第200回 秋と物語と助動詞と・・・


ロボマインド・プロジェクト、第200弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

なんでも、見た目で判断したらダメですよ。
見た目で、どうせ、大したことないやろって思ったら、じつは、とんでもない実力を持ってるヤツがいます。

今回、紹介するのも、そのタイプです。
奴の名は、
「助動詞」
です。

あっ、ほら、
もう、バカにしてるやろ。

え~、でも、助動詞って、「れる」とか「られる」とかのことでしょ~

あほか!
助動詞はなぁ、その気になったら、一瞬で世界を変える力があるんやで。
わかった。
今日は、助動詞の恐ろしさを、徹底的に教えたる。
覚悟しいや。

というわけで、これが、今回のテーマです。
助動詞
覚悟しいや!

え~、なんで、いきなり助動詞かっちゅうと、物語について考えてたんですよ。
前回、第199回「そして、神が生まれた・・・」で物語について語りました。

そのとき、エクセルの話をしました。
エクセルって、見た目は、紙に書いた表と同じですよね。
でも、自動で合計とか、計算できたりしますよね。
紙に書いた表じゃぁ、絶対に、出来ない芸当です。

何が言いたいかっちゅうと、僕らが見てる世界って、その奥に、目に見えない法則とかが動いてるんです。
これって、エクセルのセルに埋め込んだ数式みたいなものです。

空中からバラの花を取り出す手品とか見たら、人間は、えっ?ってなりますよね。
これは、物体は、何もない所から出現することはないって法則を知ってるからです。
でも、犬は、何とも思いません。
犬は、そんな法則を持ってないからです。

手品を不思議に思えるって、じつは、スゴイ事なんですよ。
手品の凄さは分かるのに、不思議ってわかる凄さには気づかないんですよねぇ。

物語もそうです。
物語というより、その前提とする言葉というか、文って、凄いんですよ。
考えたら、これほど複雑なものないですよ。

ただの文字の集まりですけど、頭の中を自由に書き換えるんです。
さっきも言いましたけど、人が認識してるのは、目に見えてるものだけじゃないです。
その背後に、いろんな法則があって、常に動いてます。
そんな法則に気づくのは、法則が当てはまらなかったときだけです。
マジシャンが、空中からバラを取り出したりとかです。
予想してなかったことが起こったから、警告を出したわけです。
だから、「えっ、何で?」って思うんです。

これ、どういうことか分かりますか?
その法則、手品を見てるときだけ活動してるってことじゃないんですよ。
常に活動してるから、手品の不思議にすぐに気づけるんです。

自動車が普通に走ってるの見ても、何も反応しません。
でも、自動車が、宙に浮かんで走ってたら、「え~、どういうこと?!」って思いますよね。

つまりね、ありとあらゆるものに対して、裏で、そんな仕組みがひっきりなしに動いてるんです。
これが、人間の頭で行われてることです。
もう、どんだけ、複雑な機械やっちゅう話ですわ。

ほんで、言葉です。
会話を理解するって、頭の中で、相手が考えてることを再現してるわけですよね。
でも、頭って、さっき言った、もんのすごい複雑な機械なわけです。
そんな超絶複雑な機械を自由に操るってのが文ってわけです。

どうです?
そう考えたら、文って、スゴイ事してるでしょ。

それじゃぁ、この複雑な機械の大雑把な仕組みからおさらいしましょう。
心のシステムのことです。

人は、目で見た世界を、頭の中に仮想的に再現します。
そして、意識は、この仮想世界を認識します。
つまり、仮想世界を介して、現実世界を認識してるわけです。
この仕組みのことを、僕は、意識の仮想世界仮説って呼んでます。
詳しくは、この本に書いてあります。
説明欄にリンクを張ってますので、興味がある人は読んでください。

さて、頭の中の仮想世界は、じつは、二種類あります。
一つが、今説明した、現実世界を認識するための現実仮想世界です。
もう一つは、過去を思い出したり、まだ起こっていない未来とかを自由に想像するための想像仮想世界です。

進化の過程で、こんな意識の仕組みを獲得したんだと思います。
おそらく、哺乳類ぐらいから仮想世界を使って世界を認識してるんだと思います。

ほんで、人間になると、想像仮想世界を持てるようになったんやと思います。
想像仮想世界があると、過去の思い出とか、思い出せるようになるんです。
いわゆるエピソード記憶ってやつです。

犬は、想像仮想世界を持ってないから、「昨日の公園、楽しかったなぁ」なんて思うことができないんですよ。
心のシステムの構造が違うってことは、認識する世界観が、全然違ってくるってことです。
何となくわかってきましたか?

さて、「楽しいねぇ」って、これ、現在のことです。
「楽しかったねぇ」って、これ、過去の出来事です。
この違いを心のシステムで説明すると、「楽しい」は、現実仮想世界で展開されてる、現在の出来事です。
「楽しかった」は、想像仮想世界で展開されてる過去の出来事です。

今度は、文で比較してみましょう。
「楽しい」と「楽しかった」です。
違いは、「かった」です。
つまり、楽しいに過去の助動詞「た」が付いたわけです。
はい、出てきました。
今回のテーマ。
助動詞です。

助動詞、たった1文字で、世界が変わったでしょ。
現実仮想世界から想像仮想世界に変わったんです。

助動詞「た」の、たった一文字で、複雑な心のシステムを見事にコントロールしてるわけです。
そう考えたら、助動詞ってスゴイでしょ。

これって、コンピュータと、プログラムの関係と同じです。
コンピュータが心のシステムです。
助動詞が、そのシステムを動かす命令って感じです。

助動詞って、命令の中でも、システムの根幹部分を制御する命令なんですよ。
現実仮想世界か、想像仮想世界かって、かなり根幹部分ですよね。

逆に言えば、助動詞を分析したら、心のシステムの構造が、もっと詳しく分かってくるんですよ。
過去の助動詞「た」ってのがあるってことは、心のシステムには、現在と過去を区別する仕組みになってるって言えるわけです。

もう少し、考えますよ。
「宝くじで1億円当てた」と「宝くじで1億円当てたい」じゃ、全然、意味が違ってきますよね。
でも、言葉の違いは、「た」と「たい」の一文字違いです。
「た」は過去の出来事です。
つまり、既に確定した出来事です。

「たい」は希望の助動詞です。
まだ、実現してなくて、ただ、こうなったらいいなぁって思い浮かべてるだけです。

過去も希望も、どちらも現在のことじゃないので、想像仮想世界で展開されますよね。
違うのは、希望は未来のことです。
そこから、想像仮想世界には、過去か未来を区別する仕組みがあるって分かりますよね。

過去や未来を定義するには、時間の流れを示す1次元の時間軸を持たせます。
時間軸は、外部世界の今に対応する位置を指し示す矢印があるわけです。
そして、その矢印が過ぎさった部分が過去、これから矢印が通過する部分が未来となるわけです。
こんな構造を、心のシステムに持たせれば、時間を定義できますよね。
こうやって、意味に必要な構造を追加して、心のシステムを組み立てて行くわけです。

ただ、未来を表すには、「だろう」って助動詞もありますよね。
でも、「たい」は、単なる未来じゃなくて、希望すよね。
それじゃぁ、次は、希望を定義していきましょう。

まず、将来起こりうる可能性のある出来事がいくつかあるとします。
出来事が起こった場合、感情が発生するわけです。
そのうち、その人が嬉しくなる出来事があるわけです。
その出来事、それが「希望」の「たい」です。
逆に、それ以外の出来事は、「たくない」です。

それでは、これを実現するには、どんな仕組みが必要でしょうか?
まず、起こり得る出来事を複数持つ構造が必要ですよね。
それから、その出来事が、自分にとって嬉しいかどうかを判断する機能。
そして、嬉しい出来事を指し示す矢印。
この矢印が、助動詞「たい」の意味となるんです。

どうです?
結構、複雑でしょ。
これだけの複雑な仕組みを作って、最後の矢印が「たい」の意味になるわけです。
助動詞、かなりの強者ってわかってきましたか?

さて、そらじゃぁ、そろそろ、最強の助動詞を紹介しましょ。
それは、「~すべき」の「べき」です。

あ~こっわぁ~

あれっ、分からないですか。
それじゃぁ、「べき」が、なぜ、助動詞最強と言われるか、説明しましょう。

今まででてきた助動詞を実現するには、複数の出来事を管理したり、矢印をつけたりって、そんな構造で実現できましたよね。

でも、「べき」はちょっと違うんです。
まず、「べき」ってのは、どんな場合に使いますか?
たとえば、お年寄りには席を譲るべきとか。
勉強すべきとか。
いろいろありますよね。

「べき」が特殊なのは、今までのような構造で定義できるタイプじゃないんですよ。
じゃぁ、何が必要かっていうと、行動です。

ある決まった行動があるわけです。
席を譲るとか、勉強するとか。
その行動を取りなさいってことなんです。
こう言うと、一種の命令になりますけど、命令とはちょっと違いますよね。

まず、その行動を取るのは、あなたとか、私とか、人間です。
行動するのですから、それは、その人の意志でできることです。
無理難題とかじゃないです。
やろうと思えば、その人ができる行動です。

次に、それは、やりたい行動でしょうか?
席を譲ったり、勉強したり、
できればやりたくないことですよね。

最後に、その行動をして、メリットはあるでしょうか。
席を譲ったら、譲られたお年寄りは喜びますよね。
勉強したら、将来の自分の為になりますよね。
つまり、何らかのメリットがあることです。

以上をまとめると、その人がやろうと思えができるけど、どちらかというとやりたくない行動があるわけです。
その行動を取ることで、何らかのメリットが生まれるわけです。
その行動を取るか、取らないかの選択肢があったとして、その行動を取らせる方にかかる圧力。
これが、「べき」なんです。
プログラム的に言えば、行動を決定するパラメータの設置値が「べき」です。
その設定着が0以上なら、「べき」ってなるんです。

どうです?
めちゃくちゃ複雑でしょ。
これは、システムの構造で定義するんじゃなくて、背後で動くプログラムとして組み込むタイプのものです。
最初に説明した、裏で世界を動かしてる法則です。

心は、本来、自分が得する方、楽な行動を取るようにできてます。
これが、自然な行動です。

おっと、今、自然って言いました。
注意してほしいのは、自然って、何もしなくても元からあるってわけじゃないですよ。
人間ならそう言ってもいいですけど。
ロボットを作ろうと思ったら、自然な行動も、プログラムしないといけないんです。
だから、まず最初に、自分が得したり、楽になる行動を選択するプログラムを組み込んでおくわけです。
その上で、今回の「べき」のプログラムを組み込むわけです。
つまり、この「べき」プログラムからの圧力を感じて、できればやりたくない行動を選択するわけです。

わかりましたか。
「べき」って、たった2文字ですけど、こんだけ複雑なプログラムなんですよ。
それを、会話の中で一瞬で判断するんですよ。
これが、助動詞の恐ろしさ、スゴさなんです。

はい、今回の動画が面白かったら、チャンネル登録、高評価お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!