ロボマインド・プロジェクト第329弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
生物って、何万年もかけて進化してますよね。
でも、進化は体だけでなくて脳、つまり心も進化してると思うんですよ。
体の進化がハードウェアの進化なら、心の進化はソフトウェアの進化です。
たぶん、ハードウェアよりソフトウェアの進化の方が速いと思うんですよ。
ただ、心の進化って、あまり研究されてません。
と思ってたんですけど、心の進化の研究、見つけました。
それによると、心の進化って、思った以上に速かったです。
10年単位で確認できるんです。
それを示すのが、この本です。
『なぜ人類のIQは上がり続けてるのか?』
作者はジェームズ・R・フリン。
ニュージーランドのオタゴ大学の教授です。
この本によると、この100年、人類の知能指数、IQは上がり続けてるんですよ。
これをフリン効果っていいます。
IQのテストって、中央値を100にするため、10~20年ごとに更新されます。
すると、テストの成績は、必ず、上昇してるんですよ。
たとえば、1932年のアメリカの平均IQは、1997年を基準にすると、80になるそうです。
つまり、65年でIQが20も上がってるんですよ。
これが、どういうことか、わかりますか?
1932年の子供は、今の基準だと、なんと、1/4が知的障害になるってレベルなんです。
IQの上昇は、アメリカだけでなくて世界中で観察されています。
つまり、10年単位で、人類は間違いなく、頭がよくなってるんですよ。
ただ、この研究に異論を唱える人もいます。
もし、それだけ人間の頭がよくなってたら、その結果として社会がもっと変化してるはずだって。
たとえば中世からルネッサンスに起こったような文化的ルネッサンスが起こってるはずだけど、そんなのは起こってないって意見です。
これ聞いて、どう思います?
「その人は、いったい何を見てるの?」って思います。
「この50年で、どんだけ変わったか、わかってないの?」って。
僕は、インターネットとかスマホとか、科学技術のことを言ってるんじゃないですよ。
僕が言ってるのは頭の中の変化のことです。
明らかに、僕らの心は進化してるんですよ。
これが今回のテーマです。
この50年の人類のIQ上昇と心の進化
それでは、始めましょう!
さっきの本には、1920年代のロシア人へのインタビューが紹介されていました。
村人に、こう質問をしたそうです。
「魚とカラスの共通点は何ですか?」
そしたら、「う~ん、魚は水の中に棲むし、カラスは空を飛ぶしなぁ。
共通点はないなぁ」って答えたそうです。
そこで、「それじゃぁ、魚とカラスを一言で表現したらどうなります?」って聞いたら、
「う~ん、動物じゃないよなぁ。魚は動物でないし、カラスも動物じゃないしなぁ」って答えたそうです。
さて、これ聞いてどう思います?
魚とカラスの共通点は動物で合ってますよね。
でも、この人は「動物」って気づいてても、それが正解だとわかってないわけです。
この人は、物事の分類がちゃんとできてないようです。
分類っていうのは、抽象度を一段上げて、グループ分けするってことです。
たぶん、この人は、抽象度を上げて考えることが苦手なんでしょう。
IQテストに、「仲間外れはどれ?」ってのがあります。
果物の中に、野菜が一つ紛れてるとかって問題です。
たぶん、このロシア人は、こういった問題が苦手なんだと思います。
もう一問、問題を出しました。
「ドイツにはラクダがいないとします。B市はドイツの都市です。では、B市にはラクダがいるでしょうか?」
そしたら、「う~ん、ドイツの村を見たことないからわからないなぁ。でも、大きな街ならラクダぐらい、いるんじゃないかなぁ」って答えたそうです。
そこで、「それでは、もし、ドイツのどの場所にもラクダいないとしたら、どうですか?」って聞きました。
そしたら、「それは、その村が小さくて、きっと、ラクダには狭いからだ」って答えたそうです。
なんかおかしな受け答えになってますよね。
現代の僕らなら、ドイツにラクダがいないなら、ドイツの都市、B市にもラクダはいないって、即答できます。
でも、このロシア人は、実際に見たことがないことはわからないっていってます。
そこで、質問者は、なんとかわかるように、「もし、どの場所にもラクダがいないとしたら?」って、再度質問したら、「それは、その村が小さいからだ」とかって答えてます。
「もし、~したら」って、その仮定の上で考えるってことですよね。
それなのに、この人は、仮定のとこで引っかかって、その上で考えるってことができないようです。
フリン教授は、これは、自分の父親も同じだったっていってます。
父が人種差別するので、「もし、明日の朝起きたら、父さんの肌の色が変わってたとしたらどうするの?」って言ってみたそうです。
そしたら、「バカも休み休み言え。肌の色が突然変わった人なんか見たことあるか?」って答えたそうです。
フリンの父親も、仮定した上で考えることができなかったようです。
仮定して考えるって、まず、仮定した状況の世界を作り上げるわけです。
次に、その世界の中で、考えを進めるわけです。
どうも、昔の人は、自分が経験したことのない世界を、仮にでも作り上げることができないみたいなんです。
僕ら、現代人は、ラクダのいないドイツとか、仮の世界を作り上げるってことって簡単にできますよね。
頭の中に、仮の世界を作り上げるって、いってみればソフトウェアの処理です。
どうも、この50年で、頭の中のソフトウェアの処理が格段に進んだみたいなんです。
その結果がIQの上昇です。
心は、確実に進歩してるんです。
僕が、そのことに気づいたのは、古い映画を見てたときです。
学生時代、最新の映画だけじゃなくて、古い名画も見ようと思って見たんですよ。
小津安二郎とか、50年以上前の映画です。
でも、正直、見ても、そんなに面白くなかったです。
芸術作品だからかなぁと思ったんですけど、そうでもないです。
昔の人は、これを、大衆娯楽として見てたんです。
何が面白くないかって言うと、古い映画って、展開が遅いんですよね。
日本映画だけじゃなくて、ハリウッドの古い名作も、あんまり面白くないんですよ。
初めて見るんですけど、もう、オチがバレバレなんです。
もしかして、「そりゃ、そうやろ」って思う人もいるかもしれません。
「そうやって、文化は発展してきたんだから」って。
でも、よく考えてみてください。
音楽は違うんですよ。
僕は、最新のヒット曲も、ビートルズも、同じように楽しんで聴いてます。
音楽配信のレコメンドって、昔の曲も、区別なく勧めてきますけど、自然に聴けますよね。
ロックだけじゃなくて、モーツァルトとか、何百年も前の曲でも、楽しんで聴けます。
たぶん、当時も今も、同じように、いい曲やなぁって聴いてたと思います。
でも、映画とかストーリーは、そうはならないんですよ。
たとえば昔の仮面ライダーなんか、単純でした。
僕は、ライダー1号、2号とか、V3、アマゾンの世代です。
約50年前です。
怪人が悪者で、ライダー、人間がいいもんって、はっきりと分かれてました。
いや、それは子供番組だからでしょって思うかもしれません。
でも、そうじゃないんです。
昔は、子供は仮面ライダーを見て、大人は、水戸黄門とか遠山の金さんを見てました。
悪い越後屋とかがいて、町人とか娘をだますんですよ。
それを最後に、水戸黄門や遠山の金さんが成敗する話です。
勧善懲悪の単純なストーリーです。
昔は、大人も子供も、そんな、わかりきったストーリーで満足してたんです。
子どもやから単純なストーリーに満足してたってわけじゃないんですよ。
あの時代は、みんな、こんな世界観しか理解できなかったんです。
でも今は違います。
2022年、仮面ライダー生誕50周年記念プロジェクトとして、『仮面ライダーブラックサン』ってのが作られました。
これなんか、テーマは差別です。
怪人というだけで差別してもいいのかって問いかけてきます。
怪人撲滅派と、怪人擁護派がデモで争ってたりします。
人間が正しくて、怪人が悪いって単純な構図になってないんです。
人間の悪人も描かれてます。
怪人ってだけで、悪って決めつけていいのか。
悪とは何か。
そんなことを問いかけてきます。
これが現代の仮面ライダーです。
ねぇ、複雑でしょ。
善と悪が固定されてないんですよ。
人間が善で怪人が悪って固定概念が崩れてるんですよ。
それから、最近の映画はストーリー展開も早いし、話も複雑です。
一本の映画に、いくつもの伏線が張り巡らされてます。
それが、最後に一気に回収されます。
しかも、最近の子は、それを早送りで見るそうです。
YouTubeで、1.5倍速とか2倍速で見るんです。
僕は、タイムトラベルとかの、時間ものの映画とかが好きなんですよ。
タイムトラベルものって、もし、時間をさかのぼれると仮定して、その世界観の中でストーリーが展開するわけです。
すると、過去の自分を殺したら、今の自分はいなくなるのかとかって、ややこしい問題が出てくるわけです。
そんなあり得ない仮定、たぶん、昔の人が見ても、さっぱり意味がわからないと思います。
これが理解できるには、時間を遡った人が見る世界を、普通に想像できないといけません。
ラクダのいないドイツを想像できない人に、とても想像できないですよね。
でも、僕らは『バックトゥザフューチャー』とか、『ターミネーター』とか、普通に楽しめますよね。
でも、最近は、もっともっと複雑になってるんですよ。
2020年に公開されたクリストファーノーラン監督の『テネット』って見ました?
これなんか、もう、わけわからないですよ。
最近、『テネット』の解説動画をYouTubeで何度も見て、ようやく理解できました。
それで、もう一回見直して、やっと全体の流れが理解できたんです。
『テネット』に出てくるのは回転ドア式タイムマシンです。
これは、『バックトゥザフューチャー』みたいに、過去のある時点に一瞬で移動するタイプのタイムマシンとは違います。
その回転ドアに入ると、その人だけ、時間が逆行するんです。
時間が逆行するっていうのは、動画を逆再生するみたいになるんです。
普通、こう歩くでしょ。
逆行すると、こうなるんですよ。
これ、バックトゥザフューチャーみたいに、一瞬で過去に戻るのと、全然違います。
何が違うかって言うと、原因と結果が逆転して起こるんです。
結果が先に起こって、その結果にあわせて原因を作りに行くんです。
たとえば、敵に脅されてカバンのありかを吐いたって出来事が起こったとします。
その脅した敵は、逆行してたとします。
これを、逆行した敵の視点から見てみますよ。
すると、まず、カバンを見つけます。
その後、相手のとこに行って、「カバンのありかはどこだ」って脅すんですよ。
ねぇ、ムチャクチャでしょ。
これを理解するには、時間が逆行する世界を頭の中で、作れないとダメなんですよ。
無意識で、自然に想像できるぐらいでないとダメなんですよ。
そうなって、初めて、ストーリーを楽しめるんです。
「時間が逆行するって、どういうこと?」で引っかかるのは、フリンのお父さんが、自分が黒人になるってとこで引っかかるとの同じです。
自分が黒人になるってことを普通に想像できるようになって、初めて、差別問題を議論できるんです。
この50年でIQが上昇してるって、こういうことです。
世代を追うごとに、どんどん柔軟に物事を考えられるようになってるわけです。
差別が固定されてなくて、多様な価値観を受け入れられるようになったわけです。
だから、LGBTQも受け入れようってなってきたんです。
50年前は、イギリスでは同性愛は犯罪だったってことを考えたら、ものすごい心の進歩です。
ただ、IQが上昇し続けるフリン効果も、そろそろ限界に来てるって説もあります。
IQの上昇は20世紀後半の50年間ははっきりとみられましたけど、21世紀に入ってからは横ばいになってるってデータもあります。
IQって言うのは、抽象的な概念とか、仮定や推論できる理論的な思考を測るものです。
これって、言ってみれば左脳の処理です。
さっき、僕は、昔の映画は退屈だけど、昔の音楽は普通に聴けるって言いましたよね。
音楽を感じるのは右脳です。
もしかしたら、心の中でも、右脳はほとんど進化してないのかもしれません。
21世紀は、右脳を進化させる時代なのかもしれません。
はい、今回の動画がおもしろかったら、チャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!