第201回 人の心を自在に操る方法


ロボマインド・プロジェクト、第201弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

人間の脳って、複雑ですよねぇ。
人の臓器の中で、一番複雑なのが脳だと思います。
脳があるから、言葉をしゃべったり、喜んだり、悲しんだりできるわけです。
つまり、心です。
心は、脳で実行されるプログラムです。

会話っていうのは、相手が喋った言葉を聞くでしょ。
そしたら、心のプログラムが意味を解釈して、適切な回答するわけです。

たとえば、友達が、「ちょっと聞いてくれよ」って言ってきたとします。
「昨日、先生に呼ばれてやぁ、『理科室の人体模型、壊したん、お前やろ』って勝手に決めつけるねん」って言ったとします。
そしたら、「うわぁ、あの先公、いっつもお前を犯人にするよなぁ」とかって答えるわけです。

これだけの会話でも、頭の中で状況を組み立てて、相手の気持ち、先生の思考とかを想像してるわけです。
脳って、めちゃくちゃ複雑って、わかりますよねぇ。

その脳も、現代科学でかなり解明されてきました。
脳の最小単位は、ニューロンです。
ニューロンが集まったニューラルネットワークで情報処理してます。
このニューラルネットワークを何層にもつなげて深くしたのがディープラーニングです。
これが、今、流行りのAIです。

そして、ディープラーニングに言葉を学習させたのがGPT-3です。
GPT-3は、高精度な文章を生成する話題のシステムです。
ところが、第174回「GPT-3検証した あごはずれた」で、実際に検証してみましたけど、おかしな文章しか生成されないんですよ。
まぁ、かなり笑えるので、良かったら見てください。

でも、GPT-3、ニューラルネットワークで学習してるのに、どうして、上手く行かないんでしょう?
それは、学習の仕方を見れば分かります。
どうやって学習したかっていうと、大量の文書を読み込ませて、この単語の次に、この単語がくる確率は何%って、計算してるだけなんですよ。
ほんで、最初に、適当に文章を書くと、そこに出てきた単語から次に来る確率が高い単語を繋げて文を生成してるだけです。

どう思います?
さっき、説明したでしょ。
友達と会話するときって、相手の話を聞いて、その時の状況を思い浮かべたり、先生の考えとか、相手の感情を再現したりしましたよね。
それができたうえで、相手の気持ちを汲んで、答えるわけです。
それをやってるのが心のプログラムです。

それが、GPT-3は、何をやってました。
Aって単語が来たら、次にBって単語がくる確率は何%って計算してるだけです。
肝心の心のプログラムの部分がすっぽり抜けてるんです。
こんなん、どう考えても、おかしいでしょ。

言葉を入力したら、言葉を出力する。
見た目は、話してますけど、意味を理解して、考えたり、感情を発生する部分が無いです。
入力と出力を直結してるだけです。
残念ながら、これが今のAIの現状なんです。

前回、第200回「秋と物語と助動詞と・・・」で、助動詞が、心のシステムでどう、関わってくるかって話をしました。
かなり、心のシステムの詳細が明らかになって来たんですけど、ちょっと、細かい話が多くなってきました。
そこで、ここらで、システムの全体像を整理していきたいと思います。
これが、今回のテーマです。
ロボマインドの最新、心のシステム。
それでは、始めましょう!

まずは、心の基本構造です。
人は、目で見た世界を、頭の中で仮想的に構築します。
意識は、この仮想世界を介して、現実世界を認識します。
これを、僕は、意識の仮想世界仮説って呼んでます。
詳しくは、この本に書いてます。
説明欄にリンクを張ってますので、良かったら読んでください。

さて、仮想世界には二種類あります。
現実世界を反映した現実仮想世界と、想像した世界を反映した想像仮想世界です。
想像仮想世界ってのは、過去の思い出とか、未来を想像するときに使います。
ここまでは、分かりますよね。
こっから、ちょっと複雑になってきます。

想像仮想世界ってのは、自分の想像だけじゃなくて、話し相手の想像でも使います。
たとえば、友達が、「昨日、体育で、サッカーをしたかったなぁ」と言った場合とかです。
今、目の前の現実世界には、友達と自分がいますよね。
つまり、現実仮想世界には、友達と自分がいて、意識はその光景を認識してます。
そして、友達が、「サッカーをしたい」って言ったら、想像仮想世界の中でその状況を作って、それを現実の友達が想像してるって紐づけるわけです。

それから、現実仮想世界ってのは、ホンマの現実だけじゃなくて、想像のときにもつかうんです。
ここ、ちょっとややこしいので、丁寧に説明しますよ。

たとえば、友達が、「昨日、学校で、先生に呼ばれてやぁ・・・」って話しだしたとします。
そんな場合も、現実仮想世界を使うんです。
どういうことかというと、意識は、友達の気持ちになって話を聞くんですよ。
この、相手の気持ちになるってのが、つまり、現実仮想世界の自分なんですよ。

実は、現実仮想世界の一番の特徴は、深く入り込むとか、リアルな感情を感じるってことなんです。
こんなことが合ったなぁぐらいに軽く思い出してる場合は、まだ、他人事なんです。
この時使ってるのは、想像仮想世界です。
でも、思い出にどっぷりつかって、苦しかったこと、悔しかったこととか、感情までリアルに思い出されることってあるじゃないですか。
この時は、想像仮想世界から、現実仮想世界に移ってるんですよ。
相手の話に入り込んで、相手の気持ちになって話を聞くってのは、こう言ことなんです。
相手の感情をリアルに感じるってことです。

それから、小説を読むとき、入り込んで読むときとかです。
「魔法学校に、転校生がやってきました」って読み始めると、その世界を現実仮想世界として、意識は、そこに入って行くんですよ。
でも、本を読んでる、現実世界の自分ってのがいますよね。
そっちが、本当の現実ですよね。
でも、本を読んでるときは、その現実は、一旦、後ろに下がってるんです。
意識は、本の中の世界に入り込んでるんです。
これが、没頭するってことです。

そこに、お母さんが「もう、寝なさい」って言ったら、意識は、本当の現実仮想世界に戻って、「あと30分だけ」とかって答えるわけです。
ほんで、続きを読み始めると、また、本の世界が、現実仮想世界となって、その世界に入って行きます。

意識は、こんな風に、仮想世界を自由に行き来するわけです。
つまり、心のシステムって、いろんな仮想世界を持つことができるんです。
でも、意識は、一度に、一つの世界にしかおれないんですよ。
今、意識が入り込んでる世界が、現実仮想世界なわけです。
ほんで、この現実仮想世界だけが、感情をリアルに感じることができるんです。

これが、人間の心のシステムの特徴なんです。
たぶん、サルとか犬も、仮想世界をもってると思います。
ただ、目の前の現実仮想世界の一つしか持てないんだと思います。

だから、考えれるのは、「あっちに行け」とか、「その食べ物、俺にも食わせる」とかぐらいなんです。
これなら、複雑な言葉を必要としないんですよね。
ワンワンとか、ウーだけで済みます。

こう考えると、人間は、言葉を発明せざるを得なかったってのが分かってきますよね。
ワンワンとウーだけじゃ、とても考えてることを伝えきれないですよね。
さて、こっから、言葉の話になります。
面白くなるのは、こっからです。

頭のなかには、仮想世界がいくつもあって、意識は、それを行ったり来たりしながら考えるわけですよね。
それらの仮想世界を管理するシステムがあるわけです。
それを、僕はOSのようなものと思ってます。
つまり、仮想世界はOSの上で実行されるわけです。

仮想世界を複数持つってことは、仮想世界を乗り移るだけじゃなくて、仮想世界を外から認識することもできるってことです。
その場所がOSってことです。

さて、仮想世界につくられるのはオブジェクトです。
友達が、「昨日、プリンを食べた」って言えば、プリンオブジェクトと、その友達のオブジェクトを作って仮想世界に設定します。
そして、その友達が、プリンを食べる状況を作りだします。
こうやって、話を聞く準備が整います。
そして、次にどうなるかって思うわけです。
そのプリンは美味しかったのかとか、どこで買ったのかとか。

ここで、文の整理をします。
「プリン」は名詞です。
名詞が出てきたら、そのオブジェクトを生成します。
「食べる」は動詞です。
動詞が出てきたら、その動作、状況を作ります。
名詞と動詞で文はつくられます。
これは、一つの出来事です。
出来事は、仮想世界で再現されます。
こうすれば、頭の中の世界と、文とを対応させることができますよね。
これが、言葉です。

さて、これで相手の発言を、心のシステムで再現できました。
でも、それで終わりじゃないですよ。
こっから、相手が、何を言いたいかを判断しないといけません。
そのために、相手の気持ちになるわけです。
つまり、現実仮想世界を作って相手の立場になって考えるわけです。

「昨日、プリン食べたんよ」といえば、
相手の立場になって、美味しいか、美味しくないかって思うわけです。
「めちゃ、美味しかったんよ」と聞けば、自分に戻って、「あぁ、やっぱり美味しかったんや」って思うわけです。
ほんで、また、相手の立場になるわけです。
「そう言えば、明日、田方と会うなぁ。そうや、この美味しいプリン、田方にも食べさせたろ」って思いつくわけです。
また、自分に戻って、「あぁ、そう~」って、にこにこして待つわけです。

これが、人間のもつ、高度な予測機能です。
相手の立場に立って、感情を発生させることで、相手の行動を予測するわけです。

ただ、いくら待っても、プリンが出てこないことがあります。
「えっ、もしかして、それで終わり?」

時には、予測が外れることもあります。

ここで、学習するわけです。
学習すべきは、ここなんです。
Aって単語がでてきたら、次はBとかって、単純な学習じゃないですよ。

そうじゃなくて、相手の立場に立って、感情から、次の行動を予測するんです。
その予測が間違ってたら、間違った箇所を修正するんです。
これが正しい学習です。

修正の仕方は、大きく分けて二つあります。
自分を修正するか、相手を修正するかです。
どっちを選ぶかは、人によりますけどね。

自分を修正するってのは、「あぁ、自分が期待しすぎたんやなぁ」って反省するパターンです。
相手を修正するってのは、たとえば、
「こいつは気が利かんヤツや」って相手にレッテルを張るとかです。

そころで、最近、気が利かん人が増えてきましたよねぇ。
みなさんの周りは、どうでしょうかねぇ。

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それでは、次回も、おっ楽しみに!