第196回 言語を生み出す 本当の最初の一歩


ロボマインド・プロジェクト、第196弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

前回、前々回とロジェ・カイヨワの遊びの4形態を取り上げました。

前々回、第194回「なぜ、遊びが楽しいのか」で取り上げたのは、競争です。
かけっことか、将棋とかです。
前回、第195回「破綻! ロボマインド理論」で取り上げたのは「模倣」です。
今回は、偶然を取り上げます。
ジャンケンとか、サイコロ遊び、ギャンブルです。

考えたら、ジャンケンって、今までの遊びと、ちょっと違うんです。
遊びの基本は、「競争」にあると思います。
かけっことか、鬼ごっことか、将棋とかです。
競争の元は、争いです。
争いなら、動物でもしますよね。
食料とか縄張りを争いです。
勝った方が報酬を手に入れるわけです。

勝敗のルールは、動物によって様々です。
たとえば、カバは、口の開け方が大きい方が勝ちってなります。

この勝負の部分が、競争って遊びになるわけです。
ルールを工夫して、鬼ごっこや将棋を生み出したわけです。
なるべく、楽しみを持続させるように進化させたわけです。

でも、ジャンケンとか、サイコロ遊びはどうでしょう。
ルールを、究極までシンプルにしてますよね。
一瞬で、勝敗が決まります。

ジャンケンとか、サイコロとかは、その遊びを楽しむんじゃなくて、その後の報酬を楽しむものです。
分かりやすいのが、ギャンブルです。
ギャンブルの面白さは、ゲームの過程より、賭けたお金がいくらになるかってとこですよね。
だから、ゲームの中身は、そんなに重要じゃないんです。
だから、ジャンケンとかサイコロ遊びは、一瞬で勝敗が決まるんです。

さて、これだけの分析なら、面白くないですよね。
こっから話は飛んで、言語の話になります。
人類は、遊びを生み出しました。
この遊びを生み出すのと同じ手法で、言語も生み出したってわかったんですよ。
というか、言語で、どうしてもわからなかったことが、ようやくわかったんです。
それが何かと言うと、最初の一歩です。
一体、他の動物と、人間とじゃ、何が違って、言語を生み出したのか。
言語を生み出す最初の一歩。
これが今回のテーマです。
それでは、始めましょう!

僕が、一番重要だと思うのは、「分ける」ってことです。
カバで考えますよ。
隣のカバの群れのボスが、こっちのカバの群れの縄張りを取りに来ました。
ボス通しが戦うわけです。
どっちが大きいく口を開くかで争うわけです。
隣のボスの方が小さいと、すごすごと逃げて帰るわけです。
これって、一種のコミュニケーションですよね。
このコミュニケーションが成り立つってことは、お互い、この行動の意味を理解してるわけですよね。
隣のボスは何しに来たのか、どうやって決着をつけるか、負けた方がどう行動するか。

これをお互いにわかってるってことは、一連の行動は、生まれた時から持ってるわけです。
遺伝子に刻まれてるんですよ。
だから、別の群れのカバとでも、同じルールで戦えるんです。

人間は、一連の行動を分けることができます。
戦い方だけ分離するとします。
そしたら、別の戦い方に変更できるじゃないですか。
たとえば、あの山の頂上に先に着いた方が勝ちとかって、戦いのルールを変えるとかできます。

そんなこと、自分だけ思いついても意味ないですよね。
相手も、同じルールで戦わないと意味ないですよね。
そこで、今回は、こんなルールで戦おうってなるわけです。
それを相手に伝えます。
ここに言葉が必要ですよね。
そこで、言語が生まれました。

って、そんな簡単な話じゃないです。
今回のテーマは、最初の一歩です。
ちゃんと説明しますよ。

まず、大前提です。
広い縄張りが欲しいわけです。
戦って、勝ったらもらえます。
負けたら貰えません。
勝ったら嬉しいです。
負けたら悲しいです。
これは感情です。
感情は次の行動を引き起こします。
負けたら、その場から去るって行動を引き起こします。
こういう一連の流れで行動を決定します。
こういうシステムがあるわけです。

このシステムを持ってる者同士は、お互いにコミュニケーションが取れるわけです。
戦いの目的、勝ち負けのルールを共有してるから、コミュニケーションが取れるわけです。

さて、こっからです。
行動を決定するのは意識です。
意識が認識してるのは世界です。
意識は、一連の行動を認識しています。
相手が縄張りに入ってきたとか。
戦うとか。
負けたら逃げるとか。
行動を決定してるのは意識です。

さっき、これでコミュニケーションが取れてるって言いましたよね。
つまり、言葉を使わずに、コミュニケーションが取れてるわけです。
つまり、ここで言いたいのは、意識があるだけじゃ、言葉は生まれないってことです。
言葉を生み出すには、もうワンステップ必要なんです。

じゃぁ、それは何でしょう?
第188回「意識が生まれる次元」で意識はOSだって言いました。
ちゃんと説明すると、人は、目で見た現実世界を頭の中に仮想世界としてつくります。
意識は、この仮想世界を認識します。
だから、仮想世界には自分も含まれるので、自分を客観的に認識することができます。
このことを意識の仮想世界仮説と呼んでます。
詳しくは、この本に書いてあります。
説明欄にリンクを張ってますので、良かったら読んでください。

さて、行動するとき、プログラムに従って動きます。
たとえば、縄張り争いのプログラムってのがあるわけです。
この行動プログラムはOSが実行します。
すると、OSからプログラムに制御が移って行動するわけです。
制御がOSに戻った時、自分の行動を客観的に認識できるわけです。
このOSが意識ってわけです。

さて、OSである意識は、一連の行動を認識できます。
さっき言いましたよね。
意識があるだけじゃ、言葉が生まれないって。
なんででしょう。
それは、意識は、一連の行動をひとまとめで認識してるからです。
ひとまとまりの塊があって、それを認識してるだけです。
そんな塊だけ認識しても、それ以上、何も言いようがないですよね。

じゃぁ、最初に何をしないといけないでしょう?
それが、分けるってことです。
一連の行動から、ここがルール、ここが勝敗判定とかって、分けることです。
まず、分けないと、その次に行けません。
分けたら、その次の段階として、このルールをこう変えようって思えるわけです。
最初の一歩が分けるってことです。

分けたら、つぎに、名前を付けて、それを使って説明してって言葉が生まれます。
まぁ、そこまでの道のりも長いですけど、一番重要なのは、最初の一歩です。
分けるってことが出来て、初めて、言葉への一歩が踏み出せるんです。

じゃぁ、どうやって分けたんでしょう。
それは、第193回「ニューラルネットワークから遊びが生まれる瞬間」で説明しました。
ディープラーニングで、大量の顔写真を学習すると、目や鼻や口といった顔の共通の要素を抽出できます。

それと同じように、同じような行動を経験することで、大脳のニューラルネットワークで、行動から、共通の要素を分離することができるはずです。
いろんな争いを経験することで、ここが勝敗判定の部分、ここが負けたときの行動って分けることができるはずですよね。

でも、分けたからって、何か、変わるんでしょうか?
分けただけじゃ、何にも変わらないです。
重要なのは、それに気づけるってことです。

ここ重要なんで、ゆっくり説明しますよ。
認識するのは、何でしたか?
認識するのは意識ですよね。

今まで、顔とはこうだって、全体を認識してたわけです。
それが、顔には目と鼻と口があるって、部分も認識できるようになったわけです。
全ての行動の起点は、意識です。
意識が認識できなければ、それは、存在しないも同じです。
顔を全体でしか認識できなければ、目がある、鼻があるって気づけないんです。

目や鼻って要素に分解して、初めて、目がある、鼻があるって気づけるんです。
言葉が生まれるのは、この後です。
要素ごとに、「目」とか、「鼻」って名前を付けるわけです。
記号化です。
言葉は、ここから生まれるんです。

行動でも同じです。
一連の行動から、ルールを要素として分離できます。
分離さえできたら、意識は、認識できます。
認識できたら、「ルールを変えよう」って考えることもできます。
それを提案することもできます。
これが言葉です。
会話の始まりです。

まとめます。
まず、仮想世界を使って世界を認識する仕組みがあるわけです。
認識するのは意識です。
同じような出来事を何度も経験することで、共通する要素に分けられます。
これをやってるのは無意識です。
要素に分割できたら、意識は、要素単位で世界を認識できるようになります。
要素単位で認識できたら、次は、組み替えたりできます。
ルールを変更したりとか考えることができます。

こういった全体の仕組みがあって、初めて、言語が生まれるんです。
最初に、絶対、ないといけないのは、世界を認識する心のシステムです。
これを分かって欲しいんです。

何が言いたいかわかりますか?
言葉は、最後だってことを言いたいんです。
もうちょっと言わしてください。
この、最後の言葉だけ取り出して、学習しても、何の意味もないんです。

ディープラーニングで大量の文書の学習しても、言葉を理解できるようになりません。
それは、ディープラーニングの使い方を間違ってるんです。
学習する対象が間違ってるんです。
学習するべきは、経験です。
心のシステムに大量の経験をさせることです。
それをやって、初めて、言葉の原形となる要素が抽出されるんです。
意識が認識するのは、この要素です。
この要素が単語です。
この要素のことを、別の言葉で何と言うか分かりますか?
それは、クオリアです。
クオリアについては、ここで話すと長くなるので、もし、ピンときた方は、「クオリアってなんだ」シリーズをご覧ください。

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