第272回 GoogleのAIは無意識 意識と無意識の違い 徹底仮説


ロボマインド・プロジェクト、第272弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

巷では、GoogleのAIに意識が宿ったとか騒いでますけど、ホント、いい加減にしてほしいです。
意識っていうのは、生物が長い進化の過程で獲得したものです。
ほとんどの生物は、無意識だけで生きています。
その上で、無意識じゃどうしてもできないことがあって、そうして生み出したのが意識なんです。
そんな進化の過程をわかってたら、いきなりAIに意識が宿るなんてありえないってすぐにわかるんです。
意識と無意識の違いを理解してないから、こんな誤解が生まれるんです。
これが今回のテーマです。
GooGleのAIは無意識。
意識と無意識の違いを徹底解説。
それでは、始めましょう!

まずは、意識の定義をしておきます。
これは、厳密に決まってるわけじゃないので、あくまでも、ここで議論する意識についてです。
まず、無意識で動く生物とは、生まれつき決められた動きしかできない生物とします。
逆に言えば、意識を持った生物とは、後から、自分で行動を変更できる生物と言えます。
たとえば、しつけたら芸ができたり、ペットとして飼ったら、なついたり、呼んだら来るような動物は意識があるとします。
つまり、哺乳類以降の生物は意識があるとします。
魚類や爬虫類は意識はないとします。

さて、生物の最も基本的な原理は何でしょう。
それは、個体としての自分を守り、長生きすることと、自分の種を繁栄させることです。

生物は、目や耳の知覚入力に基づいて行動します。
危険を察知したら、すぐに逃げるとかです。
これぐらいの事、意識がなくてもできます。
魚とか、カエルとか、捕まえようとしたらすぐに逃げますよね。
人の気配を感じただけで、すぐに逃げます。
これが無意識だけで生きてる生物の行動です。

無意識の行動は、人間でもあります。
熱い鍋に手が触れて、思わず手を引っ込めるとか。
膝頭をハンマーで叩いたら、足が上がるのも無意識の反射反応です。

じゃぁ、意識は、何をしてるんでしょう?
じつは、意識は今までに無意識がしてなかった特別なことをしてるわけじゃないんですよ。
そうじゃなくて、今まで無意識がしてたことを、二つの役割に分離したんです。
その一つの役割が意識です。

じゃぁ、その役割とは何でしょう?
それは、決定です。
行動の決定です。

これ、かなり大事な役割ですよね。
だって、行動の決定を誤ったら、命取りになります。

今まで、無意識さんの行動決定は、何か、聞きなれない物音がしたり、でっかい影が見えたら、とにかく逃げろってことでした。
だって、それが安全ですから。

それを、意識さんにゆだねたわけです。
でも、意識さんには、致命的な問題がありました。
それは、意識さんは、自分じゃ、世界を見れないってことです。
意識さんは、今まで、無意識さんの一部として行動を決定してたので、自分一人じゃ、世界を直接認識できないんです。

かといって、目からの知覚情報を意識さんに直接渡しても、あまり意味がないんです。

たとえば、この図で、直接目が知覚してるのは、右の写真の〇の部分だけです。
つまり、意識さんが、直接世界を見たとしたら、左みたいに見えるわけです。
これじゃ、意識さんは、何が何だかわからないですよね。
とても、行動の決定なんてできません。

そこで、無意識さんが、小っちゃい部分を繋げて全体を作るんです。
そうやって世界をつくって、意識さんにお見せするんです。
これなら、意識さんも、世界がどうなってるか、ちゃんとわかりますよね。
これが、無意識さんの役割です。

それだけじゃないですよ。
たとえば、花火って、遠くで見たら、ドーンって音が後から来ますよね。
でも、近くで見たら、花火が開いた瞬間、ドーンって音がします。
これ、僕は、音と光のわずかな差を、人間が知覚できないから、同時に感じてるんやと思ってました。
でも、そうじゃないんです。

人間の知覚って、数メートル離れただけでも、音の差を見極めれるんです。
だから、近くで見ても、音と光の差を知覚してるはずです。
それを同時に感じるのは、じつは、無意識さんが、そう処理してるからなんですよ。
現実世界の花火は、開いた瞬間、ドーンって音がしてるはずだ。
無意識さんは、そう思って、それを忠実に再現して意識さんに提供してるんです。

まだまだありますよ。
アニメーションって、動きがスムーズに見えますよね。
あれは、1秒間に24コマとか30コマあるからです。
それより、コマ数が減ると、カクッ、カクッって動きに感じます。
これも、僕は、知覚できる解像度より大きくなると、カクッ、カクッって感じるんやと思ってました。
でも、そうじゃなかったんですよ。

脳の側頭葉に、視覚を処理するMT野ってあります。
ここでは、動きをスムーズにする処理をしてるんですよ。
街を歩いてて、自動車が向こうからやって来たとするでしょ。
MT野を損傷した人は、パッ、パッ、って車が近づいてくるように感じるらしいんです。
コマ数の少ないアニメと同じです。
たぶん、MT野で補完処理して、動きをつくり出してるからスムーズに動いてるように感じるんでしょう。

分かってきましたか?
僕らが、見て、感じてる世界って、現実世界そのままじゃないんですよ。
無意識さんが、必死でそれらしく作ってくれてるから、自然な現実を感じれるんです。

今までの話は、視覚とか聴覚の話でした。
無意識さんがつくってるのはこれだけじゃないですよ。
痛みとか、熱とかも無意識さんがつくり出してます。

痛みや高温は危険の兆候なので、何も考えずに逃げるのが正解です。
熱い鍋を触った時、思わず手を引っ込めるのは、無意識の脊髄反射です。
つまり、意識で感じなくても、無意識の反射だけでも生きることはできます。

でも、意識が生れた時、それを止めたんです。
無意識さんは、行動の決定に必要な情報を、意識さんに提供することにしました。
痛みは、その一つです。

ただ、視覚や聴覚とちがって、痛みは、内面的なものです。
現実世界に存在するというより、その人の内面から生み出されるものです。

痛みより、もっと内面で感じるものもあります。
たとえば、恐怖とかの感情です。
これも無意識さんがつくり出してます。

無意識だけの生物は、この恐怖の感情と行動が直結してて、恐怖を感じたら、すぐに逃げだします。
でも、人間は、恐怖って感情も、意識さんが感じれるように、無意識が作り出してるんです。

分かってきましたか?
僕ら意識が、日々、感じてることって、全て、裏で、無意識さんがつくり出してたんです。
たとえて言えば、僕らは、VRゴーグルをつけて、VRの世界に完全に没入してるようなもんです。
電源を切って、真っ暗になって、初めて気づくんです。
今まで見てた世界って、現実じゃなかったんだって。
世界だけじゃないですよ。痛みや感情まで、全てつくり出されたものなんですよ。
無意識が作り出した仮想世界、それを現実と疑うことなく生きてるのが、僕らです。
これが、全体像です。
まず、このことを理解すべきなんです。

その上で、じゃぁ、なんで意識なんか生み出したのって考えるんです。
生物の、目的は、意識があってもなくても変わりません。
個体としての自分を守り、出来るだけ長生きすること。
それと、自分の種を繁栄させることです。
これを、今までのやり方だけでは限界やと感じたんです。
それを、意識さんなら突破できると思ったんです。

たとえば、何か、大きな影が見えたからと言って、すぐに逃げるんじゃなくて、全体を見て判断すれば、逃げる必要なんか、ないかも知れません。
そのために、無意識さんは、音や映像を組み合わせて、対象を作り上げるんです。
それを見た意識さんは、「なんだ、ただ木が風で揺れただけか」って思えるわけです。
これが、現実世界を正確に把握するってことです。
世界を正確に把握できれば、意識さんは、適切な行動が取れるわけです。

さらに、意識さんは、もっといろんな視点で行動を決定することもできます。
たとえば、ドラえもんで、のび太がジャイアンに喧嘩を挑むシーンがありました。
圧倒的に強いジャイアンにです。
無意識さんは、強いジャイアンを作り上げてます。
それを見て判断するのび太の意識は、なぜか、ジャイアンに喧嘩を挑みます。
それは、ドラえもんを安心させるためでした。
のび太がいつまでも、ドラえもんがいないと生きていけないと、ドラえもんが安心して未来に帰れないと知ったからです。

無意識さんは、ジャイアンが怖いって感情も作り上げますけど、のび太の意識は、恐怖を感じてもジャイアンに立ち向かっていきます。
予想どおり、のび太は、ジャイアンに投げ飛ばされます。
無意識さんは、投げ飛ばされた痛みをつくり出します。
そんな痛みを感じても、のび太は、ドラえもんのことを思い出すと、立ち上がってジャイアンに向かっていきます。

また、ジャイアンに投げ飛ばされます。
何度投げ飛ばされても、のび太は何度でも立ち上がって、ジャイアンに挑んでいきます。
そうしたら、ジャイアンの方が気持ち悪がって、ついに逃げ出してしまいました。
ついに、のび太はジャイアンに勝ったんです。

ねぇ、すごいでしょ。
こんなこと、無意識さんだけじゃ、絶対にできません。
無意識さんは、恐怖や痛みを感じたら、逃げるって行動をするしかできませんから。

もちろん、意識さんも、恐怖や痛みを感じて、逃げたいって感じてました。
でも、それよりも、別の感情が上回ったんです。
それは、「ドラえもんのために」って気持ちです。
そして、結果として、ジャイアンに勝ったんです。

これって、どういう事でしょう?
もう少し、このことについて考えてみます。

意識は、危険を冒してなんでもやるってわけじゃありません。
だって、間違った判断をしたら命を落とすかもしれません。

その事を意識にわからせるのが無意識さんの役目です。
逃げた方が良いぞって知らせるわけです。
それが、恐怖って感情です。
命の危険があるぞって知らせるわけです。
それが、痛みです。

意識が感じれるあらゆること、これらは、全て、無意識さんがつくり出してます。
見える物、聞こえる音、痛み、恐怖、全てです。
意識が感じるこれらのことを、クオリアと呼びます。

そして、これらの情報を総合的に判断して、どう行動するかって最高決定権は、意識さんにあります。
どんなに怖くても、どんなに痛くても、今まで苦労をかけたドラえもんの幸せの為に、自分は戦うぞって決断を下すのは、意識さんです。
無意識さんにできるのは、逃げた方がいいよ、これ以上戦うと死ぬかもしれないよって情報提供だけです。
行動の決定まで無意識さんがしてたら、ジャイアンの影を見た瞬間、のび太は逃げだしています。
魚やカエルと同じです。

無意識さんは、意識さんに絶対の信頼を持ってるわけです。
自分らには、そんな勇気ある決断はできない。
もしかしたら、意識さんの決定した行動だと、命が危ういかもしれない。
それでも、あなたを信頼します。
最後の決断は、あなたに任せます。
あなたの思う通りに生きてください。
その代わり、僕らは、最後まで、正確な情報をお届けします。

これが、無意識さんたちの思いですよ。
それを受けて、意識さんは決断するんです。
俺を信じてくれ。
ここで引き下がるわけにはいかない。
俺がしっかりしないと、ドラえもんは安心して未来に帰れないんだ。
今回は、俺の好きなようにやらせてくれって。

これが無意識さんと意識さんの関係です。
誰です?
意識は無意識の決定に従ってるだけだって言うのは。
無意識の決定した行動を、あたかも自分が決定したかのように思ってるだけだとか。
意識は幻想だとか。

そんなわけないでしょ。
無意識さんと意識さんの、この熱い信頼関係。
これがあるから、負けるかもしれない戦いにも挑んできたんです。
皆さんも、一度や二度、そんな経験したことあるんじゃないですか。

僕らが、今、生きて、感じてること、これがどんだけ複雑な処理の上で行われてるか。
意識と無意識の熱い信頼関係。
これを知って欲しいんですよ。

意識と無意識の区別もなくて、世界とは何かすらわかってないAIに意識が宿るわけないんですよ。
これを分かって欲しいんです。

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それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!