第206回 認識の地平線 〜表の世界と裏の世界の境界


ロボマインド・プロジェクト、第206弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

昔はね、目に見えてる世界が、そのまま存在するって、普通に思ってました。
でも、意識とは何かとか、認識するとはどういうことかって考えてると、どうも、そんな単純な話じゃないって分かってきました。

どうも、認識してる世界の中には、現実に存在してるものと、自分がつくり上げたものがあるみたいなんですよ。
でも、重要なのは、現実に存在するか、しないかってことじゃないんですよ。
重要なのは、なぜ、それが存在すると認識してるのかってことなんです。
または、なぜ、そう認識するようになってるかです。

たぶん、システムにとっては、その方が好都合なんですよ。
ここで、システムってのは、心のシステムのことです。
世界が、こう存在すると思わせてるのは、心のシステムです。
心のシステムってのがあって、それが世界を、そう見せてるんですよ。

世界というのがあります。
世界には、自分じゃ変えられない物と、自分で変えることができるものがあると。
自分で変えることができること、そこに自由があるわけです。
自由意志が存在するわけです。
世界とは、そういうものだって。
そう思わされてるから、そう感じるわけです。

本当の世界がどうなってるかなんか、誰にも分からないですよ。
ただ、僕らは、そう思わされてる世界で生きてるわけです。

逆に言えば、全然別の世界を生きてる生物もいます。
それは、現実世界、環境に反応するだけの生物です。
たぶん、人間以外の生物は、ほとんどがそうだと思います。
そんな生物は、世界はどうなってるとか、こうしたいとか、そんなこと考えません。
考えないと言うか、考える仕組み自体がないわけです。

そう考えると、世界がこうなってるのは、システムによって、そう思わされてるからだってのが分かりますよね。
重要なのは、システムが、僕らに、何を感じさせようとしてるのかってとこなんです。

システムは、僕らに何を見せようとしてるのか。
あるいは、何を隠そうとしてるのか。
まず、解明すべきは、その境界です。

これを、僕は、認識の地平線と呼んでいます。
これが、今回のテーマです。
認識の地平線。
それじゃぁ、始めましょう!

まずは、心のシステムからおさらいします。
人は、目で見た世界を頭の中で仮想世界として組み立てます。
そして、意識は、この仮想世界を介して現実世界を認識します。
このことを、僕は、意識の仮想世界仮説と呼んでいます。
詳しくは、この本に書いてます。
説明欄にリンクを張ってますので、良かったら読んでください。

さて、ここから何が読み取れるかわかりますか?
一つは、今、見てる世界は、直接、現実世界を見てるわけじゃないってことです。
仮想的に作り出した仮想世界を見てるってことです。
重要なのは、仮想世界ってことじゃないですよ。
それより、もっと重要なのは、自分がつくったってことです。
世界をつくってるのは、自分ってことです。
まず、ここを押さえといてください。

注意しないといけないのは、意識すら、自分がつくり出してるってことです。
自分がつくり出した膨大な世界の一部が意識なんです。
世界も、意識も、すべてひっくるめて、自分がつくり出してるんです。
じゃぁ、それらを作ってるのは何でしょう。
僕は、便宜上、それを無意識と呼んでます。
ここで言う無意識ってのは、膨大なプログラム群みたいなイメージです。

脳では、心臓を動かすプログラムとか、肺を動かすプログラムとか、膨大な数のプログラムが動いてるわけです。
その一部が、意識を作り出したり、仮想世界をつくり出したりしてるわけです。

最初の話に戻ります。
今、認識してる、この現実世界は、目で見て仮想世界としてつくり上げました。
これ、どういうことか分かりますか?
つまりね、仮想世界は、現実にある物から作ってるんですよ。
元になってるのは、ちゃんと、現実に存在してるんです。

ここ、もう少し詳しく説明しますよ。
無意識は、目で見た物で仮想世界につくるわけです。
たとえば、今、こうやって手を見たとするでしょ。
無意識は、今見てるのが「手」やって認識するわけです。
そしたら、次に、手に関する情報を記憶から取り出すわけです。
それは、「手」の本質と言ってもいいです。

それと同時に、目で見た手を仮想世界につくりだすわけです。
目で見る世界ってのは、3次元世界ですよね。
だから、仮想世界として3次元世界を選ぶわけです。
その3次元世界に3DCGで「手」を作るわけです。

手って、厚みがあったり、見えなくても、手の裏ってのもあるってわかりますよね。
それは、3次元で感じてるからです。
もし、これが2次元の仮想世界を使ってたら、厚みとか感じられないわけです。
これが、3次元世界を使って認識してるって証拠です。

まず、最初に、こうやって、立体に、骨組みを作ります。
これを、3DCGではワイヤーフレームとかって呼びます。

次に、この骨組みに、目で見た光景を貼り付けます。

これを、3DCGでは、テクスチャマッピングって言います。
こうやって、目で見た現実世界を意識は感じれるわけです。
さて、本題はこっからです。

仮想世界って、頭の中にある情報によってもつくられましたよね。
つまり、目に見えてる現実の手と、頭の中にある情報との両方で作られてるわけです。
僕らは、現実世界を見た時、その両方を同時に認識してるわけです。
まずは、それを別々に認識することからはじめましょ。

まず、こうやって手を見ます。
次は、手を握ってみます。
次は、手を開いてみます。

次は、目を閉じてください。
はい、真っ暗で、何にも見えないですよね。

これが、目からの情報を完全にシャットダウンした世界です。
こうすると、僕らが認識してる世界って、ほとんど、目からの情報に頼ってるってるってのがわかりますよね。

次は、眼をつむったまま、手を握ってください。
握れましたよね。
次は、手を開いてください。
開きましたよね。

はい、目を開けていいですよ。
今、何をしたか分かりますか?

見えない手を閉じたり開いたり操作したわけです。
じゃぁ、それって、一体、何でしょう?
目に見えない手ですよね。
つまり、現実世界の手じゃないわけです。

これが、純粋に仮想世界の手ってわけです。
分かりますか。
目には見えないです。
でも、操作の仕方は分かるわけです。

さっきの手の3DCGを思い出してください。
3DCGのデータには、どこが関節で、どこが曲がるとかって情報も入ってるわけです。
そんな情報は目に見えないですよね。
その情報だけ残して、目に見えるデータを削除したもの。
それが、眼をつむった時、認識してた手です。
それが、頭の中にあった手です。
目に見えない手の本質です。

さて、こっから、手の本質に迫って行こうと思います。
眼をつむっても、手を開いたり、閉じたりできましたよね。
そのとき、意識が感じたことは何でしたか。
手を開けって命令ですよね。
その命令を、自分に手に対して行ったわけですよね。

ここで、言いたいのは、手を開けって命令があるってことです。
心のシステムは、そんな命令を持ってるってことです。
そして、心のシステムに、その命令を出すと、自分の手が開くわけです。

もう少し、システムの詳細を見て行きましょ。
3次元の仮想世界に3Dの手オブジェクトを生成します。
手オブジェクトは、5本の指があって、関節もあって、開いたり閉じたりできます。
そして、開くメソッド、閉じるメソッドってプログラムを持ってるわけです。
意識は、そのメソッドを呼び出すことができるんです。

さて、こっからです。
実際に手を開くには、指の関節、一つ一つを動かさないといけませんよね。
関節一つ動かすには、関節の筋肉を動かさないといけませんよね。
筋肉を動かすには、筋肉を制御する神経細胞を制御しないといけませんよね。
でも、意識はそんなこと、感じてないです。

今、何をしよとしてるか、分かりますか。
認識の地平線を探ってるんです。
意識が感じることができるものと、感じることができないことの境目です。

意識が感じてなくても、無意識では、様々な活動が行われてるんです。
意識がやるのは、手を開くってメソッドを呼び出すことだけです。
そしたら、無意識は、指の筋肉の神経細胞を制御して、5本の指を動かして手を開けるわけです。
これが、心のシステムです。

今、説明したシステム、これって、そっくりそのまま、コンピュータで作れます。
3DCGで手オブジェクトを作るわけです。
指の各関節を動かして、開くと閉じるの動作をするプログラムをつくるわけです。
そのプログラムに、開くメソッド、閉じるメソッドって名前を付けて、手オブジェクトに持たせるわけです。

こっから、実際のプログラムで考えて行きます。
まず、手オブジェクトを生成して、handって名付けます。
handオブジェクトには、openとcloseメソッドがあります。
hand.openとか、hand.closeとかって呼び出します。
これを日本語で表現するとすれば、「手を開く」、「手を閉じる」ってなります。

はい、文が生まれましたね。
わかりましたか?

認識の地平線の上には何があるか。
まずは、オブジェクトです。
それから、オブジェクトの持つメソッドとかプロパティです。
メソッドは、オブジェクトの動きです。
プロパティってのは、オブジェクトの色とか名前とか、属性のことです。
これが、意識が認識できるものです。
もっと言えば、僕らが感じてる世界を構成する要素です。

世界にはオブジェクトがいっぱいあります。
山とか雲とか。
それぞれにプロパティとメソッドがあるわけです。
雲の色プロパティは白いとか、流れるメソッドがあるとか。
でも、雲の流れるメソッドは、自分では呼び出せませんよね。
つまり、雲は自分の自由にはなりません。

でも、意識が呼び出せるメソッドもあります。
それは、自分の体です。
例えば自分の手です。
手を開くとか、閉じるとか。
つまり、自分の意志で動かすことができるわけです。
これが、自由意志です。
そして、意志によって、世界に変化を与えることもできるんです。

これが人が感じる世界です。

まとめます。
世界にはいろんなオブジェクトがあります。
オブジェクトが取り得る属性、動きは、そのオブジェクトの持つプロパティ、メソッドで予め決められてます。
オブジェクトは、自分の意志で自由に動かせるものもあれば、自分の意志では動かせないものもあります。
重要なのは、世界は、認識できる要素で出来てるってことです。
逆に言えば、世界に存在してても、認識できないものもあります。
たとえば、神経細胞、一つ一つの動きなんか、意識には認識できません。

なぜか。
それは、そんな物、意識が認識したとしても何の意味もないからです。
意識が知っておくべきことは、「手を開け」って命令があることだけで十分なんです。
世界の裏の仕組みなんか、知らせる必要はないんです。

システムは、意識に存在すると思わせる世界と、知るべきでない世界を、きっちり区別して、厳密に管理してるわけです。
その境界が、認識の地平線です。
認識の地平線、見えてきましたか。

はい、今回の動画がおもしろかったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!