第20回 意識が生まれるまでは世界は存在しなかった 〜意識 見えている世界は 幻想だ!

ほら、ここまで言えばわかったでしょ。
目の前にある、このソファや壁は、脳が創り出した幻想なんですよ。
実際に存在するわけじゃないんですよ。

ロボマインド・プロジェクト、第20弾
ロボマインドの田方です。

意識編の第二回です。
前回は、自分は二人いるって話でしたよね。
表の自分と裏の自分。

表の自分は、意識を持つ自分です。
裏の自分は、意識がなく、外界に対して自動で反応する自分です。
裏の自分は、人間以外の動物と同じです。

では、表の自分と裏の自分は、いったい、何が違うのでしょう?
それでは、裏の自分から考えてみましょう。

裏の自分って、世界に正しく反応しようとするんです。
正しい反応って、生き残るチャンスを増やすための反応ってことです。

たとえば、トンボで考えてみましょう。
トンボの眼は複眼です。

トンボは、ちっちゃい単眼が何千個も集まってできてます。
つまり、こんな風に見えるわけです。

さて、天敵の鳥が来たとしましょう。
全ての単眼に鳥が映りますけど、少しずつ、見え方が違いますよね。
一番大きく鳥が映った単眼の正面に、その鳥がいるわけですよね。
つまり、一番大きく鳥が映った単眼の方向から鳥がきたとわかるわけです。
これで、どの方向から天敵が来たか分かるから、素早く逃げることができるんです。

複眼だと、世界が何千個にも見えます。
でも、世界は、何千個もあるわけじゃないです。
それは明らかに間違っていますよね。
でも、トンボにとって重要なのは生き残ることです。
天敵がきたら素早く逃げることが重要なんです。
だから、世界が何千個に見えても、世界に対して正しく反応できれば問題ないんです。

そもそも、トンボって、世界が何千個もあるとは思ってないです。
「思う」とか「考える」って、意識にのぼってきて、初めてできることなんです。
意識がないトンボには、「思う」ことすらできないんです。
ただ単に、眼から送られてきた情報を処理して、それに応じた行動を取ってるだけです。
自転車を運転してるとき、考える前に体が反応してるのと同じです。

これが意識のない裏の自分です。
重要なのは、世界に素早く反応することです。
だって、一瞬でも遅れたら、自分の命を失うかもしれないんですよ。

じゃぁ、表の自分はどうなんでしょう。
たとえば、今、僕は部屋の中にいます。
このソファに座っています。
床や壁が見えます。
これは、眼で見た世界ですよね。

では、壁の向こうはどうなってるでしょう?
見えないのでわかりません。
でも、壁の向こうも、ちゃんとあるってことはわかりますよね。
見えないからって、そこで世界が終わってるなんてことはないですよね。

何、当たり前のことを言ってんだよ。
そう思いますよね。

でも、それって、当たり前のことでしょうか?

もう少し、考えてみましょう。

今、見えてる世界は、目があるから見えてるんですよね。
目をつむると、真っ暗で何も見えなくなりますよね。
それでは、世界は消えてしまったのでしょうか?

そんなこと、ないですよね。
目をつむっても、世界は存在します。
自分の周りに空間が広がってるって感じますよね。

つまり、目で見るって、こういうことなんです。
見るより先に、空間と言うものが頭の中にあるわけなんです。
そして、眼で見たソファや壁を、その空間に配置して、
意識は、それを見ているわけです。

わかりますか?

目があるから、こんな風に世界を認識できるわけじゃないんです。
たとえば、生まれたときから目が見えなかったとしましょう。
手で触れて、初めて、これはソファだとか、壁だとか認識したとしましょう。
そんな場合でも、手で触れる前に、既に空間を感じてるはずです。

じゃぁ、その空間って何でしょう?

人間も含めて、あらゆる生物は、眼や耳や鼻、皮膚感覚なんかのセンサーを持っています。
センサーを通じて外の世界の情報が入力されるわけです。

つまり、センサーから、何らかの情報が入力された。
言えるのは、それだけなんですよ。

こういう入力があれば、こう反応する。
これが、裏の自分です。
鳥の形の入力があれば、反対方向に逃げる。
これだけです。

センサーからの入力情報には、空間なんか含まれてないです。
わかりますか?

空間は、外の世界には存在するわけじゃないんですよ。
でも、意識は、空間があるって感じますよね。
なぜでしょう?

それは、空間は、脳が作り出してるからなんです。

つまり、空間があるのは、外の世界じゃなくて、頭の中の世界なんです。
空間は、脳がつくりだした幻想なんです。

もっと続けましょう。
意識が感じることができるのは、脳が創り出した幻想だけなんです。
脳が創り出した空間に、目でみたソファや壁を配置して、初めて意識は感じることができるんです。

つまり、意識が見ているのは、脳が創り出したソファや壁です。
表の自分が見ている世界は、ただの幻想なんです。

ねっ

これだけ言えば、目の前に見えてる世界が、現実そのものじゃないことがわかってきましたよね。

それじゃ、意識は、何のためにあるんでしょう。

それは、世界を正しく認識するためです。

目の前のソファや壁が、脳が創り出した幻想だとしても、
それが存在しないとは言ってないです。
安心してください。
このソファは、現実に存在しますよ。

おそらく、こういうことだと思うんです。
僕らの祖先は、あるとき、世界を正しく認識しようとしたんです。
何十万年も前のことです。

ただ、単に世界に反応して生きて行くだけなんて嫌だ。
世界が、本当はどうなってるのか知りたい。

その思いが、もう一人の自分を生み出したわけなんです。
それが表の自分です。

表の自分は、世界を直接感じることより、
世界を正しく認識しようと、必死で努力しました。

そうして、世界を正しく認識するために、とうとう、世界そのものを頭のなかに作り上げたんです。
そして、次は、その、頭の中に作り上げた世界を認識する「意識」を作り出したんです。

意識と世界はペアです。
いつも一緒です。
表裏一体の関係です。

意識が認識できるように創り出されたのが世界です。
自分は世界の中で生きていると思わせるために創り出されたのが、頭の中の世界です。

表の自分は、意識を持ちました。
意識は世界を正しく認識することができます。
でも、意識が認識する世界は、脳が創り出した幻想なんですよ。

こうして、世界を正しく認識できるようになった人類は、さらに、トンデモナイものを発明することになるんです。

前回、盲視の話をしたのを覚えていますか?
意識では見えていないのに、光の点を正確に指差すことができる脳障害の話です。

盲視の特徴として、光の点を消すと、その位置が分からなくなるって話もしましたよね。
その理由、わかりますか?
意識を持ってない裏の自分は、現実世界に反応するだけでしたよね。
現実世界って、センサーが捉えた、その物です。
センサーって、まさに今、この瞬間しか捉えれないんですよ。
ちょっと前の光の位置を聞かれても、今、この瞬間じゃないんで、わからないんですよ。

それができるようになるには、世界の状況を記憶する必要があるんです。
世界の状況を記憶するって、頭の中に、以前の世界を作り出すことと同じです。
頭の中に世界を作り出すことができるのは、表の自分だけですよね。

つまり、表の自分は、現在の世界を作り出すだけでなく、過去の世界も作り出すことができるんですよ。
それを作り出したり、認識するのは意識です。
さらに、意識は、頭のなかの世界を自由に操作することもできるようになったんですよ。
自分で作ったものですから、当然です。

ようやく、準備が整いました。
ここにきて、人類は、あることをはじめたんです。
それは、頭の中の世界を、外に、表現しようとしたんです。
それを、言葉といいます。
言語の発明です。

頭の中の世界を、言葉で表現して、他人に伝えるんです。
でも、犬も、ワンワン吠えて、何かを相手に伝えることはできます。

エサをくれとか、あっちへ行けとか。
でも、表現できるのは、このぐらいです。

これって、今、この瞬間の状況に反応してるだけです。
つまり、裏の自分の世界です。
センサーからの入力に反応してるだけです。

でも、表の自分、意識のある自分は、世界そのものを認識できます。
世界の状況を表現できます。

すると、どんなことができるんでしょう?
たとえば、「あの山の向こうにマンモスがいるから、一緒に狩りにいこう」
といったことまで、伝えることができるんです。

ほら、言葉が生まれたでしょ。
意識と言葉がつながりましたよね。

これが、ロボマインド・プロジェクトです。

次回は、もっと面白くなってきますよ。
それでは、次回もお楽しみに!