第27回 シンボルグラウンディング問題(記号接地問題)の本質とその解決方法 〜解決!シンボルグラウンディング問題(記号接地問題)


シマウマっちゅういのがおりまんねん。
それはな、シマシマのウマやねん
こう言うて、AIが理解できるかっちゅう話や。
これが、いわゆるシマウマ問題、
あ、いや、シンボルグラウンディング問題や。

ロボマインド・プロジェクト第27弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。

さて、今日のテーマはシンボルグラウンディング問題ですわ。
人工知能業界の、最強の敵ですわ!
絶対解決不可能な難問って言われてますわ。
またの名を、記号接地問題。
いや、ホンマ、強そうでんなぁ。
今日はね、こいつをやっつけまっせ。

まずは、ヤツの正体です。
ヤツの正体は、じつは、シマウマなんですわ。

「なんや、弱そうやな」

いやいや、シマウマ、なめとったらあきまへんで。
これが、ごっつう強敵なんですわ。

最初は、シマウマを知らないとこから始まるんですわ。
でも、ウマは知ってます。
シマ模様も分かります。
そんなオッサンに、シマウマの説明をするんですわ。

「あんなぁ、シマ模様のある馬がおるんや」
って。

「シマ模様て。
そんなウマ、おらんやろ~」

「ほな、見せたるわ。
天王寺動物園いきまひょ」
言うて、シマウマを見せたとします。
「うわっ、ホンマや!
シマ模様のウマや。
シマウマとしか言いようがないなぁ」

これで、ヤツを倒したことになるんですわ。
記号接地問題に勝ったっちゅうわけですわ。

「なんや、やっぱり弱いやんけ」
いやいや、ちゃいまんねん。
これを、AIで倒さなあきまへんねん。

「どういうこっちゃ」
つまりな、AIにな、
「シマウマっちゅういのがおりまんねん。
それはな、シマシマのウマやねん」
言うて、AIが理解できるかっちゅう話や。

これが、記号接地問題や。

こっから、もうちょっと丁寧に説明していきまっせ。

まず、「シマ」とか「ウマ」って言葉。
言葉って、いってみれば記号や。

人間やったら、「ウマを思い浮かべてみて」て言ったら、たぶん、こんなん思い浮かべますやん。(馬の動画)
タテガミがあって、パカパカ歩くお馬さんですわ。
ほんで、シマ模様っちゅうたら、こんなん、思い浮かべますやん。(白黒ストライプの画像)

でも、AIじゃ、これができないんですわ。
この記号接地問題。
1990年に、認知科学者スティーブ・ハルナッドによって提唱されたんですわ。
1990年ちゅういたら、第二次AIブームの終わりですわ。

第二次AIブームの主流は記号処理ですわ。
AならばB、BならばCちゅう文を繋げて推論するタイプのAIですわ。

言葉の意味理解は、意味ネットワークとか、オントロジーちゅうもんを使います。
詳しくは、第11回「自然言語処理、50年の勘違い」を見といてください。
簡単に説明すると、意味ネットワークちゅうのは、ウマは動物の一種とか、動物は一つの頭と4本の脚を持つとか、そんあ風に表現するもんですわ。
ウマは動物の一種っていうのは、is-aの関係とも言うんですわ。
ウマは、一つの頭と4本の脚を持つって、has-aの関係って言うんですわ。

ほんで、ウマとかシマ模様を、記号操作して、シマ模様のあるウマを意味理解できまっかっちゅう話ですわ。
ウマは動物やとか、脚が4本あるとか、こんなんじゃ、シマ模様のウマって表現できませんやろ。
これが、ハルナッドはんが言いたかったことですわ。

記号操作なんか、なんぼしても、意味理解なんかできひんねん。
なんでか。

人間は、この、現実世界で生きてますやん。
現実のウマっちゅうのも知ってます。
シマ模様がどういうものかもわかっていますわ。
これが記号接地ちゅうことですわ。
記号と現実世界がつながってるちゅうことですわ。
だから、シマシマのウマも思い浮かべることができるんですわ。

言葉って記号です。
だから、記号接地問題を解決できない限り、言葉の意味は理解できないってことになりますやん。
意味を理解して、会話ができるAIなんか、絶対にできないっちゅうことですわ。
ハルナッドはんに、第二次AIブームにとどめが刺されたっちゅうことですわ。

この記号接地問題。
2019年に書かれた日本大百科全書には、こう書いてあるんです。

「最近では、ディープラーニングによって・・・、一部の記号接地は学習可能になりつつlある」
ってね。
ここで、ディープラーニングが出てきてましたねぇ。

ディープラーニングと言えば、大量の写真を学習して、ネコとかウマの画像を認識するやつですわ。

これ、なんか、使えそうでんなぁ。

ディープラーニンって、ウマって言葉を教えるんじゃのうて、実際のウマの写真から学習するんですわ。
それで、ウマと認識したら、それにウマって言葉、つまり記号を当てはめるんですわ。
つまり、現実のウマと、記号とが結びついたってことですわ。
記号接地問題が解決したってことになりますやん。

しかも、これだけちゃいまっせ。
ディープラーニングの仕組みは、第7回「ディープラーニングってそういう事か!」で詳しく説明しましたけども、簡単に説明しときます。

これは、人間の顔をディープラーニングで学習した結果ですわ。

一番下の細かい線から、次は、目や鼻や口のパーツ、最後は、顔全体へと処理が進んでますわ。

これって、顔は、目と鼻と口からなるってわかってるってことですわ。
つまり、Has-aの関係を理解してるんといっしょですわ。

なんと、ディープラーニングは、記号操作もできるんですわ。
完全に、記号接地問題が解決してますやん。
でも、そんな簡単な話やないんですわ。

ディープラーニンでできてる記号操作って、Has-aの関係ですわ。
ウマさんは、こんな頭と、こんな胴体を持ってますってことですわ。

じゃぁ、シマウマの例はどうでっしゃろ。
シマ模様ちゅうのは、3次元の物体の表面に現れるもんですわ。
これは、Has-aの記号操作とは、ちゃいますよねぇ。
ちゅうことは、シマ模様の意味は理解できないんですわ。

これじゃぁ、記号接地問題は解決できまへんわ。
じゃぁ、どうすればいいんだ!

あっ、もしかしたら、あれが使えるんじゃない!

はい、この動画シリーズをずっと見ていた人なら、もう、お分かりですよね。
あの仮説が使えますよね。
はい、みんな一緒に言ってみましょう。

意識の仮想世界仮説

はい、正解です!
それです。

では、さっそく意識の仮想世界仮説をつかって、記号接地問題を解いていきましょう。

現実世界は、3次元です。
これは、3DCGで表現できますよね。

3Dオブジェクトの形や色、これをプロパティっていいます。
3Dオブジェクトを動かしたり、色を塗ったり操作すること。
これをメソッドっていいます。
このプロパティとメソッドが3次元世界に用意されているわけです。

ほんで、意味を理解するっちゅうのは、このプロパティとメソッドを使って世界を操作することと同じなんですわ。
この話は、第24回「時間は存在しない」の前半で説明してるんで、よかったら見といてください。

それでは、シマウマを意味理解していきまっせ。
ウマの形は知ってます。
それでは、3次元空間に3Dオブジェクトとしてウマを作ります。

ジャーン

はい、出来ました。

次は、シマ模様です。
3DCGには、テクスチャマッピングちゅうメソッドがあります。
テクスチャマッピングちゅうのは、3Dオブジェクトの表面に模様の書いた2次元のテクスチャを貼り付けることですわ。
メソッドで表現できたるっちゅうことは、「模様」の意味を、意味理解できてるっちゅうことですわ。

それじゃ、さっそく、ウマさんにシマ模様を貼り付けてみます。
ジャーン

ほら、シマウマさんの完成ですわ。
きれいでっしゃろ。

ウマの形は知っていて、シマ模様も理解してると。
ほんで、「シマ模様のあるウマ」と聞いて、頭の中でシマウマを合成できたっちゅうことですわ。

ほ~ら。
記号接地問題がキレイに解決しましたわ。

絶対解決不可能だといわれていた記号接地問題。
じゃぁ、解決できたポイントは何でしょう?

わかりますか?

えっ? 
3DCGで世界を表現したから。

あぁ、いいですねぇ。

ほぼ正解ですけど、もう少し、深く考えていきましょ。

意識が、目の前のウマを見てるとしましょ。
現実のウマを見てると思いまっしゃろ。
じつは、そこが、既に違うんですわ。
現実のウマと思って見てるのは、じつは、頭の中の3Dオブジェクトなんですわ。

ほんで、それと全く同じものを、想像することもできるんですわ。

意味を理解するって、プロパティとメソッドを使うことと同じっていいましたよね。
模様って言葉の意味は、物体の表面に、テクスチャマッピングのメソッドを適用してることですわ。

目の前のウマの模様がシマ模様って理解できてるのは、テクスチャマッピングのメソッドを使ってるのと同じわけですわ。

目の前のウマでできることは、目の前にいなくても、頭の中で想像したウマに対してもできるってことですわ。

だから、「シマ模様のウマ」って説明を聞いて、頭の中でイメージできるわけですわ。

さて、記号接地問題の一番の問題って、なんでっしゃろ。
ウマって記号と、現実世界のウマがむすびつかないってことですわ。
記号を操作しても、現実世界のウマを操作したことにならないってことですわ。

じゃぁ、意識の仮想世界仮説は、それをどう解決してるんでっしゃろ。
それは、操作してるのは、記号じゃないんですわ。

たしかに、ウマって記号は、3Dオブジェクトを指してます。
でも、操作するのは、記号じゃなくて、3Dオブジェクトその物ですわ。
3Dオブジェクトって、現実のウマと全く同じでしたよね。

違いは、ここなんですわ。
今までのAIは、操作するのは、あくまでも記号なんですわ。
記号は記号。
実際の物を簡略化しただけなんですわ。
is-aとかhas-aの関係だけに簡略化した記号ですわ。
だから、そこで理解できるのは、is-aとhas-aで理解できることだけなんですわ。

でも、意識の仮想世界仮説は違いまっせ。
記号じゃなくて、現実世界にある物と同じ物を操作するんですわ。

実際の物を操作するんやから、記号接地問題なんか起こりようがないです。

仮想世界を認識してるっていう意識モデル。
このモデルを使えば、記号接地問題は完全に解決するんですわ。

ハルナッドはん、わかりましたか?

意識の仮想世界仮説。
これを使えば、今まで解決できなかったAIの問題、ドンドン解決できそうですわ。

次回からも、ドンドン解決していきまっせ。

ほな、次回もお楽しみに!