ロボマインド・プロジェクト、第264弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
さて、僕は、意識の仮想世界仮説っていう意識の理論を提案しています。
それは、僕らが見てるのは、目で見た世界を頭の中で再構築した仮想世界だって理論です。
最近、右脳と左脳の役割について考えていまして、そこでわかってきたのは、仮想世界は左脳で作られてるってことでした。
つまり、意識の仮想世界仮説ってのは、左脳中心の理論なんです。
それじゃぁ、右脳は、何をしてるんでしょう。
これが、ようやくわかってきたんですよ。
分かってきたのは、右脳の方が、よっぽど重要じゃないかってことです。
どういうことかというと、笑いとか、芸術、それから物語って、人間しか理解できないじゃないですか。
それには、右脳が重要な役割を果たしてるってことがわかってきたんですよ。
意識の仮想世界仮説が左脳の理論なら、それに匹敵する、右脳の新しい理論が生まれたんですよ。
今回は、ロボマインド・プロジェクトの大きな転換点になりますよ。
これが、今回のテーマです。
新理論発表!
右脳物語理論
それでは、始めましょう!
この前ね、封筒開けようと思ったんですけど、手元にハサミが見当たらなかったんですよ。
「そや、キッチンにあるわ」って、キッチンに行ったんですよ。
キッチン行ったら、つい、癖で、お菓子が入ってる引出を開けてしまったんですよ。
開けたら、「おっ、チョコレートがあるやん」ってなって、一個、チョコをつまんで食べたんです。
チョコ食べたら満足して、仕事にもどって来ました。
ほんで、机の上の封筒見て、「そや、ハサミを取りに行ったんや」って思い出しました。
最近、こういう事、多くなりましてね。
歳取って来たせいですかねぇ。
って、これで終わったら、ただの世間話です。
そんなあっさい、話をしたいんじゃありません。
じつはね、この話からはね、右脳と左脳が見る世界の違いが、はっきりと読み取れるんですよ。
順番に説明しますよ。
まず、分かりやすいのは左脳です。
左脳は、言語や理屈で考えるのが得意です。
仮想世界は、左脳に作られます。
目で見たものは、仮想世界にオブジェクトとして生成します。
意識は、そのオブジェクトを認識するわけです。
オブジェクトは、様々なものが関連しています。
リンゴを見たら、甘いとか、中に種があるとかって想像できるのは、オブジェクトが様々なデータに関連付けられているからです。
AしたらBとなるって理屈で考えるのも、オブジェクトが関連し合ってるからです。
原因結果って関係で関連してるので、AしたらBとなって、BしたらCとなるって考えることができるんです。
つまり、ストーリーを理解するのも左脳の役目と言えます。
これを、さっきの話に当てはめてみましょう。
封筒を開けるのに、ハサミが要るわけです。
ハサミはキッチンにあるわけです。
それを取りにキッチンに行くわけです。
こういった論理的な思考は、左脳が行うわけです。
じゃぁ、右脳は何をしてるんでしょう。
右脳って、直感とか、ひらめきとかって言いますよね。
一瞬でパッと感じるタイプの処理です。
この場合やと、「何かせなアカン」って感覚やと思うんですよ。
一連の処理をまとめて、「何かせなアカン」って感じるんですよ。
それが、右脳の処理です。
これを、全然別の例でたとえてみます。
バーコードって見たことありますよね。
バーコードは、13桁の数字からなりますけど、この数字の意味って、知ってますか?
じつは、それぞれの数字には、ちゃんと意味があるんです。
こんな感じです。
最初の二桁が国名コードで、49なら日本とかです。
その次の7桁がメーカーコードで、その次の3桁が商品アイテムコードです。
ここまでは、何となくわかりますよね。
問題は、最後の1桁です。
これはチェックデジットといって、エラーチェック用の数字です。
バーコードって、ピッと読むじゃないですか。
でも、もしかしたら、読み間違いがあるかもしれないじゃないですか。
それをチェックするのが、最後のチェックデジットです。
前の12桁の数字を、決められたルールで足したり、掛けたりして一桁の数字を計算します。
それがチェックデジットです。
ピッと読み取った時、前の12桁から計算した数と、最後のチェックデジットが一致すれば、読み間違えてないってわかるわけです。
さて、何が言いたいか、わかってきましたか。
これって、脳と同じじゃないかってことです。
メーカーとか、商品名とかって、数字の意味の部分、これって、左脳の処理に対応するんですよ。
全体をまとめてチェックする部分、これは、右脳の処理に対応するんですよ。
同じ世界を認識するにしても、部分部分の意味を認識するタイプと、全体を一つにまとめて、認識するタイプの、二種類のタイプがあるってことです。
左脳がやってるのが、部分を順に認識するタイプです。
右脳がやってるのが、全体をまとめて認識するタイプです。
さて、ハサミの話に戻ります。
左脳は、キッチンにハサミを取りに行くとかって論理的に世界を認識します。
でも、右脳は全体をまとめるんですよ。
この場合だと、「何かせなあかんことがある」とか、「やるべきことが終わった」とかです。
人は、この二つの方法で世界を認識して、行動を決定するわけです。
さて、キッチンに来ました。
なんとなく引出を開けたら、チョコレートが目に入りました。
「おっ、旨そう」って思って、一つ、食べます。
そこで、我に返ります。
我に返るってことは、何をしようとしてたか、認識し直すってことです。
右脳は、「何かせなアカン」って思ってましたけど、チョコレートを食べることで、何かやった感がしたわけです。つまり、「やるべきことが終わった」ってなったわけです。
やるべきことが終わったって処理結果を意識が感じて、それやったら、次は、仕事に戻ろうって左脳で論理的に考えるわけです。
仕事にもどって封筒を見て、「あっ、ハサミや」って思い出したわけです。
これが、僕に起ったことです。
この右脳が感じるもの、これって、感情の一種じゃないかと思うんですよ。
人間が、進化の過程で獲得した、新たな感情じゃないかと思うんですよ。
脳が進化して意識が生まれました。
意識は、仮想世界を介して世界を認識します。
仮想世界を使うことで、世界の認識の仕方も、複雑になってきました。
左脳は、オブジェクトを順に辿って認識するってやり方です。
右脳は、全てをまとめて一瞬で感じ取るってやり方です。
このとき右脳が感じてるものが、進化した感情だと思うんですよ。
進化した感情の一つが、前回、第263回で解説した笑いです。
前回、説明しましたけど、笑いって、左脳と右脳の協調作用で起ります。
生物のなかで、笑うのは人間だけじゃないですか。
たぶん、芸術とかも、新たに獲得した感情の一種じゃないかと思うんですよ。
僕はね、昔から安藤忠雄の建築が大好きなんですよ。
関西には、安藤忠雄の建築がいっぱいあって、よく見て回ってたんですけど、安藤忠雄の建築って、見たら、すぐに分かるんですよ。
たしか、司馬遼太郎記念館やったと思うんですけど、住宅地の真ん中にあるんですよ。
どこにあるんやろって、うろうろ探してて、住宅の角を曲がった途端、一瞬で景色が変わったんですよ。
コンクリートの打ちっぱなしの塀が、きれいに一本、すぅ~って延びててね、まっすぐな直線しか目に入らないんですよ。(ここは画像はいらない)
住宅街が、一瞬で安藤忠雄の世界になったんですよ。
そんなん見ると、「気持ちええ~」って感じるんですよ。
安藤忠雄の建築って、そういう気持ちよさが、計算し尽くされてるんですよ。
コンクリートの打ちっぱなしを十字に切り取って、光で十字架を表現する「光の協会」とかね。
こういうのみて、「気持ちいい!」って感じるの、たぶん、右脳で処理してるんやと思います。
意味とか、理屈じゃない部分です。
安藤忠雄の建築に賛否両論があるのは知ってます。
ただ、安藤忠雄を批判する人の多くは、使い勝手が悪いとか、空調が効かないとかってことです。
でも、これって、言語ですよね。
つまり、左脳での評価です。
でも、芸術作品は、右脳で評価すべきなんですよ。
言葉にするとしたら、「これ、いい!」とか、「めっちゃ、きもちいい!」としか言えないんですよ。
なんか、ちょっと、バカっぽいですけどね。
でも、これは、脳の構造上、仕方ないんですよ。
言語を使わない右脳で処理してるんですから。
言語って、他人に伝えるためにありますよね。
つまり、そもそもの目的が、他人と共有するものです。
でも、右脳の処理って、他人と共有するためのもんじゃありません。
その人が、ただ、感じるものです。
だから、どうしても、分かる人には分かるし、分からない人には分からないってなるんですよ。
建築だけじゃなくて、美術とか、音楽とか、文学とか、アートって呼ばれるものは、すべてそういう面があると思うんですよ。
アートで感じる感動ってのは、進化した感情やと思うんです。
最後に物語の感動について考えてみます。
物語の面白さの一つは、意外性ですよね。
ラストで、「犯人はこいつだ!」って言われて、「えっ、その人」って意外性が大きいほど、面白いって感じますよね。
「思ってた通りや」じゃ、面白くないですよね。
でも、感動するストーリーって、意外性じゃないんですよ。
つまりね、ラストが、どうなるかわかってても、感動するんですよ。
僕がよく例に挙げるのが、映画、『アポロ13』です。
機体にヒビがあるのがわかって、このままじゃ、大気圏突入で、99%、機体はバラバラになるっていわれます。
それでも、1%の可能性に懸けます。
大気圏突入するとき、通信が3分間途絶えます。
「もし、3分経って、通信が回復しなかったら、失敗したものと思って諦めてくれ」って船長が言って、通信が終わります。
そして、地上で見守ります。
3分経ちました。
通信は途絶えたままです。
さらに、10秒、20秒経っても、通信は途絶えたままです。
だれもが、失敗したと思って、うつむいてます。
そのとき、スピーカーに通信が入ってきました。
「ただいま、地球に帰還しました」
このシーン、感動するんですよね。
これ、予測を裏切られたから感動するんじゃないですよね。
可能性が1%といっても、絶対、無事、帰ってくるの、わかってるじゃないですか。
じゃぁ、何で感動するんやろうって、ずっと不思議に思ってたんですよ。
それが、右脳の理論で考えたら、わかってきました。
物語を理解するのは左脳ですよね。
だから、ストーリーが分かってしまうと、面白くないって感じるのは左脳の部分です。
でも、右脳は、それとは全然違う処理をしてるんですよ。
右脳は、物語全体をまとめて処理します。
バーコードで言えば、前12桁の数字を決められたルールで計算する処理です。
安藤忠雄の建築なら、まっすぐなコンクリートの打ちっぱなしを抽出するとかの処理です。
そして、その処理結果を感じるのが意識です。
バーコードなら、チェックデジットを見て、バーコードが正しいか、間違ってるかって、感じるわけです。
安藤忠雄の建築なら、「きもちいい!」って、感じるわけです。
物語も同じです。
右脳は、物語全体を処理します。
おそらく、それは、特定のパターンに一致するかどうかといった処理やと思います。
そして、特定のパターンに一致したら、感動を出力して、意識は、それを感じ取って、感動するんやと思うんですよ。
このパターンのことを、ぼくは、物語パターンって呼んでます。
アポロ13なら、「勇者の帰還」ってパターンです。
「勇者の帰還」パターンっていうのは、絶対不可能なミッションから主人公が無事、戻ってきたときに感動が生まれるってパターンです。
このパターンの例としては、たとえば、太宰治の『走れメロス』とかがあります。
右脳には、時間が存在しないって話、何度もしましたよね。
左脳が脳卒中になって、右脳の世界を経験したジル・ボルト・テイラーの話です。
ジルは、そのとき、今、この瞬間しか感じれなかったと言ってました。
時間が存在するとは、経験したことが、過去になるってことです。
何度も経験したら慣れるってことです。
物語パターンを処理するのは右脳です。
右脳には時間が存在しません。
つまり、慣れることはないんです。
だから、同じ映画を何度見ても、毎回、感動するんです。
この物語パターン、僕が、最初に思いついたのは、ロボマインド・プロジェクトを始める10年以上前、今から30年以上前の学生時代でした。
今回の右脳の理論で、ようやく、原点に辿り着いたって感じです。
右脳の理論に対する左脳の理論は、意識の仮想世界仮説です。
意識の仮想世界仮説に関しては、この本に詳しく書いてあるので、よかったら読んでください。
今回の動画が面白かったら、チャンネル登録、高評価お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!