第236回 この世界が現実に存在するとまだ思ってるあなたへ


ロボマインド・プロジェクト、第236弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

映画マトリックスの新作が公開されましたよね。
マトリックスで描かれてたのは、今、見てる、この世界は現実には存在しないって話です。
脳に直接データが送りこまれてヴァーチャルな世界を見せられてて、それを現実だと思わされてました。
現実の自分は、カプセルの中に入って眠って、ずっと夢を見させれれてたって話です。

僕は、そこまでは思ってないです。
僕らは、ちゃんと起きてるし、現実世界はあると思ってます。
でも、あの話の半分は真実だと思います。
それは、今、目の前に見てるこの世界、これは現実じゃないってとこです。
僕らが、今見てる、この世界は仮想世界だってことです。

ここ、もう少し説明します。
僕らが生きてる世界は二重構造になってるんですよ。
外側が現実世界で、内側が仮想世界です。
僕らは、内側の仮想世界しか認識できないんですよ。
外側の現実世界は、直接は認識できないんです。

ここで、僕らって言うのは、人間のことです。
人間だけ、特殊なんです。

人間以外の生物って、みんな、似てますよね。
同じ生物なら、同じ行動をして、同じものを食べます。
だって、同じ遺伝子で、同じ体をして、同じ世界で生きてるんですから、同じ行動になるのは当たり前です。

でも、人間は、人それぞれ、全然違う行動を取りますよね。
食べ物も、服装もバラバラです。
これ、よく、考えたらおかしいでしょ。
同じ遺伝子を持って、同じ体を持って、同じ世界で生きてたら、動物みたいに、同じような行動を取るはずでしょ。

そうならないってことは、どっかが同じじゃないってことです。
でも、遺伝子も同じで、体も同じです。
じゃぁ、何が違うかってなると、残ってるのは世界です。
みんなが同じと思って、疑ってない、この現実世界が、じつは、人によって違うんですよ。
というか、みんなが現実世界と思って見てるのは、じつは、内側の仮想世界なんです。
本当の現実世界は、外側にあって、それは、僕らは直接、見ることができないんです。
つまり、世界は二重構造になってるってるんです。

どうでしょう?
これでも、まだ、この世界が現実に存在するって、思ってますか?
わかりました。
それじゃぁ、今回は、ここを丁寧に解説します。
それじゃぁ、始めましょう!

まず、世界の二重構造について、基本的な考えを説明します。
人は、目で見た世界を頭の中で、仮想世界として構築します。
意識は、この仮想世界を介して現実を認識します。
つまり、世界は二重構造になってるわけです。
詳しくは、この本に書いてるので、良かったら読んでください。

人が認識する内側の世界が仮想世界で、外側に現実世界があります。
意識は、内側の仮想世界にあります。
そして、意識が直接認識するのがクオリアです。

クオリアっていうのは、外の世界にある物を、内側から認識したものです。
たとえば、赤色は、波長約700nmの電磁波って定義できます。
でも、これは物理世界での定義です。
外の現実世界の赤です。
内側の世界は、別の定義が必要なんです。
外の世界で一番確かなのは物理です。
物理が絶対王者です。
だから、色を波長とかで定義するんです。
じゃぁ、内側の世界の絶対王者は何でしょう?
分かりにくければ、言い方を変えます。
内側の世界は、いったい、誰のために存在するんでしょう?
それは、自分です。
自分の意識です。

ある時、意識が生まれたわけです。
意識は、この世界を理解したいと思いました。
でも、意識は直接、世界を認識できません。
そこで、意識が認識できるように現実世界をヴァーチャルで創りました。
それが仮想世界です。

仮想世界を作り上げてる材料があるわけです。
それがクオリアです。
だから、意識が見たり聞いたり感じるものは、すべてクオリアなんです。
赤色を見たってことは、赤のクオリアを見たわけです。
痛いと感じたってことは、痛みのクオリアを感じたわけです。
内側の世界は、クオリアで作られているんですよ。

今、当たり前のように「感じる」っていいましたけど、これが重要なんですよ。
あまりにも当たり前すぎる物って、それがあることにすら気が付かないんですよ。
それが無い場合があって、初めて、それがあるってことに気付くんですよ。

だから、意識が感じてる、この世界を理解するには、感じない世界があるって話をするのが一番分かりやすいです。
たとえば、魚は外側の世界だけで生きてます。
ということは、僕らみたいに、意識やクオリアを使わずに生きてるんです。
これ、どういうことか分かりますか?
何も感じずに生きてるってことです。
もっと言えば、魚は、傷みを感じてないってことです。
でも、釣られた魚は、痛そうに身をよじってますよね。
あれは、痛くて身をよじってるんじゃなくて、脊髄反射で動いてるんですよ。

脊髄反射って、人間の場合なら、熱い鍋に触って、思わず手を引っ込めるとかです。
これ、熱いって意識で感じて、手を引っ込めてるわけじゃなくて、無意識で引っ込めてるんですよ。
つまり、感覚器からの入力に反応して、どう行動するかってプログラムがあるわけです。
現実世界からの入力と、行動が直結してるわけです。
これが無意識で動いてる世界です。

一方、意識を持つ生物は、無意識とは別の世界で生きてます。
それは、世界を自分で感じて、自分で行動を決定する世界です。
この自分と言うのが意識です。
意識が感じる世界の中心にあるのは、自分です。

内側の仮想世界と、外側の現実世界とは、言ってみれば、次元が違うんです。
たとえるなら、アナログ時計とデジタル時計みたいなものです。
無意識の世界が機械式のアナログ時計です。
歯車で全部つながってます。
物理世界ともつながってます。
現実世界に直結してるってことです。

そして、これをデジタルに変換したデジタル時計が内側の仮想世界です。
ただ、無意識の世界と意識の世界は、全く別物ってわけじゃありません。
時計で言えば、どちらも同じ時間を刻んでます。
というか、アナログ時計の時刻を、そっくり真似してデジタル時計にしたわけです。
これと同じです。
外側の現実世界を、そっくり再現したのが内側の仮想世界です。
仮想世界の材料が、クオリアってわけです。

これで、ようやく大事な話ができます。
意識がある動物と、無い動物の生きてる世界では、一体、何が一番違うのか。
それは、世界は何が動かしているかです。

意識のない動物が生きてる世界は、歯車が複雑に絡み合ってる世界です。
ここで言う歯車っていうのは、物体として存在してるものだけじゃなくて、行動とか、感覚とかも含みます。
たとえば、生物は、天敵が来たら逃げます。
これは、天敵を認識したって歯車が、最初に回転するわけです。
次に、それにつながってる恐怖って歯車が回転するわけです。
そして、最後に、恐怖につながってる逃げるって歯車が回転するわけです。

お腹が空いた場合はどうでしょう?
お腹が空いたって歯車が回転すると、エサを食べるって行動の歯車が動くわけです。

僕が、何が言いたいか分かってきましたか?
意識を持ってない生物は、環境によって動かされてるだけなんですよ。
自分の意志で動いてないんですよ。
生物も、歯車の一つです。

それじゃぁ、意識の世界はどうでしょう?
意識の世界は、全てが仮想化されています。
ただ、意識の世界も無意識の世界も、基本構造は同じです。
お腹が空くと、ご飯を食べようって行動をします。
じゃぁ、違いは何なんでしょう?
それは、感覚と行動が直結してるか、してないかです。
無意識の世界は、感覚と行動が直結していました。
それに対して、意識の世界は、直結していません。
感覚と行動の間に、意識が介在します。

たとえば、空腹って感覚は、意識に対して、食べ物を食べようって行動を促します。
でも、最終的に行動を決めるのは意識です。
空腹って感覚を感じると、自動で体が動き出すわけじゃありません。
無意識の世界みたいに、歯車で動いてるわけじゃないんです。
つまり、意識の世界は、自分で行動を決めれるんです。
無意識の世界の自分は、世界によって動かされる、ただの歯車でした。
というか、自分って意識がないんです。
意識の世界は、自分が世界を動かすんです。
自分で、世界を変えれるんです。
世界の中心にいるのは、自分なんです。

次は、感情について考えてみましょう。
たとえば、怒りです。
トカゲは、相手が自分の縄張りに入ってきたら、怒って追い返します。
自分の縄張りに入ってきたってことを認識したら、怒りの歯車が回転して、追い返すって行動をするわけです。

意識の世界でも同じです。
たとえば、太郎君が次郎君に、「変な帽子」とかって笑われたとします。
「ほっといてくれ」って太郎君が言って、その場はこれで終わったとします。
でも、太郎君は腹が立って仕方ありません。
もっと、言い返せばよかったのにとか、今度、次郎君がおかしなカッコしてたら、笑ってやろうとか、頭のなかでぐるぐる考えます。
まぁ、ありそうなことです。
でも、これ、よく、考えたらおかしいんです。
「ほっといてくれ」って言って、それで終わったんなら、それ以上、腹立つ必要ないです。
だって、トカゲだったら、相手が縄張りから出たら、それで終わりですし。

ここが、意識と無意識の感情の違いです。
無意識の世界の感情は歯車です。
歯車は大きくなったり小さくなったりしません。
でも、意識の世界の感情はクオリアです。
ヴァーチャルな感情です。
だから、大きくなったり小さくなったりするんです。
頭のなかで憎しみが大きくなったりします。
だから、些細なことで喧嘩したり、ときには、戦争になったりするんです。
感情は、行動の増幅機能があるようです。

次は、嬉しいとか、楽しいって感情を考えてみましょう。
クラスで一番人気の女の子に、「まぁ、その帽子、素敵」って、褒められたとします。
「そうかなぁ」って、まんざらでもない気がします。
「太郎君って、ホント、おしゃれよね」って、クラスの女子が集まって、みんなが褒めてくれます。
太郎君は、ニヤニヤしながら学校から帰ります。
いつもより、世界が明るく感じます。
何だか、浮足立って、体が軽くなった気がします。

さっき、世界は自分が変えるって言いましたよね。
これ、比喩じゃないんですよ。
だって、体が軽くなるんですよ。
重力が小さくなったんですよ。
まっ、正確には、意識から筋肉への命令が同じでも、いつもより余計に体が動くようになったんでしょう。
でも、太郎君にとっては、世界が変わったのと同じです。

帰りに次郎君に会いました。
「次郎君、ばいばい」ってにこやかに手を振ります。
次郎君への仕返しのことなんか、すっかり忘れています。

これが、僕らが生きてる内側の世界です。
人によって、全然違う世界です。
だって、重力すら違うんですから。

僕は、これを作りたいんです。
誰かの一言で、学校に行く一歩が重くなったり、軽くなったりするんです。
そんなロボットを作りたいんです。
そんなロボットの心を作ろうとしてるのが、ロボマインド・プロジェクトです。

はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それでは、次回も、おっ楽しみに!