第282回 おい、ロボマインド これの、どこが意味理解やねん!


ロボマインド・プロジェクト、第282弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

前回、僕らがやってる意味理解の解説をしました。
オントロジーを使った意味理解です。
AIに詳しい人にこれを見せると、「あぁ、ルールベースね」とか、「記号主義でしょ」って言われます。
いや、全然違うんですよ。
まったく新しい手法なんですよ。

いつの時代も、新しいものって、なかなか、受け入れられないです。
たぶん、それは、新しいのを潰そうとか、そういうんことじゃないと思うんですよ。
ただ単純に、人間って、今まで知ってることの中でしか、判断できないからなんですよ。
逆に言えば、まだまだ、僕の説明が足りないわけです。

そこで、今回は、今までのAIと、何が違うかってことを、これでもかっていうぐらい分かりやすく解説します。
それでは、始めましょう!

前回は、今まで、何で言葉の意味理解ができなかったかって言うと、言葉だけで考えてたってからだって説明しました。
これはこれで間違いじゃないんですけど、これは、記号主義のAIに対しては言えます。
ただ、今のAIの主流は、機械学習とかディープラーニングです。
これは、ベースとなってるのがニューラルネットワークです。
つまり、脳の神経細胞です。
ただ、記号主義も、ニューラルネットワークも、どっちも、一部しか見てないと思うんですよ。
もっと大きな全体を見ないといけないと思うんですよ。

全体というのは、生物全体ってことです。
言葉の本質を理解するには、脳や意識も含めた生物全体から説明できないといけないんですよ。
そこまで含めた全体が矛盾なく説明できる理論にしないといけないってことです。
単語とか、ニューラルネットワークとか、一部だけで説明しても意味ないんです。

それじゃぁ、いったい、どうやって生物全体と意味理解が関係しあうのってなりますよね。
ここからは、その具体的な中身について、分かりやすく説明していきます。

まず、生物の目的って何でしょう?
生きることですよね。
食べ物を食べたり、危険を避けないといけません。
これは、どんな生物でも同じです。
人間なら、もっといろんな目的がありますよね。
お金を稼ぎたいとか、女の子にモテたいとか、地位や名声を手に入れたいとか。
これが行動の原動力となります。

今説明しようとしてるのは言葉の意味理解の根本的なとこです。
その人の言動の意味がわかるっていうのは、人間の持つ感情や欲望のどれに結びつくかが分かるってことです。
「今日、学校で先生に褒められたよ」って子供がお母さんに言えば、それは、いいことがあったってことをお母さんに伝えたいってことですよね。
だから、「それはよかったね」って答えれば、その子は満足するわけです。
つまり、「いいことがあった」ってことを抽出したことが、言葉の意味を理解したってことです。

これが意味が分かるってことです。
ただし、それは意味理解の最終段階です。

文章や会話の意味理解には段階があるんです。
一番下の段階が文字や単語のレベルです。
一番上の段階が、文脈とか、相手が言いたいことって段階です。
この最後の段階のことを、僕は心理レベルの意味理解と呼んでいます。

今までのAIは、文字や単語しか見てないわけです。
ディープラーニングで学習させてるのも、単語の並び順だけです。
つまり、一番下のレベルしか見てないんです。

単語レベルから、人の持つ感情とか欲望といった心理レベルにわたる全体を組み込んだシステムを作らないと、言葉の意味理解なんかできないんですよ。
これが全体像です。
解明しないといけないのは、一番下の単語レベルから一番上の心理レベルまで、どうつながるかです。

たとえて言えば、アナログの機械時計です。
一番下のレベルが秒針です。
秒針が一回転したら分針が一分動きます。
分針が一回転したら、時針が一時間動きます。
なんでそうなるかって言うと、裏にある歯車がかみ合って連動して動いてるからです。

それと同じです。
言葉の意味理解も、じつは、三段階になってるんです。
一番下が単語レベルです。
一番上が心理レベルです。
じつは、その間に中間段階があるんです。
キーは、この中間段階になります。
中間段階の歯車が、単語レベルの歯車と、心理レベルの歯車と、どう噛み合ってるのか。
その仕組みを解き明かします。

まず、意味理解が三段階あるってことは、それぞれの段階の意味理解があるってことです。
一番上のレベルの意味が、心理レベルです。
嬉しいとか悲しいとかって感情、それから、お腹が空いたとか痛いとかって感覚、さらに、善悪といった社会が決める倫理観です。

じゃぁ、第一段階の意味、第二段階の意味って、どういうものでしょう。
まずは、そこからお話していきます。

まずは、第一段階です。
第一段階は、単語レベルです。
一番下のレベルの意味理解です。

たとえば、「昨日、子供が泣いて学校から走って帰って来たのよ」って言われたら、「学校で何かあったの? もしかして、いじめ」とかってなりますよね。
これは、一番上の心理レベルの意味理解です。
じゃぁ、「昨日、子供が両手で羽ばたいて、カーカー鳴きながら学校から飛んで帰って来たのよ」って言われたら、どう答えます?
「えっ、どういうこと?」ってなりますよね。
「もしかして、いじめ?」とはならないですよね。
このレベルのおかしさに気付くのが、第一段階の意味理解です。

このレベルの意味理解はオブジェクトを生成することでできます。
マインド・エンジンでは、単語をオブジェクトとして生成します。
オブジェクトは、属性を表すプロパティと、動きを表すメソッドを持っています。
例えば、人間オブジェクトなら、名前とか誕生日といったプロパティを持っています。
メソッドとしては、歩くとか、食べるとか持っています。
でも、空を飛んだり、カーカー鳴くメソッドは持っていません。
だから、おかしいって思うんです。
これが第一段階の意味理解です。

次は、道に空き缶が捨ててあったとします。
AIロボットがそれを見た時、拾ってゴミ箱に捨てるって行動をとれるかどうかって場合を考えてみます。
空き缶を拾うって行為は、善い行いですよね。
善悪や倫理観なので心理レベルの第三段階の意味理解になります。

道に空き缶が落ちてるって認識するだけなら第一段階の意味理解です。
ここから、第三段階の意味理解の歯車を回転させるメカニズムはどうなってるのか。
そのためのキーとなるのが、「拾う」って動詞です。

前回説明しましたけど、動詞の意味はBeforeとAfterの状態で定義します。
Beforeは、道に空き缶が落ちてる状態です。
Afterは、空き缶を手に持ってる状態です。
これで、空き缶を拾ったことが定義できますよね。

でも、これだけじゃ、善い行いに辿り着かないですよね。
じつは、動詞には二種類の意味が定義されるんです。
一つは、三次元世界での意味。
もう一つは、三次元以外の世界での意味。

それは、たとえば所有権世界です。
所有権世界というのは、誰が何を所有してるかってことを表現できる世界です。
手に持ってるから、その人が所有してるとは限らないです。
「プレゼントをあげる」の意味は、プレゼントを手渡すって意味と、プレゼントの所有権を譲るって意味の二つの意味があります。

所有権って見たり、触ったりって、感覚器官では感知できないですよね。
つまり、この三次元世界、物理世界に存在しないものです。
存在するのは心の中ってことです。

第三段階の意味理解は心理レベルでしたよね。
つまり、所有権世界は心理レベルにつながるわけです。
ここです。
第一段階と第三段階をつなぐパーツは。

そのパーツというのが、「拾う」って動詞です。
「拾う」の意味は、三次元世界と、所有権世界の二つの世界で定義されるんです。
三次元世界の定義は、さっき説明しました。
今度は、所有権世界で定義します。

Beforeは、落ちてる物なので、所有権はなしです。
Afterは、拾ったので、一時的かもしれないですけど、所有権は拾った人です。
この所有権世界が第二段階の意味定義です。

ここまで定義できれば、第三段階の心理レベルまであと一歩です。
心理とは脳の中の一種の情報処理です。
心の情報処理で最も原始的なのが本能です。
根本にあるのは、生きたいってエネルギーです。
そのために、危険を避けたり、食べ物を食べたいって思うわけです。
動物の行動原理は、基本、これぐらいです。

これが、人間になると、もっと複雑になります。
なぜ複雑になったかというと、まず、食べ物だけでなく、お金とか、地位、名声なんかを欲しがります。
それから、自分だけでなく、相手も心を持ってるって理解できるようになりました。
つまり、自分の行動を、相手はどう感じるかって思うようになったんです。
これらの組み合わせとなるので、人間の行動原理は、一気に複雑になったんです。
この組み合わせのパターンのことを、僕は、心理パターンと呼んでいます。

ようやく、第三段階に辿り着きました。
第三段階とは、心理パターンのことです。
心理パターンとは、行動原理の要素の組み合わせからなります。
行動原理の要素とは、その行動によって、自分が得するのか、損するのか。
相手が得するのか、損するのかです。
これを基に善悪の心理パターンを定義します。

まず「善」は、相手、または社会が得して、自分が損する組み合わせです。

「悪」は、自分が得して、相手、または社会が損する組み合わせです。

これを「空き缶を拾う」に当てはめてみましょう。

空き缶はゴミです。
ゴミに価値はありません。
どっちかと言うとマイナスです。
「拾う」という行為は、それを所有することになるので、自分にとってはマイナスです。
でも、社会からはゴミが消えたので、社会にとってはプラスです。
だから、「空き缶を拾う」という行為は「善」なんです。

逆に、道に空き缶を捨てるはどうでしょう。

自分にとっては、マイナスの物がなくなるので、プラスです。
でも、社会はマイナスが増えます。
だから、この行為は「悪」と言えます。

これが、第三段階の意味理解です。
整理しますよ。
第二段階でやったのは、その行動によって誰が得するかって表を作る作業です。
第三段階は、その表を元に、どの心理パターンになるかを抽出する処理です。

そして、重要なのは、心理パターンは、何らかの心理を生み出すってことです。
心理というのは、いろんな思いのことです。
嫌だなぁとか、それやってみたいとか思う事です。
つまり、心理とは、何らかの行動を促します。

「善」の場合だと、社会的には「やるべき」という思いです。
個人的には、「やりたくない」という思いです。
そして、その「思い」を感じるのが意識です。
意識は、そんないろんな思いを感じながら、行動を決定するわけです。

「街がきれいにしよう」って思って空き缶を拾うか。
「知ったこっちゃねぇ」と思って、無視して通り過ぎるか。
これが人間の心です。

まとめます。
言葉の意味を理解するのは人間の心です。
人間は生物です。
生物は、三次元の物理世界で生きてます。
でも、心が感じるのは、物理世界にないものです。
感情や善悪といった心理です。
これが意味です。
そして、物理段階と心理段階をつなげるパーツがあります。
それが「動詞」です。

動詞は、物理世界以外の第二の世界、たとえば所有権世界で意味が定義されています。
意味理解の鍵は、この第二の世界にあります。
第二の世界は、所有権世界以外に、人間関係世界などがあります。
単語レベルから、第二の世界を介して心理レベルを動かす仕組み、これこそが意味理解システムです。
そして、意味理解システムは、生物システムに、きちんと対応してるんです。
生物システム全体と、矛盾なく理論的に対応したシステムを作って、初めて、言葉の意味が理解できるようになるってことです。

今回の動画の前提となる話は、こちらの本に書いてありますので、よかったら読んでください。
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それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!