第30回 クオリア超入門 1 クオリアの本当の意味 〜クオリアってなんだ? 1


イテテテテ
これは、痛みのクオリアです。
あ~、なんかお腹がすいてきたなぁ。
これ、空腹のクオリアです。
認識するもの、全て、クオリアなんです。

ロボマインド・プロジェクト、第30弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。

今日のテーマは、クオリアです。
クオリアって聞いたことありますか?
クオリアって、主観的に感じる「感じ」のことを言います。
質感とか、言ったりします。
ちょっと、分かりにくいですよねぇ。

クオリアが何なのか、いきなり説明しても分かりにくいので、まずは、クオリアがなぜ必要なのかから考えていきます。

たとえば、ここに赤のボールペンがあります。
この赤色って、定義すると、波長が620~750nmの電磁波です。

たしかに、赤色を定義するのには、これだけで十分です。
世界中、いや、宇宙に行っても、これで定義できます。
これ以上、定義のしようがないと思われていました。

この世にある全ての物質は、物理法則にしたがいます。
量子といったミクロの世界から、銀河や宇宙といったマクロまで、全てです。
すべて、物理科学で説明がつきます。

誰もが、そう思っていました。
でも、物理科学から漏れてる世界があることに、気づき始めたんです。
それが、主観です。
脳の内側からみた世界です。

眼の網膜にある錐体細胞は、色に反応します。
錐体細胞は、赤色に反応します。
この、眼の網膜までは、外の世界です。
物理科学が扱う世界です。
でも、そっから先は、どうでしょうか?

網膜からの信号は、脳の中で、どう処理されてるのでしょう?
その信号が赤色だとか、ボールペンだとか認識するのは意識です。
つまり、意識が認識する赤とかボールペンがあるわけです。
意識が認識する壁とか床とか部屋があるわけです。
つまり、意識が認識する世界があるわけです。

脳内には、外の世界とは全く別の世界が存在するんです。
それに気づいたとき、人類は愕然としたわけです。

物理世界とは全く異なる世界を発見したんです。
全く解明されていない、広大な世界です。

この話、一見、脳科学の話に思えるでしょ。
ややこしいのは、こっからなんです。

網膜で受信した光は、神経細胞を伝って脳内で処理されます。
信号の流れを追っていけばいいだけなんです。
何も問題はないですよね。

ところが、そうは行かないんです。
もし、100%完全に信号の流れがわかったとします。
さて、それでは、どこで赤と認識したんでしょう?
意識は、どこにあるんでしょう?

意識は、今、この世界をありありと感じていますよね。
それは、脳のどこにあるんでしょう?
今、見てる、このボールペンは、脳のどこにあるんでしょう?
こんなに、はっきりと目に見えてるのに、脳のどこにあるのかわからないんですよ。
どこかの神経細胞を殺せば、このボールペンが消えるんでしょうか?

考えたら、分からなくなりますよね。

ちょっと、考えてみてください。
今、この部屋が見えてますよね。
今、この動画を見てる人、全員の頭の中に、この部屋が再現されてるわけなんです。
宇宙を思い浮かべてください。
と言えば、全員の頭の中に宇宙が思い浮かぶわけです。
「昔々ある所に、おじいさんとおばあさんがいました」
と言えば、全員の頭の中で、昔話が始まるわけです。

これ、いったい、どういう仕組みなんでしょう?
どうやったら、部屋や宇宙が頭に思い浮かぶんですか?
昔話が始まるってどういうことでしょう?
今までの科学じゃ説明できないんです。
どう考えても、不思議です。

これが意識の科学の世界です。
20世紀も終わりころになって、ようやく、そんなことに、気づき始めたんです。

意識科学は、まだ、できたばかり科学です。
だから、まだ、何も整理もできてないんです。
定義もなにもない状態です。

でも、その中で、一つだけ決まってることがあります。
それは、何かというと、
それは、世界を認識する側と認識される側があるってことです。

認識する側のことを意識といいます。
そして、認識される側がクオリアです。

意識の方は、何となくわかりますよね。

クオリア、これが、わかりにくいですよね。
もう一度言います。
世界を認識する側が意識です。
そして、認識される側がクオリアです。

つまり、世界のなかの意識以外の全てがクオリアなんです。
もっと分かりにくくなりましたかねぇ。
意識が感じたり、認識できるものは、すべてクオリアなんです。

ここにボールペンがありますよね。
色は赤です。
ボールペンも赤も、認識できますよね。
だから、ボールペンも赤もクオリアなんです。

今、僕は、声を出していますよね。
あ~あ~
声を認識してますよね。
これは、声のクオリアです。

手の甲をつねってみます。
イテッ
イテテテテ
痛みを感じます。
これは、痛みのクオリアです。

あ~、なんかお腹がすいてきたなぁ。
これ、空腹のクオリアです。

認識するもの、全て、クオリアです。
眼で見たり、耳で聞いたりしたものだけがクオリアじゃないです。

眼に見えないけど、痛みや空腹といった感覚もクオリアです。
感覚でなくても、政治や経済といった概念もクオリアです。
嬉しいとか、悔しいといった感情もクオリアです。
人が、頭の中で認識できるもの、全てクオリアなんです。

さて、このクオリア、どこにあるんでしょう?
ニューロンの電気信号のどっかにあるとは思いますが、分かっているのは、それだけです。
全部、ニューロンの電気信号なんです。
赤色も痛みも全部ニューロンの電気信号なんです。
脳のどこかに意識があるはずなんですが、それが見つからないんです。
なぜ、見つからないんでしょう?

それは、第一回「解決、谷村ノート! 物理学 vs. 哲学」でも説明しました。
簡単に説明すると、脳と意識の関係は、コンピュータとソフトウェアの関係だということです。
CPUで実行されているプログラムが意識だということです。
だから、CPUの配線や信号をいくら観察しても、意識の本質は見えてこないんです。

たとえば、表計算ソフトのエクセルってありますよね。
ほんで、エクセルそっくりの無料ソフトも、いっぱいありますよね。
そういうの、どうやって作っているかわかります?
それは、エクセルの画面を真似して作ったり、エクセルの動きを真似して作るわけです。

エクセルを実行するCPUを観察して作ってるわけじゃありません。
CPUを走る信号を観察して、その信号と同じ動きを発生させて作ってるわけじゃありません。
そんな方法で、ソフトウェアを作ったりしません。

でも、世界中の脳科学者は、MRIとかで脳を観察して、意識を探そうとしてるんです。

ロボマインド・プロジェクトは、そんなことはしません。
意識の側からアプローチするわけです。
意識から降りて、意識を作り出してるものを探すわけです。

その話は、次回、お話します。
それでは、次回もお楽しみに!