ロボマインド・プロジェクト、第265弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
何度も言ってますけど、僕が本当につくりたいのは、面白い物語りを自動生成するAIです。
ただ、今まで、260本以上の動画を撮ってきましたけど、その割には、物語については、ほとんど語ってきませんでした。
それぐらい、物語って難しいってことです。
どこが難しいかって言うと、物語りの面白さとは何かってことです。
人は、なぜ、物語りに惹きつけられるのか。
人は、なぜ、感動するのか。
そもそも、感動って何ってことです。
それが、ようやく、前回、とっかかりが見えてきました。
ここんとこ、ずっと考えてるのが右脳と左脳についてです。
人は、右脳と左脳の二つの方法で情報を処理してます。
この二つの情報処理を整理してて、ようやく、物語りとは何かが見えてきたんですよ。
これが、今回のテーマです。
シン・物語理論
シンは、もちろん、カタカナのシンです。
それでは、始めましょう!
まず、わかってないといけないのが、主観が見る世界です。
つまり、脳は、どんな世界を見てるのかです。
現実世界は一つです。
でも、それを脳がどう処理をするかによって、主観が感じる世界は全く違ってくるんです。
たとえば、同じ部屋にいても、お掃除ロボットルンバが感じてることと、僕らが感じてることは全然ちがいますよね。
僕らは、自分は部屋の中にいる、部屋には机があるとかって認識しますよね。
でも、ルンバが認識してるのは、今、前進中だとか、壁にぶつかったとかってことです。
全く同じ部屋にいても、処理の仕方で、もう、全く違う風に認識してるんですよ。
考えたら、すごいでしょ。
「いやいや、そりゃ、ルンバと人間じゃ、全然ちがうの、当たり前じゃないですか」
そう、思いますよね。
じゃぁ、次は、人間の脳で考えますよ。
人間の脳なら、だれもが、同じような処理してるから、同じように感じるはずですよね。
でも、それが違うんですよ。
それも、同じ人間でも、右脳と左脳じゃ、全然違う風に世界を認識してるんですよ。
分かりやすい例が、何度も紹介してるジル・ボルト・テイラーです。
人の脳は、左脳優位になっていて、普通は左脳で世界を認識してます。
それが、ジルは、左脳が損傷して、右脳だけで世界を認識したんです。
そしたら、何を感じたと思います。
まず、自分の体の境界が分からなくなったそうです。
壁に手を付いたとき、自分の手と壁とが溶け合って、どこまでが自分で、どこが壁かわからなくなったそうです。
それから、体がどんどん膨張して、やがて、自分と世界が一体となる感覚を感じたそうです。
世界の中に自分がいるとか、自分と壁は別だといった感覚がなくなったそうです。
つまり、空間があるとか、物があるとかって感じるのは、そういう処理をする脳があるからなんですよ。
そういう処理をしなくなったら、ここに自分がいる、ここに壁があるとかって思わないんですよ。
世界があるって思えるのは、そう思える世界を作り上げてるからです。
つまり、頭の中に仮想世界をつくって、そこに自分とか壁を配置してるわけです。
それができて、初めて、自分がいる、壁があるって感じれるんです。
そんな処理をしてるのが左脳です。
それから、ジルは、こんなことも言ってました。
そこには、時間って感覚もなかったって。
ただただ、いま、この瞬間って感覚しか感じれなかったって。
つまり、時間が流れるって感じるには、時間って感覚をつくり出さないと感じれないんですよ。
左脳がつくりだす仮想世界は、空間だけじゃなくて、時間もつくり出してるんです。
さて、ジルが損傷したのは、脳です。
目や耳は損傷してません。
つまり、同じ現実世界にいて、目や耳から同じデータを受け取ったとしても、処理の仕方で、全然ちがう世界を認識するってことです。
左脳と右脳じゃ、全然違う世界をつくり出してるってことです。
さて、僕らは、左脳と右脳の両方で処理してますよね。
ただ、人間の脳は、左脳優位となってるんで、左脳で処理した世界しか気づかないだけです。
じゃぁ、右脳は何をしてるんでしょう?
じつは、左脳と右脳の両方の役割がわかったとき、物語りとは何かってことが見えてくるんですよ。
こっから、今回のテーマ、物語に入ります。
物語にはパターンがあるってのが僕の考えです。
前回、第264回で取り上げたのが、「勇者の帰還」っていう物語パターンです。
これは、絶対不可能といわれるミッションがあって、ミッションを達成して、無事、戻ってきたとき、感動するってパターンです。
例として挙げたのが映画『アポロ13』です。
事故が起こって、大気圏突入に成功する確率は1%と言われたアポロ13号。
大気圏突入中は通信がつながりません。
船長は、「3分経っても通信が回復しなければ、失敗したものとあきらめてくれ」と言って、大気圏に突入します。
その後、3分経っても通信が入りません。
さらに、10秒、20秒経っても通信が入りません。
誰もが失敗したとあきらめていました。
そのとき、「ただいま、地球に帰還しました」って通信が入ります。
この瞬間、めちゃ、感動するんですよ。
さて、これを脳から分析していきます。
話の筋を追って、想像する部分、これは左脳の処理です。
状況を思い描いて、時間に沿って出来事が展開する部分です。
仮想世界をつくるわけです。
これは分かりますよね。
問題は、右脳は、何をしてるのかってことです。
僕は、板バネのようなものを想像してます。
板バネって、ただの鋼の薄い板です。
こうやってしならせて、手を放すと、ビヨ~ンって元にもどるバネです。
左脳って、部分と部分の関係を認識するのが得意です。
だから、ストーリーを順に辿って行くのは左脳の役割です。
それに対して、右脳が得意なのは、全体を見るとか、一瞬で把握するタイプの処理です。
たとえば、この絵を見てください。
これは、左の元の絵を、左右の脳が損傷した人に模写してもらったものです。
真ん中は、左脳が損傷して右脳が模写した絵です。
右は、右脳が損傷して、左脳で模写した絵です。
見てわかる通り、右脳は全体は捉えてますけど、細かい細部は抜けてますよね。
左脳は、部分と部分の関係は捉えてますけど、全体形は、ゆがんでますよね。
つまり、右脳って、細かいとこは無視して、パッと見た全体を感じ取るんですよ。
どこがとか、何がとか、細かいとこは分からないですけど、なんかおかしいとか、全体がゆがんでるとかってのには敏感なんですよ。
さて、『アポロ13』に戻ります。
映画を見てる人は、無事、地球に帰還してほしいと願ってます。
でも、成功する確率は、わずか1%です。
3分以内に通信が回復しないと、失敗です。
3分経ちました。
通信が入ってきません。
この時の観客の気持ちはどうでしょう。
今か、今かと待ってるわけです。
板バネを、引っ張ってる感じです。
10秒経っても、20秒経っても、通信が入ってきません。
これは、さらに、板バネをぐい、ぐいっと引っ張ってるわけです。
あぁ、ダメかもしれないって、心が引き裂かれる思いがします。
この、感覚。
板バネをグイグイ引っ張ってる感覚。
これを感じるのが右脳です。
全体のゆがみを感じるのが右脳です。
そして、ついに、通信が入ります。
「ただいま、地球に帰還しました」
このとき、板バネが解き放たれたわけです。
バシーンと、板バネが元に戻るわけです。
あぁ、よかったぁって安堵するんです。
これが、感動です。
感動の大きさは、板バネが引っ張られてた大きさに比例します。
じゃぁ、板バネを引っ張るのは誰でしょう?
それは、左脳です。
左脳は、物語を読んで、理屈で理解します。
左脳が気にするのは、部分と部分の関係です。
矛盾なく繋がっているかってことです。
船長は通信を切って大気圏に突入しました。
その後、家に帰って、風呂に入って寝ました。
とかって話じゃ、「えっ、どういうこと?」
ってなりますよね。
意味が分からないです。
頭の中の仮想世界が崩壊したわけです。
この仮想世界をつくるのが左脳の役割でしたよね。
意味が分からないってなるのは、仮想世界がつくれないってことです。
GPT-3って、文章を自動生成するAIがあります。
これは、大量の文書を学習して、単語の次にどの単語が来る確率が高いかから文章を生成してます。
だから、一見、自然に読める文章は生成できるんですけど、よく読むと、意味が通ってなくて、何を言ってるのかよく分からない文章になります。
これは、仮想世界をつくってないから、こうなるわけです。
左脳は、部分部分の理屈がおかしくないかって判断しながら仮想世界を作り上げます。
一方、右脳は、それとは全く別の処理をしています。
それは、左脳がつくり出した仮想世界の中の、ひずみを検出するんです。
これは、理屈でなくて、感情とか心理に関わる部分です。
主人公が無事、帰ってきて欲しいって願い。
その願いに対して、どんどん、それが難しい状況になっていきます。
これが、板バネをぐいぐい引っ張ってるってことです。
その状況をつくってるのは左脳です。
バネを引っ張ってるのが左脳っていうのは、こういう意味です。
物語は、仮想世界で展開される状況と、その状況で引っ張られる板バネで構成されるんです。
そして、バネが引っ張られるとそのバネにはエネルギーが蓄えられます。
そのエネルギーを感じるのが右脳です。
そして、最後に、バネが解き放たれるとき、蓄えられたバネエネルギーに比例した感情が発生するんです。
あらゆる物語は、この構造を持っています。
たとえば、アンデルセンの『裸の王様』で考えてみましょ。
町の大人たちが「王様、素敵なお召し物ですよね」と言います。
でも、読んでる人は、「王様は、ほんまは裸やのに、みんな、言ってること、おかしいんちゃう?」って思いますよね。
これが仮想世界のひずみです。
板バネが引っ張られてるってことです。
そして、最後に「王様は裸だ!」って子供に指摘されます。
これが、バネの解放です。
バネが解放されて、「あぁ、すっきりした」ってなるわけです。
これが起こって、一つの物語が完了するんです。
アポロ13で、「3分経っても、4分経っても、通信は入りませんでした。終わり」ってなったら、なんか、モヤモヤしますよね。
それは、バネが引っ張られたままになってるからです。
物語のバネエネルギーは、解放されないといけないんです。
バネを引っ張り過ぎて、バネが後ろに折れ曲がって、永久に元に戻らないってパターンでもいいんです。
アポロ13で言えば、大気圏突入に失敗して、船長は戻りませんでしたってパターンでしょう。
物語を終わらせるには、これでもいいんです。
とにかく、バネが、引っ張られたままで終わらせたらダメなんです。
シン・物語理論、わかってきましたか?
物語には、二つの処理が不可欠です。
一つは、仮想世界をつくる処理です。
これは、左脳が担当してて、理屈や、意味理解ってのに関係します。
ただ、これだけじゃ、物語りは完成しません。
意味が通るってだけじゃ、いくらでも文を続けれます。
ただし、面白くとも何ともありません。
物語を突き動かすもの、物語りの骨格となるのは板バネです。
板バネを引っ張るんです。
主人公を、ある状況に追い込むんです。
それは、危険な状況とか、または、悪い奴にいじめられるとかでもいいです。
そして、最後に、引っ張られたバネを解放するんです。
主人公が無事、戻って来るとか、いじめてた悪い奴をやっつけるとか。
この時、感動とか面白さが生まれるんです。
これで、一つの物語が終わるわけです。
この二つの機能を実装すれば、物語りを生み出すAIを作れそうですよね。
左脳が作る仮想世界に関しては、この本で詳しく解説しているので、よかったら読んでください。
今回の話が面白かったら、チャンネル登録、高評価お願いしますね。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!