ロボマインド・プロジェクト、第258弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
言葉の意味を理解して、普通に会話ができる会話エンジン、それが、マインド・エンジンです。
マインドエンジンは、将来、人型汎用ロボットに搭載されて、家庭に入って来ます。
汎用ロボットなので、自分で考えてなんでもできます。
たとえば、お皿洗いをしてもらったとします。
でも、汚れがちゃんと落ちてませんでした。
そこで、「もっとお皿をきれいに洗って」って言います。
すると、お皿をきれいに洗い直すことができるんです。
「いや、お皿を洗うロボットなら、今でもあるでしょ?」って思いましたか?
でも、それはお皿洗いに特化したロボットです。
お皿洗いロボットなら、もっときれいに洗うって機能が、最初から組み込まれています。
そのボタンを押せばいいだけです。
でも、それじゃぁ、意味がないんですよ。
今、必要なのは汎用ロボットです。
プログラムが組み込まれてなくても、自分で考えて適切に行動できるロボットです。
もし、それができたら、もう、人間と同じです。
「もっときれいに部屋を片付けて」とか
「もっと、早くご飯作って」とかいえばいいだけです。
しかも、人間には限界がありますけど、ロボットなら、いくらでも性能を上げることができます。
つまり、「もっとお皿をきれいに洗って」に、ちゃんと応えることができるかどうかが、人間を超えるAIかどうかの分かれ目なんです。
このことを技術的特異点、またはシンギュラリティって言います。
AIが人間と同じ能力に達したとたん、世の中が一変するんですよ。
どうです?
分かってきましたか?
人間みたいに何でもできる人工知能の事を汎用人工知能と言います。
お皿洗いしかできないような、何かに特化した人工知能のことを特化型人工知能といいます。
そして、今、世の中にあるAIは、全て、特化型人工知能です。
汎用人工知能こそが、世の中を一変させるAIなんです。
これが今回のテーマです。
お皿を洗うロボットは、シンギュラリティを超えるか?
それでは、始めましょう!
まずは、前回までのおさらいです。
これがマインド・エンジンの全体像です。
マインド・エンジンは、人型ロボットに搭載されてて、目からの映像が、この視覚入力ウィンドウに表示されます。
(動かす)
映像は、こうやって3Dのオブジェクトに変換されます。
ワーキングメモリにある、お皿、手、スポンジ、水、人間が認識したオブジェクトです。
意識ウィンドウに、「出来事Washを認識しました」って出ましたよね。
それじゃぁ、意識ウィンドウの出来事タブを見てみます。
出来事の前後、Before,Afterでcleanness、「きれいさ」が0から7になってますよね。
つまり、洗うことでお皿がきれいになるってことを理解してるわけです。
さて、こっからが本題です。
僕らが目指してるのは、人間のように何でもできるロボットです。
教えなくても、適切な行動が取れる汎用人工知能です。
でも、適切な行動ってどういうことでしょう?
つまりね、お皿に対して、出来ることって、いくらでも考えられますよね。
洗うは、その一つです。
洗う以外に、投げるとか、色を塗るとかって、無限に考えれますよね。
その中から、汚れたを皿に対して、「洗う」ってのが適切な行動ってわけです。
マインド・エンジンは、そのことをわかってるってことです。
それじゃぁ、どうやって、わかったんでしょう?
わからないので、本人に直接、聞いてみましょう。
マインド・エンジンに質問するには、このコンソールウィンドウに入力します。
「なぜお皿をきれいにするのですか?」
はい、答えが出ました。
「うれしいから」です。
いやぁ、深い答えですよねぇ。
これの意味、分かりますか?
それじゃぁ、ていねいに説明していきますよ。
人間と機械の違いって、なんでしょう?
機械は、命令されたことをするだけです。
でも、人間は、命令されなくても自分から行動できますよね。
じゃぁ、人の行動の原動力は何でしょう?
たとえば、遊ぶのは楽しいからですよね。
どうも、行動の原動力には楽しいって感情がありそうです。
それから、お腹が空いたら、ご飯を食べたいって思いますよね。
空腹感って感覚も、行動の原動力になりそうです。
あと、たとえば、電車でお年寄りが立ってたら、席を譲らないとって思いますよね。
これは善です。
善とか悪とかも行動の原動力となりそうです。
感情とか、感覚とか、善悪とか。
これらは、言ってみれば心で感じる心理です。
僕は、これをプラス感情とマイナス感情の二つに整理しました。
プラス感情というのが、嬉しいとか、満腹感とか、善とかです。
マイナス感情というのが、悲しいとか、空腹感とか、悪とかです。
こうすると、人は、マイナス感情を避けて、プラス感情を求めるように行動するって言えますよね。
どうも、行動をプラス感情とマイナス感情に落とし込めば、どう行動したらいいのか判断できそうです。
さっきのマインド・エンジンの答えを思い出してください。
「うれしいから」って答えてましたよね。
うれしいってプラス感情です。
汚れてるお皿を見たら、きれいにしたいって思うんです。
だから、お皿を洗うんです。
これって、人間が感じるのと同じ感覚って言えますよね。
それじゃぁ、どうやって「うれしい」って感情を出してるか説明します。
「洗う」って出来事は、「きれいさ」cleannessが0から7に増加するって定義されてました。
この「きれいさ」は、データベースには、こう定義されてます。
5以上が「きれい」で、5未満が「きたない」です。
さらに、「きれい」「きたない」は、こう定義されてます。
「きれい」の発生感情がプラスで、「きたない」の発生感情がマイナスです。
人は、マイナス感情を避けて、プラス感情となるように行動するんでしたよね。
だから、汚れたお皿があれば、きれいにしたいと思うわけです。
だから、お皿を洗うわけです。
ね、こうやってプラスマイナス感情から、適切な行動を選択できるんです。
この場合だと、汚いお皿をきれいにしたいって思いです。
その思いを実現するのが「洗う」って行動です。
こうやって、状況から適切な行動を選ぶことができるわけです。
特化型人工知能のように、全ての状況に応じた行動を予めプログラムしとく必要がないんです。
さて、次は、今回のメインテーマ、「もっときれいにするにはどうすればいいですか?」
です。
それでは、質問してみましょう。
はい、答えが出ました。
「もっとこする」です。
いやぁ、これが言えるって、すごいですよねぇ。
分かりましたか?
今、マインド・エンジンの中で、とんでもないことが起こったんですよ。
それじゃぁ、説明しますよ。
今までの話だと、プラスマイナス感情って心理に従って行動すればいいってことでしたよね。
心理ですよ。
心理って、心の中ってことです。
つまり、現実世界じゃないんですよ。
これだけじゃ、現実世界で、どう行動していいのか分からないんですよ。
心の中の思いを、現実世界での行動に変換する作業が必要なんです。
いってみれば、心から体への変換です。
そんなこと、どうやったらいいのか、見当もつきませんよね。
これが、マインド・エンジンの中で起ったとんでもないことです。
それじゃぁ、どうやってやるんでしょう。
説明しますよ。
キーとなるのは原因結果です。
「洗う」って出来事を、原因結果に分解するんです。
データベースには、「洗う」は、こんな風に登録されています。
原因を見てください。
「こする」ってなってますよね。
そして、結果は、BeforeがDirty、汚いで、AfterがClean、きれいです。
つまり、「こする」って原因で、「きれい」って結果になるんです。
「きれい」って、心で思う事ですよね。
「こする」って、体で行う行動ですよね。
つまり、ここで心と体が結びついたんですよ。
原因結果で、心と体が結びついたんですよ。
いやぁ、原因結果に、そんな機能があるなんて、思ってもみなかったですよねぇ。
さて、次は「もっと」です。
「もっときれいにするには」の「もっと」です。
これは、どうすればいいんでしょう。
人間なら当たり前に分かりますよ。
でも、コンピュータで実現させるには、この当たり前をプログラムに落とし込まないといけないんです。
ここで、プログラムで実現できる法則を一つ導入します。
それは、「原因が大きくなればなるほど、結果も大きくなる」って法則です。
これを、比例の法則と呼ぶことにします。
今の課題はお皿をきれいにすることですよね。
つまり、きれいさ、cleannessを大きくしたいわけです。
これを比例の法則に当てはめると、「原因が大きくなればなるほど、結果、cleannessが大きくなる」ってなりますよね。
原因って何でした?
「こする」でしたよね。
ほら、出ました。
もっときれいにするには、もっとこすればいいんです。
どうです?
こんな単純な法則で、正しい答えが出ました。
ただ、この法則、必ずしも正しいわけじゃないです。
例えば、1kgの鉄の球と、100gの鉄の球があったとして、どっちが速く落ちるかって問題があったとします。
比例の法則に当てはめると、1kgの鉄の球の方が速く落ちることになりますよね。
でも、実際には、重さに関係なく同じ速度で落ちるので、これは間違ってます。
ただ、間違ってますけど、人は、なんとなく、重い方が速く落ちそうって思いますよね。
これです。
つまり、人の頭にも、比例の法則が組み込まれてるんです。
これが重要なんです。
僕らが作ろうとしてるのは、正しい答えじゃなくて、人間と同じ感覚です。
それと同じものを持たせたわけです。
さて、話を戻します。
「もっとこする」です。
「もっとこする」って分かったとして、じゃぁ、それって、具体的にはどうすればいいんでしょう?
それじゃあ、「こする」の定義を見てみましょう。
「こする」は、「おしつける」と「往復運動する」からなってますよね。
ここでも、さっきの比例の法則を使います。
すると、「もっとこする」は、「もっと押し付ける」と、「もっと往復運動する」になりますよね。
「もっと押し付ける」とは、具体的にはもっと強い力で押すってことです。
「もっと往復運動する」とは、往復運動の回数を増やすってことです。
ただ、こんなこと、いくら言葉で言っても、言葉は、ただの文字列にすぎません。
現実の物理空間につながってません。
言葉だけじゃ、三次元の物理空間でどう行動したらいいのかわからないんです。
これは、いわゆるシンボルグラウンディング問題とか、記号接地問題と言われる奴です。
じゃぁ、どうすればいいんでしょう?
そこで、仮想世界ウィンドウのここを見てください。
これは、3Dシミュレーションで示した「押し付ける」と「往復運動」です。
これは、物理シミュレーションです。
つまり、三次元の物理世界に対応してるわけです。
現実世界にちゃんと接地してるってわけです。
3次元空間での動作が決まれば、あとは、そうなるようにロボットの腕を制御するだけです。
どうです?
つまり、スポンジをもっと強く押し付けて、さらに、往復回数も増やすんです。
これで、もっとお皿をきれいに洗えるんです。
シンボルグラウンディング問題も解決して、現実世界で適切に動くロボットができましたよね。
それでは、まとめますよ。
特化型人工知能というのは、教えたことしかできないAIです。
現実世界の状況は無限にあって、それに対処する行動も無限にあります。
とても、全部教えるのは不可能です。
この問題のことを、フレーム問題と言います。
でも、人間は、フレーム問題が起りません。
どのような状況でも自分で考えて適切な行動を取ることができるからです。
じゃぁ、それは、どうやってました?
それは、状況からプラスマイナス感情を探索してたんですよね。
それができれば、マイナス感情を避けてプラス感情を得る行動を取るわけです。
これで、どのような状況でも適切に対処することができます。
フレーム問題が解決したわけです。
ただし、解決できたとしても、これは心理レベルの話です。
行動とは、現実の物理世界で行うものです。
心理レベルの話を、現実世界の行動に変換する必要があります。
そこで使うのが、原因結果です。
心理は結果です。
その結果を得るための行動が原因です。
つまり、原因結果というのは、心と体を結びつけているわけです。
ただ、原因結果は言葉や記号で表現されます。
現実の物理世界に結びついていません。
そこで、動きを表現する言葉や記号を、現実の三次元空間での動きで定義します。
これで、記号が現実世界に接地しました。
記号接地問題が解決したわけです
最後に使うのが比例の法則です。
比例の法則というのは、結果を大きくするには原因を大きくするという法則です。
これで、目的とする心理的感情をさらに大きくするには、具体的にどのような行動をすればいいのかわかります。
どうです?
こうやって、プラスマイナス感情、原因結果、比例の法則を使うことで、どのような状況でも適切な行動を取ることができるわけです。
フレーム問題、シンボルグラウンディング問題という、人工知能最大の問題も解決してます。
これが汎用人工知能です。
マインド・エンジンは、世界で初めての汎用人工知能といえます。
シンギュラリティを起こす鍵は、マインド・エンジンにあるんです。
はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!