第334回 言語学からAIまで 〜誰もが勘違いしてる言葉の定義


ロボマインド・プロジェクト、第334弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

ロボマインドの新しいプロジェクト、プロジェクト・エデンの続きです。
エデンというのは、心を持ったAIアバターが暮らすメタバースです。
AIアバターは、人間と普通に会話ができます。
会話で一番重要なのは、当たり前ですけど、何を言ってるかって意味内容ですよね。
でも、今のAIや言語学じゃ、言葉の意味を定義できないんですよ。

たとえば、最新のAI、 ChatGPTは、文章を高精度に自動生成します。
どうやって文章を生成してるかというと、単語の並びから、次の単語を予測します。
たとえば、「日本 の 首都 は」って来たら、次は、「東京」って予測するわけです。
これを、大量の文書から学習してるんです。
でも、これって、言葉の意味を理解してないですよね。
理解してるのは、単語の並び順だけです。

それじゃぁ、AIは、言葉の意味を理解できないんでしょうか?
自然言語処理には、意味ネットワークといって、単語を意味で関連して管理する方法が昔からありました。

でも、よく考えると、これって、単語同士のつながりを管理してるだけです。
単語の並び順を計算する今のAIと、本質的には違いはありません。
単語のつながりとか、並び順とかって、文の表に出てくる部分ですよね。
でも、意味って、その奥にあります。

AI以外だと、言語学者のノーム・チョムスキーは、文法に注目しました。
人が言葉をしゃべれるのは、脳の中に普遍的な文法を持ってるからじゃないかって普遍文法という考えを提唱しました。
ただ、文法も、単語の変形や並べ方の規則で、これも文の表に現れるものです。
意味とは別です。

どうもね、みんな、根本的に言葉の定義を間違ってるんですよ。
言葉の意味って、表に現れるものをいくらいじくっても出てこないんですよ。
これが今回のテーマです。
誰もが勘違いしてる言葉の定義
それでは、始めましょう!

まず、僕が考えたのは、言葉になるものと、ならないものです。
たとえば、赤や青って色を表す言葉がありますよね。
これは、人間の目で知覚できるから、赤や青って言葉が生まれたんですよね。
それが、人間の目で知覚できない周波数になると、色になりません。
白か黒にしかなりません。
つまり、感じれないものは言葉にならないわけです。
感じるのは意識ですよね。
ここから、言葉の出発は、意識が感じるものって定義できそうです。

それじゃぁ、意識は、どうやって世界を認識してるんでしょう?
人は、目で見た世界を頭の中で仮想世界として構築します。
意識は、この仮想世界を介して現実世界を認識します。
これが、僕が提唱する意識の仮想世界仮説です。
そして、それを基に作った心のシステムがマインド・エンジンです。
プロジェクト・エデンのAIアバターは、このマインド・エンジンを搭載しています。

さて、マインド・エンジンでは、仮想世界はメモリ上に生成されたオブジェクトです。
意識プログラムが直接アクセスするのは、このオブジェクトです。
ということは、言葉は、オブジェクトで定義すべきなんです。
ここが一番重要なポイントです。

単語の並びや、文法は表面に現れた現象にしか過ぎません。
その奥にあるのは、意識プログラムが認識するオブジェクトです。
オブジェクトこそが、言葉の本質です。
だから、言葉の意味は、オブジェクトで定義すべきなんです。

さて、前回、世界と観察者の話をしたのを覚えていますか?
世界を作っただけじゃダメで、それを観察する観察者が必要だって話です。
そして、観察者というのが意識です。
世界と意識って構造が重要だってことです。

でも、この構造だけだと、まだ、十分じゃないんですよ。
どこが問題かというと、観察者という概念は、世界を見るってだけです。
世界を受動的に受け取るってだけです。
でも、僕らは世界に対して能動的に働きかけることができますよね。
体を動かすことができます。
つまり、僕らを突き動かすものがあるんです。
それが何かわかりますか?

それは、感情です。
感情は、行動のエネルギーとなります。
遊びたいとか、勉強したくないって思いが行動となって現れます。
それを感じるのが意識です。
つまり、意識とは、観察者としての側面だけじゃなくて、感情を感じるって側面も必要なんです。

僕は、感情をプラス感情とマイナス感情の二つに分けました。
嬉しい、楽しい、安心、満腹ってのがプラス感情です。
悲しい、怖い、不安、空腹ってのがマイナス感情です。
人は、マイナス感情を避けて、プラス感情を求めるように行動します。
これが、人の行動の基本原理です。

意識は、感情を感じます。
だから、感情も一種のオブジェクトです。
意識は、感情オブジェクトを認識します。
これが、嬉しいとか悲しいって感じることです。

さて、それじゃぁ、最も基本的な感情って何でしょう?
たぶん、それは「泣く」じゃないかと思うんですよ。
赤ちゃんて、生まれたとき、泣くでしょ。
あれ、何で泣くと思います?
赤ちゃんは、この現実世界に生れ落ちました。
これは、いままで経験したことのないものです。
現実世界を認識するのは意識です。
現実世界の拒否、これが泣くだと思うんですよ。

たしか、僕が幼稚園ぐらいのときです。
あの頃は、すぐ泣いていました。
その日も、兄弟げんかか何かで泣いてました。
エーンエーンって廊下で泣いてたときです。
ふと、自分が泣いてるってことに気づいたんです。
「あれっ?」て思いました。
「あれっ?、いっつも、どうやって泣き止むんやったかなぁ?」て思ったんです。
いっつも、気が付いてたら自然と泣き止んでたんですけど、その時は、気づいたら、泣いてたんです。
だから、どうやって泣き止むかが思い出せなかったんです。
かといって、すぐに泣き止んだら、なんか嘘泣きしてたみたいで、かっこ悪いなぁとかって考えてました。
それで、エーンエーンって泣き声をちょっとずつ小さくして、自然と着地させたのを覚えています。

この話のポイントは、泣いてるとき、記憶が無いってことです。
これはどういうことかわかりますか?

現実世界で嫌なことが起こりました。
こんなの嫌だって、現実を拒絶したいです。
その感情がある基準値を超えると、それ以上、心が傷つかないように、現実を遮断します。
目を固く閉じて、大声を開けて、何も見ず、何も聞こえないようにします。
目からは、涙があふれます。
それでも現実から逃れられないと、意識プログラムを強制終了させます。
それが、泣くです。
だから、泣いてるときは、記憶がないんです。

さっき、世界と意識って構造が重要だって言いましたよね。
観察する意識があるから、世界は存在するんです。
その基本構造を破壊するのが「泣く」ってことです。
だから、「泣く」って感情が、最も基本的な感情になるんですよ。

それから、もう一つ重要なのは、一連の処理を行ってるのは、無意識だってことです。
無意識で目を閉じて、声を出して、涙を流してるんです。
普段、体を制御してるのは意識です。
でも、泣いてるときは、体の制御を無意識が乗っ取るんです。

泣くに限らず、感情は無意識が体を制御します。
楽しいと、笑顔になるのも無意識が自動で行ってることです。
これを図で示すと、こんな感じです。

無意識は、感覚器からの入力に基づいて現実仮想世界を生成します。
意識は、現実仮想世界を認識して、感情を発生します。
たとえば、ジャンケンで勝つと、意識に嬉しいって感情が発生します。
ジャンケンで負けると、悲しいって感情が発生します。
無意識は、感情を監視していて、感情に応じて体を制御します。
嬉しいなら笑いますし、悲しいなら泣きます。
そして、悲しみが基準値を超えると、意識プログラムをシャットダウンさせます。
これによって、意識はそれ以上悲しみを感じなくなります。
しばらくして、落ち着いてきたら、意識を起動します。
すると、意識は、また、現実世界を認識して、泣き止みます。

これが心のシステムの全体像です。
この心のシステムを使えば、言葉を高精度に定義できます。
さっき、言葉はオブジェクトで定義すべきって言いましたよね。
たとえば、人って単語は人オブジェクトになります。
人の名前は、人オブジェクトの名前プロパティで定義されます。
歩くは、人オブジェクトの歩くメソッドで定義されます。

ただ、オブジェクトだけじゃ定義できないものもあります。
たとえば、ジャンケンの「チョキ」を定義するとしたらどうなるでしょう?
中指と人差し指を伸ばした手の形となりますよね。
でも、それは、チョキの手の形です。
手の形は、チョキの意味の一部でしかありません。
じゃぁ、チョキの意味って何でしょう?

それを定義するには、まず、ジャンケン世界から定義しないといけないんです。
意識が認識するのは仮想世界です。
仮想世界として、一番わかりやすいのが、三次元の物理世界です。
でも、仮想世界にはそれ以外にいっぱいあって、ジャンケン世界ってのも、その一つです。
前回、このジャンケン世界を、スクリプト・プログラムで定義しました。
これです。

ここには、「チョキ」は、プレイヤーの手の一つとか、パーに勝つとかって書いてあります。
つまり、チョキの意味とは、ジャンケン世界のこの要素だって示すことで定義できるんです。
こんな風にして、スクリプトで定義した世界を使うことで、複雑な概念も定義できるんです。

ただ、これでも、まだ定義できない言葉もあります。
たとえば、「気づく」って言葉は、どうやって定義したらいいでしょう。
これは、どこかの世界に属する言葉じゃなさそうです。
こんな場合は、心のシステムの仕組みで定義します。

第332回で、マインド・エンジンで「気づく」を実現しましたよね。
太郎の部屋に花子が来て、「あっ、花子が来た」って、太郎が気づきました。
これを、イベント処理で実現しました。
たとえば、マウスでボタンをクリックしたとき、マウスクリックイベントが発生します。
マインド・エンジンにも、これと同じ仕組みが搭載されています。
無意識が花子オブジェクトを生成して、現実仮想世界に配置したとき、イベントが発生します。
意識は、イベントの通知を受け取るように設定しておきます。
すると、花子が部屋に現れたとき、意識は、これを認識します。
これが「気づく」です。
こうやって、心のシステムを使うことで、「気づく」の意味を定義できます。

それじゃぁ、「~したい」はどうでしょう。
ラーメンを食べたいとか、ディズニーランドに行きたいとか。
次は、これを定義しましょう。

まず、人の行動の原動力は感情でしたよね。
感情にはプラス感情とマイナス感情があります。
ある行動をするところを想像すると、プラス感情になったとします。
これを想像すること、これが、「~したい」です。
これ、スクリプト・プログラムで書けますよね。
そのスクリプト・プログラムが「~したい」の意味となります。
たとえば、「ラーメン食べたいですか?」って聞かれたとします。
「したい」のスクリプト・プログラムにラーメンを当てはめて、プラス感情が発生したら、「したい」の条件をみたすので、「はい」って答えます。
これが意味を理解して会話するってことです。

最後に「~すべき」を定義してみます。
行動を促すのは感情でしたよね。
でも、感情に関係なく、行動することがあります。
どういう場合かというと、ルールとかです。
ジャンケンなら、「じゃん、けん、ぽん」のタイミングで手を出すってルールがありますよね。
これは、ルール通りに行動しなさいって行動を促すてるわけです。
これが「~すべき」です。
心の内から湧き上がって、こう行動したいって思わせる力は感情です。
そういう心の内から湧き上がる衝動がなくても、こう行動せよって押し付ける力があるわけです。
その力が「~すべき」なんです。

「~すべき」の内、社会から要請される力があります。
たとえば、「困ってる人を助けるべき」とか、「町をきれいにすべき」とか。
これって、別の言葉でいったら何になりますか?
善ですよね。
そして、その反対が悪です。
こうやって、「~すべき」が定義できたら、善悪も定義できます。

これらは、すべてスクリプト・プログラムで記述できます。
こうやって、あらゆる言葉をスクリプト・プログラムで記述できるんです。
そして、そのスクリプト・プログラムを実行できることが、意味を理解できるってことです。

世界で初めて、言葉の意味を理解できるシステム、それがマインド・エンジンです。
そして、僕らは、マインド・エンジンを搭載して、人と普通に会話できるアバターが暮らすメタバースを作ろうとしています。
それが、プロジェクト・エデンです。
プロジェクト・エデンを、ぜひ、応援してください。

それには、まずは、チャンネル登録、それから高評価、お願いしますね。
それから、今回紹介した意識の仮想世界仮説に関しては、こちらの本で詳しく説明してるのでよかったら読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!