第24回「時間」は人間が創り出した幻想 〜時間は存在しない


今日は、最初に、「意味を理解する」とはどういうことか、について説明します。
3次元空間を例にあげて、コンピュータプログラムで、意味理解を実装する方法について説明します。

つぎに、それを元に、時間の意味理解について説明します。

最後に、時間が現実に存在しない理由を証明します。
時間を感じるのは、人間だけだって話です。
なんと、動物は、時間を感じないんです。

1.意味を理解するとは
2.時間を理解するとは
3.なぜ、時間は存在しないのか

ロボマインド・プロジェクト、第24弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。

今回は、時間の話です。
前回の最後で、「時間は存在しない」って言いました。
その話の前に、もっと根本的な所からおさらいします。
認識するとはどういうことか。
意味を理解するとはどういうことかってことです。

まずは、3次元世界で説明します。
この世界が3次元空間だってこと、自分が3次元世界の中で生きてるってこと、
どうしてわかりましたか?
それは、頭の中に、3次元の仮想世界を作ってるからでしたよね。
現実世界が3次元だからじゃないんでしたよね。

よくわからない人のために、もう少し説明しますね。

現実世界に直接反応してるのは、無意識です。
バランスを取りながら自転車の運転をしてるのが無意識です。

認識するとか、理解するとかって、認識する主体、つまり、意識があるわけですよ。
意識が認識するのは、現実世界でなく、仮想世界なんです。

じゃぁ、意識は、仮想世界なら、なぜ、認識できるんでしょう。
3次元世界で説明します。
3次元世界って、空間の広がりがありますよね。
直行するXYZの座標軸が無限に広がってるイメージです。

仮想世界をプログラムで実現するのに、オブジェクト指向言語を使うって話をしました。
オブジェクトは、現在の状況を表すプロパティと、それを操作して動かすメソッドを持ちます。

3次元世界で言えば、どの場所に何があるっていうプロパティと、それをどう動かすかってメソッドです。
ここにペンがあるとか、そのペンを上に動かすとかです。
世界は、プロパティとメソッドで定義できるわけです。

認識するとか、理解するとかって、このプロパティとメソッドを使って表現することなんです。
それでは、このプロパティとメソッドを使うのは誰か?
それが、意識です。

意識は、世界の持つプロパティとメソッドを使って認識するわけです。
つまり、世界の持つプロパティとメソッドで表現できる イコール 世界を理解したとなるんです。

逆に言えば、世界の持つプロパティとメソッドで表現できなければ、意味が分からない、理解できないとなります。

たとえば、「ペンを上に移動する」これは、問題ないですよね。
理解できます。

でも、「ペンを明日に移動する」
これじゃぁ、意味が分からないですよね。
ペンをどうすればいいのかわからないです。

これは、「明日」が3次元世界にないプロパティだからです。
XYZの座標で表現できないからです。

もっといえば、世界が違うんです。
明日は、3次元世界にあるんじゃなくて、時間世界にあるわけです。
これが、意味が分かる、分からないの違いです。

僕がいう「世界」っていうのは、こういうことです。
何らかの基準となる軸があって、それを使って状態や動きが定義できるものを世界と呼んでます。
3次元世界なら、XYZの軸と、空間内の動きです。

他の例も考えてみましょう。
たとえば「お金」です。
お金って、高いか安いかです。
基準となる軸があるわけです。
基準となる軸があるから、このペンはあのペンより高いとか、安いとか言えるわけです。
基準の軸があるから、比較もできるわけです。
基準軸って、モノサシのようなものです。

この、お金のモノサシって、どこにあるんでしょう?
現実の物理世界にはないですよね。
あるのは、頭の中です。
みんなの頭の中で、共通にお金のモノサシをもっているから、理解できるわけです。
あれは高い、これは安いって会話が成り立つわけです。

このお金の価値っていうモノサシを持つ世界がお金世界なわけです。
モノサシを使って、値段っていう状態が定義できて、値上げや、値下げっていう動きが定義できるわけです。
モノサシと、状態と、動き。
意識が認識できる世界の条件がそろってるわけです。
だから、認識し、理解して、会話が成立するのです。

でも、お金の価値は、現実の物理世界には存在しません。
物理世界では、ただの紙切れや、金属の価値しかありません。
それが価値があるものとして認識できるのは、人々が、お金世界を共有してるからです。

さて、それでは、時間について考えてみましょう。
時間って、現実世界に存在するんでしょうか?

3次元空間は、現実世界に存在しましたよね。
3次元空間にあるものは、目で見たり、手で触れたりと、感覚器で直接感じることができます。
では、時間を直接感じる感覚器はありますか?
それは、ないですよね。

じゃぁ、時間世界は、どうやって認識してるのでしょう?

世界に必要なのは、基準となるモノサシです。
お金世界だと、モノサシは値段や価格です。
3次元世界では、モノサシは距離です。
二つの物があれば、その間にモノサシを渡して距離を測れます。

では、時間世界のモノサシって何でしょう。
それは、たとえば、今と過去の間に渡したモノサシです。
それが時間です。

では、「今」とは何でしょう。
それは、現実世界、そのものです。
意識が、今、感じてる、まさに、この瞬間です。

では、過去ってなんでしょう。
それは、思い出です。
思い出とは、前回説明した、エピソード記憶のことです。
昨日の出来事とか、中学校の卒業式の思い出とかのことです。

これで、過去と、現在の二つが定義できました。
その間に渡されるモノサシが時間です。
時間を測るモノサシって何でしょう?
それは、時計です。
カレンダーです。

モノサシの目盛りは、1分や1秒、年や月です。
時計とカレンダーを使えば、ある特定の一瞬、状況を定義できますよね。
時間が経過するって動きも定義できますよね。
時間世界が成立するということです。
意識が、時間を認識できるわけです。
他人と、時間を共有できて、会話にも使えるわけです。

もう一度、確認します。
時間はどうやって定義されましたか?

それは、過去と、現在の二つの状況を認識できたからです。
過去の状況って、エピソード記憶です。
エピソード記憶ができるのは、意識が自由に想像できる想像仮想世界があるからでした。

つまり、過去の仮想世界を作り出して、それと、現在の仮想世界を比較することができるようになって、初めて時間が生まれたんです。

人間以外の動物は、エピソード記憶を持っていません。
つまり、現在の状況しか認識できません。
でも、動物は意味記憶は持っています。
意味記憶って、リンゴは赤いとか、丸いとかの、オブジェクトの属性のことです。
経験から学ぶタイプの記憶です。
じゃぁ、青いリンゴを見たとき、どうなるのでしょう?
それは、リンゴには赤と青があると、オブジェクトの属性が増えるだけです。
時間は生まれません。
時間が生まれるのは、オブジェクトを持つ世界自体を記憶できるようになってからです。
世界同士で比較できる仕組みができて初めて生まれたのです。
世界を創造できる仕組みができて初めて時間が生まれたのです。

だから、エピソード記憶を持ってない人間以外の動物は、人間が感じるような時間の流れを感じていないんです。
時間の流れを感じることができないんです。
人間以外の動物には、時間が存在しないんです。
今日は暇だなぁとか、今日は忙しいなぁとか、そんな風に感じることはないんです。
目の前にやるべきことがあればするし、なければしない。
ただ、それだけです。

さて、もう一度、最初の質問に戻りましょう。
時間って、現実世界に存在するんでしょうか?

答えは、存在しません。
存在するのは、人間の頭の中だけです。

過去を認識できる仕組みができて生み出されたのが時間です。
以上です。

って、これで終わりにしたいのですが、それじゃぁ、ちょっと納得しないですよね。
でも、時間ってあるじゃないって思いますよね。
科学的に証明されてるじゃないって。

そうなんですよ。
そこがややこしいとこなんですよ。

物理世界にも時間がありそうです。
人間の頭のなかの時間と、ほとんど同じなので、現実世界にも時間があると思うんです。

その意味では、3次元世界も同じです。
人間の頭の中の3次元空間と、現実の3次元空間はほぼ同じです。
ただ、現実の3次元空間は、物理世界に存在するので、物理法則にしたがいます。
でも、人間の頭の中の3次元空間は、物理法則を完全にシミュレーションしてるわけじゃないです。

この宇宙の始まりは、140億年前にはじまったビッグバンが起源だそうです。
ビッグバンの爆発で宇宙が生まれて、今も宇宙は膨張してるそうです。
ビッグバンで生まれた光が届く範囲が宇宙です。
そこが、宇宙の果てです。
宇宙の中に3次元空間があります。
ということは、宇宙の外には空間すらありません。
想像してみてください。
宇宙の果てまでは3次元空間があって、宇宙の外には空間がない様子を。
???
頭の中が、ハテナだらけになりますよね。
ここが3次元空間の端ですといわれても、その外に空間を想像せずにはおれません。

これが、物理世界と頭の中の3次元世界との違いです。
頭の中の3次元世界と、現実の3次元世界は一致するわけじゃないってことです。

それと同じことが時間にも言えます。
3次元世界では、物体は好きに移動できます。
頭の中でも自由に移動できます。

時間はどうでしょう?
時間は、過去から現在、現在から未来へと進むだけです。

でも、頭の中の時間は、簡単に過去に遡ったり、未来に進んだりできます。
タイムトラベルです。
現実の物理世界はタイムトラベルはできません。

これが頭の中の時間世界と、物理世界の違いというわけです。

頭の中に作り上げた世界は、外の世界をそのまま映しとった世界です。
その昔、頭の中の世界と、外の世界は完全に一致していました。

でも、あるとき、誰かが言いました。
太陽は地球の周りをまわってるんじゃないって。
地球が太陽の周りをまわってるんだって。

また、別の誰かがいいました。
人間は、神様がつくったんじゃないって。
猿から進化したんだって。

科学の登場です。
頭の中の世界と、現実世界とが一致しなくなりました。

科学で世の中が進歩しました。
科学的な考えが、中心となってきました。
そして、それまで世の中を引っ張っていた宗教や哲学が、それほど必要なくなりました。

思えば、このシリーズ第一回は、「決着!谷村ノート 物理学 vs 哲学」でした。
谷村ノートというのは、この「現在という謎」と言う本の続きです。
この本は、物理学者の谷村先生と、哲学者が「現在」という時間について議論するという本です。

おそらく、この議論の趣旨は、人間が頭の中で感じてる時間と、物理学の時間との違いを浮き彫りにしたかったんだと思います。

その代表として、物理学者と哲学者が選ばれたわけです。

ただ、その結果は散々でした。
物理学者と哲学者は、全く話が噛み合いませんでした。
議論となる共通の土台すら、見つかりませんでした。

物理的な時間と、頭の中の時間の違いにを浮き彫りにしたいなら、人間が、頭の中で、どのように時間を認識してるのかから始めないといけなかったんです。
頭で認識する時間を科学の土台に載せないと議論にすらならないんです。
その一つが、「意識の仮想世界仮説」です。

今日は、ここまでにしときましょう。
それでは、次回もお楽しみに!