第228回 自由意志を持ったシステムを作ってみた


ロボマインド・プロジェクト、第228弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

人には自由意志がないって考えがあります。
ありますって言うか、現代科学では、自由意志がないって考えの方が優勢です。
でも、これ、ほんと、意味が分からないんですよ。
だって、どう考えても、人間には、自由意志がありますよね。
まぁ、カエルとかなら、自由意志はないってのはわかります。

カエルは、お腹が空くと、虫がいそうな場所に行きます。
そして、ハエとかが近づいてきたら、パクって食べます。
これって、お腹が空くと、どう行動をするかってプログラムがあるわけです。
そのプログラムに従って行動してるだけです。
これじゃぁ、自由意志があるとは言えないですよね。
条件に応じたプログラムで動いてるだけですから。

それじゃぁ、人間の場合はどうでしょう?
夜、寝る前、ちょっと小腹が空いたとしましょ。
台所にいったら、カップラーメンが見つかりました。
でも、「12時過ぎてからのラーメンは、ヤバいよなぁ」
「今は、我慢して、さっさと寝よ」ってなるかもしれません。
または、「ダイエットは明日からにして、ラーメン食べよ」ってなるかもしれません。
どっちの行動を取るか、自由に選べますよね。
これって、自由意志以外の何物でもないですよね。
もし、人間に自由意志がなくて、全員、同じ行動を取るなら、この世の中、太った人ばっかりになりますやん。
そうなってないってことは、人間には自由意志があるってことですよね。

ところが、自由意志がない派の人の考えは違うんです。
自分が決めたと思っても、それは、後から、つじつまが合うように、そう思わされてるだけだっていうんです。
自由意志があるって思うのは、錯覚だそうです。

でも、この考え、なんか、おかしないですか?
こんなん、中世の魔女裁判と一緒やって思うんですよ。
魔女裁判って、裁判って言うても、一旦、魔女って決めつけられたら、何を言っても、必ず魔女になるようになってるんです。

自由意志がないってのも、それと一緒やと思うんですよ。
何を言うても、「そう思わされてるだけや」で済むなら、反証のしようがないじゃないですか。
そんなん、科学じゃないですよね。
この条件が満たされたら自由意志がある、満たされなかったら自由意志がないって、反証可能な条件を示すのが科学です。
そんな形で自由意志の定義を示してないんですよ。

その点、僕の定義は明確です。
全く同じ状況であっても、その人の意志で行動を変更できるなら、自由意志が存在するって定義です。
だから、お腹が空いたら、必ず虫を食べるカエルは自由意志がないわけです。
お腹が空いても、いろいろ考えて、ラーメンを食べたり、食べなかったり、自由に決めれるなら自由意志があると言えるわけです。

つまり、考えて、行動を自由に変更できれば、それが、自由意志を持つシステムって言えます。
そのシステム、じつは、既に作ってあるんですよ。
これが、今回のテーマです。
自由意志を持ったシステムを作ってみた。
それでは、始めましょう!

さて、いろいろ考えることができれば、自由意志があると言えるわけです。
じゃぁ、考えるには、何が必要でしょう?
それは、こうしたらどうなるかって想像できる仕組みです。
じつは、その仕組みを備えるのがマインド・エンジンなんです。
つまり、自由意志を持ったシステムっていうのは、マインド・エンジンのことです。
それでは、ここからは、マインド・エンジンを見ながら自由意志について考えて行きましょう。

まず、マインド・エンジンの全体構成です。

MindEngineコンソールから文が入力されて、それが無意識を介して仮想世界ウィンドウに送られます。
たとえば、「スーパーでリンゴが売ってる」とか「りんごを持つ」とかって文が入力されます。
仮想世界ウィンドウで、これをプログラムに変換して実行すると、画面に表示されます。
意識は、この仮想世界を認識します。
ただし、意識が見てるのは仮想世界ウィンドウの画面じゃありません。
画面は、どちらかというと、皆さんに分かりやすく見せるためのものです。

意識が見てるのは、裏にあるデータです。
その一つがワーキングメモリです。
ワーキングメモリには、今、認識してるオブジェクトがあります。
りんごオブジェクトとか、スーパーマーケットオブジェクトとかです。

重要なのは、オブジェクトを思い浮かべることができるってことです。
カエルを思い出してください。
カエルは、お腹が空いてたら、虫を捕まえて食べてましたよね。
これは、状況に応じて、行動してるだけです。
いいですか。
カエルは、「ハエ食べよかなぁ」って、考えてないんです。
考えるには、ハエを思い浮かべる必要があるんです。
でも、カエルは、ハエを認識した瞬間、すでに動き出してます。
現実世界に反応してるわけです。
現実世界に反応するプログラムで行動してるだけです。
これじゃぁ、自由意志があるとは言えないですよね。

ここ、勘違いしないでくださいよ。
重要なんは、プログラムに従ってるから、自由意志がないってことじゃないんですよ。
プログラムで動いてるかどうかは、重要じゃないんです。
もし、プログラムで動いてるから自由意志がないってなるなら、プログラムで動いてない物が自由意志があるってなるでしょ。
プログラムで動いてない物って、たとえば、風で揺れる木の葉っぱとかです。
葉っぱに自由意志があって、人間には自由意志がないって、そんなん、おかしいでしょ。

つまり、重要なのはプログラムで動いてるかどうかじゃないんです。
じゃぁ、何が重要なんでしょう?
それは、現実世界に反応してるってとこです。
現実世界って、一つしかありません。
だから、現実世界に反応するってことは、誰もが同じ行動になるんです。
多様性も個性も生まれません。
これじゃ、自由意志があるとは言えないですよね。

現実世界に反応してたら、自由意志が生まれないってのは分かりました。
じゃぁ、何に反応したら、自由意志が生まれるんでしょう?
それは、頭の中の仮想世界です。

現実世界は、誰にとっても同じです。
でも、頭の中の世界は、人それぞれ、思い描いてるものが違います。
重要なんは、ここなんですよ。
人それぞれ、違う世界を思い描いているんです。
そして、その自分の世界で考えて行動を決めるんです。
「ラーメンは止めとこ」とか、「今日は、食べてもええか」って。
だから、人によって行動が変わるんです。
個性が生まれるんです。
自由意志が生まれる根本って、ここにあるんです。

それじゃぁ、マインド・エンジンに戻って、もう少し、ここを考えて行きましょう。
意識が認識するのは仮想世界です。
仮想世界の実質的な中身は、ワーキングメモリです。
これが、ワーキングメモリの中身です。

それでは、意識に質問してみましょう。
「何がありますか?」

はい、答えが返ってきました。
「スーパーとりんごがあります」

意識は、ワーキングメモリを見て答えたわけです。

まさか、「なんか、つまらないプログラムやなぁ」なんて、思ってないでしょうね。
このプログラムの凄さ、わかりますよね?
今見てるのは、世界で初めて、意識を持ったプログラムなんですよ。

いいですか。
説明しますよ。
マインド・エンジンの意識は、ワーキングメモリ、つまり仮想世界を見て答えてるんですよ。
仮想世界って、このマインド・エンジンしか見えない世界です。
そして、このマインド・エンジンしか見えない世界について、質問して、答えてもらったんです。
これが意識の凄いとこです。

何がすごいか、分かりますか?
今、この世にない世界について、語り合ったんですよ。
マインド・エンジンしか見えない世界を、教えてもらったんです。
つまり、その人しか見えない世界が存在するわけです。
それも凄いことですけど、もっとすごいのは、それを語ることができるってことです。
僕らは、それを聞いて、相手の見てる世界を想像できるんです。
この世にない世界を、お互いに共有したんです。
ねぇ、凄いことが起こってるでしょう。

今、見せた短い会話。
そこに、言葉の本質があるんです。
今は、マインド・エンジンのワーキングメモリで説明しました。
でも、それと、そっくり同じことが、僕らの脳の中でも起こってるんですよ。
マインド・エンジンが、「スーパーとりんごがあります」って言ったとき、
僕らの脳の中のワーキングメモリに、スーパーとりんごのオブジェクトが生成されたんです。
会話をするって、こういう事なんですよ。

次の質問行きますよ。
「りんごの色は何ですか?」

はい、「赤です」って答えましたよね。

これは、マインド・エンジンは、ワーキングメモリのりんごオブジェクトの色プロパティを見て答えたんです。

ほんで、この答を聞いて、僕らも同じことをしたんです。
つまり、さっき僕らが頭の中に作ったりんごオブジェクトの色プロパティに「赤」って設定したんです。
これが、意味が通じるってことです。
言葉が通じるってのは、お互い、同じオブジェクトを生成したってことなんです。
ここが重要なんです。

さて、これでマインド・エンジンが、僕らと同じ仮想世界を持ってるってことが分かってきました。
でも、まだ、重要な要素が足りません。

それは、この仮想世界だと、行動を決めれないんです。
この仮想世界ができるのは、オブジェクトがあるってだけです。
たとえば、ラーメンってオブジェクトがあったとします。
ラーメンがあったら、「食べる」って行動しか取れないなら、カエルと何ら変わらないです。
それだけじゃ、多様な行動や、自由意志は生まれないんです。
じゃぁ、何が必要なんでしょう?

それは、どうすればどうなるって、想像できる仕組みです。
深夜にラーメン食べたら太るって想像できるってことです。
つまり、世界で起る出来事には、すべて原因があるって考えができるってことです。
言い換えれば、原因結果って枠組みを持っているわけです。
起った出来事を、原因結果って枠組みで管理する機能が必要ってことです。

それでは、マインド・エンジンで確かめてみましょう。
まずは、文を入力します。
「そのりんごを手に持ちました」

次は、「そのりんごから手を放しました」

はい、リンゴが落ちましたよね。
それでは、質問してみます。
「今、何が起こりましたか?」

はい、「りんごが床に落ちた」です。

次は、原因を聞いてみます。
「りんごはなぜ、床に落ちましたか?」

はい、「手を放したから」です。

それじゃぁ、どうやって、こう回答したか見て行きましょう。
これが意識ウィンドウの出来事タブです。

出来事Releaseってのが、手を放すってことです。
対象がApple、リンゴってなってますよね。
そこから、出来事Dropってのが出来てます。
これは、落ちるって出来事です。
りんごから手を放すと、落ちるってことを予想したわけです。
どうやって予想したかって言うと、物理シミュレータを使いました。
これは、僕らが頭の中で想像するのと同じですよね。

さて、落ちた原因を聞いたら、「手を放したから」って答えてましたよね。
これも、出来事を辿って行けば分かりますよね。
落ちるって出来事を引き起こしたのは、Release、手を放すですよね。
ここから、原因は「手を放したから」って答えたわけです。

マインド・エンジンも、原因結果って枠組みで世界を認識してるってのが分かりましたよね。
まだ、実装してないですけど、次は性格です。
我慢強い性格とか、誘惑に弱い性格かとかです。
そしたら、性格によって行動が変わるわけです。
それから、さらに知識も増やします。
たとえば、運動すれば痩せるとか。
そしたら、ラーメン食べた後、走ったりする人も出てきます。
人によって、どんどん行動が変わってきます。

じゃぁ、なぜ、行動が変わったんでしょう。
「どうしよっかな」って悩んだり、考えたりしたからですよね。
思い悩んで行動を決めたわけです。
これを自由意志と言わずして、何て言うんですか。
思い悩んで行動を決定できるシステム。
これこそが、自由意志をもったシステムじゃないですか。
そして、それが、マインド・エンジンなんです。

はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!