今見てる世界がニセモノだって悟られないように、一生懸命、美術さんが裏で走り回って世界を作ってるんですよね。
けなげですよねぇ。
ロボマインド・プロジェクト、第21弾
ロボマインドの田方です。
意識編、第3回です。
この世界は幻想だ。
意識編では、ずっと、言ってることです。
そんなこと、いくら言っても、ちょっと信じられないですよね。
今日は、その証拠をお見せしようと思います。
現実世界は、表の自分の意識のために作られましたよね。
意識が気づかないところで、無意識が世界を必死で作っているわけです。
たとえて言えば、舞台を作る美術さんみたいなものです。
ちっちゃい美術さんがいて、表の自分が見るところを先回りして、その位置に壁やソファを描くわけです。
美術さんの役目は、世界を完璧に保つことです。
少しでも、塗り残しとかあればダメなんです。
この世界に裂けめとかあったら、おかしいですよね。
だから、世界の裂け目とか見つけると、美術さんが急いで駆けつけて、「あー、あぶねぇ」とかいって塗りに行くわけです。
盲点って、聞いたことありますよね。
「議論の盲点を突く」とかいいますよね。
これは比喩的に使われる言葉で、元々は、眼球の構造上、見えない一点のことを指します。
外からの光は、眼球の奥の網膜にある何百万個の受容体で受けられて、視神経を通じて脳に送られます。
視神経は約100万本あって、眼球の奥で束ねられます。
この束ねられた中心だけ、受容体がないので、この点だけ光を感じることができません。
つまり、この点では、見えないんです。
この点を盲点って言います。
見えないといっても、少し目を動かせば見えますし、目は二つあるので、一方の眼で見えない点があっても、もう一方の眼で見えるので、普段、生活していて、盲点に気づくことはありません。
その盲点を確認する実験があります。
こんな風に白い紙に、7~8cmほど離して十字と黒丸を書きます。
そして、紙を30cmほど離して、右目をつむって左目だけで黒丸を見ます。
そして、こんな風に紙を前後すると、十字が消える点があります。
これが盲点です。
逆に、左目をつむって、右目だけで十字を見ると、黒丸が消えます。
今見ている画面でも確認できると思うので、一時停止にして試してみてください。
(全画面で画像を表示する)
十字や黒丸が消える瞬間を確認できましたか?
この瞬間、裏で、美術さんが働いているわけです。
何をしてるかと言うと、美術さんは、視神経からくるデータを使って世界をせっせと描いているわけです。
そこに、データがない点があったわけです。
それが盲点です。
このままじゃ、そこだけ世界を描けない。
完璧な世界に穴があいてしまう。
そうなったら困るので、周りと同じ色でその点を塗るわけです。
こうやって、盲点にある黒丸が白色で塗りつぶされたわけです。
あなたが見てる世界は、現実世界を直接見てるわけじゃないってわかりましたよね。
現実世界を直接見てるのは美術さんなんです。
世界に裂けめができないように、美術さんが裏で走り回っているわけです。
別の例を挙げてみます。
目ではっきり見える領域って、実は、ほんの少しだけなんです。
角度にして1度ぐらいなんです。
手を伸ばして、親指を立てたときの爪ぐらいしか、実ははっきり見えないんです。
それ以外の領域は、ぼやけているんです。
でも、今、見てる光景は、そんな風には見えないですよね。
これは、目から入ってくるデータを使って、美術さんが世界を描いて、意識は、それを見てるからなんです。
眼球は、サッカードと言って、無意識で高速に動いてるらしいんです。
一度に爪先ぐらいの情報しかないので、高速に動かして、世界を少しずつ更新してるわけなんです。
でも、そんな風に高速で眼球が動いてるなんて、全く気付かないですよね。
これも、目からの情報を直接意識が見てるわけじゃないって証拠です。
頭の中に作った世界を見ているから、目で見てない世界も、消えずに見えてるわけなんです。
目から少しずつ入ってくる映像を、こっそり美術さんが書き換えてるわけなんですよ。
今見てる世界がニセモノだって悟られないように、一生懸命、美術さんが裏で走り回って世界を作ってるんですよね。
けなげですよねぇ。
この美術さん、世界を作るのに、
スクリーンに絵を描いてるわけじゃないです。
たとえば、こうして僕が横に移動したとしましょう。
何の問題もないですよね。
それじゃぁ、こんな風に横にずれたとしましょう。(画面が割れる)
こんなこと、あり得ないですよね。
何がおかしいんでしょう。
それは、僕とソファが一緒に動くのは変ですよね。
そもそも、僕が二つに分かれるってのが、おかしいです。
もしかしたら、こんな風に分解できるソファはあるかもしれませんが、こんな風に分解できる人間は、見たことないです。
何が言いたいかというと、意識が見ているのがスクリーンに描かれるタイプの映像じゃないってことです。
もし、スクリーンの映像だと、こんな風に分かれることもできますけど、今まで生きてきて、こんな光景、見たことないですよね。
ということは、意識が認識する世界は、スクリーンに描かれた映像ではないということです。
えーと、これだと、話が入ってこないと思いますので、そろそろ戻りますね。
よいしょっと。
はい。
つまり、どういうことかというと、意識が認識するのは、2次元の映像でなく、3次元で管理されてるわけです。
つまり、世界は、3DCGのように管理していて、床、ソファ、人間は、それぞれ別の3Dオブジェクトなんです。
だから、人間とソファとは、別々に動くし、人間がバラバラに分解されることはないってことです。
もう少し、美術さんの仕事を見ていきましょう。
打ち上げ花火、見たことありますよね。
遠くで見ると、最初に花火が開いて、あとから、ドーンって音が来ますよね。
これは、光と音の速度が違うから、先に目にはいって、後から耳に届くからです。
でも、近くで見ると、ドーンって音と同時に花火が開きますよね。
これは、近いから音と光を同時に感じると思っている人が多いと思いますが、実は、そうじゃないんです。
人間が、音をずれを聞き分ける能力だは、3mも離れたら、その違いが分かるんです。
花火を近くで見るといっても、100mは離れてますから、音と光を直接感じていたら、花火が開く瞬間とドーンっていう音はずれて感じるはずなんです。
じつは、これも、裏で美術さんがタイミングを合わせてるんです。
映像信号を基に、花火の3DCGを作成します。そして、後から来た音と一緒に、3D映像を見せるわけです。
ということは、意識が感じてる世界は、現実の世界より、少し遅れてるわけなんです。
その時間、約、0.5秒です。
結構、長いですよね。
実際に起った出来事と、それに意識が気づくタイミングが0.5秒も遅れてたら、困ること、いっぱいありそうです。
ボクシングなんか、大変です。
相手のパンチが出る瞬間によけたとしても、その瞬間は0.5秒前なんで、気づいたときにはパンチが当たってますから。
安心してください。
そこは問題ないんです。
今、話してるのは意識の話です。
表の自分の話です。
世界の変化に反応して動くのは、裏の自分でしたよね。
相手のパンチに反応してよけるのは、意識のない裏の自分なので、0.5秒もかかりません。
0.5秒遅れるのは、意識を必要とする場合です。
意識が必要な場合って、たとえば、見た物の名前を言うとか、言葉を使う場合です。
そんな場合なら、0.5秒の遅れは、それほど気にならないわけです。
それよりも、意識に、完全な世界を提供する方が重要なんです。
さて、だいぶ、美術さんがやってる仕事がわかってきましたよね。
それでは、意識が見てる現実世界は、どうやって作られているのでしょう?
まず、眼から入ってきた映像信号を基に、3DCGで世界を作ります。
この時、ソファや人間といった3Dオブジェクトを作成し、頭のなかの3次元空間に配置するわけです。
そして、耳からの音声信号は、映像信号とタイミングを合わせて意識に提示するわけです。
リアルタイムで3DCGを作るので、現実世界とわずかに遅れるわけです。
さて、こうして意識が認識する世界がどういうものか、少しずつわかってきました。
僕らの最終目的は、意識を持ったAIを作ることです。
それでは、今まで分かったことを基にして、まずは、意識が認識する世界を再現してみましょう。
今の段階では、意識自体はまだ作らず、人間の意識を使うこととします。
意識を持った人間に、再現した世界を提示して、その人が気づかないとか、違和感を感じなければ、その世界は、意識が感じる世界を再現したと言えるでしょう。
世界を人間に提示する方法として、考えられるのはVRを使う方法です。
バーチャル・リアリティです。
VRゴーグルとヘッドフォンを付けて、VRの世界を見せるわけです。
VRは、普通は、ゲームとか、全然別の世界を見せますが、今回は、ちょっと違います。
ゴーグルにカメラを取り付けて、目で見るのと同じ映像を撮影します。
耳の位置にマイクを付けて、外の音を拾います。
カメラからの映像は、リアルタイムで処理して、床とかソファとかの3Dオブジェクトを生成し、3DGCで部屋の映像を作ります。
そして、その人が見てる方向を検出し、その方向に見える部屋の映像を、その人に見せるわけです。
首を振れば、それに同期して見える映像も変わります。
マイクからの音は、生成された3D映像と同期してヘッドフォンから流します。
これができれば、ほとんど、違和感なく、世界を認識することができるでしょう。
リアルタイムでCGを作るので、その計算する時間だけ現実世界から遅れますが、音も同期して遅れるので、そのずれに気づくこともないでしょう。
意識に提示する世界は、ほぼ、これで上手くいきそうです。
意識が感じる世界は、VRで実現できそうです。
つまり、仮想世界です。
僕は、この意識モデルを「意識の仮想世界仮説」と呼んでいます。
これで、意識の仮想世界仮説の半分、仮想世界ができました。
次は、いよいよ残りの意識です。
意識には、どんな機能が必要なんでしょう?
どうすれば、言葉を理解し、人と自然な会話ができる意識を作ることができるんでしょう?
いよいよ、時間は意識の作り方について解説します。
それでは、次回を、お楽しみに!