第212回 量子力学で、文の意味を読み解け!


ロボマインド・プロジェクト、第212弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

少し時間があきましたけど、新しくなったマインド・エンジンの話に戻りたいと思います。
第207回「ロボマインド・プロジェクト、第二章」では、スクリプト言語、第208回「新マインド・エンジンとはいったい何なのか」ではオブジェクト指向言語としてのマインド・エンジンについて解説してきました。
これまでの説明で、新マインド・エンジンというのは、どうも、プログラム言語そのものだということは分かってきたと思います。

ただ、肝心の説明が抜けてました。
それは、じゃぁ、いったい、意味理解はどうなってるのかってことです。
意味理解の話は、いままで散々してきましたけど、今回は、今までと違うものを使って説明しようと思います。
それは、量子力学です。
これだけじゃ、ちょっと、意味が分からないですよねぇ。
でも、この動画を最後まで見れば、意味理解と量子力学の思わぬ関係が分かりますよ。

これが、今回のテーマです。
量子力学で、文の意味を読み解け!
それでは、始めましょう!

物理世界には、色や形、重さが定義されますよね。
これって、オブジェクト指向言語で表現できます。
リンゴオブジェクトの色プロパティは赤で、形プロパティは丸いとか。

ただ、リンゴの色って、赤以外に、緑とか、なかには黄色とか白とかもあるみたいです。
オブジェクト指向言語では、オブジェクトの元になるものをクラスって言います。
リンゴクラスを設計するとき、色プロパティには、可能性のある色、全てを設定できるように設計するんです。
つまり、リンゴクラスってのは、ある特定のリンゴを表現してるんじゃなくて、リンゴとして可能性のある、あらゆるリンゴを含んでるんですよ。
そして、目の前の赤いリンゴを見た瞬間、あらゆる可能性を含んだリンゴから、赤色の、たった一つのリンゴオブジェクトに収縮するんです。
見た瞬間、可能性が全部消えて、一つに絞られるんです。

これって、何かに似てると思いませんか?
そういうのに興味ある人なら、すぐに、ピンとくると思いますけど、これって、量子力学の観測問題と同じなんです。
はい、出てきました。
量子力学。

こっから、量子力学から言葉の意味を考えていこうと思うんですけど、その前に、量子力学について、僕が、ずっと思ってることがあるんですよ。
それは、量子力学って、勘違いしてる人が多いよなぁってことです。
まぁ、これは、偏見かもしれないですけど、スピリチュアルとか好きな人に多いみたいなんですよ。
どう勘違いしてるかって言うと、人間の精神が物質に影響を与えることが量子力学で証明されてるとかって。
これって、観測問題のことです。

このことについて、ちょっと説明しようと思います。
中学のとき、原子って、原子核の周りを電子が回ってるって習いましたよね。

土星の輪みたいなので、土星モデルって言われるものですけど、これ、厳密には正確じゃないんですよ。
正確には、原子核の周りに、電子の存在可能な領域があって、電子は、確率論的に存在するとしか言えないんですよ。

確率論的に存在するっていうのは、ここだと10%の確率で存在するとか、ここだと0.01%の確率でしか存在しないって感じです。
原子核の周りに濃淡のある雲があるってイメージです。

これ、どういうことかわかりますか?
これ、ある瞬間、電子はここにいるって確定できないってことです。
言えるのは、ここにいる可能性は何%ってだけです。
これが、不確定性原理です。

ややこしくなるのは、こっからです。
原子の位置は確定できないんですけど、観測すればわかるんです。
ただし、その時は、電子の存在確率は100%になります。
さっきまで、電子は、雲の中のどこかに確率論的に存在するだけで、実体はありませんでした。
それが、観測したとたん、実体となって現れてきたんです。
雲みたいにもわっとしてたものが、観測することで、この世にはっきりと出現したんです。

みんなが勘違いするのは、ここなんですよ。
どう勘違いするかっていうと、観測しようって意思が、電子を現実世界に出現させたって言うんですよ。

いいですか。
不確定性原理は、そんなこと、一言も言ってないですよ。
言ってるのは、観測したら位置が特定できたってことだけです。
もっといいますよ。
観測するって、どういうことかわかりますか?
見るってことですよね。
見るには何が必要ですか?
真っ暗じゃ、何も見えませんよね。
見るには、光が必要ですよね。

つまり、観測するって行為に必要なのは光なんです。
電子雲に光子をぶつけると、電子雲が消えて電子が出現したんです。
それだけです。
わかりましたか?
これ、どこまでも物理的な現象ですよね。

ここまで説明したら、もう、わかりますよね。
観測者の意思とか精神とか、全く、関係ないって。
きっかけは観測者の意思かもしれないですけど、現象はすべて物理現象なんです。
観測するぞって念じたから、電子が出現したわけじゃないんですよ。
光を当てたからですよ。
原因は物理現象です。
人間の精神が物理世界に影響を与えることが証明されたなんて、全くのナンセンスってわかりましたよね。

そうはいっても、不確定性原理のメタファーは、言葉の意味モデルには使えるんですよ。
僕らは、リンゴといったとき、漠然としたリンゴを思い浮かべてます。
これが、意識が扱う言葉です。
言葉の持つ難しさって、ここにあると思うんですよ。
はっきりしてない、漠然としたイメージのリンゴ。
そんなつかみどころのないもので、僕らは、何不自由なく会話できますよね。
「さっき、リンゴもらったから、食後に食べましょう」っていわれたとしましょ。
そのとき、色は何色だ、直径は何センチだって、だれも聞かないですよね。
でも、実際にもらったリンゴは、色も直径も確定したリンゴです。
それが、言葉の段階、心に思い浮かべてる段階だと、曖昧なままなんです。
それでも、何も問題ないんですよ。
つまり、確率論的に存在するリンゴ、不確定なリンゴを僕らは扱ってるってことです。

そんな、曖昧なことを表現できるのが、オブジェクト指向言語なんです。
リンゴクラスの色プロパティに設定される色の確率は、赤70%、緑20%とかって表現も可能なんです。
だから、白いリンゴをみたら、「珍しい!」って驚いたりできるわけです。

さて、ここまでは、まだ、オブジェクト指向言語を使った物の認識の話です。
これは、いってみれば、データの管理の話です。
でも、もっと重要なものがあります。
それは、文の意味を理解するってことです。
それじゃぁ、文の意味を理解するって、いったい、どういうことでしょう?
それは、データ管理と違って、もっと、ダイナミックに動くものです。
じゃぁ、具体的に、何が、どう動くんでしょう。
こっからが、意味理解の本質の話です。

文の意味を理解できるとは。
それは、その文の言いたいこと、その文を書いた人の考えを理解できるってことですよね。
じゃあ、言いたいことや考えを理解するには、何が必要でしょう?
それは、相手の考えてることを、自分の頭で再現できる仕組みです。
つまり、自分で自由に考えたり、思い描いたりできる仕組みです。
つまり、自分の頭でいろいろシミュレーションできる仕組みです。

じゃぁ、シミュレーションには、何が必要でしょう?
それは、頭の中に作り出して、意識が自由に操作できる世界です。
これが、仮想世界です。

意識は、頭の中の仮想世界を自由に操作して考えます。
このことを、僕は、意識の仮想世界仮説って呼んでます。
詳しくは、この本に書いてあります。
説明欄にリンクを張ってるので、興味ある方は読んでください。

さて、今度はコンピュータと文の意味理解を対比して考えてみます。
たとえば「2+3」ってプログラムで書いたとします。
これは、人間でも読める表現ですよね。
これは、文にあたりますよね。

つぎは、「2+3」って計算の実行です。
CPUには足し算回路って演算回路があります。
足し算の実行って、これを使って、実際に計算することです。
じゃぁ、この実際の計算って、文の意味理解だと、どこで行われるでしょう?
それは、仮想世界です。
ここでは、計算世界としておきましょう。

次は、計算について考えます。
人間も、コンピュータも計算できますよね。
つまり、人間も、計算世界を理解できるわけです。
ただし、コンピュータとは仕組みは違います。
コンピュータは、半導体で作られた演算回路で計算しますし、人間は、脳で計算します。
でも、やってる中身は同じなので、どちらも計算を意味理解してるといえますよね。

さて、今度はマインド・エンジンです。
今までの話を、マインド・エンジンに当てはめていきますよ。

前回のデモでお見せしたのは、「太郎がコンビニでコーラを買う」って文でした。
この場合、世界は何でした?
所有権世界ですよね。
コーラの所有権がコンビニから太郎に移るってことを表現できる世界です。
これは、コンピュータでいうところの計算世界に対応します。

人もコンピュータも理解できるのがプログラム言語です。
新マインド・エンジンで作ったプログラム言語というのは、この人でもコンピュータでも理解できるプログラム言語になるわけなんです。
そして、そのプログラム言語が操作するのが仮想世界です。
仮想世界も、人もコンピュータも理解できます。
ただ、今までのコンピュータが理解できた仮想世界は、計算世界だけでした。
それに対して、新マインド・エンジンは、所有権世界も理解できるようになったんです。
そう考えると、文の意味理解において、仮想世界が、一番のキーポイントになりそうですよね。

これらを踏まえて、最後に、意味理解とは、いったい何なのかについて、もう一度、考えてみます。
足し算の場合、足し算回路に数字を入力して、計算をすることですよね。
まず、計算世界ってのがあって、その世界には、足し算とか引き算ってメソッドがあるわけです。
そして、そのメソッドを実行すると、計算が実行されて結果が出力されるわけです。
つまり、世界が変化するんです。
文の意味を理解するっていうのは、メソッドをつかって、世界を変化させることって言えそうです。

所有権世界も同じです。
所有権世界には、「買う」とか「もらう」ってメソッドがあるわけです。
そのメソッドを実行することで、世界が変化するんです。
所有権世界の場合、所有権の移動が行われることです。
これが文の意味を理解するってことです。

わかってきましたか?
文の意味を理解するって、具体的に何をどうしてるのか。
それは、その世界のメソッドをつかって、その世界を変化させるってことなんです。

これと、ほとんど同じことは、コンピュータの計算世界で、すでに実現されていました。
マインド・エンジンがやろうとしてることは、計算世界を、人間が認識するあらゆる世界に拡張することです。
今は、まだ、マインド・エンジンが扱えるのは所有権世界だけです。
それを、考えたり、感じたり、人間が心で感じる、あらゆる世界に拡張するんです。
これが、新マインド・エンジンがやろうとしてることです。

さて、まだ、新マインド・エンジンの半分ぐらいしか語り切れてないので、続きは、次回以降にしたいと思います。
今回の動画が面白かったら、チャンネル登録、高評価お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、オッ楽しみに!