ロボマインド・プロジェクト、第195弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
僕が、今、作り上げようとしてるのは、新しい心の理論です。
その中心となるのは、意識と感情です。
特に、ここ最近は、感情について考えてます。
新しい理論といっても、何でもありじゃないです。
ちゃんと科学の原則にのっとってないと意味がありません。
科学の原則ってなにかっていうと、僕は、第一にオッカムのカミソリを挙げます。
オッカムのカミソリって、簡単に言えば、ある現象を説明するのに、複数の理論が考えられる場合、シンプルな方が正解だってことです。
分かりやすい例で言えば、天動説と地動説です。
全ての星が、地球の周りをまわってると考えるのが天動説です。
地球が太陽の周りをまわってると考えるのが地動説です。
望遠鏡が発明されて、星の動きが正確にわかってくると、木星や金星といった惑星が、時々、逆行するってことがわかってきました。
これ、天動説だと、ちゃんと説明できないんですよね。
そこで、天動説で無理やり説明しようとして、地球の周りを公転しながらさらに回転するって理論を導入したりしたんですよ。
そしたら、どんどん複雑になってくるんですよね。
それが、地動説だと、簡単に説明できます。
こうやってシンプルに説明出来る方が、科学的に正しいとなります。
これを、オッカムがカミソリといいます。
さて、何の話をしようとしてるかと言うと、感情の理論です。
僕は、一見、何十種類もあるように見える感情も、少数の基本的な感情の組み合わせで全て説明できると思ってます。
第190回「人類が手に入れた究極の感情」で、「楽しい」は人間特有の感情だって話をしました。
でも、それは、動物が元々持ってる感情から作れるって、第193回「ニューラルネットワークから遊びが生まれる瞬間」で説明しました。
そこで、食欲、睡眠欲、性欲といった三大欲求を、ディープラーニングで学習することで、「楽しい」って成分を抽出できるって話をしました。
こうやって、余計な感情を作らずに、基本的な感情から、その他の感情が作り出されるわけです。
これが、オッカムのカミソリってわけです。
さて、前回、第194回「なぜ、遊びが楽しいか?」で、遊びについて考えました。
そこで、取り上げたのが、ロジェ・カイヨワの遊びの4形態です。
カイヨワは、遊びを、競争、偶然、模倣、めまいの4つに分類しました。
前回は、競争について取り上げました。
今回は、模倣を取り上げようと思ったんです。
模倣も、基本的な感情とか活動から成分を抽出すればできると思ったんです。
ところが、どうしても、分からないんです。
でも、ここで新たな感情を付け加えると、感情の理論が複雑になります。
オッカムのカミソリに反します。
それだけは、絶対に避けないといけません。
そう思って、ずっと考えていたんですけど、どうしても分かりません。
そこで、もしかしたら、新しい感情が、必要なのかもしれないって思ったんです。
動物にはなくて、人間だけが持つ、全く新しい感情です。
もし、そんなのがあるなら、それこそ、人間と、他の動物とを分ける、源と言えるかもしれません。
もしかしたら、そのヒントが、模倣って遊びにあるかもしれません。
これが、今回のテーマです。
動物は持っていない、全く新しい感情。
それでは、始めましょう!
まずは、カイヨワの遊びの4形態の一つ、「競争」について、考えてみます。
競争とは、勝ち負けを競う遊びです。
元となるのは争いです。
動物は争いますよね。
縄張り争いとか、メスをめぐって争ったりします。
いろんな争いがあって、その共通項を取り出したのが「競争」です。
争いが競争の原形です。
動物の時代から持っていたものを抽象化したんですよね。
これは、分かりますよね。
つぎは、「模倣」です。
「模倣」の遊びについて考えてみます。
女の子なら、ままごととかですよね。
男の子なら、仮面ライダーごっことか、ごっこ遊びです。
さて、この「模倣」の原形ってなんでしょう?
動物って、模倣しますかねぇ。
死んだふりする動物とか、擬態する動物とかはいます。
でも、それって、敵を欺くためとかですよね。
ままごととか、ごっこ遊びに結びつかないですよね。
動物も持っている感情に還元しようとしたんですけど、どうしても見つからないんです。
そこで、人類が、全く新しい感情を獲得したと考えました。
その感情というのは、「憧れ」とか、「好き」です。
ままごともごっこ遊びも、好きな役になりたいですよね。
女の子なら、お母さん役とか。
ここで、「好き」って感情について整理してみます。
まず、男と女の好きです。
これは、動物にもありますよね。
種を残すために必要な感情です。
つぎに、母親が子どもに感じる愛情です。
母性本能です。
これも、動物も持ってます。
この感情がないと、子どもを育てられないですからね。
さて、お母さんが子どもを好きなように、子どもも、お母さんが好きですよね。
赤ちゃんは、お母さんに守ってもらえないと生きて行けません。
だから、お母さんにくっついていきます。
お母さんが好きなわけです。
これは、動物でもあります。
でも、動物は、ままごと遊びはしないですよね。
だから、ままごと遊びの原動力となる感情は、単に好きってことじゃないんですよ。
好きのなかでも、憧れって感情の部分だと思うんですよ。
たぶん、これが、人間にしかない、新たな感情だと思うんです。
他の動物には、カケラもない、全く新しい感情だと思うんですよ。
憧れって、どういう物でしょう。
ままごとで、お母さん役する女の子は、何をしますか?
料理の真似ごとしますよね。
ごっこ遊びする男の子はどうでしょう。
仮面ライダーごっこする男の子は、仮面ライダーになりきって戦いますよね。
これ、お母さんや仮面ライダーが単に好きってだけじゃないです。
お母さんみたいな大人や、仮面ライダーみたいになりたいわけです。
はい、これです。
憧れの人になりたいって感情です。
これ、動物にはないんですよ。
たぶん、人間にしかない感情なんです。
人類が、進化の過程で獲得した感情やと思います。
なんで、人間にしか持ち得ないのか、その仕組みを説明します。
まずは、心の仕組みのおさらいです。
人は、目で見た現実世界を頭の中で仮想世界として構築して、意識は、それを認識します。
これを、僕は、意識の仮想世界仮説と呼んでいます。
詳しくは、この本に書いてあります。
説明欄にリンクを張ってますので、良かったら読んでください。
さて、仮想世界は、現実を認識するための現実仮想世界以外に、もう一つ、存在します。
それは、昔の思い出や、将来を想像したりするときに使う仮想世界です。
これを、想像仮想世界と呼ぶことにします。
憧れの人がいるとします。
お母さんとか、仮面ライダーとかです。
お母さんが料理するとことか、仮面ライダーが戦ってるとこを想像します。
想像するということは、想像仮想世界に、仮想的に作り上げるわけです。
次は、現実の自分です。
自分がいるのは、現実仮想世界です。
現実仮想世界は、目で見た現実の世界です。
想像でなく、現実なので、自分の自由にはなりません。
その中で、唯一、自分の自由になるものがあります。
それは、自分自身です。
自分の体は、自分の意志で動かすことができます。
想像仮想世界で、憧れの人を想像します。
お母さんが台所で料理してます。
包丁で大根切ってます。
そして、現実仮想世界で、自分の体に、同じ動きをさせるわけです。
持ってるのは、おもちゃの包丁です。
おもちゃの包丁で、野菜を切ったふりするわけです。
でも、頭の中では、実際に大根を切ってます。
想像仮想世界の中の憧れの人と、現実の自分が同期して動くわけです。
すっかり、お母さんになってるわけです。
楽しいですよねえ。
男の子は、想像仮想世界で怪獣と戦ってる仮面ライダーをつくり出します。
現実世界の自分は、想像仮想世界の仮面ライダーと自分をダブらせて動くわけです。
実際には、怪獣はいないけど、想像仮想世界の怪獣を目の前に投影して戦うわけです。
仮面ライダーになった気分になります。
えいっ、とぉー、っていって悪い怪獣を倒すわけです。
憧れの仮面ライダーに自分がなって、怪獣を倒しているんです。
そりゃ、興奮しますよね。
今、つい、そりゃ、興奮しますよねって言ってしまいましたけど、ここなんですよ。
気付かないといけないのは。
そりゃ、当たり前って出てきたときは、要注意ですよ。
当たり前に思うってことは、自然に沸き起こってるってことです。
つまり、それは、僕らの心が持ってるってことなんです。
今、探そうとしてるのは、これなんです。
整理しますよ。
憧れの人が活躍してる場面を想像するわけです。
自分も、それと同じ動きをするわけです。
そしたら、自分が活躍してるように思えて、楽しい気持ちになるわけです。
これが、模倣の遊びです。
ままごととか、ごっこ遊びです。
そして、これを実現するシステムとして、現実仮想世界と想像仮想世界という二つの仮想世界が必要なんです。
自分がお母さんや仮面ライダーになれるのは、この二つの仮想世界が同期して動いたときです。
それを検出したとき沸き起こる楽しい感情があるわけです。
第192回で、感情のシステムについて説明しました。
感情ってのは、システムとして捉えないといけないって話です。
模倣遊びで起きる感情は、現実仮想世界の自分と、想像仮想世界の憧れの人が同期したときに発生する感情と言えます。
これが感情をシステムとして捉えるってことです。
そして、想像仮想世界をもってるのは、人間だけなんです。
だから、模倣遊びをするのは、人間だけなんです。
少し大きくなると、今度は、歌手や、スポーツ選手、科学者や芸術家といった人に憧れるようになります。
そして、そんな憧れの人みたいになろうと思って真似するわけです。
一生懸命、練習するわけです。
こうやって、人は成長するわけです。
社会で活躍するようになるわけです。
こうやって、人間社会は発展してきたわけです。
その原動力は、憧れの気持ちです。
そして、憧れの人に簡単になれるのがまねっ子遊びです。
人間社会を形作る感情が、また一つ、解明されました。
はい、今回の動画がおもしろければ、チャンネル登録、それから高評価お願いしますね。
それでは、次回も、お楽しみに!