですよ。
何か特定の行動に結びつくんじゃなくて、何かをしたいと思う抽象的な部分です。
抽象化といってもいいです。
「楽しい」だけを分離したら、その後に起ったのが、組み換えやと思います。
いろんな活動と、楽しいを結びつけたんです。
それが、人類の進化の過程で起こったわけです。
これによって、人類は発展してきたわけです。

今回、解明したいのは、じゃぁ、どうやって、感情を分解したり抽象化したりするかってことです。
こんなときに使えるのが機械学習です。

僕は、機械学習や、ディープラーニングじゃ、意味理解できないとかって、散々言ってきたんで、機械学習を目のカタキにしてるって思われてるかもしれないですけど、そんなことないですよ。
使い方を間違えると意味ないって言いたいだけで、正しい使い方をする分には、何も問題ないと思ってます。
ほんで、正しい使い方ってのが、要素に分解するって機能です。

まずは、ニューラルネットワークについておさらいします。

ニューラルネットワークっていうのは、脳の神経細胞、つまりニューロンをモデル化した物です。
このニューロンがあるのが大脳です。

大脳って、脳の進化で最も大きくなった部位です
ヒトだと、脳の大部分を占めるまでになってます。
カエルのような両生類には、大脳はほとんどありません。
カエルは、行動を変更できなくて、人間は、自由に行動を変更できるっていうのも、どうも、大脳が関係しそうです。
つまり、ニューラルネットワークが、関係していそうってことです。

ディープラーニングは、このニューラルネットワークを何層にも組み合わせたものです。
まずは、ディープラーニングについて復習します。

大量の顔写真を学習させることで、顔認識ができるようになります。
最初の段階は、数10ピクセル×数10ピクセルの小さな画像のパターンを用意します。
縦とか横、斜めといった単純なパターンです。
これが低レベルの特徴です。
次の中間レベルは、低レベルの特徴を組み合わせていきます。
すると、目や鼻が現れてきましたよね。
最後の高レベルは、中間レベルの特徴を組み合わせるわけです。
つまり、目や鼻、口を組み合わせて顔らしき画像のパターンが出てくるわけです。

分かってきましたか?
大量の顔画像を学習することで、そこに含まれる共通する要素を取り出せたわけです。
それが、目や鼻や口ってことです。
そして、この要素を組み合わせたものが顔だって判断するわけです。
目と鼻と口があれば顔って判断するわけです。
これが、ディープラーニングの仕組みです。

人間のもつ抽象化能力って、こうやって出来てるんだと思います。
足が四本で、全身に毛が生えてたら哺乳類とか。
水の中で泳いでいて、流線形で、ヒレのある動物は魚だとか。
そんな風に、ぱっと見て、それが何かわかるのは、共通の要素を取り出して、抽象化して理解してるからです。
そして、それをやってるのが大脳のニューラルネットワークってわけです。

この抽象化できるのは、目で見たものだけじゃないです。
似たようなデータがいっぱい集まれば、共通要素を取り出して抽象化できます。

そこで、次に、何を対象にしてるみるかって言うと、感情です。
食欲、睡眠欲、性欲といった、大量の欲求データを処理することで、共通する要素を抽出できるはずです。
共通する要素って、どういうものでしょう?
それは、何らかの行動を駆り立てる抽象的な欲求です。
欲求に結びついてる個々の行動は取り除くわけです。
残ったものは、何らかの行動をしたい、続けたいって感じさせる感情です。
はい、これが、何かわかりますよね。
そう、これが、「楽しい」って感情です。

分かってきましたか?
楽しいって感情が、何で、人間しか持ち得ない特殊な感情なのか。
それは、大脳が大きく発達した生物しか持ち得ない感情だからです。
ニューラルネットワークを使った学習システムを持ち得て、初めて、取り出せた抽象的な感情なんです。
特定の行動に結びついていない、抽象的な感情なんです。

特定の行動に結びついていないということは、逆に言えば、いろんな行動と結びつくことができるってことです。

ということは、つぎに必要な機能は組み合わせるって機能となります。
でも、これは、既にディープラーニングでもやってます。

これは、さっきのディープラーニングを二つに処理に分けたものです。
前半が畳み込み層で、最後が全結合層って言います。
この畳み込み層ってのが、目とか鼻といった要素を抽出する段階です。
最後の全結合層っていうのが、要素を組み合わせる段階です。
つまり、目と鼻と口があれば顔だって判断するのが、ここです。
ディープラーニングってのは、要素の抽出と、その要素を組み合わせるって二つの処理でできてるってわけです。

ディープラーニングで出来てるなら、大脳でもやってないわけないですよね。
たぶん、抽出した「楽しい」って感情と、行動とを組み合わせたんやと思います。

ここで、整理します。
僕の考えでは、カエルは、意識がありません。
または、カエルレベルの意識といってもいいです。
それがどういう物かと言うと、認識と行動が直接結びついてるタイプです。
だから、行動を変更できないわけです。
食べれないスマホの虫でも、飛びついて食べようとする行動を止めれないわけです。

意識を持つようになったのは、哺乳類からと考えています。
意識が認識するのは、頭の中につくった仮想世界です。
現実世界そっくりの仮想世界を作って、意識はそれを認識するってモデルです。

この話は、詳しくはこの本に書いてあります。
説明欄にリンクを張ってますので、良かったら読んでください。

このモデルだと、世界の認識と、行動を分離することができます。
それを繋ぐのが意識と感情です。
お腹がすいたって事実は、空腹感って感覚を通して意識に伝えられます。
意識は、空腹感を感じて、何か食べ物を探しすって行動を起こします。
これを実現してるのが、大脳のニューラルネットワークです。

さて、話はこっからです。
お腹が空いたから、狩りに出かけたとします。
槍とか弓矢で獲物をしとめるわけです。
上手く獲物をしとめたら、食べ物にありつけます。
空腹が満たされます。
大きな獲物をしとめたら、仲間みんなかよろこびます。
悪くない気分です。

大脳のニューラルネットワークは、このときの感情を抽象化します。
それが楽しいです。

さて、その感情と結びついてる行動はなんでしょう?
狩りで獲物を獲ることですよね。
これも、大脳のニューラルネットワークは、抽象化します。
抽象化すると、獲物を狩ることに限定されなくなります。
的にやりとか弓を当てるとかでもいいわけです。
上手く的に刺さると、それに結びついた感情が発生するわけです。
それが「楽しい」です。

はい、遊びの発明です。
ここから、人類の大躍進が始まります。
この続きは、次回、お話しします。

今回の動画がおもしろかったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それでは、次回も、お楽しみに!