第209回  医療麻薬で世界が作られる様を垣間見た話


ロボマインド・プロジェクト、第209弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

前回から、ちょっと時間があいてしまいました。
じつは、1か月程、入院してたんですよ。
せっかくなんで、ヒゲをはやしてみました。
体重も、10Kg近く落ちましたねぇ。
何で入院してたかっていうと、大腸がんの手術です。
25年ぶりです。
前回の手術は、第105回「開腹手術中に全身麻酔から目覚めた話」で語りましたけど、手術中に麻酔から覚めて、大変な思いをしました。
まぁ、後々、YouTubeのネタにできたんで、無駄にはならなかったですけどね。

今回も、ちょっと、期待してたんですけど、残念ながら、目覚めることはなかったです。
その代わり、また、別の面白い経験をしました。

今回も、8時間近い大手術で、当然、全身麻酔です。
手術の後も、数日は、腰から鎮痛剤を入れて痛み止めをします。
この時使うのが、麻薬系鎮痛剤です。
たしかに、よく効いて、痛みは、ほとんど感じませんでした。
ただ、麻薬っていうだけあって、普段と違う感覚がありました。
幻覚ってわけじゃないですけど、目を閉じると、不思議な光景が見えるんです。

さて、僕が研究しようとしてるのは、心のシステムです。
人の意識がどうやって世界を認識してるのか、それを解明しようとしています。

僕の説ですけど、どうやら、人は、現実世界を直接、見てるわけじゃないんです。
現実世界を仮想的に作り出して、意識は、その仮想世界を認識してるんです。
詳しくは、この本に書きました。
説明欄にリンクをはってますので、よかったら読んでください。

わからないのは、仮想世界って、どうやって作ってるのかってことです。
なんでわからないかというと、どうも、このあたりの仕組みは、巧妙に隠されてるようなんですよ。
誰が隠してるかって言うと、「心のシステム」です。
誰に隠してるかって言うと、「意識」にです。

どうも、システムは、僕ら意識に、今見て、感じてる、この世界は、現実世界だって信じ込ませようとしてるみたいなんですよ。
その作戦は、ほぼ100%、成功していますよね。
だって、今まで、誰も、ここに疑問をもったことないでしょう。
目の前に見えてる世界が、現実の世界じゃないって。

システムは、とにかく、意識にだけには気づかせたくないようです。
だから、仮想世界を作る作業は、意識の見えないとこで行っています。
ただ、完璧に見えるシステムも、どこかに、隙があるものです。

たとえば、大人になって、心のシステムが完成する前とか。
つまり、子供とか赤ちゃんのときです。
だから、子供や赤ちゃんは、大人には見えない不思議な光景を見たりするんですよ。
それから、意識があるときと、ないときの境目とか。
たとえば夢です。
だから、夢の中では、不思議な光景を見るんですよ。

そして、今回の麻薬系鎮痛剤です。
どうも、麻薬ってねぇ、システムに穴をあけることがあるようなんです。
僕が見た不思議な光景。
それは、普段は巧妙に隠されてる、仮想世界を作り上げる様子だったんですよ。

これが、今回のテーマです。
術後の医療麻薬で、世界を作り上げる様を垣間見た話。
それでは、始めましょう!

不思議な光景ってのは、目をつむると見えたんです。
目を開けてると、部屋が見えるでしょ。
そのまま、目をつむると、真っ暗になりますよね。
でも、よく注意すると、今まで見てた光景の残像みたいなのが残ってることがあります。
ここまでは、普段でもありますよね。

不思議って言うのは、どうも、それは残像じゃないみたいなんです。
たとえば、寝てて、顔の上に壁が見えてたとするでしょ。
目を閉じても、真っ暗な中に、うっすらと壁が見えます。
目を開けると、その壁の位置が、実際とはずれてるんです。
つまり、見てたのは、残像じゃないんです。
どうも、自分で作り出した部屋を見てたみたいなんです。

ある時、壁に紙が貼ってるのが見えたんですよ。
紙には、何か文字が書いてるみたいでした。
ただ、なんて書いてあるんやろうって、いくら見ようとしても、文字が見えないんですよ。
でもなぜか、筆っぽい文字で書かれてるってのだけはわかったんです。

これとよく似た話、第30回~34回「クオリアってなんだ」シリーズでも語ったことがあります。
机で手を枕に昼寝をしたとき、手の下にお札が見えたって話です。
お札のモアレ模様は見えるけど、何円札かの数字が分からなかったんです。
数字が書いてあるってのはわかるけど、具体的に何円かは、どうしても見えませんでした。
あの時と同じです。

これ、おそらく、文字のクオリアです。
クオリアってのは、人の主観が感じるものです。

たとえば、赤い色を物理で定義すると波長640~770nmの光ってなります。
これは客観的な定義です。

その赤を見て、感じてるのは自分です。
自分の意識とか主観です。
主観は、波長が何nmだから赤って判断してるわけじゃないですよね。
客観的、物理的に存在する世界と、主観が感じる世界とは、完全に別の世界なんです。
別の次元といってもいいです。

客観の世界が物理で作られてるなら、主観の世界を作りあげてるものもあるはずです。
それをクオリアって言います。
クオリアを感じるのが意識です。
そして、主観の世界をつくってるのは、無意識です。

主観と客観、意識と無意識の関係、わかってきましたか?
整理しますよ。
現実世界は物理世界です。
でも、意識は物理世界を直接認識できません。
意識が認識できるのはクオリアだけです。
だから、目で現実の物理世界のリンゴをみたら、無意識は、それを、リンゴのクオリアに変換します。
意識が認識するのは、無意識が作ったリンゴのクオリアです。

わかってきましたか?
現実世界のリンゴと主観世界のリンゴが、別の次元にあるってこと。
でも、どちらのリンゴも同じものを指してます。
違うのは、作られてる材料です。

物理世界は分子や原子で出来てます。
主観世界はクオリアでできてます。
無意識がクオリアで仮想世界をつくって、意識がそれを見て、感じる。
これが心のシステムです。

さて、次は、これを、コンピュータで実現する場合を考えてみます。
カメラで現実世界のリンゴを撮影して、それをコンピュータ内で3DCGのリンゴに変換します。
つまり、3DCGといったソフトウェアで作った世界が仮想世界、または主観世界にあたるわけです。
こう考えると、人間の心のシステムって、そっくり、コンピュータに置き換えることができますよね。

それでは、さっきの話に戻ります。
壁に貼ってある紙が見えたって話です。
紙に書いてある文字は読めませんでした。

僕が見たのは、仮想世界が完成する前の光景だったようです。
システムが、意識に対して、徹底的に隠してるものです。

システムは、仮想世界が完璧にできてから、意識に見せます。
だから、見てるのは現実だと、意識が思えるんです。

僕が見たのは、その準備が整う前の世界だったんです。
さっき、仮想世界はソフトウェアで作れるって言いましたよね。
じゃぁ、この場合、どんなソフトウェアか考えてみましょう。

紙が貼ってあって、何か文字が書かれてるかまで分かったわけです。
それから、その文字は筆文字だってのもわかりました。
これを実現するソフトといえば、何でしょう?
しいて言えば、文書作成ソフトですよね
たとえばWordです。
筆文字ってフォントが設定されてるわけです。
いろんな文書のテンプレートもあるわけです。

僕が見たのは、おそらく張り紙のテンプレートだったんでしょう。
ただ、Wordと違うのは、インターフェイスの部分です。
Wordだと、設定内容は、メニューバーに表示されます。
でも、僕が見たソフトは、設定内容は、意識が直接感じるようでした。
フォントは筆文字だとかって。

おそらく、仮想世界って、こんなソフトを使って作られるんだと思うんですよ。
たとえば、現実の壁に張り紙が貼ってあって、それを見たとします。
そしたら、意識に上がる前の段階で、無意識が、張り紙ソフトを立ち上げるんです。
そして、フォントを設定して、文字を入力するわけです。
そしたら、現実の張り紙とそっくりの張り紙が仮想世界にできるわけです。
システムは、ここまで準備できてから、意識に張り紙を見せるんです。
すると、意識は、あたかも、ずっと前からそこにあったかのように、仮想世界の張り紙を見るんです。

現実の張り紙と違うのは、書いてある文章とか、フォントを別々に管理してるところです。
意識は、フォントは何かって思うと、筆文字って思い浮かぶんです。
書いてある内容を読もうとすると、文章の内容が入ってくるんです。

僕が見たのは、どうやら、意識に見せる前の張り紙テンプレートだったようです。
まだ、フォントしか設定されてないテンプレートです。
だから、いくら読もうとしても、書いてある内容が読み取れなかったんですよね。

不思議な光景について、もう少し続けます。
最初は、自分が寝てる部屋の残像を見てたように思ったんですけど、どうも、そうとも限らなかったようです。
どこかわからない部屋の壁を見てることもありました。
よく見ると、その壁は廊下に続いてました。
残像と違うのは、自分で自由にその部屋を動けることです。
だから、その廊下を入ってみることにしました。
廊下に入ってしばらく行くと、また、別の廊下に分かれてました。
その廊下に入るってしばらく行くと、また、別の廊下に分かれてました。
迷路みたいな感じです。

そのとき、僕が思ってたのは、いつになったら、部屋が表れるとかってことです。
だって、これだけじゃ、何も面白くないですよね。

それじゃぁ、次は、このことについて考えてみます。
これもソフトウェアで作れそうですよね。
建築CADとか、3Dゲームとか。
たぶん、そんなソフトにもテンプレートがあるんでしょう。
廊下のテンプレートとかです。
僕がみたのは、それだったんです。
そう考えたら、なんで廊下しか出てこなかったのか、わかります。

おそらく、現実の建物に入った時、システムは、建築ソフトを起動して、廊下をみたら、廊下のテンプレートを取り出すんです。
ほんで、実際に見える壁とかを廊下テンプレートに張り付けて、本物そっくりの廊下が完成したら、意識に、それを見せるんです。

廊下テンプレートの役割は、見た目だけじゃないですよ。
廊下に入るとか、廊下に沿って歩くとかって行動も提供しています。
意識は、その機能を使って、廊下に沿って歩くとかって行動を取ることができるんです。
オブジェクト指向言語でいえば、廊下クラスがもつメソッドってことです。
だから、僕は、次々に廊下を曲がっていくらでも進むことができたんです。
壁を突き破って進もうなんて思わなかったのは、そんなメソッドがなかったからです。

そろそろ、まとめに入ります。
麻薬系鎮痛剤で、どうも、システムの一部が機能しなくなってたようです。
それは、意識から隠す機能です。
だから、普段、絶対に見ることのない光景を見たんです。

それは、システムが仮想世界を作る舞台裏です。
世界は、テンプレートを使って組み立てられてたんです。
そのテンプレートは、オブジェクト指向言語のクラスと同じようなものです。
または、クオリアと同じといってもいいです。

そう考えると、術後に見た光景は、そういった心のシステムを矛盾なく説明できるものといえますよね。
僕が思ってた通りでした。
この話は、もう少し続けたいと思います。

はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!