ロボマインド・プロジェクト、第263弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
よく、誤解してる人がいるんですけど、ロボマインド・プロジェクトの最終目標は、ロボットの心をつくるとか、ドラえもんみたいに普通に会話できるロボットをつくることじゃないです。
これらは、あくまでも手段です。
ロボマインド・プロジェクトのきっかけは、コンピュータでおもろい文章を作れないかなぁって、僕が、ふと、思ったことから始まりまりました。
おもろいには2種類の要素があるんですよ。
一つは、笑いで、もう一つは物語です。
つまり、ロボマインド・プロジェクトの最終目標は、笑える文や、おもろい物語をコンピュータで自動生成することです。
巧妙に伏線を張り巡らして、ラストシーンで一気に回収するとか、コンピュータでしか作れないようなおもろい物語りをつくりたいんですよ。
そんなのを作ろうと思って始めたんですけど、今のAIは、言葉の意味すら理解できないってことがわかったんですよ。
なんでコンピュータは意味が理解できないのかっていうと、心を持ってないからです。
言葉の意味を理解するには、人間と同じ心が必要なんです。
それで、まずは、心をつくろうとしてるわけです。
この研究を始めたのは、もう20年以上前ですけど、じつは、一回、研究から一切、手を引いたことがありました。
こんな研究してたら食っていけないって思って、先に、お金を稼ごうってなりまして。
そのとき、本棚にあった2000冊以上の本を、全部、処分したんですよ。
で、その時、どうしても処分できなかったのが、よく紹介してるラマチャンドランの『脳の中の幽霊』と、それから、この本『脳と心の地形図』です。
今回、この本を、また読み返したんですけど、そしたら、「笑い」についても解説してるのを見つけました。
僕も、いろんな脳科学の本を読んできましたけど、どうやって「笑い」が生まれるのかについて解説してる本って、めったにないんですよ。
それぐらい、「笑い」って、難しい感情なんです。
それを、この本では、右脳と左脳の共同作業で解説してるんです。
これが、今回のテーマです。
オチを右脳と左脳で読み解け!
それでは、始めましょう!
まずは、左右の脳の役割からおさらいします。
左脳は、部分、右脳は全体を見てるっていいます。
例えば、これを見てください。
これは、左の元の絵を左右の脳が損傷した人に模写してもらった絵です。
真ん中の絵は、左脳が損傷して右脳で模写した絵です。
全体の輪郭はほぼ描けてますけど、中身がほとんど描かれてないですよね。
右の絵は、右脳が損傷して、左脳で模写した絵です。
中身は描かれてますけど、全体の輪郭が抜けてますよね。
つまり、右脳は全体を捉えるのが得意で、左脳は、部分と部分の関係を捉えるのが得意と言えそうです。
それから、左脳は、論理的な思考が得意ともいいますよね。
これは、関係性を辿るのが得意とも言い換えれます。
「リンゴ」と聞いて、リンゴには種があるとか、甘いとか、おばあちゃんがリンゴが好きだとか、いろんなことを連想できるのも、左脳の役割です。
それから、重要なのは、こうやって連想したことって、全て、言葉で表現できるってことです。
だから、言語は左脳の役割なんです。
それから、前回、第162回で語ったのは、信念です。
「こうである」って信念を維持するのは左脳です。
「自分は、クラスで一番足が速い」とか、「この世界を陰で操ってる組織がいる」とかってのも信念です。
信念は目で見えません。
目で見える出来事の解釈はいくらでもできます。
たとえば、戦争が起こる原因なんて、いくらでもあります。
その中から、「世界を陰で操ってる組織が戦争を起こして、儲けようとしてる」って理屈を信じたり、それを聞いて安心するのが左脳です。
さっきも見ましたけど、左脳って、関係性だけに注目するので、全体がおかしな形になりますよね。
「木を見て森を見ず」って言葉がありますけど、左脳は部分だけ見て、全体がおかしくなっても気付かないんです。
一方、右脳は全体を把握します。
これは、左脳のように、一つ一つの関係を紡いで全体を作り上げるってことじゃなくて、一瞬で、ぱっと把握するって感じです。
よく、右脳は直感とかって言いますよね。
直感って、たとえば、「何かおかしい」とかって感じじゃないですか。
この前、出かけるとき、玄関で、何か忘れてるって気がしたんですよ。
このまま出たらアカン。
なんか、大事なこと、忘れてるって。
ほんで、「そうや、ハガキや。ハガキを出さなあかんのやった」って思い出したんです。
この「なんか忘れてる」って気づいてるのが右脳です。
右脳の感じてることって、もう、「何か」としか表現できないんですよ。
右脳が感じる直感って、何か嫌な感じがするとか、どっかおかしいとかって感情です。
左脳の行動に待ったをかけるのが右脳です。
ほんで、「ハガキを出す」って理解するところが左脳です。
言葉で表現できる具体的な部分です。
右脳が感じてた「何か」を左脳が具体的に思い出したわけです。
右脳と左脳が結びついて、「出るとき、ハガキを持って出なアカン」って気づいて、納得するんです。
納得ってのは、左右の脳の、どちらもが落ち着くってことのようです。
これが、僕らが感じてる世界ってわけです。
僕らが感じてる世界って、右脳と左脳の両方のバランスで成り立ってるんです。
それから、右脳と左脳って、性格も反対だそうです。
右脳は悲観的で、左脳は楽天的です。
何か忘れてないか、何かおかしくないかって、行動に待ったをかけるのが右脳の役目です。
積極的に行動しようって左脳を止めないといけないので、右脳は悲観的なんでしょう。
これで問題ない、これで大丈夫って、前向きに進むのが左脳です。
だから、右脳が損傷して、楽天的な左脳だけで考えるようになると、左手が麻痺して動かなくなっても、大したことないって思うようです。
これが、さらに進むと、左手が動かないこと自体を認めなくなります。
これが、前回紹介した疾病失認です。
アメリカの高齢の判事が右脳に卒中を起こして、慎重な審議が出来なくなったのに、現職にとどまろうとしたそうです。
楽天的な左脳だけで考えるようになったから、何も問題ない、まだまだ仕事ができるって思ったんでしょうね。
ただ、法廷に出ると、重罪犯を無罪放免にしたり、軽犯罪の被告に終身刑を宣告したりって、めちゃくちゃやったそうです。
罪に対する刑の重さとか、全体に対する割合っていうのは、右脳が担当するんでしょう。
それがなくなって、左脳の理屈だけで決めるから、バランスが取れない判決となったんでしょう。
右脳と左脳、どちらも大切だって分かりますよね。
この判事、とうとう免職処分になったんですけど、悲観的な右脳が損傷してるおかげで、特に不満も持たず、余生は末永く幸せな生活を送ったそうです。
さて、こっから、今回のメインテーマ、「笑い」についてです。
「笑い」とか「冗談」を理解するのも、左右の脳が必要なんです。
あるジョークを例に挙げます。
一頭のカンガルーがバーに入って来て、ビールを注文しました。
バーテンダーはびっくりしながらも、ビールを出しました。
「いくらだい?」とカンガルーがたずねました。
気を取り直したバーテンダーは、カンガルーがどれくらい賢いか試してやろうと思って、「1万円です」って言いました。
そう言われて、カンガルーは、おとなしく支払ったそうです。
やっぱり、人間様の方が一枚上手だと思って安心したバーテンダーは、カンガルーに話しかけました。
「この店には、カンガルーはめったに来ないからねぇ・・・」
さて、このジョークのオチは、次の三つのうち、どれでしょう?
1.カンガルーは銃を取り出して、バーテンダーを撃ち殺しました。
2.隣の席に座ってた男が、自分は腹話術師で、カンガルーがビールを飲むように操っていると打ち明けました。
3.カンガルーはこう言いました。「そりゃそうでしょ。ビールがこの値段じゃぁね」
当然、答えは3番ですよね。
ところが、左脳を損傷して右脳で考える人は、バーテンダーを撃ち殺した1番を選ぶそうです。
右脳を損傷して、左脳だけで考える人は、2番の腹話術師を選ぶそうです。
さて、なぜ、こうなるのか考えていきます。
まずは、バーテンダーを撃ち殺すってオチです。
右脳が気にするのは、違和感とか、なんかおかしいって感情です。
この場合だと、バーテンダーは、カンガルーを騙して金を巻き上げるってところです。
バーテンダーは悪い男だってとこに気が向くわけです。
そのバーテンダーを撃ち殺すってのは、悪い奴が消えたってことです。
ゆがんだ理屈とか構造とかが崩壊して、きれいになったってことです。
こういうのが、右脳が好むオチってわけです。
次は、腹話術師です。
これは、すべて理屈が通りますよね。
最初からおかしかったのは、カンガルーが喋るってとこです。
さらに、ビールを飲んだり、お金を払ったりします。
カンガルーにできるわけないですよね。
それが、腹話術師が操ってたってなったら、全てか解決しますよね。
理屈で考えておかしかったところが、理屈で全て解決するところに左脳は魅かれるんでしょう。
それじゃぁ、僕らは、なんで、3番が面白いって思うんでしょう。
まず、バーテンダーは、「カンガルーはめったに来ないからねぇ」ってカンガルーに話しかけたわけです。
この流れだと、次は、カンガルーが何か答える番ですよね。
一番ありきたりな答えとしたら、「そうなんですかぁ」とかです。
これじゃぁ、何にも面白くないですよね。
それが、「そりゃそうでしょ。ビールがこの値段じゃね」って答えたら、面白いと思うわけです。
まず、ここまでの話で、カンガルーはそれほど頭がよくないってなってます。
しゃべったり、ビールを注文できるけど、ビールの値段とかまでは分かってないぞと。
しょせん、動物だなと。
ここまでで、こういう流れができてるわけです。
そこに、カンガルーが、「そりゃそうでしょ。ビールがこの値段じゃね」って答えたんですよ。
「えっ?」ってなりますよね。
つまり、カンガルーはビールの相場を分かってるってことです。
ビールの相場を分かってるってことは、あちこちのバーや居酒屋にカンガルーが出入りしてるってことです。
僕らが知らないだけです。
ビールは、ふつう、1000円までやろ。
まぁ、高くても2000円までやろって、どのカンガルーも知ってるわけですわ。
ほんで、たまたまこのバーに入ったら、ビールが1万円て。
「そりゃ、だれも来いひんわ」ってなってるわけです。
バーテンダーは騙したつもりだったんですけど、カンガルーは騙されてなかったんです。
カンガルーの方が、一枚、上手だったとも言えます。
右脳が感じてた、悪いバーテンダーってゆがんだ構造が解消されたんです。
この一言で、全体が整ったわけです。
これは、右脳が喜ぶパターンです。
しかも、全て理屈にあってます。
カンガルーが喋る。
カンガルーがビールを注文する。
カンガルーの知性。
これらが、カンガルーの最後の一言で、全てつながるんですよ。
理屈で説明できるって、左脳が喜ぶパターンです。
単に、意外な結末があったら、面白いって思うわけじゃないってことです。
最後のオチの一言で、ゆがんだ構造が解消されたわけです。
かつ、全てが理屈で説明ができます。
これらが、最後の一言で、一気に起こるわけです。
これが必要なんですよ。
ねぇ、わかるでしょ。
笑いって、どれだけ難しいか。
ちょっと前に、大喜利AIってアプリがありました。
それらしいオチをつくり出すAIです。
僕から言わしたら、笑いをなめすぎてます。
笑いって、そんなもんじゃないんですよ。
どんだけ複雑な計算してるか、それを知らないから、気軽に、大喜利AIなんて作れると思ってるんですよ。
僕がやろうとしてるのは、ホンマにおもろい笑いを作れるAIです。
それがどんだけ難しいか、今日の話を聞いて、ちょっとは分かってくれたんじゃないかと思います。
心をつくるのは、難しいとは思いますよ。
ただ、困ってる人がいたら、「大丈夫ですか」って声をかける優しい心をもったロボットなら、たぶん、出来ると思います。
でも、笑いは、そんな甘くないです。
優しいだけのロボットより、僕が本当に作りたいのは、お笑いができるロボットなんです。
はい、今回の動画が面白かったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!