第245回 左脳と右脳。 真実の世界はどっちだ?


ロボマインド・プロジェクト、第245弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

前回、「脳を二つに切ったら、もう一つの世界が現れた」で、分離脳の話をしました。
分離脳っていうのは、重度のてんかん患者などで、左脳と右脳を繋げる脳梁を切断した脳のことです。
この分離脳のおかげで、左脳と右脳で何をしてるのか、かなり分かってきました。
見えてきたのは、僕らが感じてる世界は、誰が作ってるのかってことです。
それは、左脳です。
というか、左脳が、世界とはこうなってるって思わそうとしてるのが分かってきたんです。
つまり、意識が感じてる世界って、左脳が、思わそうとしてる世界なんです。
じゃぁ、そうじゃない、真実の世界はどこにあるのってなりますよね。
それは、右脳にあるようなんですよ。
でも、意識に何を見せるかは、左脳が決めることなんで、左脳にとって、都合の悪いことは隠されるんですよ。

じゃぁ、右脳が、本当は何を考えてるのか知るにはどうすればいいんでしょう。
それは、分離脳の実験です。
これが今回のテーマです。

左脳と右脳。
真実の世界はどっちだ?
それでは始めましょう!

まずは、分離脳のおさらいです。

分離脳というのは、左脳と右脳を繋ぐ脳梁を切断した脳です。
脳と身体とは、左右が交差しています。
例えば、左手は右脳が制御してて、右手は左脳が制御してます。

目の場合は、左側の視界にあるものは右脳で処理して、右側の視界にあるものは左脳が処理します。
なので、分離脳患者の前にスクリーンを置いて、スクリーンの左か右に何か表示することで、右脳だけ、または左脳だけに情報を提示することができます。
ただ、言語を司っているのは左脳なので、右脳に文字を見せても読めません。
ところが、分離脳患者の場合、訓練によって右脳でも簡単な単語ぐらいは理解できるようになるそうです。

それでは、最初は、右脳がどれだけ言葉を理解できるようになったのかの実験です。
たとえば、鉛筆、消しゴム、リンゴといった単語が書かれたカードを右脳に見せます。
次は、テーブルの上に、実際の鉛筆、消しゴム、リンゴを用意します。
そして、眼をつむって左手で触って、今見た単語と同じ物を選んでもらいます。
左手ということは、右脳で探してもらうわけです。
すると、リンゴって文字を見て、リンゴを選ぶことができたんです。
右脳も文字の意味を理解できてるようになってますよね。

やっかいなのは、ここからです。
本人に、何の単語が見えたかって聞くと、「単語なんか見えなかった」って答えるんですよ。
つまり、意識は単語を認識してないんですよ。
左手が勝手にリンゴを選んだってことらしいんですよ。
これって、どういう事でしょう?

どうやら、意識に上る処理と、上らない処理があるようです。
意識に上らなくても、右脳は、リンゴって単語と、実物のリンゴとを結び付けたわけです。
右脳は、イメージの処理が得意だって言いますよね。
おそらく、右脳は、リンゴは丸くて赤いとかって、イメージを持ってるんだと思います。
そのイメージとリンゴって単語とを結び付いてるんだと思います。
だから、リンゴを選べたんです。
逆に言えば、このぐらいのことなら、意識がなくてもできるってことです。

じゃぁ、意識がないとできないことってどういうものでしょうか?
それでは、次の実験を見てみましょう。
今度は、左脳にニワトリの足の画像、右脳に雪景色を見せます。
次に、テーブルにいろんな絵を並べて、今見た絵に関する絵を選んでもらいます。
すると、右手はニワトリの頭の絵、左手はスコップの絵を選びました。

次に、なぜ、その絵を選んだのか、質問します。
そしたら、「ニワトリの頭は、ニワトリの足に関連するからです」って答えます。
これは分かりますよね。
問題は、次です。
「じゃぁ、なぜ、スコップを選んだんですか?」って質問します。
そしたら、「だって、鶏小屋を掃除するのにスコップがいるでしょう」って答えたんです。

これ、明らかにおかしいですよね。
雪景色を見て、雪かきからスコップを連想したんですよね。
なのに、鶏小屋を掃除するからって、意味が分かりません。

これについて考えてみます。
まず、右脳が見た雪景色は左脳は知りません。
左脳が知ってるのは、ニワトリの足を見たことと、スコップを選んだことです。
だから、無意識が、無理やり、スコップとニワトリを結び付ける理由を作り出したんでしょう。
このことは、前回も説明しましたよね。

左脳は、理屈の世界で生きてます。
自分の行動には、理由がないといけない世界です。
だから、その世界を維持するために、無意識が無理やり理由を考えだして、植え付けたんです。
だから、意識がある左脳は、本当に、鶏小屋掃除の為にスコップを選んだと思ってるんです。

今回は、もっと、根本的な所を見ようと思います。
それは、左脳の世界を支える根本原理です。
言い換えれば、意識が認識してる世界の根本原理とも言えます。

大前提として、人は、目で見た世界を頭の中で仮想世界として構築します。
意識は、仮想世界を介して現実世界を認識します。
これを、意識の仮想世界仮説と言います。
詳しくは、この本に書いてますので、良かったら読んでください。

この仕組みを世界認識システムと呼んでいます。
この世界認識システムがあるのが左脳です。
それでは、現実世界を直接認識するのでなく、仮想世界として認識するメリットは何でしょう?
それは、仮想世界は自分で作った世界なので、自由に操作できることです。
たとえば、世界の一部を切り出して、注目することができます。

さらに、切り出した一部と、他の一部とを比較することもできます。
こっちの方が大きいとかです。
これは、大きさっていう関係性で比較したわけです。
はい、ここで重要なキーワードが出てきました。
関係性です。
どうも、左脳の世界は、関係でいろんなものが繋がってる世界って言えそうです。

さて、こっからが本題です。
比較するなら、少し前と比較することもできますよね。
同じ物の、少し前と今との比較です。
このこと、何て言います?
変化ですよね。

それじゃぁ、たとえば、子供が風船をくわえてて、風船が大きく変化したとします。
どう思いましたか。
たぶん、空気を吹き込んだから、風船が膨らんだんだろうって思いましたよね。
自然と、そんな風に思いましたよね。
ここです。
自然とそう思ったってとこに気付いて欲しいんですよ。
自然と思ったってことは、自然に起こる力があるってことですよ。
もう少し行きますよ。

空気を入れたから、風船が膨らんだんですよね。
この空気を入れたこと、何て言います。
原因ですよね。
左脳は、何かが変化すると、どうも、自動で原因を探すようなんです。
世界が変化するのには、何らかの原因があると信じ切ってるみたいなんです。

僕が探そうとしてるのは、これなんです。
ニュートンは、リンゴが落ちるのを見て万有引力の法則を発見しましたよね。
それと同じです。

何かが変化すると、勝手に原因を探す力が働くわけです。
万有引力の法則みたいな、超基本的な法則が、頭の中にもあるわけです。
それが、原因を探し出す力なんです。

さて、何らかの原因があって、変化したわけです。
変化した後の状態は、結果ですよね。
原因結果です。
何か、物が変化したとき、その間にある関係が原因結果の関係と言えます。
はい、ここでも関係が出てきましたよね。
左脳の世界は、いろんな物が、いろんな関係で繋がってる世界のようです。

意識は、その関係を辿って、比較したり、原因を探ったりするんですよ。
いろんな物が関係しあって、この世界は成り立ってるわけです。
というか、意識は、そう言う風な世界を信じてるわけです。
つまり、いろんな物が関係しあってる構造と、その関係を辿る意識っていう仕組みがあるわけです。
いろんな物が関連しあった世界を感じてるのが、意識です。
僕らが、目の前に机がある、机は木でできてる、いつ買ったとかって、関連することをいくらでも思いつくのは、左脳の感じてる世界が、そう言う仕組みになってるからです。
そして、この複雑な関係性を表現したのが言葉です。
これが、僕らの意識が感じてる世界です。

それじゃぁ、右脳はどうなんでしょう?
さっき、右脳は意識に上らないって言いましたよね。
右脳は、関係を辿るとか、そんな複雑な処理はしないので、意識も言語も必要ないんです。

よく、右脳は、直感で把握するとかって言いますよね。
パッと答えが分かるって感じです。
理屈は分からないけど、答えが浮かびあがるって感じです。
関係性を順に辿って答えを導きだしてるわけじゃないんです。
雪景色を意識的に認識してなくても、スコップをみたら、これだって答えが分かるんです。
リンゴって単語を見たことは意識できてなくても、リンゴを触ったら、これだって分かるんです。
それが右脳の世界です。

この右脳の世界が、もう少し分かる実験を紹介しましょう。
ツボの中に70個の黒いボールと、30個の白いボールが入ってます。
このツボから適当にボールを取り出す場合、それが黒か白かを当てるって課題があったとします。

この課題を左脳と右脳にしてもらうと、結果が違うんです。
最初は、どちらも黒って言います。
黒の方が多いから、誰でもそう思いますよね。
そうやって、ボールを取り出していくと、だんだん、黒のボールがいっぱい外に出てきました。
そんなのを見てると、左脳は、そろそろ白が出るんじゃないかと思って白って答えたりするんです。
でも、右脳は最後まで全部黒って答えます。

これ、どっちが正解かというと、じつは、全部黒って答えるのが、一番正答率が高くなります。
右脳は、それを直観的に感じてるんですよね。
でも、左脳は、余計なことを考えて、逆に間違えたりするんです。
右脳と左脳の感じる世界の違い、分かってきましたか。

それでは、最後の実験です。
ある分離脳患者に、「将来、何になりたいですか?」って聞いたそうです。
そしたら、彼の左脳は「製図家」って答えました。
ところが、右脳は全然違う回答でした。
なんと、「カーレーサー」って答えたんです。

これ聞いて、彼の本当の夢はカーレーサーじゃないかなとかって思わなかったですか?
子供の頃に夢見てたけど、それを抑圧してて「製図家」って答えたとかって。

これですよ。
そんな風に思うのが、左脳なんです。
納得するストーリーを、つい、作ってしまうんです。
原因とか理屈とかあると安心するんです。

でも、右脳はそんなこと考えてないです。
たぶん、右脳は、ふと、思いついただけでしょう。
カーレーサーって。
カッコよく運転してるとこイメージして、いいなぁって思ったんでしょう。
だから、カーレーサーって答えたんです。
それ以上、深い意味はないです。

たぶん、明日、同じ質問したら、違う答えが返ってくると思いますよ。
たとえば、ヘアスタイリストとか。

そしたら、たぶん、他の人は言います。
「お前、ヘアスタイルとか、全然、興味ないやろって」
これも、左脳の考え方です。

今まで興味なかったことをやろって思って、何が問題なん?
ヘアスタイリスト、いいなぁって思っただけです。
理由なんか、いる?

これ、左脳がそう思わせてるだけです。
物事には、理由や原因がないといけないって。
そんなのがあるのは、左脳の世界だけですよ。
僕が言いたいのは、いつまでも左脳に縛られるのは止めにしませんかってことです。

何かするのに、理由とか、言い訳とかいる?
ピアノ弾きたいなぁって思ったら、ピアノ始めたらいいだけですよ。
でも、すぐに、何の役に立つのとか、今さら遅いとかって、思ってしまうでしょ。
でも、それは、理屈がないと納得しない左脳が言ってるだけです。
ピアノ弾くのに、理屈なんかいらんでしょ。

少なくとも、左脳の理屈がすべて正しいなんて、思わない方がいいですよ。
だって、鶏小屋を掃除するのに、スコップが必要とかって、さももっともらしく言ってましたよね。
でも、これ、何の根拠もなかったじゃないですか。
完全にデタラメだったじゃないですか。
意識が納得することに、根拠なんかないんですよ。
そんないい加減な理屈に、納得させられてちゃだめですよ。

ボールの実験でもありましたよね。
そろそろ白がでるんちゃうかなとかって、考え始めたら間違うんですよ。
意識が納得する理屈には、何の根拠もないんですよ。

少なくともね、理屈より、直感に従った方が、幸せになれるんじゃないかなって、僕は思っています。

はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!