第234回 脳を120%解放した女⑥ 〜人類の意識の次の進化


ロボマインド・プロジェクト、第234弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

「脳を120%解放した女」シリーズの主人公、ジル・ボルト・テイラー。
彼女は脳科学者でありながら、自身が脳卒中になりました。
左脳が停止して、右脳だけで感じる世界を自らが体験しました。
今までは、その時の話をしてきました。
彼女の自叙伝を読むと、その後、回復するまでの経緯が詳細に語られています。

これ、ホント、面白いんですよ。
面白いって言うと、失礼ですけど、えっ、そうなってたのって驚くことがいっぱい書いてあるんです。

それ以上、分解のしようのないぐらい単純なものが、じつは、いろんな要素から組み立てられてることってこと、ありますよね。
たとえば、無色透明の太陽光とかです。
太陽光って、プリズムを通すと、7色に分かれます。
つまり、何色もの光が合わさって無色透明の光になってるわけです。

それと同じなんですよ。
今見てる世界も、見たままの世界があるだけじゃないんですよ。
いろんな要素が合わさって、今見てる世界が作られてるんですよ。
どんな要素が組み合わさってるのか、それが、ジルが回復する過程を読むと、ホント、よく分かるんですよ。
しかも、それだけじゃないんです。
良く読み解くと、そこに、人類の意識の次の進化が見えてきたんですよ。
これが今回のテーマです。
意識の次の進化。
それでは、始めましょう!

まず、心の基本構造です。
人は、目で見た世界を、頭のなかで仮想世界として構築します。
意識は、この仮想世界を介して、現実世界を認識します。
これを、意識の仮想世界仮説って言います。
詳しくは、この本に書いてますので、良かったら読んでください。

それから、もう一つ重要なのは、心の二層構造です。
下の層は、物理世界と繋がってる第一レイヤーです。
目で見て、神経細胞を伝わって脳で処理されるレイヤーです。
もう一つが、その上にある第二レイヤーです。
仮想世界とか、意識は、このレイヤーにあります。

でも、第一のレイヤーは、直接、意識が感じることはできません。
だから、同じ物を見ても、意識が感じたり、感じなかったりすることがあるんです。

具体的な例で説明します。
盲視って脳障害があります。
脳のある部分が損傷することで、目が見えなくなる障害です。
でも、眼球が損傷してるわけじゃないので、目からの情報は脳に入っています。
ただ、意識につながる経路が損傷してるから見えないと感じてるわけです。

さて、こっからです。
レーザーポインターで黒板を示して、どこに光の点がありますかって、この人に聞くんですよ。
そしたら、「いや、見えないからわからないです」って言います。
それでも、「当てずっぽうでいいから指で指してみてください」っていうです。
すると、ちゃんと、光の位置を指差すんです。

これ、どういうことか分かりますか?
その人は、光の位置は認識してるんですよ。
ただ、自分が、それを認識してるってことを、分かってないんですよ。

この図を見てください。

上側の背側視覚路は、位置や動きを分析する「どこの経路」と呼ばれてます。
下側の腹側視覚路は、色や形を分析する「何の経路」って呼ばれてます。
この人の場合、何の経路が損傷して、「どこの経路」だけが生きてました。
だから、光点の位置が分かったんです。

でも、意識では見えないと感じてましたよね。
ということは、どうも、「何の経路」が意識とか、第二レイヤーへ通じてるようです。
そして、「どこの経路」は第一レイヤーにあるようです。

この盲視、もう一つ、面白い現象があります。
光の点の位置は指差しできました。
次は、光を消してから、「光の点は、どこにありましたか?」って聞きます。
すると、今度は、途端に間違うようになるんです。
完全に、でたらめなとこを指差すようになるんです。

これ、どういうことか、分かりますか?
一瞬前の位置を覚えれないってことです。
つまり、第一レイヤーは、過去の位置を覚えれないんです。
第一レイヤーが認識できるのは、常に、現在の位置だけです。
もっと言えば、第一レイヤーは、今、この瞬間しか、感じれないわけです。
時間の流れがないんです。

これ、よく考えれば分かります。
第一レイヤーは、目や耳などの感覚器につながってます。
目や耳が知覚するのは、今、現在だけです。
時間を理解するには、過去を思い出す必要があります。
じゃぁ、どうやって過去を記憶するんでしょう?
それは、現在の状況を記憶するわけです。
それが、やがて過去の記憶となります。
そして、この過去の記憶と現在の間にある物、それが時間です。

それじゃぁ、現在の状況をどうやって記憶するんでしょう?
現在の世界は、仮想世界で再現されます。
だから、この仮想世界を、そのまま記憶すればいいんです。
仮想世界があるのは第二レイヤーでしたよね。
つまり、時間を感じれるとしたら、第二レイヤーとなるんです。
第一レイヤーには、時間は流れてないってことです。

このことは、ジルも同じようなことを言ってました。
左脳に脳卒中が起ったジルは、右脳だけでみる世界を体験しました。
ジルが損傷したもの、それを、僕は世界認識システムと名付けました。
世界認識システムは、どうやら時間もつくり出してたんでしょう。

右脳で感じてた世界を、ジルは、こう言ってます。
「そこには、今という瞬間しかありませんでした。
今、この瞬間が過去に流れると言った感覚がありませんでした。
ただ、ただ、感じるのは、今、この瞬間だけ」

つまりね、僕らが、今、感じてる、時間って感覚、これって、世界認識システムが作り出したものなんですよ。
本来、時間なんてものは、存在しないんですよ。
仮想世界を作り出して、初めて、感じれるんです。
ジルが失った物、それは仮想世界そのものです。

彼女は、リハビリの過程で、少しずつ、この仮想世界を取り戻していきます。
ジルの話を聞くと、この世界って、本当に、頭のなかで組み立てられてるってのが、よく分かります。
たとえば、あるとき、リハビリで、ジグゾーパズルをしてたそうです。
12ピースの簡単なパズルです。

凸凹の形を頼りに、ピースをはめ込んでいきます。
その時、お母さんが言いました。
「色を見なさい。色が繋がるようにするのよ」って。

その時、彼女は、初めて、色ってものに気付いたそうです。
もちろん、今までも、色は感じてました。
でも、言われるまで、色があるってことが、意識されなかったんです。
何を言ってるのか、よく分からないと思いますけど、僕は、こう解釈したんです。

頭の中の仮想世界に、物体があるわけです。
色って、物体の表面にありますよね。

ジルは、脳卒中になった時、物体の境界が分からなくなったとも言ってました。
自分の体の境界が消えて、世界と一体と感じたって。

たぶん、これって、頭の中の仮想世界が崩壊したんだと思うんですよ。
それを、リハビリで少しずつ、取り戻したんです。

それから、こんなことも言ってます。
最初、物があるってのが、よく分からなかったって。
近くの物が大きく見えて、遠くのものが小さく見えるとか。
箱があって、その奥に、クマのぬいぐるみの頭だけが見えてたとします。
でも、本当は、体もありますよね。
箱に隠れて、体が見えないだけってわかりますよね。
最初、そんなことも、理解できなかったそうなんですよ。

これって、三次元世界が、理解できてないってことですよね。
仮想世界がちゃんと構築されてないわけです。
眼球が損傷してるわけじゃないので、目からの情報は入ってきてます。
損傷したのは、仮想世界の方です。
仮想世界を介さずに、直接、目からの情報だけを意識は受け取ってたんです。
だから、奥行きとか感じず、ただ、ふわっと世界があるとしか感じれなかったんです。

それが、少しずつ仮想世界が復活してきました。
世界を、三次元として認識できるようになってきたんです。
そこまでできて、やっと、色が理解できるようになるんです。

彼女は驚いて言います。
「今まで見えてたはずなのに、何で、色に気付かなかったの?」って。

今まで見えてた色は、どこにも結びついてなかったんです。
それが、三次元で世界を認識できるようになったから、物体の表面に、色がピタッとはまり込んだわけです。
目で見えてたものが、しかるべき場所に収まったってわけです。

どうです?
分かってきましたか?
今、見えてるこの世界。
それは、いろんな要素によって組み立てられてるんですよ。
無色透明な太陽光が、7色の光から出来てるのと同じです。

そうやって組み立てられたのが仮想世界です。
さっき説明しましたよね。

「何の経路」で、物の色や形を分析するわけです。
この「何の経路」は、第二レイヤーにつながってます。
第二レイヤーで、分析した色や形を使って3次元の物体を組み立てるわけです。
第二レイヤーには、背景となる3次元空間もあります。
三次元空間に物体を配置して、色を貼り付けるわけです。
こうやって、仮想世界が組み立てられるわけです。
そして、目から入って来た情報で、この仮想世界を次々に更新していきます。
つまり、現在が次々に過去に流れていくわけです。
これが時間です。
仮想世界が崩壊すると、過去に流れる時間も感じれないってのも、分かりますよね。

空間、形、色、時間。
これらの要素を組み合わせて仮想世界が作られるわけです。
僕らは、この仮想世界を使った世界認識システムを介して、世界を認識するんです。
彼女は、リハビリによって、壊れた世界認識システムを修復したんです。

ここで、脳卒中を起こした頃のジルに戻ってみます。
その頃、外からの刺激を、とにかく強く感じてたそうです。
いろんな光が同時に飛び込んできて、何が何だか分からなかったそうです。
音もです。
周りの騒音と、声とを分離することができなくて、何か話しかけられても、頭のなかでガンガン響くだけだったそうです。
世界認識システムが壊れて、生の刺激を直接、受け取ってたんでしょう。

こうも言っていました。
相手が何を言ってるのか分からないけど、相手のエネルギーには敏感になっていたって。
自分のことを心配して、愛情をもって接してくれる看護師さんからは、温かいエネルギーを感じてたそうです。
一方、ろくに顔も見ないで、事務的に接する看護師さんからは、エネルギーを奪われるだけだったそうです。
エネルギーヴァンパイアって言ってました。

よくスピリチュアルな話で、人の持つエネルギーとか、オーラとか魂とかって出てきますよね。
物理的に存在するエネルギーは全て解明されてます。
今さら、未知のエネルギーが発見されることはあり得ないです。
僕も理系の人間なので、そんなことはよく分かってます。

ただ、それとは別に、人の持つエネルギーってのは感じることはあります。
一緒にいて、元気になる人と、疲れる人って、明らかにいますよね。
この人の持つエネルギーとは何か。
そのヒントが、ここにあると思うんですよ。

このエネルギーを感じるのは意識ですよね。
つまり、第二レイヤーです。
第一レイヤーは、現実の物理世界につながってます。
でも、第二レイヤーは、第一レイヤーの情報を基に、作り出されたものです。
つまり、物理世界とは直接つながっていません。
だから、第二レイヤーで感じるエネルギーは、物理世界で観測できないのも納得がいきます。
第二レイヤーの仮想世界は、お金とか、学歴とか、物理世界にないデータも扱います。
だから、物理的に観測できないからとの理由で否定するのは意味がないことです。

そして、ジルは、世界認識システムが壊れたとき、人の発するエネルギーにものすごく敏感になりました。
ただ、それも、世界認識システムが修復されてくると、だんだん薄れていったそうです。

僕が、何を言いたいか、分かりますか?
それは、世界認識システムを使うことで、人が発するエネルギーを感じれなくなったんじゃないかってことです。

それから、もう一つ、大事なことが読み取れます。
このエネルギーって、第二レイヤーにありますよね。
第一レイヤーにはないわけです。
つまり、第一レイヤーだけで生きてる生物は、このエネルギーは感じないはずです。
もっとはっきり言えば、意識を持たない生物は、このエネルギーを感じてないはずなんです。

ここで言う意識ってのは、僕の定義する意識ですよ。
それは、仮想世界で世界を認識する生物です。
僕は、哺乳類から、仮想世界を持ち始めたと思ってます。

そして、人になって、仮想世界の世界認識システムが、どんどん完成形に近づいて行ったんだと思うんです。
時間を認識する機能とか、言語機能が追加されていったんです。

ただ、世界認識システムは、人が発するエネルギーを認識する機能は持ち合わせてないんです。
だから、世界認識システムが未成熟だと、人が発するエネルギーを感じれるんだと思うんですよ。
たとえば、犬とか、たまに、何もない空中に向かってワンワン吠えたりしてるのを見ることがあります。

それから、赤ちゃんとか子供とか。
赤ちゃんが、何もない空中を指差して笑ったり、怖がって泣いたりすることってありますよね。
ただ、それも、だんだん成長するにつれて、無くなります。
それは、世界認識システムが完成して、言葉を話すようになったころです。

進化論の中に、ネオテニーって言葉があります。
ネオテニーっていうのは、次の世代の進化の前兆は、前の世代の子どもに現れるって現象です。
その一例として、「遊ぶ」があげられます。
動物の子どもは、よく遊びます。
でも、動物は、大人になると、だんだん遊ばなくなります。

でも、人間の大人は遊びますよね。
これもネオテニーの一種ではないかって言われています。

さて、赤ちゃんや子どもが見えてたエネルギー。
大人になると、だんだん、見えなくなりました。
もしかして、これって、人類の次の進化では、当たり前に見たり、感じたりするようになるのかもしれません。

最近では、大人になっても、このエネルギーを感じれる人が増えて来てるようです。
もしかして、人類の意識は、既に、次に世代に進化し始めてるのかもしれません。
皆さんの中にも、既に、意識が進化してる人がいるんじゃないでしょうか。

はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それでは、次回も、おっ楽しみに!